善意の靴を途上国へ まるほ商事(福井市)
2020年6月30日 05時00分 (6月30日 09時56分更新)
◇靴の総合卸商社
靴の総合卸商社「まるほ商事」(福井市)は「まだ履けるけど、もう履かない靴」を市民から集めてタイやフィリピンなど発展途上国に送る取り組みを昨年始めた。方橋孝貴(ほうはしこうき)社長(36)は「自社だけが利益を得るのではなく、それぞれができる社会貢献をするのが当たり前な時代」と考えている。
方橋社長は大学卒業後に東京で五年半、会社勤めをした後に入社。そこで大量に残った靴の在庫を目にして「もったいない」と強く感じ、インターネット販売のサイトを立ち上げた。すると、すぐに売れ「価値がない(と思われている)商品も一方では欲しい人がいる」と気づかされた。要らない所から要る所へ。現在取り組む、靴の寄付も同じ考え方だ。
自身は昨年度に日本青年会議所(日本JC)の北陸信越地区福井ブロック協議会副会長を務めた。任期中、日本JCがSDGs推進を宣言。自社も何か取り組もうと、靴の寄付を企画した。
毎年二回開くガレージセールで昨年初めて寄付の回収ボックスを設置。四、九月の二回で紳士靴や婦人靴、子ども靴など計約千四百足、段ボール七十箱分が集まった。中には百足近く寄付する人や状態の良い高級な革靴を寄付する人もいて、方橋社長は「予想を上回る数がそろった」と振り返る。今年は六月二十六〜二十八日に開催し、約五百足の善意が寄せられた。
社員は、本業のもうけとは関係ないこの活動に反応はいまひとつだったが、取り組みを進めるにつれて皆に社会貢献への意識が育ってきたという。新型コロナウイルス禍の現在は、これまで経験のないマスクの輸入をし、利益を追求しない形で県内外の企業などに十万枚を販売した。
同社は国内外シューズメーカー約七十社と取引があり、方橋社長は「それぞれ商品開発が異なるので、背景にあるメーカーの思いを伝える取り組みもしたい」と考える。併せて「送った先のストーリーにも迫りたい。送り先で、どういう靴の役立て方があるかまで踏み込んでいけたら」と話し、最重点目標の(12)「つくる責任 つかう責任」と向き合う。 (長谷川寛之)
【SDGs】=「誰一人取り残さない」という考え方のもと、人種や性別、地域などを超えて地球上のみんながそろって幸せになることを目指す国連の目標。「貧困をなくそう」「すべての人に健康と福祉を」「人や国の不平等をなくそう」など17のテーマ別の目標がある。SDGsは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略。
【会社メモ】=1953(昭和28)年に靴の卸売業「まるほ商店」として創業。78年に現在の「まるほ商事」に社名変更した。ファッションシューズや運動靴、作業靴まで幅広い靴を取り扱う。福井市二の宮1に本社を構え、富山市八尾町黒田に営業所を置く。2020年6月現在の従業員数は31人。方橋孝貴社長は3代目。
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