この特許技術が、今回BioNTechとモデルナが各々開発したmRNAワクチンのベースとなっている(この特許を有するKariko博士は、2013年にBioNTechの上級副社長に就任している)。BioNTechは今回、ファイザーと共同で新型コロナ・ワクチンを開発・製造したドイツのスタートアップ企業だ。
ちなみにBioNTechは「ビオンテック」あるいは「バイオエヌテック」などと発音されているが、同社CEOでバイオ科学者でもあるUgur Sahin氏は米テレビ局のレポーターから「どちらの発音が正しいですか?」と訊かれた際、「どちらでもいいです」と答えている。
ファイザー/BionTechとモデルナは各々、mRNAを使って新型コロナ・ウイルスのスパイク・タンパク質(ウイルス表面の突起を構成するタンパク質)を作り出し、これをワクチン化することに成功した。
双方は互いに競合する立場にあるが、ベースとなっている特許技術が同じである以上、共に「95%の予防効果」という同じ試験結果が報告されたのも頷ける。ただ両者はもちろん完全に同じワクチンというわけではない。
一つには、ワクチンの保存に要する条件が異なる。ファイザー/BionTechのワクチンは長期保管する場合、摂氏マイナス70度以下で保管される必要があるが、モデルナのワクチンは摂氏マイナス20度で大丈夫だ。これは家庭用冷蔵庫の冷凍室の温度に該当する。
ファイザーはワクチン保存用の特殊な冷凍コンテナを自主開発し、これを使って製品化後のワクチン配布に当たるとしているが、この点では家庭用冷蔵庫でも十分対応できるモデルナの方が有利だ。
またファイザー/BionTechの新型コロナ・ワクチンは間に3週間、モデルナのそれは4週間空けて、2度接種する必要がある。ワクチンの値段はファイザー製が1回20ドル前後、モデルナ製は35ドル前後と見られるが、感染予防には2回接種が必要なので、実質的にはその2倍の値段になる。
ただし米国では、いずれも政府が製薬会社から一括して買い上げ、国民には無料で接種する予定だ。日本でも先日、新型コロナ・ワクチンを無料にする予防接種法の改正案が衆院で可決された。