高校時代やブログを始めた頃の話も

はあちゅうと振り返る経歴。電通時代の仕事内容・退職理由は? 炎上のことはどう思ってる?

ライフスタイル
インフルエンサーの代表格として活躍している、ブロガー・作家のはあちゅう(伊藤春香)さん

新コーナー「新R25プロフ」では、はあちゅうさんのことがざっくりわかるように、高校時代のお話や、新卒で入社した電通での仕事内容や退職理由、2017年に告発した#metooの件も含めて、ご自身の経歴を振り返っていただきました。
はあちゅう
本名:伊藤 春香(いとう はるか)
生年月日:1986年1月22日
年齢:32歳(2018年10月時点)
職業:ブロガー・作家
デビュー作:『さきっちょ&はあちゅう恋の悪あが記Super edition』(2005年)
出身地:神奈川県川崎市
血液型:A型
配偶者:しみけん(AV男優)
経歴:

2001年4月
慶應義塾湘南藤沢高等部へ入学

2004年4月
慶應義塾大学法学部政治学科へ入学。在学時からブロガーとして活躍

2009年4月
株式会社電通へ新卒で入社し、コピーライターとして従事

2011年11月
株式会社電通を退社し、トレンダーズ株式会社へ入社。エステ・コスメ専門サイト「キレナビ」編集長を勤めたのち、YouTuberマネジメント事業の立ち上げを担当

2014年9月
トレンダーズ株式会社を退職。フリーランスとして執筆・講演活動を開始

2017年12月
電通時代に受けた岸勇希氏からのセクハラ・パワハラ被害を告発

2018年4月
オンラインサロン「#はあちゅうサロン」を開始

2018年7月
AV男優のしみけんさんとの事実婚を発表

出身高校の慶應義塾湘南藤沢高等部では“陰キャラ”だった

はあちゅうさんは勉学に励み、憧れだった高校・慶應義塾湘南藤沢高等部へ入学。しかし当時の活動は学外が中心で、写真コンクールや作文コンクール、全国高等学校弁論大会などで賞をとることなどに熱心だったそう。
編集部・葛上

編集部・葛上

当時、なぜ熱心に学外で活動されていたんですか?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

とにかく、何者かになりたかったんです。昔から本が好きだった影響で主人公願望が強くて。でも私の人生は、原宿でスカウトされるようなドラマチックなものではなかったんですよね。

中学ですごく勉強を頑張って、慶應という夢の場所に行ったのに、私は“陰キャラ”で、思い描いていた“理想の学生生活”が送れていませんでした。そんな自分に焦っていろんなことにチャレンジしたのが高校3年生のときです。
編集部・葛上

編集部・葛上

その高校3年生の頃のチャレンジのひとつに、UNESCO奨学金プログラムによるパナマへのホームステイがあったそうですね。
はあちゅうさん

はあちゅうさん

あの体験で、人生観がガラッと変わりました。
左手をあげて説明をするはあちゅう
編集部・葛上

編集部・葛上

どんな体験をされたんですか?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

パナマの人たちは、なにも成し遂げてないし、なにも努力してないように見えるのに、人生がすごく楽しそうなんですよ。ボロッボロのラジカセで音楽をかけて踊って、安いお酒を飲んで毎日ワイワイ盛り上がってる。

一方で、私はすごく努力して憧れの慶應の高校に入ったのに全然楽しくなかった。それが悔しかったんです。自然と楽しくない方向に自分を追い込んでしまっていたんだな、ということに気づかされましたね。
編集部・葛上

編集部・葛上

いまの場所で楽しめるかどうかは自分次第ということですね。

慶應義塾大学へ入学し、始めたブログがヒット! 初の書籍化も経験

高校卒業後に慶應義塾大学法学部政治学科へ入学。在学時に始めたブログが人気になり、初の書籍『さきっちょ&はあちゅう恋の悪あが記Super edition』(2005年)も出版されました。
編集部・葛上

編集部・葛上

はあちゅうさんは今でこそインフルエンサーの代表格のようになっていますが、ブログを始めた当時から人気ブログにすることを意識して書いていたんですか?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

いえ、はじめはただ日常生活を書いているだけでした。「おもしろく書く」ということすら思い浮かばなかったというか。

ちょっとアクセスが増えたり、コメントがついたりするのが楽しくてハマってましたね。
はあちゅう
編集部・葛上

編集部・葛上

はあちゅうさんにもそんな時代があったんですね!

でも2004年からブログを始めて2005年に出版されたということは、1年ぐらいで界隈に名が知れ渡るぐらいになったということですよね…?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

確かにそうですね。ラッキーでした。1年でブログが書籍化までいったのは、いい時期に始められたからだと思います。

学生ブログランキングで1位の子とタッグを組んで交換日記ブログを始めたら、最高記録で1日45万PVが出せるくらいになったんです。
編集部・葛上

編集部・葛上

Twitterなどがない時代でそれはすごい。書籍化は狙っていたんですか?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

ブログを始めた頃から狙っていました。だから本になることが決まって、ようやく夢が叶うんだと思ってました…
編集部・葛上

編集部・葛上

過去形なんですね。現実は違ったということでしょうか?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

本を出してみたらまったく話題にならず、夢が叶ったのにすごいあっさりしてて。本を出したくらいでは、人生はなにも変わらないんだって、失望してしまいました。
編集部・葛上

編集部・葛上

それ以降はどうされたんですか?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

もう一回出してやろうと思いましたね。ブログや書籍の執筆を通して、大学生のなかでカリスマ的な存在になりたかったんです。知名度はいろんなところへのフリーパスになりますからね。

株式会社電通へ入社し、コピーライターとして働く。退社の理由は?

2009年4月に株式会社電通へ新卒で入社し、コピーライターとして従事。いわゆるコピーライターのイメージにとどまらない、幅広いお仕事をされていたそう。
編集部・葛上

編集部・葛上

コピーライターということは、広告のコピーを考えるお仕事をずっとされていたんですか?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

クライアントによって、仕事はまったく違いました。バナーのキャッチコピーを考えたり、カタログの説明文を書いたり。

あとはCMの絵コンテを描くこともありましたし、アーティストさんの作詞もお手伝いさせて頂きました。思い出に残っている仕事がたくさんあります。
はあちゅう
編集部・葛上

編集部・葛上

作詞まで…! すごく充実しているように思えるんですが、2年くらいで退職されてますよね。何が理由だったんですか?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

コピーライターとして1番になれる気がしないと思った、というのがひとつ。あと、大企業の働き方は自分を消耗させるところがありました。

朝から深夜まで働かなきゃいけないうえに、「はあちゅう」としての活動も制限されてしまったんです。

個人をつぶさないと大企業は成立しないんだと思うことがいろいろあって、辞める決断をしました。

電通からトレンダーズ株式会社へ転職。「キレナビ」編集長に就任

電通時代にトレンダーズ株式会社の創業者・経沢香保子さんから声をかけられ、トレンダーズ株式会社へ転職。エステ・コスメ専門サイト「キレナビ」編集長を勤めたのち、YouTuberのマネジメント事業の立ち上げなどを担当したそう。
編集部・葛上

編集部・葛上

電通へ勤めている頃も、個人としての活動はされていたんですよね。電通をやめてフリーランスを選ばなかったのはなぜですか?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

まず、フリーランスでお金を稼げるのか不安でした。あとはまわりに会社員しかいなくて、フリーランスという選択肢が頭にありませんでしたね。
下を見るはあちゅう
編集部・葛上

編集部・葛上

そうだったんですか。意外に慎重派なんですね。では、なぜトレンダーズを選んだのでしょう。
はあちゅうさん

はあちゅうさん

当時の社長だった経沢さんから「もうすぐ上場するから、企業PRのプロがほしい」という相談をされたんです。

たくさんいる電通のコピーライターのひとりよりは、「これから上場する、勢いのある会社の女社長の右腕」のほうが絶対に楽しくて、得るものがあるだろうなと思って、すぐに転職を決めました。
編集部・葛上

編集部・葛上

その後にフリーランスになった、ということはトレンダーズ時代に安定した収入の土台をつくれたのでしょうか。
はあちゅうさん

はあちゅうさん

はい。週末作家として書いていた『AM』という恋愛メディアのコラムが人気になって、そこから『anan』『毎日新聞』の連載が決まりました。執筆依頼が殺到したところで、ようやくフリーランスでもやっていけるかも、と思えました。

加えて、トレンダーズを辞める年の8月に経沢さんとオンラインサロン「ちゅうつねサロン」を始めて、月に数十万円の給料が半年以上は入る目処が立ったのも大きかったですね。
編集部・葛上

編集部・葛上

オンラインサロンで月に数十万が…副業でそれはすごい。

「炎上商法」「ブス」などと非難されることについてどう思ってる?

はあちゅうさんはTwitter上で、非難・批判が殺到する“炎上”の中心になってしまうことが時折あります。たとえば2017年12月にセクハラ・パワハラを告発した際に起きた、過去のツイートを対象とした童貞いじりの件。

さらには2018年7月にAV男優のしみけんさんとの事実婚を発表した際にも、事実婚という形式についてや、旦那さんの職業についても心ない非難が集まりました。
編集部・葛上

編集部・葛上

はあちゅうさんが有名になるほど、炎上しているところをよく見かけるようになった気がします。

たとえば「炎上商法だ」みたいに非難されることについては、どうお考えですか?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

頭悪いな、と思います。みんな「炎上商法だ」って意味もわからず言ってますけど、炎上で名前が知られたところで、いいことはほとんどないんですよ

それに議論を呼ぶことと、倫理的にアウトなことをして炎上するのは違うのに、そのへんを混同していることもありますよね。
編集部・葛上

編集部・葛上

たしかに。ただ、長年発信を続けていたら、炎上しそうなことって事前にある程度わかるようになりますよね?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

はい。でも私は、思ったことはつぶやくようにしてます。
編集部・葛上

編集部・葛上

炎上にメリットがないのになぜですか?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

自分を偽りたくないのと、強い言葉のほうが、人の印象や記憶に残るからです。
はあちゅう
はあちゅうさん

はあちゅうさん

アンソニー・ロビンズっていう世界ナンバーワンの自己啓発のコーチがいて、彼のコーチングセミナーに行ったことがあるんです。その人がめちゃめちゃ強い言葉を使うんですよ。

「お前たちは人生の敗北者だ」みたいな。彼はあえて「ショック療法」として、そういう言葉を使うそうです。

私自身もそういう強い言葉で目が覚めて、人生を変えてもらった経験があるので、強い言葉を好んで使う傾向がありますね。
編集部・葛上

編集部・葛上

そうだったんですね。ちなみに、初めて炎上したときのことって覚えてますか?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

ブログを始めてすぐに「顔がブスだ」って炎上しました

まだみんなが顔写真を気軽に投稿していない頃だったので「そんなに自分の顔に自信があるんですか?」みたいな。
編集部・葛上

編集部・葛上

ヒドすぎる…。 そういう言葉って、あんまり気にならないものなんですか?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

いや、超気にしてます。ずっと前に「歯を見せて笑う顔がブサイクだから、やめたほうがいいですよ」って書かれて、それから10年間は歯が見える画像は載せられませんでしたね。

写真を撮る時には、歯を出さないようにしていました。
はあちゅう
編集部・葛上

編集部・葛上

10年も…!? 想像以上に引きずっていたんですね。
はあちゅうさん

はあちゅうさん

炎上はいくら体験しても慣れませんし、落ち込みますね。そこはキングコングの西野さんイケハヤ(イケダハヤト)さんたちとは違います。あの人たちはメンタルが強いし、炎上を波乗りのようにエンタメ化しているというか。

私は毎回「もうダメだ」とメンタルが不安定になります。そういう姿を知らずに「本当に傷ついているんですか?」って言われて、また落ち込むこともあります。

「本当は無神経のくせに」って言われているようで…落ち込みのエンドレススパイラルです。

「私はライターじゃなくて作家」発言でも炎上。はあちゅうさんの見解は?

「NAVERまとめ」で“読モライター”のひとりとしてまとめられたことに対して、「私、ライターではない」「肩書きがライターになってる時は全部修正してもらってる(´ω`)」と否定。

この発言に対して、吉田豪さんや能町みね子さんなどが言及。ネットで大きな議論を呼びました。
編集部・葛上

編集部・葛上

はあちゅうさんにとって、ライター作家にはどのような違いがあるのでしょう?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

ライターさんはこうやって取材してくれたり、いろんなスポットで体験をレポートしたりとか、対象物があってライティングをするイメージ。

一方で作家はもう少し書くものの幅が広かったり、自分の考えや、身の回りの出来事から創作したりする人、というイメージを持っています。

私は取材記事は書いていないので、「そういうことはしてないよ」というつもりで「私はライターじゃないよ」って言ったら、思いのほか燃えちゃいましたね。
編集部・葛上

編集部・葛上

ということは、見栄で「私は作家です!」と主張していたわけではないんですよね。
はあちゅうさん

はあちゅうさん

はい。そもそも作家という肩書きへのリスペクトもあるので、私は絶対に「作家」単体では名乗らないようにしています。「ブロガー・作家」と書くことによってルーツを明らかにしているつもりなんですよね。

「ブロガー」を併記すると、ネットが軸だということが、わかりやすいじゃないですか。
はあちゅう
はあちゅうさん

はあちゅうさん

以前、「ライター講座」の講師として仕事依頼とかがきて、ライターという肩書きが広まってしまいそうだったんです。

そうなると仕事のミスマッチが増えるから嫌だなーという気持ちで「ライターではないよ」と言ったつもりが、私の意図とはまったく違う解釈で広まってしまいました。

だから炎上の渦中で置いてけぼりにされた感じがありましたね。

はあちゅうさんの著作から、3冊おすすめ作品を挙げてもらった

編集部・葛上

編集部・葛上

はあちゅうさんはたくさんの本を出されていますが、ご自身で3冊おすすめするとしたら、どれになりますか?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

『半径5メートルの野望』『自分を仕事にする生き方』『通りすがりのあなた』。この3冊です。
編集部・葛上

編集部・葛上

それぞれどんな推薦理由ですか? まずは『半径5メートルの野望』から伺いたいです。
はあちゅうさん

はあちゅうさん

『半径5メートルの野望』は私が憧れていた林真理子さんに帯のコメントをもらった、エッセイ調の自己啓発本です。

私がブロガーからどうやってフリーランスになったか、みたいなことが書いてあります。自分の原動力になっている考え方を書いているので、自己紹介として1冊読んでもらえるとしたら、『半径5メートルの野望』を挙げたいです。
半径5メートルの野望 完全版 (講談社文庫)

半径5メートルの野望 完全版 (講談社文庫)

編集部・葛上

編集部・葛上

では『自分を仕事にする生き方』は?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

これはフリーランスになって3年経って見えてきたものとか、才能だと思ってないことが才能になって、自分を仕事にできるんだよということを書いた本です。

私がみんなに伝えたいメッセージが凝縮されているので、ぜひ読んでほしいです。
「自分」を仕事にする生き方

「自分」を仕事にする生き方

編集部・葛上

編集部・葛上

最後に『通りすがりのあなた』はどうでしょう。
はあちゅうさん

はあちゅうさん

この作品は、私が文芸デビューした小説です。「はあちゅう」というキャラクターとしては伝えられなかったメッセージを込めました。

デビュー作は特に自分の価値観が投影されると考えているので、挙げさせてもらいました。
通りすがりのあなた

通りすがりのあなた

電通時代に受けた岸勇希氏からのセクハラ・パワハラ被害の告発が話題に

2017年には、電通史上最年少でエグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターに就任した岸勇希氏から、セクハラやパワハラの被害を受けていたことを、『BuzzFeedNews』で告白。「#metoo」という性暴力に対する反対運動も伴って、大きな話題となりました。

該当記事によると、彼の直属の部下ではなかったものの、深夜に「俺の家に今から来い」と呼び出しがかかったり、「俺に気に入られる絶好のチャンスなのに体も使えないわけ?」と性的な関係を要求されたりしたこともあったよう。
編集部・葛上

編集部・葛上

電通時代に、セクハラやパワハラの被害を受けていたそうですが、特に苦痛だったのはどんなことでしょう…?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

退職してからも嫌がらせが続いたことです。コンテストで入賞させないようにしたり、裏で電通主催のイベントへの登壇をやめさせようと動いていたことなども知りました。

会社をやめたら関係が途切れると思っていたのに、いろんなところに手を回して私の活動を邪魔してきて、その執着心を知って怖かったです。

性的関係を拒んだぐらいで、そんなに執着してくるのかと。
下を向くはあちゅう
編集部・葛上

編集部・葛上

電通へ勤めている頃の被害より、退職後のほうがツラかったんですか?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

会社にいるときにされたのは半分しょうがないというか、後輩として気に入らなかったんだろうなと少し諦めていました。

ただ、深夜に呼び出されて、ベッドで全身マッサージをさせられたこととかはすごく嫌でしたね。本当に疲れていているし、自分の抱えている仕事も終わっていないのに、なんでこの人のマッサージをしなきゃいけないの?と思っていました。
編集部・葛上

編集部・葛上

それは理不尽ですね…

ちなみに、なぜ2017年になって告発しようと思ったんでしょうか? #metooの運動が海外で盛り上がっていたからですか?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

岸さんの本が出ることがわかり、私のまわりで「岸さんはすごい」と評判になったり、また私の人生と接点ができたりしたら、ツラくなってしまうと思ったんです。

当時からずっと、岸さんに似ている人や、岸さんがよく着ていた色のシャツの男性を見かける度に、物陰に隠れてしまうくらい警戒しているのに。

そのことを友だちに相談したら、『BuzzFeed』を紹介してもらいました。
編集部・葛上

編集部・葛上

はあちゅうさんの告発のあと、いろんなコメントが集まっていましたが、特に印象に残っているものはありますか?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

「今まで女を使って仕事をしてきたのに、『セクハラ』『パワハラ』と叫ぶお前は卑怯だ」と言われたのが悔しかったです。

私が自分の持って生まれた性別を起点として、文章を書くのはとても自然なことですから、それがダメなら誰も何も書けないはずじゃないですか。

肉体関係という意味での「女」でいうなら、私は女を使って仕事をしたことはありません。
はあちゅう
はあちゅうさん

はあちゅうさん

あとは、#metooの告発をきっかけに数年前の童貞についてのつぶやきにどんどん注目が集まり、「お前もセクハラをしているじゃないか」と攻撃されたのも悔しかったです。

そもそも童貞のつぶやきは、童貞についてしゃべる仕事がきたときに、それに関連してつぶやいていたのものでした。その何年も前のつぶやきが悪意をもって切り出され、まとめられてしまった。
編集部・葛上

編集部・葛上

そうなんですね。
はあちゅうさん

はあちゅうさん

事件の被害者となった瞬間から、十年分以上の過去の発信をさかのぼって人間としての落ち度がないか確かめられ、失言がまとめられるという…

明確な対象者(被害者)が存在せず、概念についてしゃべったことを「セクハラ」と言われたことも含めて、「ここはそういう国なんだな」って思いましたね。

誰も味方じゃない感じがして、窓から飛び降りたくなりました
編集部・葛上

編集部・葛上

はあちゅうさんのことを勝手に強い人だと思い込んでましたが、案外そうでもないんですね。
はあちゅうさん

はあちゅうさん

私だけじゃないと思いますが、人は悪意に弱い生き物だと思いますよ。

「私の告発で世の中が変わる」とまでは思ってませんでしたけど、「とにかくはあちゅうを潰したい」という憎しみを感じたのが怖かった。

しかもちょうど新刊の発売と重なっちゃって、告発のことを「売名行為」とか「新刊のプロモーション」と言われてしまったのもツラかったです。

2年かけて書いた本のアマゾンレビューがめちゃくちゃに荒らされたのも、精神的にダメージが大きかったですね。

オンラインサロン「#はあちゅうサロン」の特徴や入るメリットは?

2017年から始まった幻冬舎の編集者・箕輪厚介さんによる「箕輪編集室」が、ネット界隈を中心にオンラインサロンブームを巻き起こしました。

オンラインサロンとは、主にFacebookのグループ機能を活用して、そこでしかできないコミュニケーションを楽しんだり、制作活動などがおこなわれる会員制のコミュニティ。

はあちゅうさんは2018年4月からオンラインサロン「#はあちゅうサロン」をCAMPFIREで開始。2018年11月現在で、200名以上が所属しています。
編集部・葛上

編集部・葛上

「#はあちゅうサロン」はどんなサロンなんですか?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

カンタンにいうと、“才能塾”みたいなものだと思ってます。

私の仕事の経験をお話したり、実践型でプロジェクトを進めることを通して、メンバーの才能が花開く場をつくっています。

実績として、おそらく最多のオンラインサロンオーナーを輩出し、やりたいことを見つけて転職を決める人なんかもたくさん出ています。
編集部・葛上

編集部・葛上

オンラインサロンというと、幻冬舎の箕輪さんの「箕輪編集室」やキングコング西野さんの「西野亮廣エンタメ研究所」なんかも人気ですが、それらとの違いはどんなところでしょう?
はあちゅうさん

はあちゅうさん

おふたりは自分のプロジェクトにリーダーとして人を巻き込むタイプですが、私はファシリテーターに徹しているところが一番の違いかもしれません。

自分で何かを始めることに価値があると思っているので、「私の仕事を手伝ってほしい」という依頼はしません。
編集部・葛上

編集部・葛上

それがほかのサロンよりも、オンラインサロンオーナーを輩出している理由なのでしょうか。
はあちゅうさん

はあちゅうさん

なにが作用しているか明確には説明しづらいのですが、誰かの出した成果に焦る環境だとは思います。

会社ではそれなりの地位でも、サロン内では肩書きはあまり意味がない。個人として何ができるのかが問われることで、自分の才能に出会えることがあります。

たとえば2018年9月に始めて、1ヵ月で約3万フォロワーまで増えた私のインスタアカウント「旦那観察日記」が生まれたのも、「#はあちゅうサロン」がきっかけでした。
語るはあちゅう
編集部・葛上

編集部・葛上

そうだったんですね。
はあちゅうさん

はあちゅうさん

サロンメンバーが楽しそうにiPadを使っているのを見て、なんとなく私もiPadを買ってみたんです。絵の練習のつもりで旦那とのエピソードを描いたら、それが思いのほか好評で。

こんなふうに、「#はあちゅうサロン」ではメンバーそれぞれが自分の世界を広げています。
はあちゅうさん

はあちゅうさん

「はあちゅうサロンの●●さん」ではなく「●●さんがいるはあちゅうサロン」と言われるような組織になりたい。

私自身が義務をあんまり負いたくないんですよ。常に、メンバーに仕事をふる立場だったら、自分の働き方も柔軟に変えられない。だから、メンバーが自分で仕事を生み出す環境を作っています。

ちゃんと実績も出ていて、今のところ、うちのサロンが一番「メンバーが結果を出してるサロン」かなと思ってますね。
#metooの件など含めて、Twitter上で強い発言をされる姿とはちょっとイメージの違う、等身大の“弱さ”を語る姿が印象的な取材でした。

個人で頑張るだけではなく、「#はあちゅうサロン」でチームとしての活動を始めたはあちゅうさんが、これからどんなものを生み出していくのか楽しみです。

〈取材・文=葛上洋平(@s1greg0k0t1)/ 撮影=渡辺将基(@mw19830720)〉

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「あらゆる面で普通の人なんてこの世に存在しない。」

潰瘍性大腸炎患者の佐々木俊尚が「マイノリティは周囲に打ち明けなくてもいい」と語る理由

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ヤンセンファーマ株式会社

仕事
突然ですが、「潰瘍性大腸炎」という言葉を聞いたことはありますか?

IBD(炎症性腸疾患)(※)のひとつであり、安倍前首相の持病として世間に広く知られるようになった疾患です。
※Inflammatory Bowel Disease(炎症性腸疾患)の略。腸に炎症が起こる疾患の総称。免疫の異常によって起こると考えられているクローン病と潰瘍性大腸炎の2つを総称することも多い
「持病による首相辞任」が公表されたことで、ネット上ではさまざまな声が飛び交いました

ですが、「どんな症状なのか」「働くうえでどんな困難があるのか」までを正しく知ったうえで発言をしている人は、あまりいなかったのではないでしょうか?

今回はヤンセンファーマ株式会社が展開する「IBDとはたらくプロジェクト」と新R25のコラボ企画として「潰瘍性大腸炎」当事者である佐々木俊尚さんが、どのように病と向き合い、仕事と両立していったのかについて取材。
【佐々木俊尚(ささき・としなお)】1961年、兵庫県生まれ。毎日新聞社、アスキーを経て、フリージャーナリストとして活動。著書に『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『キュレーションの時代』(ちくま新書)、『家めしこそ、最高のごちそうである。』(マガジンハウス)、『自分でつくるセーフティネット』(大和書房)など。2001年、アスキー勤務時代に「潰瘍性大腸炎」を発症した
難病に限らず、社会的マイノリティを抱える人が“自分らしくはたらく”ためのヒントを探ります。


〈聞き手=宮内麻希(新R25編集部)〉

日常生活も難しくなる…潰瘍性大腸炎とは?

宮内

宮内

まず、「潰瘍性大腸炎」とはどんな症状なのかお伺いしたいです。

なんとなく、「お腹が痛くなる」というイメージはあるのですが…
佐々木さん

佐々木さん

僕の場合、お腹の鈍痛がずっと続くんですが、それより辛いのは出血が止まらないことです。

僕が最初に異変に気がついたのも、便に血が混じっていたことから。痔だと思って病院に行ったら、潰瘍性大腸炎と診断されたんです

診断された当時(2011年)は「潰瘍性大腸炎」という疾患自体知りませんでしたし、インターネット上での情報もあまりなかったんです。
佐々木さん

佐々木さん

いざ生活してみると、お腹は常に重く、トイレに入るたびに血が滴り落ちてくる。

1日に20回以上はトイレに行かなくてはいけないので、街中でどこにトイレがあるのかを常に調べて移動するようになりました。

僕が発症したのは、出版社で会社員として働いていたころだったので、長い取材ができなかったり、出張が難しくなってしまったり…
宮内

宮内

痛みだけでなく、日常生活すらままならないとは知りませんでした。
佐々木さん

佐々木さん

しかも、潰瘍性大腸炎には“完治”がないんですよ

この病気と一生付き合っていかないといけないと知ったときは絶望でしたね。

“完治”はしないが“寛解”(かんかい)時は症状がない。グレーな領域が存在する

宮内

宮内

えっ、治らないんですか…?
佐々木さん

佐々木さん

潰瘍性大腸炎って理解されづらい病気なんですよね。

というのも、“寛解”と“再燃”を繰り返すんですよ
宮内

宮内

“寛解”と“再燃”…?
佐々木さん

佐々木さん

“寛解”時は症状が治まっている状態のことで痛みも出血もないんですが、“再燃”するとまた出血や痛みが襲ってくる。僕の場合は発症して約20年で、5、6回再燃してます。
佐々木さん

佐々木さん

ただ、診断されてすぐは、海外旅行にも行けないし、長期出張も難しいし…と悲観的に考えることも多かったんですけど、寛解と再燃を繰り返すうちにだんだん楽天的に考えられるようになったんです。
宮内

宮内

どうして潰瘍性大腸炎と前向きに向き合えるようになったんですか?
佐々木さん

佐々木さん

2つあります。1つは、そもそも「再燃する原因なんて誰もわからない」ということを知ったこと。

僕は毎日運動もしていますし、栄養バランスを考えて食事も自炊している。病気ではない人よりも健康的な生活を送っている自信がありますが、この生活を続けていても必ずしも再燃しないでいられるとは限らないんですよね。

だったら、自分でできることは全部やって、あとは気にしないでおこうと。考えても原因のわからないことは、“人事尽くして天命を待つ”ですよ。
佐々木さん、毎日ジムで5km走るのが日課だそうです…恐るべし
佐々木さん

佐々木さん

もう1つは、病人としてのレッテルを貼られることから逃げること。

たとえば僕は、職場では言わないで乗り切ることを考えましたね
宮内

宮内

そうなんですか? なんとなく、周囲の人に助けてもらうほうが前向きになれるイメージがあるのですが…
佐々木さん

佐々木さん

当時は潰瘍性大腸炎という病名そのものも広まっていなかったですし、“大腸炎”という言葉の響き自体に「下品なんじゃない?」という偏見もあった。

そして、潰瘍性大腸炎だと周囲に言った瞬間、無条件に「病気の人だ」というラベルが貼られるんですよ

たとえば、寛解時に少しお酒を飲んだだけで、「病人なのに大丈夫なんですか?」と言われてしまうようになる。

それって、“心配”ではなく、“病気という烙印を押されてる”だけだなと思うようになったんです。
宮内

宮内

どういうことですか?
佐々木さん

佐々木さん

安倍さんに対してSNS上で「病気のくせに首相というポジションにつく」という声も出ていましたよね。

もっと言えば、「病人なのになんで元気なの?」と思っている人もいたはず。

本人は病気と向き合って前向きに生きようとしても、一度烙印を押されると、周囲からは「病気の人」としての振る舞いを求められてしまうんですよ
宮内

宮内

たしかに…

潰瘍性大腸炎への理解が浅いまま打ち明けられたら、私も無意識にラベルを貼ってしまうかもしれません。
佐々木さん

佐々木さん

そう。「難病患者だけど普通の人と同じ生活ができる」というグレーな状態があることって、想像以上に周囲に理解してもらえないんです。

だから僕は、妻にだけ話していました。病気について知っている人がそばにいるのは安心できるので、本当に信頼している人にだけ伝えればいいと思っています。

周りにいる人全員に無理に言う必要もないし、そのほうが健全に過ごせるんじゃないかなと。
佐々木さん

佐々木さん

これは病気に限らず、あらゆるマイノリティに共通しますけど、社会が“言わないほうが面倒がない”という状態になっていては、いつまでたっても言えないですよね

当事者やまわりの人がどうすべきかではなく、社会全体のリテラシーが上がっていくことが一番大事。

「IBDとはたらくプロジェクト」のような活動を通して病気に関する理解を広めることは、当事者にとっても、周囲にとっても、社会的にも素晴らしいことだと思いますよ。
佐々木さん

佐々木さん

僕も、働く人の3分の1は病気と付き合いながら働いている(厚生労働省「平成25年度国民生活基礎調査」より)ということを知りませんでした。

そう考えると、健康/不健康と区別するのではなく、グレーな領域が存在しているというのが実は本質なのかもしれない。

「IBDとはたらくプロジェクト」が掲げている「ワークシックバランス」はそれをうまく表現しているいい言葉だなと思いました。

「病気」だって、誰もが抱える弱さのひとつである

宮内

宮内

病気に限らず、いろいろなマイノリティは「カミングアウトして周囲の理解を得ること」が大事なんじゃないかなと思っていたんです。

でも、今日お話を聞いてまずは周囲がカミングアウトできる雰囲気をつくることが大事だったんだと気がつきました。
佐々木さん

佐々木さん

なぜかみんな、弱者という箱に入れてカテゴライズしたがるんですよね。

でも本当は、あらゆる面で普通の人なんてこの世に存在しないじゃないですか
佐々木さん

佐々木さん

たとえば、会社ではしっかりしている人だって、家に帰ればだらしない面があったり…360度どこからみても“弱さのない完璧な人間”なんて存在しないと思うんですよ。
宮内

宮内

そうか。病気だって、誰もが抱えている弱さのひとつってことですよね。
佐々木さん

佐々木さん

そうそう。「みんな何かが足りないのは当たり前」くらいの感覚で生きたほうが楽なんじゃないかなと思うんです。

病気やマイノリティ性を持っている、持っていないに限らず、“誰もが弱い部分を抱えた人間なんだ”という前提に立って、打ち明けられたときは正しく理解する優しさを持つことが大切なんじゃないですかね。
正直、「病気は打ち明けたほうが、本人にも周囲の人にとってもいいのでは」と考えていた取材前の筆者。

でも、この考えこそが“病気の人なんだから”というレッテルを無意識に貼っている可能性があると気付いて、まずは社会が打ち明けられる雰囲気をつくらなければいけないんだと感じました。

「自分にとっての弱さとはなんだろう」…きっとみんななにかしら思い浮かぶはず。

一人ひとりが「誰もが弱い部分を抱えた人間である」と認識することから、社会を変えていけるかもしれません

12月4日(金)公開の第2弾では「ワークシックバランス」についての対談記事を公開!

佐々木さんが潰瘍性大腸炎を抱えながら、病気と仕事を両立してきたように、多くの人が病気を抱えながら「自分らしく働く」ために、周囲や社会はどのように変化すれば良いのでしょうか?

12月4日(金)公開の記事では、聞き手にサイバーエージェント常務執行役員 人事統括の曽山哲人さんを迎え、「ワークシックバランス」を実現する方法について考えていきます。

「IBDとはたらくプロジェクト」とは?

ヤンセンファーマ株式会社では、革新的な薬剤の提供のみならず、患者さんに寄り添い、より充実した生活を送るための課題に向き合う「Beyond the Pills(薬剤を超えて)」という概念を大切にしています。

その一環として、IBD領域では、職場の理解や配慮を得ながら働き続けることが困難な状況に一石を投じるべく立ち上げたのが、「IBDとはたらくプロジェクト」です。

IBDを抱えながらも「自分らしくはたらく」ことが社会の中でもっと当たり前になることをミッションに、さまざまな取り組みを展開しています。
※ここで話された内容は、佐々木さんの個人的な経験に基づいたコメントです。すべての潰瘍性大腸炎の方にあてはまるわけではありません
Sponsored by ヤンセンファーマ株式会社
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