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「桃鉄」シリーズには、日本経済30年の歴史が詰まっている。7都市の“物件”比較から見えること

左は「SUPER桃太郎電鉄」(1989年9月・PCエンジン、1992年・FC)。。現在の桃鉄のゲームシステムの基礎となり、桃鉄の人気を広げた名作だ。右はシリーズ最新作「桃太郎電鉄 〜昭和 平成 令和も定番!〜」の公式サイト。破竹の勢いで売り上げを伸ばしている。

左は「SUPER桃太郎電鉄」(1989年9月・PCエンジン、1992年・FC)。現在の桃鉄のゲームシステムの基礎となり、桃鉄の人気を広げた名作だ。右はシリーズ最新作「桃太郎電鉄 〜昭和 平成 令和も定番!〜」の公式サイト。破竹の勢いで売り上げを伸ばしている。

出典:YouTube/Nintendo公式チャンネル/©さくまあきら©Konami Digital Entertainment

ボードゲームの金字塔「桃太郎電鉄」シリーズの最新作「桃太郎電鉄 〜昭和 平成 令和も定番!〜」(ニンテンドーSwitch版)が11月19日の発売以来、破竹の勢いで売り上げを伸ばしている。公式Twitterは12月1日、累計発売本数が75万本を突破したと報告した。

1988年に第1作目が登場して以来、30年以上にわたって親しまれてきた「桃鉄」シリーズ。そのルールは極めてシンプルだ。プレイヤーは鉄道会社の“社長”として、すごろくの要領で日本全国を移動。目的地を目指しつつ、各地で物件を買い集め、国土開発で収益をあげ、資産を増やしていく。

ゲームの魅力は、エンターテインメント性にとどまらない。作中に登場する「物件」には、日本経済の歩みや時代ごとのトレンド、地方の産業について学べるヒントが詰まっている。

主要7都市の“物件”で学ぶ「現代日本の経済史」

「桃鉄」シリーズには「現代日本の経済史」という側面もある。

昭和、平成、そして令和。32年間で発売されたシリーズは通算23作にのぼる。それぞれのシリーズでは、発売当時の時事ネタやブームになった商売が物件として登場した。

本稿では1作目の「桃太郎電鉄」(1988年12月)、バブル崩壊期に発売された「桃太郎電鉄III」(1994年12月)、シリーズ20周年の記念作「桃太郎電鉄20周年」(2008年12月)、そして最新作の4作をもとに、7都市の物件から日本経済のトレンドを振り返ってみたい(※各駅の表示金額は物件の購入金額、%は収益率)。

札幌:伝統物件の「札幌ラーメン」。日ハム、ニトリも登場?

「札幌駅」物件の変遷

「札幌駅」物件の変遷(表示金額は購入金額、%表示は収益率)。

作成:Business Insider Japan

ご当地グルメが盛りだくさんの札幌。1作目から一貫して「ラーメン屋」が登場する。人気のグルメ「ジンギスカン(鍋)屋」も根強い。過去シリーズでは「とうきび屋台」のほか「スープカレー屋」、製菓メーカーのロイズを連想させる「生チョコ屋(工場)」などもあった。

サッポロビール発祥の地であることから、「ビール工場」も長年にわたって札幌の高額物件として存在した。なお現在、サッポロビール北海道工場は札幌市に隣接する恵庭市にある

2004年にプロ野球の日本ハムファイターズが東京から札幌に本拠地を移転したことを受け、2005年発売の「桃太郎電鉄G」などから「プロ野球チーム」がラインナップされた。

最新作では人気のベーカリー・どんぐりが元ネタと推測される「ちくわパン屋」のほか、きのとやを想起させる「農学校クッキー屋」も。「家具小売業」は札幌市に本社があるニトリがモデルと思われる。高額ながら収益率35%の高収益物件だ。

札幌の南には物件駅のススキノがあり、札幌の夜パフェ文化を反映した「しめパフェ屋」が登場する。

仙台:名物「ずんだ餅屋」「牛たん屋」。注目は高額の「石油工場」

「仙台駅」物件の変遷

「仙台駅」物件の変遷

作成:Business Insider Japan

杜の都・仙台では地元の食品産業「ずんだ餅屋」などが登場。「牛たん屋」のモデルは1975年創業の“味の牛たん喜助”がモデル。仙台の牛たん焼きを全国に広めたパイオニア的存在で東京駅周辺など都内にも支店がある。

定番の「笹かまぼこ屋」は仙台駅ではなく女川駅の物件として登場する。地元蒲鉾店の髙政がモデルだ

2004年創設の東北楽天ゴールデンイーグルスが本拠地を置くことから、近年は「プロ野球チーム」もある。桃鉄20周年が発売された2008年は2020年に亡くなった野村克也監督の時代だった。

前作「桃鉄2017」にあった「ペット商品会社(470億円)」は、最新作で「LED会社」と置き換わった。仙台市に本社を置き、家電に注力するアイリスオーヤマを想起させる。過去作では伝統産業の仙台箪笥にちなんだ「たんす工場」もあった。

注目したいのは、高額物件として歴代シリーズに登場する「石油工場」ENEOS仙台製油所がモデルと思われる。仙台製油所は1971年7月に操業。現在、東北唯一の製油所として稼働している。2011年の東日本大震災で全面冠水し、一時は操業停止に追い込まれたが、翌年から生産を再開した。

東京:「ディスコ」は消えたが「ビル」はある。収益率300%の優良物件「ひれかつ卵サンド屋」って?

「東京駅」物件の変遷

「東京駅」物件の変遷

作成:Business Insider Japan

ゲームのスタート地点である東京。日本の鉄道の中心地であり、実際の東京駅にも発着路線の「0キロポスト」がある。

1994年の桃鉄IIIにはジュリアナ東京などがモデルと思われる「ディスコ」が登場するなど、時代がかっている。

ジュリアナ東京は1991年5月〜94年8月にかけて港区芝浦に存在したディスコ。羽で飾り付けられた扇子“ジュリ扇”を手に、華やかな服装の人々が店内の“お立ち台”で踊っていた。

“バブルの象徴”のように語られることもあるが、実際にオープンしたのはバブル景気がはじけた後だった。

1作目で登場した「バス」は最新作まで「深夜高速バス会社」として受け継がれ、東京駅八重洲口から発着する長距離バスを想起させる。「デパート」も、近年は八重洲口側の大丸をイメージさせる「超丸デパート」として登場する。

初期シリーズにあった「貸しビル」「まるまるビル」へと受け継がれた。これは2002年に建て替えられた丸ビル(丸の内ビルディング)を連想させる。

東京駅八重洲口。高速バスのターミナルや大丸東京店がある。

東京駅八重洲口。高速バスのターミナルや大丸東京店がある。

Getty Images/7maru

2007年には東京駅構内に商業施設グランスタ東京がオープン。翌年発売の桃鉄20周年では「エキナカ施設」が登場。各地の駅における商業施設の開発ラッシュを思わせる物件だ。

最新作で目を引くのが収益率300%の「ひれかつ卵サンド屋」。とんかつの老舗まい泉が販売するポケットサンドを彷彿とさせる。

シリーズ初期では東京ドームを思わせる「ビッグドーム」「プロ野球チーム」さらに「テレビ局」などが登場したが、近年のシリーズでは新しく設置された「後楽園駅」「お台場駅」などへ移管された。

最新作では山手線の新駅・高輪ゲートウェイも「高輪G」駅として登場。同じく新登場の千駄ヶ谷には将棋ブームを反映してか、将棋会館を連想させる「将棋館」がある。

名古屋:伝統の「みそ○○屋」が存在感。街の歴史伝える「陶磁器工場」やブラザー工業も登場?

「名古屋駅」物件の変遷

「名古屋駅」物件の変遷。

作成:Business Insider Japan

名古屋といえば八丁味噌を用いた料理が名物。ゲームでも名古屋駅に「みそかつ屋」がたびたび登場した。最新作では「みそかつ屋」「きしめん屋」はないが「みそ煮うどん屋」が登場。山本屋本店がモデルだ。過去には「天むす屋」などもあった。

最新作には「えびせんべい屋」「ひつまぶし屋」がラインナップ。前者はお土産で人気の坂角総本舖桂新堂などを彷彿とさせる。後者は熱田神宮近くに店を構える“あつた蓬莱軒”がモデル。

あつた蓬莱軒のひつまぶし。

あつた蓬莱軒のひつまぶし。

撮影:吉川慧

「洋食器工場」「高級陶磁器工場」は名古屋市に本拠地を置くノリタケ(ノリタケカンパニーリミテド)などを、「セラミクス工場」は日本特殊陶業日本ガイシなどを想起させる。

出典:ノリタケ公式サイト

名古屋市は、かつて輸出向け陶磁器の絵付加工業の中心地だった歴史があり、現在も陶器メーカーやセラミクスメーカーが軒を連ねている。ちなみにノリタケは名古屋市の地名「則武」に由来する。

高額物件の「ガスコンロ工場」は、ガスコンロや給湯・暖房・厨房機器を製造するメーカーであるパロマリンナイなどを連想させる。ともに本社は名古屋市にある。

「兄弟ミシン工場」は名古屋市に本社があるブラザー工業がモデルと思われる。歴史あるミシンメーカーだが、近年はプリンターや産業機器などにも注力する。

出典:ブラザー工業公式サイト

前身の安井ミシン商会は1908年創業。この年、アメリカではゼネラル・モーターズが創業し、フォード・モーターは“T型フォード”を発売。中国では清朝最後の皇帝溥儀が即位した。

かつて名古屋の高額物件の定番だった「自動車工場」は、豊田駅に移管されたようだ。最新作での価格は7000億円。なお、トヨタ自動車の時価総額はおよそ23兆円だ。

桃鉄20周年の表にある「ツインだぎゃあビル」は、名古屋駅にあるJRセントラルタワーズ(1999年竣工)がモデルと思われる。オフィス棟は245.1m、ホテル棟は226 m。両棟とも地上50階超の超高層ビルだ。

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大阪:歴代ではグルメいっぱい。近年シリーズで登場「消防車工場」にも注目

「大阪駅」物件の変遷

「大阪駅」物件の変遷。

作成:Business Insider Japan

大阪名物の代名詞で1作目にあった「タコ焼き屋」は最新作にも登場。過去には「お好み焼き屋」「串カツ屋」「けつねうどん屋」「イカ焼き屋」などがあった。

最新作で目立つ「帰ってきた宮田麺児」は吉本興業のお笑いコンビ・シャンプーハットのてつじ(宮田哲児)さんがプロデュースする実在のつけ麺店だ。

くじら肉と水菜を使った大阪名物の鍋「はりはり鍋屋」は、大阪・江戸堀にある鯨料理の老舗むらさきがモデル

注目したいのは、こちらも最新作の欄にある「消防車工場」。大阪で創業し、消防車の製造で国内トップシェアを誇るモリタグループを想起させる。国内のはしご車シェアは約9割。日本一の高さ(54m)を誇るはしご装備を展開する。

同社は1907年に大阪で創業した火防協會をルーツに持つ老舗企業。現在、モリタ本社は兵庫にあるが、持株会社のモリタホールディングス本社は大阪(および東京)にある。

2018年には阪神淡路大震災や東日本大震災の教訓を活かし、少ない水や海水でも威力を発揮する消火剤を開発。最近ではIoTでゴミ収集車の故障を予測する実験をはじめた

シリーズによって「プロ野球チーム」の収益率が異なるのも面白い。どこの球団がモデルか想像するのも一興だ。

広島:「紅葉まんじゅう屋」「自動車工場」は健在。「お好み焼き屋」は“広島風”に……

「広島駅」物件の変遷

「広島駅」物件の変遷

作成:Business Insider Japan

中国地方の最大都市・広島。1作目に登場した「クルマ工場」は、最新作まで「自動車工場」として受け継がれた。

広島の自動車といえば、世界初の2ローター・ロータリーエンジンを搭載した量産車である名車コスモスポーツ(1967年発売)を世に送り出したマツダを彷彿とさせる。

マツダは2020年で創業100年を迎えた。世界シェアは「2%」とされるが、独特の存在感を放っている。

マツダのコスモスポーツ。ロータリーエンジンは、小型ながら静音でパワフル。「夢のエンジン」とも呼ばれた。

マツダのコスモスポーツ。ロータリーエンジンは、小型ながら静音でパワフル。「夢のエンジン」とも呼ばれた。

Koki Nagahama/Getty Images for Mazda Motor Corporation

ご当地グルメも数多くある広島。これまでに「紅葉まんじゅう屋(もみじ万頭屋)」「カキ料理屋」などが名を連ねた。

1作目で登場した「おこのみやきや(お好み焼き屋)」は近年シリーズでは「広島風お好み焼き屋」に名称が変わった。最新作でも同様の表記となっている。

粉もん料理には欠かせない“ソース”だが、桃鉄20周年や最新作などに「ソース工場」が登場。お好みソースで知られ、当地に本社を置く老舗企業オタフクソースを想起させる。

名物としては「広島レモンケーキ屋」にも触れておきたい。広島県は国内最大のレモン生産地。瀬戸内の温暖の気候が栽培に適しているようだ。2016年には国産レモンのシェアのうち62%を占めた。

広島レモン(瀬戸内広島レモン)、瀬戸田レモン、大長レモンなどの名で知られるブランドレモンがあり、これらを生かしたレモンケーキがお土産として人気だ。

広島のレモン栽培の歴史は古く、によると1898年に豊田郡大長村(現:呉市豊町大長)が和歌山県からネーブルの苗木を購入した際、混入していたレモンの苗木3本を試植したのが始まりだという。

博多:高額物件「プロ野球チーム」から読み解く日本経済の変遷

「博多駅」物件の変遷

「博多駅」物件の変遷。

作成:Business Insider Japan

“日本経済の大動脈”たる東海道・山陽新幹線の終点である博多駅。九州最大の都市を支えるターミナル駅だ。

1作目の「ラーメンや」「ラーメン屋台」「博多ラーメン屋」と名前を変えながらも、脈々と博多駅の物件として受け継がれている。ほかに「めんたいこ(明太子)屋」「フグ料理屋」なども登場した。「イカ料理屋」は“元祖いかの活造り”を謳う河太郎が連想される。

近年シリーズから登場した「博多通りまん屋」は、舌触りがなめらかな白あんの饅頭博多通りもんを製造する明月堂を想起させる。1993年のお目見え以来、博多土産の定番に成長した。

博多の物件で注目したいのが、高額物件として初期シリーズから登場する「プロ野球チーム」だ。

福岡のプロ野球チームといえばソフトバンクホークスを連想するが、過去に運営母体の変更でチーム名が変わっている。その経緯にもまた、日本経済の歩みを知るヒントが詰まっている。

福岡ソフトバンクホークスの本拠地「福岡PayPayドーム」

福岡ソフトバンクホークスの本拠地「福岡PayPayドーム」

Getty Images

1988年発売の桃鉄1作目の物件をみると「きゅう場(球場)」はない。というのも、当時の福岡にはプロ野球チームが存在しなかったからだ。

1988年当時、プロ野球の“ホークス”といえば南海電鉄が保有していた南海ホークスのことだった。名門球団として知られたが、球団は赤字経営。加えて、本拠地の大阪球場は1994年の関西国際空港のオープンに合わせ、開発地として取り壊しが決まっていた。

1988年11月、南海電鉄はついに球団を手放した。買収したのは小売大手のダイエーだ。債務の肩代わりなどを含めた買収額は「約28億円」(朝日新聞、1988年11月26日朝刊)と伝えられる。

本拠地は南海時代の大阪でもなく、ダイエーのお膝元・神戸でもなく、球団誘致に熱心だった福岡だった。ダイエーは当時、九州・福岡を足がかりにアジアへの販路拡大を目指していたとも言われる。こうして誕生したのが福岡ダイエーホークスだった。

1998年、福岡ダイエーホークス時代の王貞治監督(現:ソフトバンクホークス球団会長)。王監督は世界記録となるレギュラーシーズン通算本塁打868本の記録を保持していた“世界のホームラン王”だった。

1998年、福岡ダイエーホークス時代の王貞治監督(現:ソフトバンクホークス球団会長)。王監督は世界記録となるレギュラーシーズン通算本塁打868本の記録を保持する“世界のホームラン王”だ。

REUTERS

ホークス買収後の1995年、ダイエーは中国・天津でスーパーマーケットをオープン。2年後には大連にも進出した。ホークスは名将・王貞治監督の下、1999年にパ・リーグ初優勝を果たした。

ところが、ダイエーもバブル崩壊で業績が悪化。2005年、ダイエーは球団株式をYahoo!Japan設立者の孫正義氏が率いるソフトバンクに売却。「福岡ソフトバンクホークス」となり、今に至る。

ホークス売却から10年後の2015年、ダイエーはイオンの完全子会社となった。

鉄道会社、小売大手、そしてIT・通信大手へ。ホークスのオーナーの移り変わりは、有力企業の顔ぶれの変遷の歴史でもある。

「桃鉄」で日本の魅力を再発見、過去作も面白いぞ。

最新作の早期購入特典は「SUPER桃太郎電鉄」(1989年9月・PCエンジン、1992年・FC)。現在の桃鉄のゲームシステムの基礎となり、桃鉄の人気を広げた名作だ。

最新作の早期購入特典は「SUPER桃太郎電鉄」(1989年9月・PCエンジン、1992年・FC)。現在の桃鉄のゲームシステムの基礎となり、桃鉄の人気を広げた名作だ。

出典:YouTube/Nintendo公式チャンネル/©さくまあきら©Konami Digital Entertainment

往年のファンには「桃鉄」を楽しみながら、地名や名産品を覚えた人もいるだろう。貧乏神ですら勝手に売ることができない“国のいしずえ”である農業物件がふんだんに盛り込まれていることも、桃鉄シリーズの特徴だ。

各地に実在の企業を彷彿とさせる物件なども登場する。遊びながら「元ネタはなんだろう?」と考えるのも一興だ。

最新作をきっかけに、過去のシリーズ作品を手に取ってみるのも良い。

例えば、プレイヤーの所持金を奪う「スリの銀次」が時の首相や当時活躍した有名人、流行ったものに扮していたりする。「あぁ、こんなことあったな」と時の移ろいを感じることもできる。

「桃鉄2017」もイチオシだ。サブタイトルに「たちあがれ日本!!」の言葉が付されている通り、東日本大震災や熊本地震の被災地支援がテーマになった作品だ。

「一番心残りだったのは、東北大震災、熊本大震災が起きた際に、『桃鉄』としてなにもできなかったことです。どうしても“たちあがれ日本”という復興支援を、桃鉄でやりたかったんです」
(「桃鉄2017」発売に際して、さくまあきらさんのコメント)

シンプルゆえに奥深い「桃鉄」。誕生背景には西武G総帥の堤義明氏の存在

山手線の新駅「高輪ゲートウェイ」も「高輪G」駅として登場。同じく新登場の「千駄ヶ谷」には将棋ブームを反映してか将棋会館を連想させる「将棋館」がある。

山手線の新駅「高輪ゲートウェイ」も「高輪G」駅として登場。同じく新登場の「千駄ヶ谷」には将棋ブームを反映してか将棋会館を連想させる「将棋館」がある。

出典:YouTube/Nintendo公式チャンネル/©さくまあきら©Konami Digital Entertainment

「桃鉄」のゲームシステムは極めてシンプルだ。だからこそ、その真髄は奥深い。収益率の高い物件を見定めたりし、投資の基礎に触れたという人もいることだろう。

「桃鉄」が生まれた背景には西武鉄道グループのオーナーだった堤義明氏の存在があると、総監督のさくまあきら氏はインタビューで語っている。

「あの頃、西武や阪急のような会社が鉄道を使って、不動産開発をしていたんですよ。宝塚なんかは、実はその典型ですよね。他にも、湯沢温泉や軽井沢のように、鉄道を敷くことで人の流れを作り、栄えていった街がありました。要は、電車により町おこしの流れがあったんです。だから、当時は本当に『鉄道王』という言い方が存在していたんですよ」

「堤さんの場合は、もう買うだけ買って人に任せちゃうでしょう。あれも凄いなあと思っていたんです。あの面白さをゲームで再現したかったんです」
『ゲームの企画書(1)どんな子供でも遊べなければならない 』第2章 国民的ゲーム『桃太郎電鉄』より )

1作目がファミリコンピューターのソフトとして発売されてから32年。「桃鉄」はシリーズを重ねるごとにPCエンジン、スーパーファミコン、PS、PS2、DS、Switchと歴代のゲームハードで発売されてきた。桃鉄シリーズをプレイすることは、日本のゲームハードの歴史に触れることにもつながる。

最新作ではゲームプレイのスタイルにも変化が生まれた。ガイドラインを守れば収益化OKでゲーム実況の配信や動画投稿もできるようになった。オンラインで数多くの配信者が仲間同士で3年決戦を競ったり、ストイックに1人でCPU相手に99年耐久勝負に臨む強者がいたり、楽しみ方もさまざまだ。

ミレニアル世代、Z世代の中には、最新作をきっかけに初めて「桃鉄」をプレイするユーザーもいるようだ。

昭和・平成からのファンはもちろん、令和で初めて“社長”になる人も楽しめる——。世代を問わない面白さこそ「桃鉄」が国民的ゲームとなった由縁かもしれない。

(文・吉川慧

<参考資料>

  • 「桃太郎電鉄」(1988/12/2、ハドソン)
  • BESTゲーム攻略SERIES「スーパー桃太郎電鉄3究極本」(1994/12/1、KKベストセラーズ)
  • デンゲキニンテンドーDS編集部「桃太郎電鉄20周年 ザ・コンプリートガイド」(2008/12/22)
  • 「桃太郎電鉄 〜昭和 平成 令和も定番! 〜!」(2020/11/19、コナミデジタルエンタテインメント)
  • 電ファミニコゲーマー編集部「ゲームの企画書(1)どんな子供でも遊べなければならない」(2019/3/9、角川新書)
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