“反トランプ”と“反コロナ”という空虚さ
〈バイデン陣営が最も前面に打ち出したのは“反トランプ”。しかし“反”のみで自らを定義するのは、あまりに“空虚”です。あるいはそもそも“空虚”だから“反”でしか自己を表現できないのです〉
〈民主党が打ち出したもう一つのスローガンは“反コロナ”です〉
〈トランプ政権のコロナ対応には問題もあったと思います。しかし“コロナ対応”それ自体は、本来の意味での“政治的選択”ではありません。大統領選挙で有権者に問うような“政策”ではないのです〉
トッド氏によれば、“反トランプ”と“反コロナ”というスローガンは、バイデンと民主党の“空虚さの証し”でしかない。
〈“反トランプ”と“反コロナ”。この二つのネガティブな形でしか自己定義できない民主党が“(空虚な)政策”として無理矢理ひねり出したのが、「人種問題」「黒人問題」です。それに対して“(実のある)政策”として「経済問題」を打ち出したのは、トランプの方です。本来の意味での“政治”は「人種」ではなく「経済」を問題にしなければなりません。ところが、それができないからこそ、民主党は「人種問題」に特化したのです〉
そして「人種問題」を争点化/政治化することに伴う“逆説”と“危険性”について、こう指摘する。
〈そもそも「人種問題」を“政策”として掲げることは、「人種」というものを“本質化”してしまう恐れがあります。「黒人」「白人」といった“カテゴリー”や「人種」という“概念”を絶対視すること自体がある種の“人種主義”に陥る危険があるわけです。いまの民主党には、まさにその傾向が見られます〉
この他、「大統領選の投票行動の詳細」、さらには「『ロシア敵対政策』でかえって『中露接近』を招いている米国(とくに民主党)の戦略の根本的誤謬」について論じたエマニュエル・トッド氏「それでもトランプは歴史的大統領だった」の全文は、「文藝春秋」1月号および「文藝春秋digital」に掲載されている。