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♪~
ここは大阪 芝居の街 道頓堀。
(千代)うちは もう 二度と家に戻らぃんさけ。
(シズ)二度と?そうや。
(シズ)よう そないな白々しい嘘…。
あの家には…うちが おれぃん方がええんや。
ひとつきだけ置いたげます。
あんたは それまでの つなぎや。
(ハナ)このひとつきの間にしっかり仕事覚えたらご寮人さんの気ぃも変わるかも分かれへん。
千代~!
芝居茶屋の岡安で千代ちゃんの奉公が始まりました。
♪「オレンジのクレヨンで描いた太陽だけじゃ」
♪「まだ何か足りない気がした」
♪「これは夢じゃない(夢みたい)」
♪「傷つけば痛い(嘘じゃない)」
♪「どんな今日も愛したいのにな」
♪「笑顔をあきらめたくないよ」
♪「転んでも ただでは起きない」
♪「そう 強くなれる」
♪「かさぶたが消えたなら」
♪「聞いてくれるといいな」
♪「泣き笑いのエピソードを」
♪~
(みつえ)遅い!すんません。
あんた 誰?
あっ… 今日からお世話になる 千代です。
ああ 新しい女子衆か。 まだ子供やないの。
お前もやがな。
(かめ)何してんねん。さっさと いとさんとこにお弁当持っていかんかいな。いとさん?
ご寮人さんと旦さんのお嬢さんみつえさんや!
みつえちゃんは 年 なんぼ?
「ちゃん」やのうて 「さん」それか「いとさん」や。 覚えとき!
へえ。うち 9つ。
えっ ほしたら うちと おんなじやんけ。
「おんなじだすな」や。
なあ 友達になれぃん?はあ?
なっ ええやろ? うちに道頓堀のこととか学校のこととか いろいろ教えてえな。
残念やけどうちと あんたは住む世界が違う。
お友達にはなられへんの。そないなもんけ。
「へえ そないなもんでおますか」や。
ほら もう行き。 ほかにもお使い頼まれてんのとちゃうの?
ああ ほやった。 ほなな。
(みつえ)「ほな行て参じます」や。
(福助)あほばっかりやなあお前んとこの おちょぼは。
あんたんとこみたいに跡継ぎが あほよりはマシやろ。
跡継ぎ?
…って僕やんか!
♪~
ここ 芝居茶屋の福富は今登場した福助君のおうちです。
すんませ~ん。
これ 岡安のご寮人さんからです。
(菊)まあ おシズさんから…。
そら ありがたいお心遣いやなあ。
ほな うちは これで。
(菊)せっかくやけどこれは受け取られへんな。
何で? 貰てくれなうちがご寮人さんに怒られる。
本家より身代大きするやなんて道理が通りまへん。あんたらも岡安だけには負けたらあきまへんで!
(3人)へえ!
ここ福富と 千代ちゃんのいる岡安は積年のライバルという間柄です。
岡安は 福富からのれん分けしてもらいました。
つまり 福富が本家で岡安が分家っちゅうことなんやけど…。
(騒ぐ声)
お願いや。後生やさけ 貰たってください。
いらんもんは いらん。とっとと持って帰り!
(福松)まあ ええやないか。あんたは黙ってなはれ!
はい。
ちょっと待ち。 持って帰り。
<どねしよ。 また あかんかったらうち ほんまにひとつきで追い出されてまう>
(福助)みつえとこの おちょぼやないか。
何しとんのや こないなとこで。
自分こそ 誰や?僕は ここ 福富の福助や。
ちょっことお願いが。何や 何や。何や。これこれ。もう やめろ。
結局 千代ちゃんはお使いを果たすことができませんでした。
(シズ)今 何時や思てますのや。
逃げ出したんか思たわ。
すんません。明日 もっぺん行ってくるさけ。
本家への義理は忘れてまへんっちゅう形だけの挨拶や。向こうが受け取れへんのは承知の上だす。
そやったんけ。 な~んや よかった~。
(シズ)「よかった~」やおまへん!
店の前で居座り決め込むやなんて岡安の看板に泥塗るつもりか。
すんません。
あんたの「すんまへん」は 聞き飽きたわ!
へえ! すんませんでした!
ほとんどのお茶子さんは芝居茶屋に住み込みで働いておりました。
お茶子には 着るもんや食事は与えられますけど お給金がありません。
代わりに ごひいきの客から頂くご祝儀つまり チップがその収入源となっているのです。
うちは 15円だす。うわっ…。
(2人)はあ…。
(節子)やっぱり お金持ちの旦さんはなこないなんに弱いねん。
よいしょ。
えっ…。 あんた 何日お風呂入ってへんの。
うわっ!何日やろ… えっ 臭い?
臭いわ!
はよ お風呂行こ。 閉まってまう。あっ お風呂 行きはるんですか。
ほな うちも…。あんたは あとや。
それより そこのお座布ほつれてるとこ縫うといて。
これ みんな!? これ みんな!?
どいて。ねえさん。これ みんな…。
みんな みんな みんな。ねえさん! 待っとくれ… ねえさん!
(かめ)ご寮人さん うち 今日は これで。
かめ。へえ。
あんたも ちゃんとあの子に言わなあかしまへんがな。
すんまへん。あの菊さんの剣幕で断られたらすぐ戻ってくる思いましたさかい。ほんま あほやわ あの子。
ほな。
気ぃ付けてお帰り。へえ。
・(宗助)今 帰りましたで。
(シズ)何や 寝てしもたん?
(宗助)踊りのお稽古 頑張ってたよってな。(シズ)今 お布団ひくさかい。
よいしょ。
千代ちゃん 遅なってしもて お風呂屋さん間に合わへんかったみたいやなあ。
何や 臭うわ。
はあ~。
(街行く人たちの笑い声)
・(笑い声)
(一平)おい 河童。
何や 人か。あんた誰?
こね遅うに 子供が何してんねんな?
こっちのセリフや。河童や思たのに しょうむな。
誰が河童や。・一平! どこ行ったんや おい! 一平!
お父ちゃんか?
千代ちゃんは その晩 出会った少年のことが気になってなかなか眠りにつくことが…。
そらそやな。 疲れてはりますさかいね。
そして その翌朝…。
(ほら貝の音)(天晴)東西東西!皆様ご存じ 天海天海一座西国の巡業より ここ 大阪・道頓堀に戻ってまいりました~!
(拍手と ほら貝の音)
さあ みんな見に来てや~。
道頓堀で 一 二の人気を誇る喜劇の一座天海天海一座がやって来ました。
(天海)またしばらく世話になんで。(シズ)おいでやす。
ボンやん 元気にしてはりましたか。
(宗助)大きなったなあ ボン。
一平 久しぶりやんな。
一平 挨拶せえ。こんにちは。
愛想ないの お前。(シズ)どうぞ皆さん お上がりやす。
千代ちゃんのいる岡安はこの一座ごひいきの芝居茶屋いうわけなんですな。
何や ゆんべの河童か。
はあ~っ!?
お待っとおさんでございます。いつも おおきに。
おかめさん。ん?お酒5本追加。
へえへえ。今日のえびす座 満員札止めや。
そうか。
そね人気なんけあの… あま… あみ。
天海天海一座や。ええか ひと言で芝居っちゅうてもいろいろある。歌舞伎 新派 新劇ほんで 喜劇。
この喜劇においてずっと日本一といわれてんのは泣く子も笑う喜劇王須賀廼家万太郎率いる万太郎一座や。
(富士子)せやけど 今 この万太郎一座に肩を並べ 追い抜く勢いの喜劇団それこそが 天海天海一座なんや。
(かめ)千代! 何してんの! はよ!ちゃっちゃとせんかいな。
母上! 私でございます。友之進でございます。
よっ 天海!よっ!
故あっての脱藩でこないな格好しておりますが幼い頃に生き別れた息子の市松でございます。
そんな見ず知らずの人に息子やら市松やら言われ… 市松!
久しぶりに かかの乳でも飲むか。
いらんやろ それは!何でやねん! 飲まへんわ!
・(劇場からの笑い声)
父上!(拍手と歓声)
菊松!お会いしとうございました。
千代と一平切っても切れへん2人の腐れ縁がここから始まるんやわ。
…って あれ? 千代ちゃん。 千代ちゃん!どこ行くねんな。 お~い!