
2013年夏の舞台「非常の人 何ぞ非常に」(マキノノゾミ作・演出)に出演することになった小柳さん。同作は、江戸時代の天才2人、平賀源内と杉田玄白の友情とその崩壊を描いたオリジナル時代劇だ。チャンスをくれたのは、源内役の佐々木蔵之介さんである。
「蔵之介さんが主演するドラマにゲスト出演させて頂いた際、ちょっと話があるからと神妙な面持ちで声を掛けられたんです。何かやらかした、絶対に叱られると思っていたら、この舞台のお話でした(笑)。『いいものにしたいので協力してほしい』と。期待されているのかなと感じ、何が何でも頑張ろうと思いました」
初舞台は12年の「家康と按針」。ずっと憧れていた舞台出演だったが、実際に出てみると、勝手が分からないということもあり、思っている以上に舞台上で動けていない。そんな自分にがくぜんとした。「だからこそ舞台にもう一度挑戦したかった。今回は後悔しないよう全力を尽くしたいです」

さまざまな役を演じていくうちに、いろんな考え方があることも学んだ。「役を通して、こういう価値観もあるよって教えてもらい、それがいつしか自分の中に浸透していき、僕という人間の幅を広げてくれている気がします」
現在24歳。いわゆるゆとり教育を受けた一人だ。「叱られるのが極端に苦手な世代。僕も前は叱られるのが嫌でした。でもこの仕事に就いてからは慣れた(笑)。何より人を叱るってすごくエネルギーを使うこと。それを自分のためにしてくれているのに、変わらなかったら申し訳ないと思う。今は、叱ってくださった方にはむしろ感謝します。もちろん理不尽だと思えば反発もしますが」
先日、ある先輩俳優がこんなことを言った。「最近、ゴツゴツした若いヤツが少ない。テストやリハーサルだったら何かやらかしてやろう、叱られたらごめんなさいって謝ればいいんだからって思えばいいのに、みんな監督に従順すぎて面白くない」と。
「謝って許されることに甘えてはいけないけれど、反対に失敗を怖がり過ぎては何も始まらない。そう思うので、僕はこれからも、叱られてもいいから、貪欲(どんよく)に自分なりの役作りを監督にバシバシぶつけていきたいです」
仕事は夢や活力を与えてくれるものという。もちろん嫌なこともあるが、そんな時は友達と飲んで発散し、次を頑張ればいいと思っている。おおらかで素直。真面目な話をしたかと思えば、さりげなく冗談を言い、笑いにつなげていく。不思議な魅力満載。今後の成長が楽しみな俳優だ。
現在の仕事についていなければ、どんな仕事についていたでしょうか?
動物に関わる仕事には憧れがあります。犬アレルギーなのに犬が大好きなんです。
人生に影響を与えた本は何ですか?
僕も出演させて頂いたドラマ「勇者ヨシヒコと悪霊の鍵」の完全シナリオ本。監督でもある福田雄一さんが書かれたものなのですが、セリフ一つひとつに力があり、それだけでキャラクターが浮かび上がってきました。本当に素晴らしい作品だと思い、感動しました。
あなたの「勝負●●」は何ですか?
鼻毛を抜きます(笑)。目が覚めるし、何より気合を入れて臨む場所で鼻毛が出ていると嫌ですし。
あと、オーディションの時には必ず袖の短いジャージを着ていきます。「全然袖が足りてないんですけれど」と言ってややウケするとたいてい受かる(笑)。たぶん、その場が笑いで温まると多少自分のやりやすい雰囲気ができるので、のびのびと演技できるんだと思います。

「パルコ劇場40周年記念公演
『非常の人 何ぞ非常に』~奇譚 平賀源内と杉田玄白~」
軽妙洒脱で才気煥発な平賀源内、生真面目な書生肌で堅物の杉田玄白。江戸時代の天才2人に起こった事件を通して、友情とその崩壊、さらには人間の生き様を熱く語りかける時代劇。演出家マキノノゾミによる書き下ろし、オリジナル作品だ。源内を佐々木蔵之介、玄白を岡本健一が演じる。そこへ大工見習いの若い男・佐吉として登場するのが小柳友。「最年少としてフレッシュ感を出したい。たった5人の出演者で、どこまで観客を魅了できるのか。僕自身も楽しみです」(小柳さん)
公演日程(2013年):
7月8日(月)~28日(日)パルコ劇場(東京)
7月31日(水)キャナルシティ劇場(福岡)
8月9日(金)岡山市民会館(岡山)
8月11日(日)石川県こまつ芸術劇場うらら(金沢)
8月14日(水)柏崎市文化会館アルフォーレ(新潟)
8月16日(金)~18日(日)森ノ宮ピロティホール(大阪)
作・演出:マキノノゾミ
出演:佐々木蔵之介、岡本健一、小柳友、奥田達士、篠井英介
問い合わせ先:パルコ劇場(電話03-3477-5858)
公式サイト:http://www.parco-play.com/