日本の政界における最大の贈収賄スキャンダルとされるリクルート事件の捜査が行われていた1989年4月、当時の竹下登・首相(故人)の秘書が遺体で発見された。30年以上にわたり竹下氏の「金庫番」と呼ばれていた人物だった。彼が「全て私がやったこと」という言葉を残して永遠に口を閉ざした結果、事件はうそのように収束してしまった。1976年のロッキード事件では、田中角栄・元首相(故人)の運転手が車の中に排気ガスを引き込んで自殺した。彼が「5億円の現金を運んだ」と検察に自白した直後のことだった。「上の方」を裏切ったという自責の念が原因と推定されている。
1979年のダグラス・グラマン事件では、重要参考人だった日商岩井の常務が組織と会長を守るため自殺した。2005年に西武グループの会長が株式を偽装保有していた事実が明らかになった時は、社長と株式担当社員が相次いで自殺した。自らの犠牲によって組織と「上の方」を守らねばならないという考え方、あるいは「自分が迷惑をかけた」という「贖罪意識」による日本式の選択と言われている。過去に日本ではこのような形の行動を当然視、あるいは時に高く評価する雰囲気まであったという。しかし日本でもこのような文化は少しずつ過去のものになりつつある。
ところが今度は韓国で不正や疑惑に関係した人物の自殺が次々と起こるようになった。昨年12月には青瓦台(韓国大統領府)による蔚山市長選挙工作に関係した青瓦台秘書官、今年6月には与党・共に民主党の尹美香(ユン・ミヒャン)議員と共に正義記憶連帯の会計疑惑に関与した麻浦憩いの場の所長が自ら命を絶った。2人はいずれも上の方の違法行為を解明する「連結の輪」の一部だった。この輪が断ち切られたことで、捜査は足踏み状態になってしまった。