米最高裁、ペンシルベニア州の郵便投票無効を認めず

民主党のバイデン前副大統領は11月7日に当選を確実にしていた=AP

【ワシントン=中村亮】米連邦最高裁判所は8日、大統領選をめぐり東部ペンシルベニア州の郵便投票の一部を無効にすべきだとの共和党の訴えを退ける判断を下した。民主党のバイデン前副大統領の勝利を認定した同州の決定を差し止めなかったことになる。最高裁で争い、逆転するとのトランプ大統領の思惑が外れ、再選に向けて痛手となった。

ロイター通信によると、ペンシルベニア州共和党が郵便投票の利用拡大を認めた制度が州法に違反すると主張し、最大約250万票を無効にすべきだと訴えていた。郵便投票はバイデン氏の支持者が多く利用した。ペンシルベニア州は11月下旬にバイデン氏の勝利を認定したが、共和党の訴えが認められれば一転してトランプ氏が勝利する可能性もあった。

大統領選での敗北を認めないトランプ氏は最高裁を頼みの綱としてきた。大統領1期目に共和党の価値観に近い保守派判事を3人任命し、判事9人のうち6人が保守派となった。トランプ氏は保守派判事が自身に優位な判断を下すと期待したとみられており、敗訴は痛手となる。

トランプ氏は判決に先立ち、ホワイトハウスで記者団に「みんなが思っている正しいことをする度胸が最高裁判事らにあるか見てみよう」と語った。保守派判事にペンシルベニア州共和党の主張を認めるよう秋波を送った発言だ。最高裁は今回の判決について、判事ごとの賛否を明らかにしていないが、少なくとも2人の保守派が共和党の訴えに反対した可能性が高い。

米メディアによると、米東部時間8日午後10時(日本時間9日正午)の時点で、一部を除くほとんどの州が結果を認定した。バイデン氏が勝利した州は同氏を支持する選挙人を指名。全米で、バイデン氏は306人、トランプ氏は232人の選挙人をそれぞれ獲得する見通しだ。各州の選挙人は14日に投票し、270票を得た候補が次期大統領となる。

連邦法は州裁判所での訴訟や得票の再集計を終え、8日までに結果を認定するよう各州に促していた。大統領選の結果確定が大幅に遅れないようにするためだ。期限に間に合った州については、連邦議会が原則として認定結果を「最終結論」とみなす。訴訟などで結果を覆すのは一段と難しくなる。連邦議会は各州の結果を集計し、最終的に次期大統領を選出する役割を担う。

バイデン氏は11月7日に当選を確実にしたが、トランプ氏は敗北を認めずに法廷闘争を続けてきた。一方でトランプ氏は選挙人がバイデン氏を正式に選出した場合に退任する意向を示している。12月14日の選挙人の投票が大統領選決着のヤマ場となりそうだ。

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