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超ブラックな王国を追放された宮廷魔法士、神ホワイトな帝国にスカウトされる~実は最強レベルの魔法士と気付いてももう遅い。正当な評価をくれる人たちのもとで働きます~【追放魔法士の魔力無双】 作者:月島 秀一
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第六話:魔法遊戯


 翌日。

 早朝からログハウスを発った僕とシャルロット様は、お昼ごろになってようやく帝国の街へ到着した。


「やっと着いたわね。ここが帝国東部の街イースタンよ」


「うわぁ、なんだかとても栄えていますね!」


 とても盛況な露店・綺麗に舗装された道・往来の活発な通り――イースタンの街は、王国と比べ物にならないほど発展していた。

 街の開発具合もそうだけれど、何より違うのは『人』だ。


「へっへっへっ! 今日は一発、でけぇモンスターでも狩りに行くとするか!」


「ママー! このお菓子、買ってー!」


「さぁいらっしゃい、いらっしゃーい! 新鮮な肉に採れたての野菜! 活きのいい魚も入ってんよー!」


 この街の人たちの目には、希望の光が(とも)っていた。

 どこか陰鬱とした空気の漂う王国とは、まったく違うのだ。


「さて、とりあえず今日の宿を探しま――」


 シャルロット様がそんな提案を口にしたそのとき、


「「「おぉー!?」」」


 前方の広場から、大きな歓声があがった。

 そこには大勢の人たちが集まっており、中央の舞台には魔法士らしき男の人が二人いる。


「凄い人だかりですね。何か(もよお)し物でも、開かれているのでしょうか?」


「んー? あれは……『魔法遊戯』ね」


「魔法遊戯?」


「帝国各地で開催される魔法士のイベントよ。魔法士と魔法士が、魔法技能を競い合うの。今回のお題は……結界魔法のようね」


「魔法技能を競い合う……なんだか面白そうですね!」


 そんな楽しそうなイベント、王国にはなかった。


「帝国には宮廷魔法士ファラル・グリステンという『魔法の仙人』がいてね。彼の指導のもと、魔法の研究と才能の発掘が活発に行われているのよ。魔法遊戯があちこちで開かれているのは、新たな魔法の才能を発掘するため……って、あら?」


 シャルロット様はそんな説明を口にしながら、スッと目を細める。

 その視線は広場の最奥――運営キャンプの中にいる男性へ向けられていた。


「あの腕章……ふふっ、これはチャンスね」


「チャンス、ですか?」


「あそこで魔法遊戯を見物している人は、帝国魔法省の役人――すなわち、ファラル(おう)直轄の魔法士よ。ここでアルフィがとびっきり凄い魔法を披露すれば、すぐにファラル翁へ連絡が飛んで、上手くいけば皇帝陛下との謁見(えっけん)が叶うかもしれないわ!」


「そ、そんなに上手くいくでしょうか……?」


 魔法の進んだ帝国で、僕の魔法技能がどこまで通用するのか……。

 正直なところ、全くと言っていいほど自信がない。


「アルフィなら絶対に大丈夫、この私が保証するわ! だから、思いっ切りやってきてちょうだい!」


「……はい、わかりました!」


 シャルロット様の心強い後押しを受けた僕は、意気揚々と受付へ向かい――すぐに回れ右をして戻ることになった。


「アルフィ、どうしたの?」


「あの、大変申し上げにくいのですが……。僕、お金がなくって……」


「あぁ、そういえば……国外追放処分を受けて、全財産を没収されたって言っていたわね。こちらこそ、気が利かなくてごめんなさい。これだけあれば足りるかしら?」


 シャルロット様はそう言って、美しい刺繍(ししゅう)の施された財布から、一万リーン紙幣を取り出した。


「……すみません、後で必ずお返しします……」


「もう、そんなことは気にしないでちょうだい。アルフィの力を借りているのは、私の方なんだから。これぐらいは必要経費よ」


「いえ、『男なら甲斐性を身に付けろ』と師匠から言われておりますので……後できちんと返させていただきます」


 今度どこかでアルバイトでもして、借りたお金はきっちりとお返ししよう。

 僕はそんな思いを胸に、再び受付へ向かうのだった。



 受付でお金を支払い、参加登録を済ませた僕は、早速舞台へ上がることになった。

 今回の魔法遊戯のお題は結界系統の魔法で、対戦相手は端正な顔立ちの美男子だ。


「えっと……アルフィ・ロッドです。よろしくお願いします」


 僕がペコリと頭を下げて挨拶をすれば――侮蔑の視線が返ってきた。


「はっ、なんて覇気のない魔法士だろうか。『帝国の神童』と(うた)われるこの私――レオナルド・ルーデンハーグ三世の敵ではないなァ!」


 レオナルド・ルーデンハーグ三世。


 肩あたりまで伸びた金色の髪。

 身長は百八十センチ。

 年の瀬は二十歳ぐらいだろうか。

 長い睫毛(まつげ)・切れ長の大きな瞳・よく通った鼻筋――とても女性にモテそうだ。

 白を基調とした貴族服を纏った彼は、とてつもない自信を見せている。


「――さてお二人とも、準備はよろしいですかな?」


 審判を務める運営スタッフが確認し、


「はい、大丈夫です」


「いつでも構わんぞ」


 僕とレオナルドさんは、同じタイミングでコクリと頷いた。


「うむ、それでは――はじめ!」


 開始の合図。


「「――<結界>」」


 僕たちはほとんど同時に結界魔法を展開した。

 観衆の反応は二つ――『歓声』と『嘲笑』だ。


「一・二・三・四・五……じゅ、十層の結界!?」


「さ、さすがは『帝国の神童』……っ。次代の宮廷魔法士って評判に偽りはねぇようだな!」


「こんな凄い結界を見たのは、生まれて初めてだわ!」


 レオナルドさんを称える歓声。


「それに比べて……なんだあのガキは? 魔法の発動に失敗して、満足に結界すら張れてねぇじゃねぇか!」


「ぷぷっ。なんかずいぶんと田舎くせぇ格好をしているし、目立ちたかったんじゃねぇの?」


「あはは、だっさいわねぇ!」


 僕を蔑む嘲笑。


「――勝者レオナルド・ルーデンハーグ三世!」


 審判を務める男性は、レオナルドさんの勝利を宣言。


「ふふっ、やっぱり相手にもならなかったね。君のような三流魔法士は、アカデミーの初等クラスからやり直すといい」


 レオナルドさんはそう言って、嘲笑を浮かべる。


「いや、あの……勝敗を決めるのは、せめて僕の結界を見てからにしていただけませんか?」


 こちらの魔法を一顧(いっこ)だにせず、一方的に勝敗を決めるのは……いくらなんでも横暴だ。

 ちゃんと参加料金も払っているのだから、そのあたりは公平にしてもらいたい。


「いや、そう言われましてもなぁ……」


「君さぁ……いったいどうやって、失敗した魔法を見ればいいんだい?」


 審判は困ったように頬を掻き、レオナルドさんは肩を竦めた。


「僕の結界は、ちゃんと上にありますよ?」


「上……? なっ、なんと!?」


「え、ぁ……はぁ!?」


 大空を見上げた二人は、揃って()頓狂(とんきょう)な声をあげた。


 天高くに展開されているのは、超巨大な結界。


 単純な大きさだけで比較すれば、レオナルドさんが作ったものの数百倍はあるだろう。

 魔法学校の理事長から、「これ以上、望むべくはない」とまで褒められた鉄壁の防御魔法だ。


「あ、あの巨大な結界を、君が一人で展開したというのかね……!? いったい何十層、いや何千層あるんだ!?」


「四千九十六層、超高密度の魔法結界です」


 結界は『乗数展開』が基本中の基本。

 そういうわけで僕は、『二の十二乗』――合計四千九十六層の結界を作ったのだ。


 ただ……こんな街中で本気の結界を展開したら、とんでもないことになってしまう。


 そのため遥か上空にかなりミニチュアサイズのものを展開したのだ。


「しょ、勝者――アルフィ・ロッド!」


 審判はすぐに先ほどの判定を覆し、


「そん、な……っ。魔法の天才であるこの僕が……どこぞの田舎くさい子どもに負けるなんて……ッ」


 完全に自信を喪失したレオナルドさんは膝から崩れ落ち、


「「「す、すげぇええええええええ!?」」」


 観衆からは、とてつもない大歓声があがったのだった。

※とても大切なおはなし!


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