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しんどい病について

しんどい病は新しい病気の概念です


この文章の内容は第1に一般の方(中学1年生ぐらい)、第2に西出医院後継者となる若き医師、第3に一般の医師を対象に書いています。本来は医学会などでまず発表すべきですが、内容がとても素直に一般医師にこの文章の内容は素直に受け止めてもらえないと判断したのでここで発表します。

その病名は「しんどいしんどい病・・・疲労性回腸炎・・・腹部圧痛症」です。

「しんどいしんどい病」は西出医院の呼び名です。以下ではしんどい病と略します。
注意、ここでは一般の医師について、いろいろ述べますが,あくまでも私の主観で、すべての先生・医師がこの文の通りであると誤解しないでください。


 

しんどい病は医師に認知されにくい病気です。

この病気の患者さんは、来院されると、「疲れた」「しんどい」とぐったりして訴えます。

一般的にこれらの患者さんは、怠けている、サボろうとしている、根性がないように見えます。診察しても微熱以外に異常所見がありません、検査をしてもやはり病気といえる結果は出ないのです。それで、どこの病院へ行っても、どんな医師に診察を受けても、まともに相手にされることは少ないと思います。

西出医院ではしんどい病は現在、ある程度治療可能になってきています。


   ところで私の友人の医師が、一昨年一緒に海外旅行中にこの病気にかかり、しんどいと訴えていました。しんどい病と判断し彼の病院まで押しかけ往診し,腹部を触診し,炎症の存在を指摘し、薬を調合して無料で治療してあげました。

ところが、いまだにこの医者はしんどい病の存在を認めようとはしていません。

私のごく親しい医師でもこの有様ですから、そのほかの先生方にはとても容認できる内容ではないでしょう。
  若き柔軟な脳でなければこの内容は理解しにくいと半分はあきらめています。

 

患者さんへ、
  医師にとってしんどい病は、お邪魔な病気です。

診察する医師の側からすると、この病気の患者さんは、非常に邪魔になる患者さんたちです。病院の外来は結構忙しいのです。3分診療でなくても一人の患者さんに10分近くの診察時間をとることは実は非常に困難です。

それで、このしんどい病の患者さんの診察はさっさと切り上げたいのです。
  ところがこの病気の患者さんは自分の病気の状態、今後の生活、治療方針などについて執拗に質問をしてくる傾向があります。(それで自然なのですが)
  外来で、まじめに相手にしていると医者まで非常にしんどくなってきます。

この疾患はまだ、一般的に認知されていません。勿論病名もありません。それでこの疾患の患者さんを診察した医師は、便宜上、さまざまな病名をつけます。

自律神経失調症、不明熱、慢性疲労症、心身症、うつ病などです。
 時には詐病として扱われたりすることもあるでしょう。 

くどいようですがお医者さんはこの手の患者さんが苦手です。
 苦手の原因のひとつには適当な薬が無いことです。発熱や頭痛などはそれなりに薬があるので、「薬を出しますから、それで様子を見ましょう。」と、とりあえず診察を打ち切ることができます。

ところが、疲労症によく効く薬は適当なものが有りません。とりあえずビタミン剤、風邪薬、解熱剤、漢方薬、安定剤などを投薬します。ところが患者さんの自覚症状は改善しません。


   次の診察のときは医師に対する不信感むき出しで
「私の病気の病名を教えてください。先生の薬は効きません。御願いです。大病院に紹介状を書いてください」ということになります。
  この病気の患者の患者さんは何とか自分の病気の事を真面目に医師に見てもらおうと必死なのです。

ところが、医師にすれば、患者さんの訴え以外大した所見も無く重篤な病気には思えません。
 おまけに普段から医師も皆、過労で疲れています。それで「私のほうがしんどい」と思いながら「このさぼり野郎が大病院に紹介しても医療費の無駄使いになるだけ」と考えています。
                             (多分これは私だけです)
 当然患者さんとうまくコミュニケーションが取れるわけが無いので更に診察に手間取ってしまいます。

 

とにかく疲労を訴えてくる患者さんは、一言で言えば、病人扱いをされず、ただの邪魔者扱いをされているのが現状だと思います。 それに、たとえまじめに診察しても患者さんの「しんどい」が改善するわけでもありません。

 

西出医院がしんどい病を認識するきっかけ

そういう私も長い間この病気については認識していませんでした。この疾患の患者さんを診察すると不機嫌になってしまうぐらいでした。

まじめに診察を開始するきっかけは、10年近く前、私の後輩が診察に来たことでした。。
  彼は
30歳、かつて関西の雄,某大学ラグビー部で活躍した猛者なのです。
絶対に疲労を訴えないタイプの典型的な人間です。以前、銀行に勤めていましたが、家業を手伝うために退職していました。
  慣れない上、暑く、仕事の内容は相当きつそうでした。その彼が実家を手伝い始めてしばらくして、「しんどい」と訴えて来院してきました。

しかし診察もそこそこに、医師としてでは無く、ラグビー部OBとして説教を始めてしまいます。
 「ちょっと気合を入れてがんばれ」

ところが彼は訴えるように、そんな気合で乗り切れるしんどさじゃないと話します。
  そこで「大学のラグビー合宿のしんどさに比べればたいしたこと無いだろう」
と突っ込むと返事はまったく意外でした。
合宿よりもっとしんどいです

これはとんでもない話です。私の人生の経験で一番しんどかったのは、高校1年生時のラグビー合宿です。
  このときあまりのしんどさに私は、最後の
23日の記憶がとんでしまっています。
彼の大学の合宿はそれ以上の厳しさのはずです。それより「しんどい」ということは、私の経験上、この世の中にないはずなのです。

この一言を聞いて、彼は本当に疲れきっている病人であると認識しなおしました。
そこでまじめなお医者さんに戻って、あらためて診察してみると右の下腹部に圧痛があります。
虫垂炎のときに痛む部位には、
MacBurney圧痛点と名前がついています。
この部位は虫垂の真上に当たります。
彼の場合この圧痛点よりやや内側に圧痛がありました。腹膜炎の所見はありません。

それに夕方になると37Cぐらいの微熱が毎日出ています。

結局、この時、後輩の病気は治せませんでした。
でも彼は
3ヶ月ほどで自然と治癒し、元気にバリバリ仕事をする生活に戻っていきました。
彼が西出医院の、しんどいしんどい病、第
1号患者さんです。

 

しんどい病の定義(4徴候)

それ以後、いざ、まじめに診察してみると、しんどいと訴えてくる患者さんは非常に多いことに気づきます。

西出医院は町の普通の診療所ですが、年に20人~30人以上は来院されていると思います。

とにかく
     疲労を主訴とする

②  微熱がある(37.5度C位まで、平熱より1度ぐらい高い)

③  右下腹部に圧痛がある

④  その他の検査結果はほぼ正常、

この4条件を満たす症例を西出医院では「しんどい、しんどい病」と呼んでいます。

 

しんどい病の経過について

しんどい病は慢性疲労症候群とは異なります。慢性疲労症候群は3ヶ月以上疲労が続き、全身のリンパ節の腫脹を伴う病気です。一方しんどい病の患者さんは殆どが3ヶ月で治癒します。リンパ腺は腫れません。

何人かの患者さんの話をよく聞いてみると3ヶ月で自然治癒することが漠然と理解できるようになります。約3ヶ月ではなく、ちょうど3ヶ月です。患者さんに話を聞くといつから疲労を感じるようになったか、はっきりと自覚できる日付があります。

たとえばゴールデンウィークの最初の日、429日からしんどくなったと病気の始まりの日は特定できることが多いのです。この日が特定されるとその3ヵ月後、729日まで疲労が続くと予想できます。

このことは診察上大事なポイントです。しんどい病の患者が始めて来院された時、あなたの疲労は729日に治ります。と断言するだけで患者さんが病気と立ち向かうきっかけができるからです。

 

しんどい病が認知されにくい理由について

後述しますが、しんどい病は非常に患者数の多い病気です。非常に多くの患者さんがいるにもかかわらず医学界では病気と認識されていません。その理由について考えて見ます。

まず第1の理由は自然に治癒するからです

疲労を訴える患者さんは、いつかあきらめて病院に来なくなります。
  そして
1年ぐらいしてから来院しても、そのころには患者さんも病気のことは忘れているので診察時の会話にものぼりません。それで医師が病気として認識することが無いのです。
この病気は他人から見ると,怠け病、根性が無くなった様に見えます。
患者さん自身も病気と認識せずに「気合」や「根性」が無くなったと感じる人がいます。

普段、根性だけは人に負けないと自負する人たちこの傾向があるようです。患者さん自身も病気がよくなるとこの病気の事を忘れてしまいます。

 

2番目の理由は、医師は根性がありすぎることです。

しんどい病は非常に疲労を感じる病気ですが,多くの患者さん(社会人)は何とか仕事を続けてこの病気を乗り切っていかれます。もちろん根性のある人たちです。

残念ながら多くの医師は非常に根性のある人達なのです。10年以上風邪ひとつひかない人達は、はいて捨てるほどいます。
  医師の中にもしんどい病を経験した人は大勢いると思いますが皆、自分が病気と認識せずに気合で乗り切っているのだと思います。

自分自身の病気を認識できない人達が医師として働いているのも原因ではないかと推察します。

 

話がそれますが、この病気は「透明人間」

この文章を書きながら、なぜか透明人間が頭の中にイメージされてきます。透明人間はこの世の中には存在しません。ところが彼は私達には見えないので、その存在をなんらかの形で一般人であるわれわれに伝えてくれないと、私達は認識することができません。

私の医院ではしんどい病は病気として認識し患者さんにもその旨を説明しています。西出医院には存在するのに世の中には存在しない。皆さんにその矛盾を説明し、理解してもらうことの困難さが透明人間をイメージする理由です。

 

 

(この文章の内容が理解しにくい先生でも、これから一年間、とにかく疲労を訴える患者さんのおなかを触って見ましょう、8割以上の患者さんが回腸末端部を押さえると痛がるはずです)


話を本題に戻します


  この病気の存在が透明人間みたいに世の中に認識されない3番目の理由は、小腸の病気の診断に使える検査がないということです。

血液検査は多くの病気が診断できる便利な検査です。
  たとえば
GPTという検査項目に異常があれば肝臓に炎症があることがわかります。
  ところが小腸の病気をチェックする血液の検査項目はありません.

レントゲン、CT、超音波検査、内視鏡検査どの検査も小腸の病気の診断には向いていません。

  最近、口から飲んで胃や腸の内面をチェックできる検査が行えるようになりました。
この検査が、改善されて普及すれば小腸の病気の診断ももう少し前進するかも知れませんが、やはりまだ先の話だと思います。

小腸の働きについてもまだよく分かっていないようです。小腸の粘膜の下には多くのリンパ球が集まっています。
リンパや免疫の病気や仕組みについては、血液や骨髄、リンパ腺、肝臓,脾臓、胸腺、などが関係することは知られていますが,小腸や大腸のリンパ腺の働きについては現在研究が開始された程度のようです。

 とにかくお医者さんは小腸の病気の診断はにがてで、手で触る触診が一番確実かもしれません。

ところがこの触診も実際のしんどい病や疲労を訴える患者さんには行われていないのが現状だと思います。
良心的な先生なら、不必要と思いながらも、各種の検査の指示をして、神経科や精神科に紹介状を書くのに時間をとられるからです。

 

(話がまとまらないのですいません。文章を書くのはきわめて苦手です。でもこのまとまりのない頭脳だからこの病気を認識できたのだと自負しているので少し我慢してください)

 

一般に炎症性の病気であれば,白血球が増加したり,CRPという検査が陽性になります。
  しんどい病ではどちらの検査も正常値が出てきます。
これでは炎症があると検査で引っかかることはまずありません。 
 西出医院の検査では補体結合検査でわずかに低値が出る程度です。

  医師は、検査に異常所見が無ければ病気と認識しないことが多いのです。

  

 

 

学校の保健婦さんたちはこの病気を理解できる?

 ところで、このしんどい病を現在、一番理解し、実感している人たちは誰なのでしょうか。以下は推察ですが、学校の保健室の先生、保健婦さんではないでしょうか。

かつて私が通っていた小学校や中学校には保健室があり、なぜかそこには常連さん(さぼりの女の子達)がいました。いまだに私も彼女達はさぼっていたと思うのですが、養護教員さん達は彼女達が病気であること、いずれ回復して普通の生活に戻ることを、体感しているのではないでしょうか。そう解釈するとあの不思議な雰囲気も理解できるような気がするのですが。

  しかし、この保健室でもこの病気は少し誤解されているようです。
  私の考えでは、この病気は精神的な病気ではありません.保健室では、肉体的な
(回腸の末端の炎症)病気であることは認識されていないようです。

 

またまた話がずれてしまいますが、養護教諭さんたちへのお願い。

  疲労を訴えて保健室に来る学生について

     どれくらいの期間、彼達は保健室に通うのでしょうか。

     そのうちに元気になるのでしょうか

     彼達はお腹に病気が無いのでしょうか,

     彼らは本当に病気ではないでしょうか。

     彼らの疲労、しんどさの程度を理解する判定基準はあるのでしょうか。

しんどい病を世の中に認知していただくには、医師だけではなく養護教員の皆様にも理解していただくのが早道かなと考えてこの文章を書いています。

とりあえず数人の子供達のお腹に異常が無いか、親しい医師(校医さん)に相談してみてはどうでしょうか。

 

しんどい病をイメージしにくい人は、あの「保健室に寝ていた子供たちの成人型の病気」ととりあえず理解していただくのがいいでしょう。

 

 

疲労を感じておられる患者さんに

現在しんどい病にかかられている患者さんには、この報告は朗報かも知れません。しかし何度も繰り返すように、殆どのお医者さんがこの病気を診察する訓練を受けていません。

「最近UFOに乗ったのですが、その時、薦められた薬をください」といわれても私もどうしようもありません。それと同じような反応をするのがごく普通のよいお医者さんです。

とりあえずは、毎日熱を測定し記録して医師に見せしょう。そして診察時には腹部を触ってもらいましょう。腹部の所見はどのお医者さんを取ることができます.   


それから、もし後述する治療を試してしてみたいなら医師とよく相談してください。

あくまで自分の責任で行うこと(医師を訴えないこと)  、

診療には保険が利かないので自費で行うこと

必ずその治療の結果を報告することなど

を患者さん自身から提案してください。多くの医師はそれならばと、耳を傾けてくれるでしょう。

とにかくしんどい病は、3ヶ月我慢すれば症状はよくなります。それまで誤解されることも多いと思いますが堪えてください。この病気は怠け病に他人からは見えてしまいます.
困ったことに家族にも怠けていると思われてしまいます。
特に母親はがっくり来ています、せめて母親だけには味方になってもらいましょう。

 

しんどい病の正体は

 この病気の正体はいったい何でしょう.私は回腸末端部のリンパ組織の炎症だと考えています。ただし回腸末端炎(クローン病)とは異なります。
クローン病は非常に長期
(一生)続く病気で難病に指定されています。
しんどい病はもう少し病気を患う期間が短い病気です。
 しんどい,疲労の原因は何らかの炎症性物質だと思います.
T リンパ球の働きが関係したインターロイキン、サイトカイン、などと呼ばれる物質のいずれか、または別の物質かもしれません。

   疲労の原因物質が解明されるとこの病気の治療も進むかもしれませんが、それはまだまだ先の話になります。

少なくともこの病気が医学界で一般的に認識される必要があります。

 

 

「しんどい、疲れた」はあいまいな言葉である。

    また話がそれますが、疲労を訴える病気に肝炎があります。
   私も
B型肝炎を経験したことがあります。このときには、紙のバックに、パンフレットが数枚入っているだけで重くて、ゴミ箱に捨ててしまったことがあります。またホテルの宴会室のドアが重くて動かないので鍵を開けてもらおうとしたら、鍵がかかっていなくて、馬鹿にされたこともあります。

肝炎のしんどさは、仕事は何とかこなせるが、
            休憩時間にいすに座るのもつらくてごろんと横になりたくなる、
            紙のバックが重い、
            おもいドアの開閉は困難な、しんどさだったのです。

これを一般的な会話で表現すると、ただ「しんどい」ということになります。
  しんどい病の患者さんにそのしんどさの度合いを具体的に聞くと、その内容が病的な事が分かります。
  たとえば「しんどくて、駅から家まで歩いて帰るのがつらい」とか、
  ひどい場合は「家についてベッドにたどり着くのもしんどい」などです。

朝起きられないと表現しても、実は体が重くて体重を支えられなくて起きられない症例もありました。

(平成16年5月12日午前中の診察だけで、しんどい病らしき、右下腹部に圧痛がある患者さんが4人もきている。)

しんどさにも、病的にしんどい、体に力が入らない、精神的に疲れている、休まずによく働いた、などいろいろな意味が含まれているので、診察室でこの言葉を使われると患者さんの訴えがあいまいになってしまいます。悲劇の始まりです。

この疾患で診察を受けたい患者さんは、出来るだけ具体的に医師に症状を伝えましょう。

「茶碗を持つのもつらい。家に帰ると玄関で動けなくなる」と言われれば医師も必ず真剣に話を聞いてくれます。
  「しんどい」、「つかれた」という訴えは、言葉の曖昧さの為に、病気として医師にアピールしにくい言葉であるということも、 この病気が一般に認識されない大きな理由です。 

 

しんどいしんどい病は伝染する。

しんどい病はおそらく小腸(特に回腸部)の炎症だと思います。もちろんその原因は不明です。

西出医院ではピロリ菌のような菌が原因かと考えていますが、寄生虫や、アメーバーなどの原虫、またはウィルス感染が関係している可能性もあります。

これらの因子が複数重なっている可能性もあると思います。

以上に挙げた原因が関係する場合、当然、伝染する可能性があります。
   そして実際に伝染もするようです。具体的な例を挙げます。


  (以下名前は仮名です)由紀ちゃん(4人家族)15歳,高校入学後半年は元気に登校していたが、平成15年9月29日ごろから疲労感出現,起床が困難になり学校に遅刻するようになった。この子の場合は1月ごろから少し元気が出て2月には登校できるようになった。

姉が元気に登校し卓球部のクラブ活動も積極的に参加できるようになった頃、今度は3歳下の弟がしんどい病にかかってしまった。

平成16130日ごろから疲労を訴え、起床が困難になり、まったく登校できなくなってしまった。2月中ごろまでこの状態が続いた。220日頃から、午後からは少し元気が出てきて、遅刻しながらも登校できるようになった。4月からは元のやんちゃな中学生に戻って生活できるようになった。

ところが同居している70歳の祖母が32日から食欲が低下、起床が困難になった。
325日の問診では、
 朝起きるのが面倒である。
 着替えも面倒で午前中は寝ている。
 落ち込んで会話するのもいや。
 クロスワードパズルは好きだがこの時は考えるのもいや。
 いらいらして、食欲もない、
 でも一日に数時間だけ、体が楽になり家事を手伝う。
などの症状が見られている。

この家族の3人は皆明るい性格の人たちで、祖母は46日に改善し普通の生活に戻ることができるようになった。

この病気が伝染する可能性があること示唆する経験です。

 
  注意して診察しているとこのしんどい病の人は1年に23回集中して来院してくるように思えます。
  この原稿を打っている平成
16年5月16日それらしき患者さんがすでに4人来院しています。皆、腹部に所見があります。この時期は流行しているようです。

ただし、しんどい病は患者さんの家族や、会社の同僚に簡単に伝染する病気ではないと思います。簡単に感染するのであればもっと以前から病気として認識されていたと思います。

 

しんどい病の好発年齢

ここで述べているしんどい病は20台から30歳代の人たちです。どちらかというと女性が多いように〈3分の2〉感じます。
  発生頻度はおそらく男女同数ぐらいだと思いますが、診察に来るのは女性のほうが多いのだと思います。

ところがこの文章を書き始めた頃から、実は子供や老人にも非常に多い病気ではないかと考え始めています。
 ただ病気の表現の仕方(主訴)が異なっているようです。

  若い人たち以外のしんどい病についてはまだ考えがまとまっていません。
 ただ私が今まで受け止めていた以上にこの病気は老人にも蔓延しているのではないかと考え始めています。
  そこまで突っ込むと話が非常に複雑になるので若い人たちのしんどい病に話を限っていきます。

 

しんどい病は単一の病気ではなく,疲労を訴える病気の症候群である。

しんどい病の治療について話題を進める前に,しんどい病にもいくつもの病型がありそうであることを理解してください。
   多くの症例は
3ヶ月ぐらい症状が続きますが、3ヶ月以上続くこともあります。病気の期間については症例によってことなります。

治療についても後述の薬が効果がある人と効果がまったくない人、効果があいまいな人などに分かれてきます。  

  腹部の圧痛部位も、左下腹部や、その他の部位が痛むこともあります。
  回腸末端炎も、回腸だけではなく空腸や回腸末端以外の部位に炎症が起きる事が知られていますが、
  このしんどい病の場合も小腸全体
(時には大腸も?)が炎症を起こす可能性のある部位だと思います。

原因も不明ですが、病気の起炎菌はひとつではないように思えます。

くどくどとこのことを説明するのは、多くのお医者さんが自分の経験した数例の経過がここに書かれたしんどい病の概念と一致しないのでそんな、病気は存在しないと反論する可能性があるからです。

炎症の部位もここでは回腸末端と明言していますが.空腸や盲腸、時には大腸の炎症の可能性もあると考えます。

しんどい病とは広い意味では
(広義には),腸の炎症で、数週から半年ぐらい続き、主な症状は疲労(軽度から非常に重症まで程度はさまざま)で、種々の検査で異常が証明されず、リンパ節の腫大が認められ無い症例のことです。

狭い意味では20歳から30歳代の若い人たちが、極度の疲労を訴えるが、微熱以外に異常所見がなく、各種検査は正常で、約3ヶ月で自然治癒する症例で、腹部に圧痛があり、薬が効果のある人達をここではイメージしています。


一般の方に注意、この治療はすぐに病院や医院で受けられるものではありません
 

しんどい病の治療法について

しんどい病の治療法は西出医院でも長い間見つかりませんでした。

それまで、発熱があるので様々な抗生物質や解熱剤などを試して見ましたがまったく効果がありませんでした。

漢方薬、ビタミン剤、精神安定剤,抗鬱薬、どれも効果がありません。

薬が見つからない間の治療法はただ、励ますことだけでした。

ただし、病気であること、検査は正常に出ること、3ヶ月で治癒することなどを説明すると、多くの患者さんは病気と立ち向かう勇気、元気が出てくるようでした。

治療法を見つけたのは、クローン病の患者さんがきっかけです。
  この
30歳ぐらいの男性はすでに、大阪大学病院でクローン病の診断がついていました。
  本人の希望で、西出医院ではクローン病の治療薬ペンタサを投薬していました。
  クローン病は別名、回腸末端炎とも呼ばれ、病気の勢いが強いときには非常に疲労感を訴える病気です。
   その患者さんも、ある時、極度の疲労を訴えてこられましたが、治療することができませんでした。
   彼は、大学病院を再度受診され,その後当院へ報告にこられました。大学で投薬を受けたらすぐに元気になったそうです。

さすがに、大学病院です。
  その薬をぜひ知りたいので患者さんに聞くと、薬の名前はフラジールでした。
  とんでもない薬です。一般の開業医が使うことはまずない薬です。原虫(トリコモナス)が原因の時に、外用薬で使うことは知っています。

学生時代には寄生虫の治療に使うと聞いたことがあります。
  金魚を飼っている患者さんがフラジールを分けて欲しいと頼みに来たことがあります。金魚の皮膚病に効くと飼育方法の説明書に書いてあるそうです。

この程度の知識はありましたがビックリしてしまいました。あわてて、今日の治療指針と言う本を開けてみると確かにフラジールを使用する治療法も書いてありました。

 

  この患者さんの疲労の回復があまりに劇的だったので、次のしんどい病の患者さんにも使用すると決めたのです。

 チャンスはすぐにやってきました。西出医院の職員の息子さん(20)がしんどいと訴えてきたのです。
 すぐにペンタサ一錠とフラジール一錠を投与し、再来院を指示しましたが彼はそれから来院しませんでした。
 母親から話を聞くと、結果はビックリする内容でした。薬を飲むと
1時間ぐらいですぐに疲れは取れてしまった。ということでした。

その後すぐに、当院の職員、若い看護婦さんがやはり疲労を訴えてきました。彼女にも投薬したところやはり服薬後すぐに楽になってしまいました。


 今まで治療できなかったことが嘘のようで、にわかには信じがたいことでした。

ただしこの二人の場合はラッキーでもあったようです。実は薬がてきめんに効果があるのは3人に1人程度です。

ただし効く人には、効果は本当に劇的なようです。

50歳ぐらいのある女性は「先生、あの薬すごいですね。薬を飲んで効き始めてくると、疲れが体から抜けていくのが分かりますものね」

「そんなの分かるの」

「分かりますよ、今までしんどかったのが嘘みたいに半日ぐらいで元気になりましたよ」

「フーン、わしには分からん。そんな風に言う、患者さんも何人かいてはったけど、ほんまやねんな。」

「それきっと、本当ですよ」

というような会話内容です。

このように3人に一人くらいは劇的に効果があるので、現在では11回二日分だけ投与、そのうち一回は医院内で服用して頂き、もう一回分だけ薬を渡し、翌日効果をを判定するようにしています。

後の3人に一人ぐらいでは劇的効果は認められないものの、疲労の度合いは改善するようです。多くは11回、7日から10日ぐらいの投与で様子を見ます。全経過の治療期間はそれでも23週間に短縮されて改善することが多いようです。

ただし、前述の由紀さんのように、薬の効果がまったくない人もいます。由紀さんの弟と、祖母の場合治療期間は23週間でした。

効果のない場合、薬を中止して3ヶ月ほど様子を見るしかありません。

 

   ペンタサとフラジールどちらの薬が効果があるのかは不明です。、フラジール単独でも効果はあると思いますが、この両者を併用した時の効果が大きいので、単独投与はまだ試みていません。

 

フラジールについて

   フラジールは特殊な薬で普通のお医者さんは、この薬を使いません。
ただしヨーロッパではピロリ菌の除去に使われてます。
だから、無茶苦茶怖い薬でもないようです。

一般にはトリコモナスや寄生虫を駆除するのに使用されます。

ただしこの薬には断酒作用があります。
お酒を飲むと、アセトアルデヒドを分解しなくなるので、ひどい二日酔い状態になります。
恥ずかしながら自分自身で飲んだことがあるのですが
(ピロリ菌除去のため)
うっかり酒を飲み夜中にトイレで失神したことがあります。
お酒との併用は気をつけてください。
それでなければ比較的安心な薬だと言う感じがします。

 このフラジールが有効なので、しんどい病の原因として、
トリコモナスやピロリ菌の仲間や、嫌気性の細菌が関係しているのかなと推定できます。


  この薬は保険適用薬ですが、その適応症は厚生労働省により指示されています。
しんどい病や、腸の炎症には保険適応がありません。
薬は医師の処方が有れば入手できます。
  しかし多くの先生は、保険適応外の薬を処方するのをためらいます。
 トラブルがあったときの責任はすべて医師が負わなければならないからです。

  それと、保険が効かない薬を出す時は、そのときの診療費すべてに保険が効かない取り決めもあります。

  フラジールの投与を患者さんが希望したとき、制度上、保険を併用することは絶対に出来ません。
  そのことを十分理解して医師に相談ください。

一般の方に注意、この治療はすぐに病院や医院で受けられるものではありません

しんどい病の頻度について

 しんどい病はここでは、成人に限って述べています。
この若い男女に限っても非常に患者さんの数は多いと感じています。
西出医院は年に延べ
20000人近くが来院する診療所です。周囲の人口は1.5万人ぐらいです。
その診療所で年に
30人から50人くらい患者さんがこられます。
(平成
16年1月から4月末までで32人)

単純には日本全体で30万人位の患者さんが病院で受診されているのではないでしょうか。受診されていない症例を含めると大変な数になります。
とにかく非常に多くの患者さんがいると思います。

病院,医院へ来られる方は重症の患者さんでそれより軽い疲労感を感じている人はもっと多くいると思います。

私には3人の娘がいます。二人は社会人として働いていますがこの二人とも最近、微熱と疲労を訴えフラジールを服用させました。腹部の所見はとっていませんが。

  小学生から老人まで含めると、この数倍から10倍位の患者さんがいる可能性があります。


医師の独り言
  「国民的な疾患です。この疾患を認識できないための損失も莫大なものでしょう。
   年間数万人といわれる自殺者も半減できるかもしれません。
   保健室の孤独な彼女達も救われるかもしれません。
   医師にとっての難病,不明熱の大部分が解決するでしょう。
   彼らが消費する莫大な検査費用も節約できるでしょう。」

  

 

しんどい病の関連疾患について

しんどい病は他人の目からは,病気に見えません。怠け病や根性が抜けた様にみえます。
家族や母親にも病気であることを理解してもらえません。
そのため患者さんは精神的に非常に孤立してしまいます。

前述の由紀ちゃんの場合、治療としてまず行った事は、
母親を呼び出し、患者さんの味方になるように説明したことです。

幸い由紀ちゃんは高校1年生でこの疾患に罹ったため、授業に後れずに
、その後の学校生活を送ることができました。
でもこの由紀ちゃんに弟が罹患したとき、弟を守るように頼んだところ、
私のほうがもっとしんどかったとつれない返事でした。


   世の中には、登校拒否、出社拒否、閉じこもり、ずる休みなどの言葉があります。実はこれらの人達の中に、しんどい病の人たちが大勢いるのではないでしょうか。

大学生が経験するという五月病ははたして精神的な病気なのでしょうか。注意して観察すれば微熱があり腹部に軽い炎症所見があるのかもしれません。

     急性虫垂炎

     糖尿病や慢性関節リュウマチなどの急性増悪

     学生の登校拒否、ひきこもり

     社会人の出社拒否

     壮年の鬱、自殺

     老年の急激な老け込み、寝たきり

などに関係している可能性がありそうです。

この問題は、国家的レベルで取り組むべき問題ではないでしょうか。



「腹部圧痛症」について

  「しんどい病」の病名を提案するにあたり、もうひとつの病名「腹部圧痛症」を提案すべきだと思います。

  ここでの、「しんどい病」はくどいようですが世の中に認知されにくい病名です。

しかし、疲労を主訴とする患者さんは、殆ど(8割以上)、「腹部圧痛症」を合併しています。
  このことはよほど偏屈な医師以外認めざるを得ないと思います。

「腹部圧痛症」は症状名を病名としたものです。この病気は、発熱、疲労症とは切り離した概念です。

 実は、前章で示した病気,疾患の多くの患者が「腹部圧痛症」を合併しているようなのです。
いわゆる、慢性疲労症候群の患者さんを、私は経験していません。この病気の人達も「腹部圧痛症」を合併しているのではないでしょうか。

 

「しんどい、疲労している」患者さんに

疲労を感じて病院へ行く際の注意点を23書き上げます。

1        医師はしんどいを、病気とは思っていません

2        そのことで医師を攻めないでください。

3        出来れば一日3回、熱を測り記録したメモを医師に見せてください。

4        診察のときにお腹を触診するように頼んでください。

5        おへその右下あたりに、押さえられて痛いところがあれば、しんどい病の可能性があります。

6        医師の指示に従い検査を受けてください。結核、肝炎や白血病などの可能性もあります。

7                 削除しました

8        そこでこの、文章をコピーし医師に見せてください。

9        フラジール、ペンタサの治療は保険が効きません。そのことを知っていると医師に伝えてください。

10    治療費は全額自己負担すると医師に伝えてください。治療費は検査の内容にも
    よりますが
1万円前後だと思います。

11    治験的な治療であること、そのことを理解していると医師に伝えてください。

12    その責任を医師に追及することは無いと明言してください。

13    薬を2回分だけ処方してもらってください。

14    薬の効果は必ず医師に報告してください。必ず翌日の診察を受けてください。

15    病気が治ればそれまで。
    完全に治らなくても効果があるようならその後の服薬について医師と相談してください。
    効果が全く無いようであればやはり医師と相談してください。その後
3ヶ月は診察を受けてください。

    (医師に責任を追及する場合は、治療費は医師が決めます。西出医院の場合10万円でもいやです。)

 

疲労と腸の疾患について

  疲労と腸の疾患について医師は認識しています。

   ソクラテス顔貌、facies abdominalis(お腹痛の顔)、という医学用語があり非常に疲れた顔つきが特徴です、お腹に炎症がある人を一目見ただけで診断するときの重要な所見です。  しかしこの所見は非常に重症の腹膜炎患者さんの診断に使われます。胃や腸に穴が開いてすぐに手術が必要な病気の事が多いのです。

  また話がこんがらかりそうなので、この話は中断します。
  軽い腸の病気がもし存在するなら,その症状はきっと「しんどい、疲れた」になるだろうと言いたかったのです。

  腸の粘膜の病気の場合は下痢や出血をするでしょうが、ここでは腸の粘膜下の病気を想定しています。

 

乱雑でまとまりの無い文章ですがとりあえずここで、インターネットに掲示します。

多くの医師や、関係者がこの問題に気づいていただくことのほうが、この文章を校正するよりはるかに重要だと考えるからです。

 

 

 

かって大学病院勤務時代、同僚の先生に、私の文章は意味不明で有名でした。話せば分かるが書かれると理解できないようです。それで大学病院を離れてしまいました。とにかく立派な文章を短時間で仕上げることは私には出来ません。診療を続けながら、この文章を完璧にするには後数年かかります。
しんどい病を医学的に病名をつけるなら,疲労性回腸炎が適当かなと考えています。

 10月16日第3回校正

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