LGBTPZNとは?【ペドフィリア・ズーフィリア・ネクロフィリア】
「LGBTPZN」ときいて、どれくらいの方がピンとくるでしょうか。
「LGBT」は聞いたことあるけど、「P」「Z」「N」って何を表すの……?」と思った方も多いと思います。
そこで今回のコラムではTwitterや2ちゃんねるなどインターネットでも話題となった「LGBTPZN」について解説します。
なお、この記事は性犯罪の加害者を擁護する意図で作成したものではありません。
LGBTという言葉に触れる中で、オンライン上で出会いうる「LGBTPZN」という言葉にはその誕生やそれを取り巻く議論に複雑な背景があるため、あえて解説記事を記載することにしました。
とくに、自分自身の思いに苦しみ「治療」したいと考える方も多いなか、「LGBTPZN」という言葉をあえて利用することでセクシュアルマイノリティ内での分断を狙う方もいる中で、フラットな立場から「LGBTPZN」について解説することを試みています。
※この記事には題材の性質上、不快に感じられうるような詳細描写が含まれています。
登場の経緯とポーランド
そもそもLGBTPZNとはどういった経緯で登場したのでしょうか。この起源はポーランドにあると言われています。
保守的なカトリックが多く、いまだにLGBTを批判する声も多く挙がるポーランド。しかしポーランドにもLGBTの方は存在します。そこでLGBTの子どもたちを守るために、保護者達がLGBTの権利を守るための署名活動を行いました。
するとその動きに対し、「LGBTPZNの親たちが教皇に手紙を送った」という発言がインターネット上でありました。これは後ほど述べるようなペドフィリア・ズーフィリア・ネクロフィリアへのイメージを利用し、セクシュアルマイノリティ内でのいわゆる「内輪もめ」を狙ったものだと思われます(参考:LGBTにペドフィリア、ズーフィリア、ネクロフィリアも加えるべき? 「やらせろ連帯」ではなく「やってしまわないための連帯」を)。
さらに、そういった意味での用法が日本の2ちゃんねるやTwitterなどでも広まり、現在に至ります。
ただ、性的「指向」と性的「嗜好」が本当に「完全に」区別できるのか向き合う中で、「疑問を投げかける概念」として議論されることもあります。
LGBT「P」「Z」「N」とは
PZNとはそれぞれ、
- P:ペドフィリア(小児性愛)
- Z:ズーフィリア(動物性愛)
- N:ネクロフィリア(死体性愛)
の頭文字をとった略語です。
フィリア(philia)という言葉自体に「病的な傾向」というニュアンスがあるため、ニュートラルな表現と言えるかについても議論がありますが、今回は便宜上こちらを使用します。
では、ペドフィリア・ズーフィリア・ネクロフィリアとはそれぞれどういった意味なのでしょうか。それぞれ解説していきます。
1. ペドフィリア(小児性愛)
ペドフィリアとは、児童にのみ性愛感情を抱くセクシュアリティを指します。
米国精神医学会の診断マニュアルであるDSM-5においては「小児性愛障害」として扱われていますが、こちらを「障害」と表現していいのかについては今もなお議論が白熱しています。
2. ズーフィリア(動物性愛)
ズーフィリアとは、動物に性愛感情を抱くセクシュアリティを指します。
性愛感情であれば法律によって規定されることはありませんが、獣姦行為となると、国によっては罪になることもあったり、また衛生上の観点からも問題視されています(参考:ロバを獣姦した少年たち、次々と狂犬病に)。
3. ネクロフィリア(死体性愛)
ネクロフィリアとは、死体に性愛感情を抱くセクシュアリティを指します。
ネクロフィリアを題材とした文学作品は非常に多く、『雪国』などの作品で知られる川端康成の『眠れる美女』にもネクロフィリアの考え方が登場します。
ペドフィリア・ズーフィリア・ネクロフィリア=確実に犯罪者?
性行為とは一人だけで成り立つわけではなく、自分と相手が存在します。そして、互いが自律的な存在であり、性的関係を結ぶことに関して合意していなければ、どちらか一方の性的な感情の押し付けになってしまいます。
合意を得ていない相手に性的な行為をすることは、相手の精神を深く傷つけることになり、到底許されることではありませんし、そこには性的嗜好・性的指向がどうであれ関係ありません。
そして、多くの場合「相手が自律的でありかつ合意を得ることができる」状態を実現することが、ペドフィリア・ズーフィリア・ネクロフィリアの場合難しいです。
しかし、日本では、思想の自由が認められています。性愛感情を抱くことは罪ではありませんし、「ペドフィリアは精神障害に認定されているじゃないか!」という意見に関しては、同性愛もかつて「障害」とされていたという事実を忘れてはいけません。
「性的感情」と「性行為」が結び付けられ、何もしていなかろうがペドフィリア・ズーフィリア・ネクロフィリアだから犯罪者だ、と思われ苦しむ人がいるのも事実です。
「LGBTとPZNは違う!一緒にするな!」「いや、広い意味でのマイノリティとして連帯していくべきだ!」といった対立が数多く見られますが、それこそが「LGBTPZN」を利用して内部分裂を図ろうとした人の思うツボでしょう。
まずは、どのような嗜好であっても、感情に止める限りは、簡単に他者によって否定されてはならないのではないか、と慎重に検討するべきかもしれません。
おわりに
「LGBTPZN」についてさまざまな情報が溢れる中、フラットな立場から整理してきました。この言葉から、「性にまつわる概念は、本当に”完全に”分けることができるのか」について皆さんにも考えていただければ幸いです。
LGBTに関する偏見が時代の流れとともに解消されているのは、それらに向き合った当事者でない人々がいたからこそ。
当事者でなくとも性にまつわる様々なことがらにきちんと向き合うことが、いま私たちに求められていることでしょう。
もちろんそのためには、LGBTに関する最新情報も逐一チェックしていきたいです。