今回記事中にあるリストは、この模擬テスト実施に関わるものです。模擬テスト実施後の勧誘にあたっては、行き過ぎはあってはならないと考えます。今回もし行き過ぎた行動や営業があったとしたら、その点は当然ですが今後是正していくべきものと考えております。
また、世の中では、ご参加や紹介していただいた御礼としてポイントや品物をプレゼントするような形式は営業手法として多くの企業で行われています。実際に、学習塾業界のこの冬の動きだけを見ても、紹介者・体験参加者双方に対し、ギフト券 1,000 円分プレゼントや塾内で流通するポイントをプレゼントする企画、友人と一緒に冬期講習受講することで双方ともに冬期講習授業料が 55%オフになるキャンペーンなど、業界以外の企業と同様に様々な企画が行われています。弊社でも、多くの生徒さんとともに競い合う環境を作るために模試等へのご紹介は募っておりますが、趣旨に賛同してご紹介いただいたご家庭にはささやかながら御礼をさせていただいておりますことご理解ください。
未曾有の禍の中、受験生を筆頭に生徒は学習に対して多くの不安を抱えています。そのような中、ご縁頂いているご家庭、生徒たちに精一杯対応しています。そして、今後も我々の学習指導やコンテンツに関心を頂き、提供を望む全ての生徒たちに誠心誠意、全力でお応えしていくつもりです。すべての生徒の皆様の夢の実現のために、一つでも多くの笑顔のために、弊社は今後も全力を尽くしてまいる所存です」
合格に関係ない科目を受験していても実績に?
臨海と業界団体の応酬は今後も激化していきそうだ。だが、これは本当に臨海セミナーだけの問題だったのだろうか。河合塾の元講師は次のように話す。
「各社の経営陣はヤバいと思ったんでしょう。さすがにここまで悪質ではないにしても優秀な生徒の囲い込みに関しては、どこもやっていることです。
『自分たちは正義で、臨海だけが悪い』という風に落とし込めば、マスコミから痛いところを突かれることもない。何もしなくても毎年、一定数の生徒が入塾し、人気講師の授業は抽選になるくらい大賑わいなんてことは、昔の話です。必死に囲いこんだ生徒を他塾に奪われるのは文字通り死活問題です。だから、ここまで迅速かつ、徹底的に臨海をたたきにいったというのが実情でしょうね」
神奈川県内で大学受験用の個人学習塾を経営する男性は話す。
「うちは基本的に少人数制で、ご家庭への出前授業はもちろん、志望校関係者への情報収集なども行って入試傾向を分析し、推薦入試なども踏まえた体制で受験生を支える仕組みをとっています。1年生の時からしっかり育てます。ところがある年、自治医科大に合格したうちの生徒が『自分の名前が大手予備校の合格者として貼りだされている』と教えてくれたのです。
その生徒は、後期試験用に小論文の講義だけ予備校で受けていたんです。実際、この生徒はセンター試験を含め学科試験で選考が行われる前期試験で合格しました。受験科目に小論文はありませんでした。
これとは別に、1年生から5科目と小論文を教えていた生徒がAO入試で早稲田大学に合格したこともあったのですが、同様に予備校に名前が張り出された事もありました。3年次から大手予備校の大学別数学の講義も受け始めていたのですが、合格要因は我々がサポートした2年生までの成績と課外活動が評価されたからだと考えるのが道理でしょう。予備校の授業が合格にまったく関係がないとは言いませんが、私たちの実績を横取りされたようで非常に悔しい思いをしました」
「全国学習塾協会」の合格者数算定の自主基準は「受験直前の6か月のうち、継続的に3か月以上在籍し、かつ受講時間数が30時間を超える」ことだ。一見、不当な合格者の水増しはできないように見える。しかし、上記のように受講した科目と合格との間に因果関係があるのか疑わしい例もあるようだ。
大手予備校現役講師は次のように話す。
「うちも含めて、学習塾業界はマスコミにとって重要なスポンサーの一角をなしています。広告代理店を通して、いくらでも圧力をかけられます。また毎年、地方新聞などで速報される公立高校の入試、大学センター試験の分析や模範解答特集などは、大手学習塾の協力なくしては成り立ちません。
今後も業界にとって不都合な話が出ても、今回のように内部で処理されるでしょう。学校法人と違い、学習塾は文部科学省など規制官庁の影響力の低い治外法権的な業界です。公正な競争を徹底するのであれば、第三者がなんらかのルールを制定したほうがよいのかもしれません」
果たして、臨海だけが問題なのか。国の教育改革、大学入試改革なども大詰めを迎える中、学習塾業界の在り方も今一度問われる必要があるのかもしれない。
(文=編集部)