原子力規制委員会が関西電力大飯原発3、4号機の設置変更を許可したのは違法―。
大阪地裁が、この許可を取り消す判決を出した。はっきりと規制委の審査手法を否定した。
東京電力福島第1原発の事故を教訓に定めた「新規制基準」を軽く見た規制委と関電を、裁判長は厳しく批判している。
大飯3、4号機は2017年5月、規制委の審査を通過し、翌年再稼働した。現在は両機とも定期検査のため停止している。3号機は配管に傷が見つかり、運転再開のめどが立たない。
裁判では、耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)の算出方法が争点になった。
原告の住民側は、過去の地震データの数値には平均値から大きく外れた「ばらつき」があるのに、関電は算出過程で考慮しなかったと指摘。「地震の規模が過小評価された」と訴え、規制委の許可取り消しを求めていた。
関電は、地質調査などに基づく計算式を用いて地震規模の平均値を算出、「ばらつき」は考慮していない。規制委は、審査で専門家が促した再計算も採用せず、関電の基準地震動を認めた。
福島の事故後、規制委が定めた審査ガイドに「『ばらつき』も考慮される必要がある」と明記されている。自ら無視したのだから、裁判長が「規制委の判断過程には看過しがたい過誤、欠落がある」と断じたのも当然だろう。
他の原発についても、規制委は同じ手法で審査している。今回の判決が確定すれば、再計算や追加工事といった影響が各地に及ぶ事態も想定される。
関電は控訴する構えで、規制委は8日にも対応を協議する。審査のあり方を急ぎ改めるべきだ。
これまでも原発の運転差し止めや設置許可無効を認めた司法判断はあった。が、上級審で覆り、確定した例はない。
それでも勝訴、敗訴にかかわらず、一連の訴訟は地震、津波、火山への備えや、住民避難計画の不備を明るみに出してきた。政府の言う「世界一厳しい規制基準」とは裏腹に、原発には変わらず危うさが付きまとう。
電力大手は再稼働に向け、多額の安全対策費を投じている。その回収という目先の利益にとらわれることなく、自然エネルギーを軸に、安全で持続性のある電源計画へと発想を転じてほしい。
温暖化対策が急務とはいえ、安全面でもコスト面でも、原発はもう主力電源にはなり得ない。
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