大勢の観光客が訪れた嵐山の渡月橋周辺(11月21日、京都市右京区)

大勢の観光客が訪れた嵐山の渡月橋周辺(11月21日、京都市右京区)

 全国的に新型コロナウイルスの感染拡大が加速している中、「なぜ京都の感染者数は少ないのか」との声が、京都新聞社の双方型報道「読者に応える」に複数寄せられている。大勢の観光客が全国から訪れているにも関わらず、近隣の大阪府や兵庫県と比べても現時点で京都府は急激な感染増加に至っていない。対策に当たる自治体や医療関係者らに考えられる理由を聞いてみた。

■「繁華街の規模小さい」

 2日までの1週間合計で大阪府は2560人、兵庫県は845人の感染が確認されている。京都府は162人だった。人口千人当たりに換算すると大阪0・290人、兵庫0・155人、京都0・063人となり、現状では京都の感染は一定のところで抑えられているとも言える。

 京都府の幹部は理由の一つに繁華街の違いを挙げる。「感染リスクの高い接待を伴う飲食店などが多い大阪市のミナミ、キタや東京の歌舞伎町、札幌市のススキノに比べると、京都の繁華街は店舗の集中や規模が小さい」という。

 全国では繁華街などの会食で感染した後、同居する家族に広がっているケースが多いとされる。しかし、事業者側の感染対策も広がる中、京都ではここ最近、繁華街を起点にした大規模な感染拡大は確認されていない。宿泊施設などでも同様だ。

 紅葉シーズンで京都の観光地は休日になるとにぎわっており、感染予防に欠かせない3密(密閉、密集、密接)の回避は難しく思える。ただ、観光客と地元住民が直接接触する機会はそれほど多くないと考えられる。また、人出が多いとリスクが高いことは周知されており、府内の医療関係者は「混み合う観光地は府民が避けているのではないか」と推測する。

■「マスク・手洗い続けて」

 感染者をキャッチするPCR検査の件数は十分なのか。京都府は11月25日~12月1日の1週間平均で1日当たり641人件。同時期の大阪府は4257件、兵庫県が1460件だった。人口の違いを加味して比較すると、京都府の検査数は感染拡大が著しい大阪府に比べて2分の1の割合だが、兵庫県とは同程度で必ずしも少なくはない。

 対策に当たっている人からは、保健所や医療従事者の奮闘を要因とする声もある。京都府内では10月22日~11月25日に4施設でクラスターが発生しているが、府の新型コロナ専門家会議長を務める松井道宣・府医師会長は「保健所の積極的疫学調査で感染者の囲い込みができており、2次感染、3次感染が抑えられている」と強調する。