第五話:アレスティア帝国への道中
アレスティア帝国へ向かう道中。
僕とシャルロット様は、お互いのことをよく知るため、いろいろな話をしていく。
「ねぇアルフィ、さっき王国を追放されたって言っていたけれど……。もしかしてあれは冗談じゃなくて、全部本当の話だったの?」
「はい、実は――」
それから僕は自分が宮廷魔法士だったこと、第三王子ベルナード・フォン・ドラグノフ様と大貴族ダールトン公爵に
「……なるほど、それは大変だったわね」
シャルロット様はその話を疑うことなく、真剣な表情で聞いてくださった。
「第三王子は我欲の塊――自分が王になるためならば、どんな汚いことでも平気でする男なの。とても悔しくてムカつくと思うけれど……王国はもう根っこから腐り切っているから、『追放されてラッキー』ぐらいに考えましょう!」
「お気遣い、ありがとうございます」
シャルロット様はとても前向きで、活力に満ちているというかパワーに溢れているというか、とにかくエネルギッシュな方だった。
どことなく、師匠に似ているところがあるかもしれない。
「僕の方からも一つ、質問してもよろしいでしょうか?」
「えぇ、もちろん。一つと言わず、いくらでも聞いてちょうだい」
「ありがとうございます。では――どうしてシャルロット様は、あんなにつらそうな表情で、後宮のメイドたちに意地悪を言っていたのですか?」
「あぁ……あれは仕方のないことだったのよ」
シャルロット様はバツの悪そうな顔を浮かべつつ、その事情を語り始めた。
「これは百度の死に戻りで得た『経験則』のようなものなんだけれど、私が普段通りニコニコしていた場合、貴族の男たちに侮られて、すぐに殺されてしまうの。男尊女卑の激しい時代だから、安く見られてしまうのでしょうね。まぁとにかく、意地の悪い女を演じていた方が――おとぎ話の中で言うところの『悪役令嬢』みたく振る舞っていた方が、軽んじられにくくなって、ずっと長く生き延びられるの。だから、今後もアルフィと二人っ切りでいるとき以外は、あんな感じの刺々しい対応を心掛けるつもりよ。……でも、あのメイドたちには申し訳ないことをしちゃったな……」
シャルロット様はそう言って、しょんぼりと肩を落とした。
「なるほど、そんな事情があったんですね」
どうしてあんなにつらそうな顔で、メイドたちに意地悪を言っていたのか不思議だったけれど、そういう理由があったのなら納得だ。
その後、年齢・趣味・好きな食べ物など、様々な雑談に花を咲かせていく、自然に話題は『今後の予定』へ移っていった。
「シャルロット様、帝国へ着いた後は、どうなさるおつもりなんですか?」
「まずは私の兄――アレスティア帝国の第九十九代皇帝ロイゼン・ジ・アレスティアと話をする必要があるわ。ただ……彼は私のことをとても警戒しているから、正攻法でいっても門前払いを食らってしまう。だから、ちょっと『工夫』をする必要があるのよね……」
シャルロット様はそう言って、鋭く目を光らせながら頭を捻った。
彼女は『帝国の俊英』、恐るべき智謀を誇るお人だ。
きっと物凄い工夫を考えてくださることだろう。
「そういえば……夜の街道を歩いているのに、さっきから全然モンスターを見ないわね」
「あぁ、それはきっと僕がいるからでしょうね」
「アルフィがいるからって、どういうことかしら?」
「僕は昔から、野生のモンスターに懐いてもらえないんです。だから、テイムとかも全然からっきしでして……。師匠曰く、『野生のモンスターは敏感だから、お前の魔力を怖がってしまうんだろう』とのことでした」
モンスターと同様、ほとんど全ての動物に怖がられてしまうから、けっこう悲しかったりする。
「へぇ、そうなの。ところで、師匠というのは……?」
「赤ん坊の頃、僕は橋の下に捨てられていたらしく、それを拾ってくださったのが師匠なんです。彼女には、魔法の使い方・男としての心得・正しい生き方など、たくさんのことを教えていただきました」
「そ、そうなの……なんというか、その……ごめんなさい……っ」
予想より重たい回答が返ってきたからか、シャルロット様は「マズイことを聞いてしまった」という表情を浮かべた。
「あはは、気にしないでください」
こんな風にして、お互いの身の上話をしながら進むこと数時間――太陽が西の空へ沈み、日もとっぷりと暮れてきたところで、彼女がパチンと手を打ち鳴らした。
「さて、今日はこのあたりで野宿をしましょうか」
「野宿って……大丈夫なんですか?」
シャルロット様は帝国の第二皇女であり、僕のような庶民とは違う。
(僕だったら
彼女のように高貴なお人が、こんなところでゆっくり体を休められるだろうか?
「ふふっ、心配しなくても大丈夫よ。なんと言ったって私は、百度の死に戻りを乗り越えてきたんですから。確かに昔は、外で寝るなんて考えられなかったけれど……。今じゃもう、
「それは頼もしいですね」
「でしょ?」
シャルロット様はそう言って、ちょっと得意気に胸を張った。
ただまぁ……そうは言うものの、やはり皇女様を野晒しに寝かすわけにはいかない。
「ではせめて、ちょっとした寝床を用意させていただきますね。――<
創造魔法を発動すれば、木造二階建てのログハウスが一瞬にして完成する。
シャルロット様がお泊りになる場所なので、綺麗な木目調を再現したり、お洒落な調度品を創ったり、ロフトを設けてみたり、僕なりに趣向を凝らした家を建ててみた。
「なっ……!?」
「急ごしらえで申し訳ありませんが、どうぞこちらをお使いください」
「こ、これは野宿というのかしら……」
「すみません、駄目でしたか?」
もしかしたら、本格的な野宿をお望みだったのかもしれない。
「ううん。とっても素晴らしい家で、ビックリしちゃった。ありがとうね、アルフィ」
「いえ、気に入ってもらえてよかったです」
こうして僕とシャルロット様は、魔法のログハウスでゆっくりと体を休めたのだった。
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