第二話:孤独なアルフィと魔王軍四天王
時刻は夜の七時、場所はドラグノフ王国近郊を流れるレーヌ川。
河原の大きな石に腰掛けた僕は、重たいため息をこぼす。
「はぁ……。師匠……僕はこの先、いったいどうしたらいいんでしょうか……」
小さい頃、魔法のいろはを叩き込んでくれた『師匠』のことを思い出しながら、がっくりと肩を落とす。
(あの自由
どこにいるかさえわからない師匠のことを考えながら――ちょっとした現実逃避をしながら、目の前の川をぼんやりと眺める。
水面に映る僕の姿は、見るからに元気がなかった。
ほどほどの長さの真っ白い髪は、弱々しくしなびれており……紅の瞳は、
百六十五センチという十四歳の平均的な身長は、いつもより幾分か縮んで見えた。
家・土地・現金――およそ『資産』と呼べるものは、ほぼ全て
黒い肌着の上から、茶褐色の羽織一枚。下は薄手の黒いズボン。
寒空の下では、かなり
(……いったいどうして、こんなことになってしまったんだろう)
僕は小さい頃から、ずっと魔法の勉強をしてきた。
みんなを癒す回復魔法・みんなの喜ぶ修復魔法・みんなを守る結界魔法――優しい『白魔法』を身に付けようと必死に努力してきた。
魔法の勉強はとても大変だけど、凄くやりがいがある。
近所のおじいさんやおばあさんは「アルフィちゃんの回復魔法のおかげで、体がとても楽になったわ」と笑顔になってくれたし、冒険者の人たちは「坊主が修復魔法で直してくれた武器、えらく調子がいいぜ!」と嬉しそうだったし、魔法学院の理事長は「アルフィ・ロッドの結界魔法があれば、この国の民は安心して夜を眠れるな」と誇らしげに語ってくれた。
朝・昼・晩とひたすら魔法の勉強に打ち込む日々の中で、いつしか僕の夢はドラグノフ王国で一番の魔法士――宮廷魔法士になって、国のみんなを幸せにすることになっていた。
最近の世の中は、これまでにないほど物騒だ。
人間族・精霊族・魔族が各地で
ちょっと街中を歩くだけで、恐ろしいニュースが次々と耳に入ってきてしまう。
王国の暗い日々を自分が少しでも明るくできたら――そんな思いを胸に秘めながら必死に努力を続け、ようやく夢の宮廷魔法士になれたところで……無慈悲なクビ宣告。
そこへとどめを刺すようにして、国外追放処分。
僕の十年以上の努力は、『権力』という理不尽な力によって、いとも容易く押し潰されてしまった。
「もっと政治のこととか、いろいろ勉強した方がよかったのかなぁ……」
これまでの頑張りが水泡に
「はぁ……」
そうして今日何度目になるかもわからないため息をつくと――何もない空間から、突如として巨大なモンスターが姿を現した。
(うわぁ、大きいなぁ……)
見上げるほどの
雄々しい二本の
「――宮廷魔法士アルフィ・ロッドだな?」
彼はこちらに金棒を向けながら、そう問い掛けてきた。
人の言葉を話せるなんて、かなり高度な知能を持っているようだ。
「はい、そうですけれど……あなたは?」
「俺は魔王軍四天王が一人『暴虐のギルガザック』! 魔王様の命を受け、貴様を抹殺しにきた!」
「えっと、どうしてでしょうか?」
魔王に命を狙われるようなことをした覚えはない。
「ありとあらゆる攻撃を防ぐ『難攻不落の魔法結界』、アレがあるうちは王国に手を出せんからな! 『将を射んと欲すれば
「あぁ、そうだったんですね」
僕の張った結界は、ちゃんと王国のみんなを守れていたようだ。
「ぬぅ……しかし貴様、本当にあの結界の術者なのか? なんの魔力も感じぬのだが……まぁいい。俺はただ、魔王様の命に従うまでよ! ――さぁ構えろ、アルフィ・ロッド! いざ尋常に勝負だ!」
ギルガザックさんは好戦的な笑みを浮かべ、右手の金棒をブンブンと振り回した。
「……すみません。今はそんな気分じゃないので、また今度にしてくれませんか……?」
そもそもの話、僕は戦いが嫌いだ。
こんな気分の落ち込んでいるときに、わざわざ嫌なことをしたくない。
「ふははっ、貴様の気分など知ったことか――行くぞッ!」
ギルガザックさんはこちらの事情に構わず、いきなり襲い掛かってきた。
「――死ねぇい!」
凄まじい速度で振り下ろされる金棒。
僕は仕方なく、そこへ反撃の魔法を重ねる。
「はぁ……おいで<
それは不浄なる者を浄化する神の槍。
白魔法では珍しい攻撃性の魔法だ。
「んなっ!? が、はぁ……ッ」
何もない空間から飛び出した聖なる槍は、ギルガザックさんの首から下を一撃で吹き飛ばす。
「……馬鹿、な……っ」
そこそこのダメージを受けた彼は――そのままピクリとも動かなくなった。
「え、えー……」
たかだか首から下を吹き飛ばされただけで、こうもあっさり死んでしまうなんて……師匠の
(それなのに、どうしてあんなに自信満々だったんだろう?)
まぁどうでもいいか。
「……これから先、何を目標に生きていけばいいのかなぁ……」
そうして僕が不透明な将来のことを案じていると、
「ん?」
目の前の大地に、突如として青白い魔法陣が浮かび上がった。
この術式は、空間系統の魔法だ。
(騒がしい夜だなぁ。今度はいったい何が出てくるんだろう……?)
ぼんやり魔法陣を見つめていると――そこから一人の女性が現れた。
背まで伸びた
身長は百六十センチほど、年齢はおそらく十五歳前後だろう。
優しく凛々しい顔・非の打ちどころのない完璧な体型・純白と
というか、正真正銘のお姫様だった。
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