第一話:王国の宮廷魔法士アルフィ、追放されてしまう。
「魔法結界しか張れぬ無能な宮廷魔法士など、我がドラグノフ王国には必要ない。アルフィ・ロッド、お前はクビだ」
「そ、そんな……っ」
玉座の間で開かれた
王国の
「後任の宮廷魔法士には、我が
「はっ!」
魔法学院に通っていた頃のクラスメイトであり、第三王子であるベルナード様が深々と頭を下げた。
「お、お待ちください、陛下! どうして僕が――」
抗議の声をあげたその瞬間、横合いから
『第三王子派閥』の大貴族ダールトン公爵とその一派の人たちだ。
「くふふ、見苦しいですぞ、アルフィ殿? 自分の無能っぷりを棚に上げ、陛下の判断に異を唱えるなど無礼千万! ……おっと、そういえば……貴殿はいつも
ダールトン公爵に追従して、ダールトン家の
「魔法学院の首席であるアルフィ殿が、不正を働いていたとなれば……。本来首席で卒業するはずだったのは、次席であらせられるベルナード様ではないのか!?」
「な、なんと!? つまりアルフィ・ロッドは、ベルナード様から首席の座を奪い取ったということか!?」
「こやつは狂っておる! 王族を蹴落とし、宮廷魔法士の利権を
彼らはニヤニヤといやらしい笑みを張り付けながら、口々に僕のことを
「ち、違います! 自分は決して、不正など働いておりませ――」
僕が大きな声で反論を口にしたそのとき、
「――騒々しい、静かにせよ」
陛下の
「アルフィ。お前を宮廷魔法士から
「お、恐れながら陛下、自分の経歴に嘘偽りなどございません! それに僕は魔法結界しか張れないのではなく、『魔法結界だけに全神経を集中させろ』とダールトン様に厳命され――」
「――く、口を慎みなさい、アルフィ・ロッド! 平民生まれの分際で、陛下の決定に異を唱えるなど、不敬であろうが!」
ダールトン様が大声を張り上げれば、それに同調する声が彼の門弟から噴出する。
「そうだそうだ! ダールトン様の
「馬鹿が! 自分の立場というものをよく考えろ!」
「陛下、この愚か者へ厳罰をお願いします!」
僕の反論は、数の暴力に押しつぶされてしまった。
口汚い
陛下はこの騒ぎを収めるため、ゴホンと大きな咳払いをする。
「――アルフィ、つまらぬ言い訳はよせ。これ以上、私を失望させてくれるな。もう既に『裏』は取れているのだ」
「裏、ですか……?」
「そうだ。魔法学院を調査した結果、お前の受けたテストには、いくつもの不審な点が見つかった。結果を偽るにしても、
彼は長い髭を揉みながら、小さく首を横へ振った。
いったいなんのことを言っているのかわからないが、僕は誓って不正なんかしていない。
「史上最年少で魔法学院へ入学・首席で卒業を果たした天才魔法士アルフィ・ロッド。目を掛けてやろうと思っていたのだが……残念だ。――おい、この
「「はっ!」」
陛下の傍に控えていた二人の
『罪人』――その重たい響きが、頭の中を何度も巡る。
「こ、これは何かの間違いです! 陛下、僕の話を聞いてください……!」
「――
「へ、陛下……っ」
絶望に染まる僕の顔を、ダールトン様がニヤニヤと見つめていた。
すると突然、
「――お待ちください、父上!」
第三王子ベルナード様が「待った」を掛けた。
「ここにいるアルフィは、確かに不正を働き、魔法学院の歴史と宮廷魔法士の地位に泥を塗りました……。しかし、彼の本質は決して『悪』ではありません! 魔法学院時代、私はアルフィと寝食を共にし、魔法の研鑽に励みました。そんな自分だからこそ、はっきりと断言できます。彼は本来、不正などを働くような男ではない! 今回の一件は、魔が差してしまっただけなのです! ですからどうか、どうか私の大切な級友に御慈悲を
どういうわけか、彼は大袈裟な身振り手振りをもって、僕の減刑を求めた。
「ベルナード……お前はいつも優し過ぎる。そのようなことでは、このドラグノフを治めることはできんぞ? 『第三王子』とはいえ、王位から最も遠い立場とはいえ――ベルナード・フォン・ドラグノフが次代の王となる可能性は、決してゼロではないのだ。この儂のように王たる『器』と『資質』を示さねば、民は付いて来ぬ」
「……はい、父上の仰る通りかもしれません……。ですが、私の目指す王は『心優しき王』! この身に溢れる
「……青臭い理想論だが、嫌いではない。……ドラグノフ王国に必要なのは、もしかするとお前のような王なのかもしれぬな……」
「……! 未熟なこの身に、もったいなきお言葉!」
ベルナード様は芝居がかった
(……なんなんだ、これは……?)
さっきから僕は、いったい何を見せられているんだ?
『ベルナード劇場』とも呼ぶべき『茶番』に目を白黒させていると、
「おら、とっとと歩け!」
背後の近衛に背中を蹴飛ばされてしまった。
「あぐ……っ」
両手を後ろ手に縛られているため、うまくバランスを取ることができず、無様にも顔を床に打ち付けてしまう。
「――大丈夫かい、アルフィ」
床に
「ベルナード、様……?」
ベルナード様に抱き起こされたそのとき、
「――ざまぁみやがれ」
彼はこれまで見せたことのない醜悪な笑みを浮かべながら、僕の耳元でそう呟いた。
(……あぁ、そういうことだったのか……)
ここに来て、ようやく全てがわかった。
どうやら魔法学院を『次席』で卒業したベルナード様は、『首席』である僕のことが目障りで仕方がなかったらしい。
(……ベルナード様は『第三王子』だ)
だから彼は、支持基盤であるダールトン公爵の力を借りて、『今回の一件』を仕組んだのだ。
アルフィ・ロッドというお邪魔虫を蹴り落とし、栄誉ある宮廷魔法士の地位を獲得――さらには一芝居を打つことによって、陛下からの評価を高める。全ては、自分が王位を継ぐために。
要するに僕は、第三王子と大貴族に
こうしてまともな弁明の機会さえ与えられず、宮廷魔法士の任を解かれてしまった僕は、ありもしない不正の罪に問われて、王国を追放されたのだった。
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