抗菌せっけん、米で販売禁止 「効果に根拠ない」

トリクロサンなど殺菌剤19種

【ワシントン=川合智之】米食品医薬品局(FDA)は2日、抗菌作用のあるトリクロサンなど19種類の殺菌剤を含む抗菌せっけんやボディーソープなどを販売禁止にすると発表した。通常のせっけんより殺菌効果があるという根拠がなく、長期使用の安全性も検証されていないとしている。

一部の米企業はこうした殺菌剤の使用をすでに中止した。トリクロサンを含む製品が多く流通している日本でも影響が出そうだ。

規制対象となったのはトリクロサン、トリクロカルバンといった殺菌剤を含むせっけんやハンドソープ、ボディーソープなど。トリクロサンは殺菌効果などをうたう液体抗菌製品の93%に含まれており、2千種以上が販売されているという。

FDAは「消費者は抗菌せっけんは細菌の増殖を防ぐのにより効果があると考えがちだが、通常のせっけんと水より有効だという科学的根拠はない」と指摘した。さらに「殺菌剤は長期的に利点よりも有害となりうる可能性があるとの指摘もある」と警告した。

一部の研究によると、殺菌剤を使うことで耐性菌が増えるリスクがあるほか、ホルモンの働きを阻害するなど健康への影響を懸念する意見もある。FDAは2013年、衛生製品メーカーに、トリクロサンなどの有効性と安全性のデータを提出するよう要請し、販売規制の是非を検討してきた。

今回の規制対象に消毒液や医療機関向けの製品は含まれていない。FDAは通常のせっけんと水による手洗いを推奨しており、せっけんがない環境ではアルコール消毒液の使用を勧めている。

トリクロサンは抗菌成分を持つ物質として、多くの日用品に含まれている。米国ではトリクロサンを含むせっけんが40年以上前から市販されている。日本では1990年代に病原性大腸菌O157の被害が広がると抗菌剤に注目が集まり、トリクロサンが配合された薬用せっけんなども広く使われるようになった。

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