土壌病害防除材

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恭子 池田
剛己 豊田

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2001 JP

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2011-06-01
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、土壌病害防除材に関するものであり、更に詳細には、天然物由来の土壌病害防除材に関するものであって、本防除材は、土壌施用によっても土壌、河川その他の環境を汚染することなく、土壌病害菌を防除できるだけでなく、従来廃棄されていた素材を再利用するものであって、この点からしても、農園芸の技術分野のほか、環境問題にも寄与するものである。
【0002】
【従来の技術】
土壌病害は、特に連作障害の主原因である。連作障害を抑制する土壌環境の研究は、土壌環境を健全に保つ立場から、土壌肥料分野においても重要な課題である。そして、農業生産を最も不安定にする要因のひとつとして、根部伝染性病害(病原菌)の発生があり、従来これの発生抑制の方法として、遮根シートを用いて植物根を汚染土壌から隔離させる方法や、拮抗菌による生物的防除、太陽熱を利用した土壌消毒、クロルピクリンや臭化メチル、カーバムナトリウム塩などの薬剤による土壌燻蒸などが多く行われてきた。中でも特に、臭化メチル剤等の化学農薬が多く利用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
これら従来の土壌病害の防除技術、中でも化学農薬に依存すれば、薬害耐性・薬剤抵抗のある病原菌が出現したり、作用が非選択的であるために土壌病害菌以外の有用土壌微生物へ多大な影響を与え土壌の肥沃度の低下をもひきおこす。また、過剰な農薬の使用は、生産された作物に農薬が残存する可能性も十分あるため、消費者にとっても不安であり、作物の摂食による人体への影響も計り知れない。
【0004】
中でもよく使用される臭化メチルは、強力なオゾン層破壊物質であり、全廃する方向で進められているため、その代替薬剤や代替技術が求められている。そこで、臭化メチルの全廃に向け、臭化メチルの代替品としてクロルピクリンの利用が最近増加しているが、これは容易にガス化し、催涙を伴う強い刺激臭があるため、取り扱いに注意を払う必要がある。さらに、使用後の容器も産業廃棄物として捨てる必要があり、管理が難しいため、適切な取り扱いを徹底する必要がある。
【0005】
特に臭化メチル、クロルピクリンなどの土壌消毒剤が利用されることが多い作物として、トマト、イチゴ、メロン、キュウリ、ショウガ、キクなどがあり、これらが罹病する土壌病害の防除に最適な方法を見出すことが望まれている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記した当業界の要望に応えるためになされたものであって、本発明者らは、土壌施用という面から、環境を汚染しないよう化学農薬ではなく天然物由来の防除材を開発すること、土壌中には数多くの病害菌が棲息しているところから、特定の病害菌のみでなく複数の病害菌に対して有効な防除、換言すれば、土壌病害菌に対して広範な抗菌スペクトルを有する防除材を開発すること、そして当然のことながら、土壌病害菌に対する抑制作用にすぐれる一方作物に対しては薬害を生じない防除材を開発することを目的として鋭意研究を行った。
【0007】
上記目的達成のため、本発明者らは、各種天然物について広範なスクリーニングを行ったが目的を達成するには至らなかった。そこで本発明者らは、発想の転換を行い、天然物自体ではなく、その発酵処理物に着目した。
【0008】
そこで、本発明者らは各種天然物の発酵処理物を研究している過程において、コーヒー抽出粕の戸外堆積放置物が発酵している点に着目し、このコーヒー抽出粕の発酵処理物を例年、根腐萎凋病に罹病している圃場において、トマトの根部付近の土壌中に施用したところ、根腐萎凋病が改善されることをはじめて見出した。
【0009】
本発明は、上記した有用な新知見に基づき更に研究の結果、遂に完成されたものである。
以下、本発明について詳述する。
【0010】
本発明においては、発酵堆肥化してなるコーヒー抽出粕を有効成分として使用する。本発明では、堆肥化素材としてこのコーヒー抽出粕を含有するもの、好ましくはこのコーヒー抽出粕を50容量%以上含有するものを用いる。堆肥化素材としては、コーヒー抽出粕のみが使用できることはもちろんのこと、上記のようにコーヒー抽出粕を50容量%以上含有するものであれば適宜使用することができる。後者の場合、コーヒー抽出粕に配合する素材としては、従来用いられている堆肥化素材が適宜使用され、非限定例としては次のようなものが挙げられる:畜糞、鶏糞、製材屑、落ち葉、菜種粕、バガス、おから、フスマ粕、米糠、ダシ粕、魚粕、骨粉、貝殻、炭、下水汚泥等。
【0011】
堆肥発酵補助資材としては、上記堆肥化素材をスムーズに発酵せしめて堆肥化するのをサポートする資材であればすべての資材が使用可能であるが、安定供給や品質の均一性等の面から、農産廃棄物、特に繊維性農産廃棄物が好適である。その非限定例としては、次のものが挙げられる:籾殻、フスマ、豆殻、ソバ殻、稲ワラ、麦ワラ等。これらの補助資材は、そのまま使用してもよいが、切断、細砕又は粉砕したものを使用してもよい。
【0012】
コーヒー粕の堆肥化を実施するには、上記した堆肥化素材と必要に応じて堆肥発酵補助資材との混合物を堆肥化する。その際、両者の混合比は自由に選択できるが、堆肥化素材は50容量%以上配合しても、本発明によればコーヒー抽出粕に由来する植物生育阻害がひき起されないという著効が奏される。すなわち、本発明においては、コーヒー抽出粕を堆肥原料として使用する。本発明の好適な態様のひとつとして本発明では、堆肥化素材として、コーヒー抽出粕を含有するもの、好ましくはコーヒー抽出粕を50容量%以上含有するものを用いる。また、堆肥発酵補助資材としては、どこでも安定で均一なものを得る事ができる籾殻を用いる。籾殻は、そのまま用いても良いが、好ましくは粉砕した籾殻を用いる。
【0013】
発酵コーヒー抽出粕堆肥の製造に際しては、上記のような堆肥化素材に堆肥発酵補助資材を混合したもの、又、必要に応じ更に微生物資材を加えて混合したものを発酵堆肥化する。発酵堆肥化は常法によって行えばよく、各素材に更に必要に応じて各資材を添加、混合したものを堆積する。微生物資材としては、既に製造したコーヒー抽出粕堆肥を使用するほか、種菌となる市販品、例えばVS科工社製のVS34等や堆肥発酵促進剤等を使用することができ、更に植物病原菌を抑える拮抗菌や植物の生育を促進させる菌根菌等の有用微生物を必要に応じて接種する事もできる。
【0014】
前述のように堆積されたものは、通常2〜3日で内部温度(表面から1m)が70℃前後に達する。堆積後2週間程度放置し、十分発酵菌を活性化させる段階で1回目の切返しを行う。以後、数回の切返しを行い、堆肥化素材を好気的条件下で発酵させる。
【0015】
環境にもよるが、本発明では1ヶ月〜6ヶ月間で所望のコーヒー抽出粕堆肥を製造することができる。
【0016】
かくして製造された発酵堆肥化してなるコーヒー粕は、年間を通して安定的且つ均一性に優れ、例えばフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)等のフザリウム属に属する土壌病害菌その他各種の土壌病菌の抑制に広範に使用することができ、従来用いられてきた土壌殺菌剤、土壌燻蒸剤、例えば臭化メチルやクロルピクリンの代替物としてきわめて有用である。しかもその際、使用に際する危険性や環境汚染に対する問題はなく、土壌に施用しても有効性が低下することはなく、長期間に亘って有効であって、しかもその間における植物に対する格別の毒性、薬害は発生しないという著効が奏される。
【0017】
本発明に係る土壌病害防除材は、通常の堆肥やきゅう肥と同じようにして土壌中に施用するほか、また、苗の根部に施用することができ、あるいは、育苗ポットに添加しておいてもよい。
【0018】
本発明に係る土壌病害防除材は、それ自体を施用するほか、化学肥料や堆きゅう肥その他の肥料成分、土壌殺菌剤その他各種の化学農薬、植物生育調節剤その他既知の成分と共に施用することも可能である。
【0019】
本発明に係る土壌病害防除剤が適用できる作物は、土壌病害菌による生育阻害が起こるものなら、どれでも効果が期待される。例えば、キュウリやメロンなどのウリ科植物、トマトなどのナス科植物などであり、特にフザリウム属の病害菌が繁殖しやすいものが効果的である。抑制できるフザリウム属に起因する土壌病害としては、トマト、メロン、キュウリ、イチゴ、タマネギ、ダイコン、イネ、カーネーション、チューリップ等の根腐萎凋病、つる割病、萎黄病、乾腐病、立枯病、苗立枯病、球根腐敗病その他が非限定的に例示される。
【0020】
土壌病害菌としては、フザリウム属菌のほか、リゾクトニア属菌、フィトフトラ属菌、ピシウム属菌、バーティシリウム属菌、プラスモディオフォラ属菌、コルティシウム属菌その他各属に属する土壌病害菌が挙げられ、本発明に係る土壌病害防除材はこれらの土壌病害菌を広範に抑制することができる。
【0021】
本発明に係る土壌病害防除材は、土壌病害菌、特にフザリウム属に属する土壌病害菌を非特異的に広範に防除することができ、これらの土壌病害菌としては具体的には次のものが非限定的に例示される:トマト根腐萎凋病菌(Fusarium oxysporum f.sp.lycopersici);メロンつる割病菌(F.oxysporum f.sp.melonis)、キュウリつる割病菌(F.oxysporum f.sp.cucuemerinum);ダイコン萎凋病菌(F.oxysporum f.sp.raphani);タマネギ乾腐病菌(F.oxysporum f.sp.cepae);チューリップ球根腐敗病(F.oxysporum f.sp.tulipae);カーネーション立枯病菌(F.roseum)、同萎凋病菌(F.oxysporum);イネ苗立枯病菌(F.solani、F.roseum);苗立枯病菌(F.oxysporum)。
【0022】
フザリウム属の生活環は、土壌中では厚膜胞子の状態で生存し、基質の供給により発芽する。さらに菌糸が伸長し、根面に達すると根冠表皮の細胞間隙から侵入し宿主体内で増殖する。フザリウム属の生育を抑制するには、発芽を抑えること、菌糸の伸長を抑えることなどがあり、本発明では、発芽を抑制することに注目した結果、発酵堆肥化したコーヒー抽出粕が非常に効果があることも見出している。
【0023】
施用方法は既述のとおりであるが、通常、施用する時期としては、畝立ての際に同時に鋤きこむのが最適である。効果の持続性を検討した結果、約1〜2ヶ月は持続することを確認している。また、施用する量としては、10aあたり1トンから5トン、好ましくは2トンから3トンが最適であって、年に1〜3回程度施用する。施用は、畝全体(根域)に施用するのがよい。
施用した土壌に作物苗を植えるタイミングとして、施用後1週間〜1ヶ月がよい。最初に施用すれば、追施用しなくても効果が持続する。
また、土壌病害防除材を1回施用して耕作するサイクルが、1回でも効果があらわれるが、このサイクル回数が増加すればするほど土壌病害抑制、特にフザリウム属菌に起因する病害抑制の効果が非常に発揮される。つまり、運用回数を増やすことによって土壌病害抑制土壌が形成される。
【0024】
土壌病害防除材は、単用できるだけでなく、既述のように各種成分と併用することも可能であり、これら各種成分の併用は常法にしたがって行えばよく、例えば化学肥料の場合、ダイコン栽培においては、N:P25:K2O=(60〜100):(130〜200):(70〜120)kg/ha程度施用すればよいが、他の作物においてもこれらの施用量を参考にして適宜定めればよい。なお、これらの施用量は1例であって、所望するのであればこれらの範囲から逸脱しても構わない。
【0025】
このように施用することにより、土壌中の微生物フローラを矯正することができ、土壌病害菌の生育を抑える環境ができる。特に、複数のフザリウム属の土壌病害菌に対しても同時に生育抑制することができる。
以下、本発明の実施例について述べる。
【0026】
【実施例1】
水分含量60%のコーヒー抽出粕50%容量に籾殻50%容量を均一に混合し、堆積した。2週間後、1回目の切返しを行い、適宜水分含量が60%程度になるように調節し、放置した。以下4ヶ月間放置と切返しを2週間〜3週間毎に繰り返して好気的条件下で発酵させ、発酵有機質堆肥を製造した。
【0027】
【実施例2】
実施例1において、堆肥化素材として籾殻をブレンドすることなくコーヒー抽出粕のみを使用し、これに既に製造しておいたコーヒー抽出粕堆肥を10%添加、混合するほかは、実施例1と同様の処理をくり返して、コーヒー抽出粕堆肥を製造した。
【0028】
【実施例3】
トマト根腐萎凋病菌であるF.oxysporum f.sp.lycopersici J3(F.o.l.J3)の菌胞子発芽率を調査した。同時に各土壌中で発芽したF.o.l.J3の様子を顕微鏡で観察した。
試験に使用した土壌は有機物連用畑圃場の作土土壌を供した。
【0029】
試験区分は以下の通りとした。
化肥区土壌:慣行水準の化学肥料を施用した区。(14年間実施)
慣行区土壌:慣行水準の化学肥料と牛糞厩肥を春、秋に各2t/10a(4t/10a/年)併用した区。(14年間実施)
コーヒー粕堆肥連用土壌:慣行水準の化学肥料とコーヒー粕と籾殻をブレンドした堆肥を春、秋に各2t/10a(4t/10a/年)併用した区。(2年間実施)
【0030】
なお上記において、化学肥料は、慣行水準(N:P25:K2O=80:160:90kg/ha)の施用量にて施用し、コーヒー粕と籾殻をブレンドした堆肥は、実施例1によって製造したものを使用した。各区分の土壌70〜80gを200mlビーカーに入れ、水分含量は最大容水量の40%を保持しながら、28℃で前培養を行った。1ヶ月後、2ヶ月後の前培養土壌を5g取り出し、以下の試験を行った。
【0031】
図1に示すように、病害菌(フザリウム属菌)の小型分生胞子懸濁液を、直径25mm、孔径0.2μmのNucleoporeフィルターを介して、吸引ビンにより吸引処理し、Nucleoporeフィルター上に約104個の病害菌(フザリウム属菌)の小型分生胞子を集菌した。
【0032】
前培養土壌から取り出した5gを用い、最大容水量が100%となる様に水分含量を調整した。その際、乾土1gあたりグルコースを125ppmと、アスパラギンを25ppmとなるように添加した。よく撹拌後、その少量をペトリ皿上に移し、この土壌表面に上記集菌フィルターを土壌に静置し、28℃で12時間培養した。培養後ローズベンガルでフィルター上の菌糸を染色し、顕微鏡下で観察し、発芽率を測定した。その結果を下記表1に示す。
【0033】
同記号では有意差がなく、異記号は有意差がある。
【0034】
上記から明らかなように、コーヒー粕と籾殻をブレンドした堆肥を連用することによって、化肥区の場合はもとより牛糞きゅう肥よりも効果的にトマト根腐萎凋病菌であるF.oxysporum f.sp.lycopersici J3(F.o.l.J3)の菌胞子発芽率を抑える土壌が形成された。
【0035】
更に、上記した各区の1ヶ月前培養した土壌上に集菌フィルターを添加(静置)した時の発芽状況を顕微鏡写真(400倍)を図2、図3、図4にそれぞれ図面代用写真に示す。これらの図面(図面代用写真)から明らかなように、化肥区土壌を用いた場合(図2)はもとより、化学肥料ときゅう肥を併用する慣行区土壌を用いた場合(図3)においても、フザリウムの発芽状況と比べ、コーヒー粕堆肥連用区では菌糸が細かった。また、細胞質を染色するローズベンガルによる染色が悪いことから、細胞質が少なく、さらには細胞自体の活性が低くなり菌糸形成にも影響を与えていることがわかる。以上よりコーヒー粕と籾殻をブレンドした堆肥の施用によってフザリウムの胞子発芽率と同時に、菌糸伸長(形成)にも影響を与えていると推察された。
【0036】
【実施例4:デヒドロゲナーゼ活性測定】
基質としてグルコース、電子受容体としてTTC(トリフェニルテトラゾリウムクロライド)を用い、酸化還元反応によって生じたTFF(トリフェニルフォルマザン)を測定することによってデヒドロゲナーゼ活性を測定した。
こういった土壌酵素活性を測定することによって土壌微生物に由来する生化学的代謝の方向と強さを知ることができる。
過去に、微生物酵素活性が高まることと土壌病害発病度の間に高い負の相関関係が認められたという報告(CHEN et al.(1988))もあり、土壌微生物酵素活性は土壌病害抑制にとって大変重要なファクターであることが推察されることから、デヒドロゲナーゼ活性の測定を行った。
【0037】
デヒドロゲナーゼ活性の測定方法
土壌試料1.0gを試験管に取り、0.25M Tris緩衝液(pH7.6)1.0mlを加えた。さらに1%のグルコース50μlを加えた後0.2mlの0.4%TTC溶液を添加して30℃で24時間暗所に保った。24時間後にメタノール10mlを添加して渦巻ミキサーで1分間攪拌後ろ過した。ろ液は分光分析計によりA485nmを測光した。TFF溶液で標準曲線を作り、TTC無添加土壌について同様に操作したものをコントロールとして、TFFを定量した。(土壌微生物実験法(土壌微生物研究会編、養賢堂)pp366)
【0038】
なお、試験に用いた土壌は、実施例3の土壌を使用し、前培養1ヶ月後の土壌の発芽率と酵素活性を測定した。測定結果を図5に示した。
【0039】
結果
図5のグラフからもわかるように、コーヒー粕堆肥区では化肥区と比べて胞子発芽率を抑制した。これは高い微生物酵素活性の為と推察される。厩肥を添加している慣行区と比べると微生物酵素活性の面ではやや低い値となっているが、コーヒー粕堆肥区における胞子発芽抑制効果はより大きかった。以上の結果よりコーヒー粕堆肥による病害抑制効果には微生物酵素活性を上げる効果の他にも本資材に起因する何らかの効果が影響していると推察できる。
【0040】
【実施例5】
実施例3と同様にメロンつる割病菌F.oxysporum f.sp.melonis、キュウリつる割病菌F.oxysporum f.sp.cucuemerinumを用いて発芽率を調査した。その結果、キュウリつる割病菌F.oxysporum f.sp.cucuemerinum、メロンつる割病菌F.oxysporum f.sp.melonisに対する発芽率も化肥区と比較し有意に低い値であった(表2、3参照)。メロンつる割病菌、キュウリつる割病菌に関しては有意差こそないものの、慣行区土壌よりも発芽率を低下させる傾向にあった。
【0041】
同記号では有意差がなく、異記号では有意差がある。
【0042】
同記号では有意差がなく、異記号では有意差がある。
【0043】
【発明の効果】
今までにこれほど土壌病害菌に対して効果のある有機質堆肥はなかった。本発明により、化学農薬を極力減らすことができる。
また、非選択的に行われる今までの土壌病害防除技術とは異なり、目的とする土壌病害菌以外の土壌微生物へ負の影響を及ぼすことなく、有用微生物を有効に利用しながら生育できる。
有機質堆肥であるため、取り扱いの難しさが無く、手軽に利用でき、さらに、土壌の肥沃度の低下や作物への農薬残留などの問題がない。
【0044】
また、本発明によれば、従来廃棄されていたコーヒー抽出粕を有効利用することがはじめて可能となったので、本発明は、貴重な天然物のリサイクル、環境公害の防止といった面でもきわめてすぐれている。
【0045】
したがって、本発明によれば、このような廃棄物を使用しながら、各種の土壌病害を安全且つ効率的に抑制(予防及び罹病後の治癒、病状の軽減等を包含する)できるという著効が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】病害菌の集菌及び防除性測定システムを示す。
【図2】化肥区土壌による病原菌の発芽状況を示す図面代用写真である(400倍顕微鏡写真)。
【図3】慣用区土壌による病原菌の発芽状況を示す図面代用写真である(400倍顕微鏡写真)。
【図4】コーヒー粕堆肥区土壌による病原菌の発芽状況を示す図面代用写真である(400倍顕微鏡写真)。
【図5】フザリウム胞子発芽率とデヒドロゲナーゼ活性の各処理区間での比較結果を示すグラフである。

Claims (4)
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  1. コーヒー抽出粕を発酵させた堆肥を土壌病害菌の胞子発芽抑制の有効成分として施用すること、を特徴とする土壌病害菌の胞子の発芽を抑制する方法
  2. コーヒー抽出粕を堆肥発酵補助資材の存在下において発酵させた堆肥を土壌病害菌の胞子発芽抑制の有効成分として施用すること、を特徴とする請求項1に記載の方法
  3. 化学肥料及び/又は有機質肥料を更に併用すること、を特徴とする請求項1又は2に記載の方法
  4. フザリウム(Fusarium)属に属する土壌病害菌の胞子の発芽を抑制すること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法