奨学金問題対策会議共同代表の肩書きを併せ持つ大内裕和中京大教授が自著『奨学金が日本を滅ぼす』(朝日新書、現在出庫停止中)や『Journalism』など多数の雑誌記事、大阪弁護士会主催の講演のなかで、私(三宅)の著作物や記事から盗用・剽窃を行った問題は、問題発覚から4ヵ月以上がすぎた現在も解決のメドが立っていない。こちらの問いかけに対して、大内氏からの説得力ある回答がないためだ。
『奨学金が日本を滅ぼす』の問題について大内氏はいったん、代理人弁護士を通じて、すでに雑誌などで発表した内容・表現で、盗用・剽窃ではない――という趣旨の回答を行った。回答のなかで大内氏は、すでに発表したという記事のタイトルや雑誌名を多数挙げた。
ところが、大内氏が紹介した記事を図書館などで探して確認すると、あきれたことに、それらにも私が以前雑誌『選択』に無署名で書いた記事ときわめて似た部分がみつかった。盗用ではないという根拠の記事に、また別の盗用があったのだ。
さらに、『奨学金が日本を滅ぼす』をはじめとする大内氏の「奨学金』関連の著作には、公費助成である科研費が使われていることもわかった。
大内氏の盗用は単なるミスではない、悪質な事案だと判断した私は、著作権に詳しい弁護士を代理人に委任し、10月23日付で大内氏の代理人に宛てて通知文を送った。著作権侵害および民法の不法行為にあたるから、しかるべき賠償責任があること、またさらなる説明責任があること、などを通知する内容である。
以来1ヵ月半がすぎた。まだ返事はない。この間『Jounalism』編集部(朝日新聞出版)から「大内の記事は三宅の記事に依拠していない、との回答が11月12日に大内氏代理人からあった」(趣旨)との連絡があった。根拠として資料を添えてきたとのことだったのでその開示を求めたが、大内氏代理人は開示しないよう指示したとのことだった。
被害を訴えている当事者の私のほうには何も答えず、『Journalism』には回答する。これは奇妙な態度だと思った。というのも、私の代理人が回答を催促したのは11月27日で、その際の大内氏代理人の説明は、こうだったからだ。
「三宅が大学に対して行っている手続き(研究倫理違反の告発)をふまえ、関連する出版社との協議を行ってから回答する」
もしかしたら、「俺は悪くない」とまわりを説き伏せてから答える作戦なのだろうか。
不誠実の一言につきる。
私のサラリーマン新聞記者時代の経験を振り返れば、仮に大内氏と似た行為を紙面上でやれば懲戒処分はまちがいない。会社を辞めざるを得なくなるかもしれない。運良く残れたとしても記者職をはずされる可能性は高い。
大内氏を雇用している中京大がどのように対応するのかはわからないが、少なくとも研究者なのだから自身の発表したものには責任がある。堂々と反論すればよい。それをせず、長期間沈黙するというのは本来なら研究者としての信頼を失う場面だろう。
ところが、そうはなっていなさそうだ。彼を取り巻く有名人らもまた、大内氏の「盗用」問題を批判しないからだ。損得勘定からなのか、単に知らないからなのか。事情はわからない。
安倍政権を支えたのは、安倍晋三氏が公職につく資格のない人物だと知りながら、接待、ポスト、仕事ーーなどのうまみと引き換えに不正や犯罪に目を閉じ、神輿を担いだ人々だった。安倍氏の言動や領収書を調べていてあらためてそう思う。同質の臭気を、私はいま、大内教授の周辺にかいでいる。