お手軽な在宅バイトとして人気のWebライターネット上には求人を紹介するサイトがいくつもあり、実際に副業として働いている人も多くいます。ただし、本業とするにはかなり大変なようです。専業Webライターの棚瀬邦彦さん(仮名・26歳)2017年に今の仕事を始めたそうですが、現在の平均月収は約8万円。ひとり暮らしをするほどの余裕はなく、今も実家住まいです。

PC 若者
画像はイメージです(以下同じ)

会社を辞めたのを機に専業Webライターに

「以前は普通に会社勤めをしていたんです。でも、私はもともと人付き合いが得意なほうではなく、上司との折り合いも悪くて……。それで会社をやめてしまったんです。次の仕事を早く見つけなきゃと思ったんですが、個人でWebライターなら、自宅でできますし、自分に向いてるかなって。逃げだと捉える人もいるかもしれませんが、それが僕にとってはベストの選択だと思ったんです」

 Webライターの求人は外注案件が数多く紹介されている大手クラウドソーシングサイトで簡単に見つかりました。ただし、原稿料はあまりに安く、応募するのを一瞬ためらったとか。

「報酬の低さは知っていましたが、求人を見るとやっぱり安いなって。未経験者歓迎の案件だと最初は1文字0.5円や0.6円からスタートって条件が多く、1時間に2000字書かないと時給1000円にならないってことですよねさすがにそんなペースで書くのは難しそうですし、生活できるだけのお金を稼ぐのは相当大変だと覚悟しました」

時給に換算すると最低賃金より安い

時間とお金

 もともとブログを運営していたこともあり、文章を書くこと自体はそれほど苦にならなかったそうですが、決められたテーマと内容で記事を書くのとは勝手が違ったそう。案件によっては、ネット検索の上位に来るように指定されたワードを入れて文章を構成しなければならず、「想像していた以上に大変でした」と棚瀬さん。

「それでも自分の部屋での作業でしたし、会社で仕事をすることに比べれば気楽さはありました。けど、納品すればそれで終わりというわけではなく、修正を要求されることも多く、時給に換算すると、法律で決まっている最低賃金よりずっと低いです。原稿を書くのに必要な情報も自分で調べなきゃいけませんし、1日平均すると10時間前後は仕事をしています

在宅で仕事ができるのは魅力

手取り10万台

 棚瀬さんの仕事の文字単価は少しずつ上がっていったそうですが、現在一番高い報酬のところでも1文字1.5円。一般的なライターの立場から見ても、彼の原稿料はかなり安いというのが正直な印象。副業ならまだしも、専業にしているプロのライターにふさわしい報酬の額ではありません。

「でも、今まで請け負っている仕事は外での取材とか必要ありませんし、すべての作業が自宅内で完結します。それに対して、報酬の高い仕事って取材も多そうですし、求められる原稿のクオリティってすごく高そうじゃないですか。何の経験や予備知識もなく、いきなりフリーWebライターになった自分が通用するかなって不安もあるんです。

 だったら激安報酬には目をつぶって今まで通り安い仕事を受けていたほうがいいのかなって。自分の場合、自宅に籠って仕事ができるから今の仕事を選んだだけで、ライターとして有名になりたいとかそういう意識はないので」

一生の仕事にするのは難しい

 そうは言いつつもプライドがあるのか、友人には「コンビニ売りの雑誌にも記事を書いている」とウソをついているとのこと。

「友達にライターをしてるって話したら『どこで書いてるの?』って言われたからつい……。適当な雑誌名を挙げて、署名記事じゃないからってごまかしましたけどね。誰も聞いたことのないようなサイトで記事を書いているとは恥ずかしくて言えなかったんです」

 周りに対する見栄もさることながら月8万円という収入では一生の仕事にすることも難しいです。そのあたりはどう考えているのでしょうか?

「いつかハッキリさせなきゃいけないことは僕もわかっているんです。親は仕事について何も言わないですけど、あまり稼げないのは知っているので不安には思っているはずです。僕も30歳までには今後のことを決めなきゃとは思っています。本当は今の感じのまま一生暮らしていければそれでいいかなと考えたりもしますが、やっぱり収入的に難しいので」

 学生のバイトや主婦のパート代並みの収入では、生活に苦労するのは必至です。両親に依存できるうちはいいですが、いずれもそうも言ってられなくなるでしょう。近い将来、路頭に迷うことにならなければいいのですが……。

<取材・文/トシタカマサ イラストパウロタスク(@paultaskart)>

【トシタカマサ】

ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中