新型コロナ 「黒岩流マスク会食」からなぜ一転?横浜・川崎の飲食店などに時短要請した内幕は…

2020年12月4日 11時01分
 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、神奈川県は3日、横浜、川崎両市の飲食店などに7〜17日の時短営業を要請することを決めた。黒岩祐治知事はこれまで時短要請について否定的な姿勢を示してきたが「何とか感染拡大に歯止めをかけたい」と話した。また、全県民に対し「17日まで外出を控えめに」と呼び掛けた。特に高齢者や基礎疾患のある人には強く求めた。(志村彰太)

時短営業要請について説明する黒岩祐治・神奈川県知事=県庁で

 県によると、両市に限定したのは、飲食店数と人口当たりの感染者数が多いため。当初、飲食店の多い区だけ対象にする考えだったが「限定は困難」(横浜市幹部)と反対されて断念。時短営業に応じた飲食店などに支払う一店舗一日当たり二万円の協力金の予算は三十億円。八割を国交付金、残りを県負担で賄う。
 また、県は新型コロナウイルス患者を受け入れる病院に、緊急でない手術を延期するなどして集中治療室(ICU)をできるだけ空けるよう要請した。すぐに使える重症者用の「即応病床」九十二床(二日時点)のうち六十一床が埋まっており、余裕がないため。
 このほか、コロナ対応に当たる職員の一部に負担が偏っているとして、知事は応援職員の長期派遣などの負担の平準化を指示した。

◆遅れた決断 マスク会食…対策小出し 「自身を追い込む」

 時短営業要請の決断が東京都や埼玉県、千葉県より遅れた背景には「客側の対策が重要」とする黒岩祐治知事の姿勢や、要請対象自治体との調整の難航などがあった。
 知事はかねて「飲食店は感染防止対策をかなりやっている」とし、客がこまめにマスクを着け外しして会食すれば良いとしてきた。菅義偉首相に「黒岩流マスク会食をお願いしたい」と呼び掛けてもらうなど政府の「お墨付き」まで得ていた。ある与党系県議は決断の遅れは「知事自身が自分を追い込んだ」と話す。
 関係者によると、知事は感染再拡大が鮮明となった十一月、感染状況を「ステージ3」(感染急増)に引き上げて経済活動の抑制につなげようと考えた。しかし、政府は引き上げに難色を示し、武井政二副知事ら県庁内からも経済活動との両立を求められ「対策が小出し」(県幹部)という状態が続いた。
 対象自治体からは対象を絞ることに難色を示された。ある政令市幹部は取材に「特定エリアの飲食店で感染が広がっている証拠はない。やるなら県内全域でないと不公平」と主張したと明かした。しかし、感染が収まる傾向はなく、時短営業要請に踏み切った。知事は三日午前、自ら両市長に電話し、理解を得たという。 (志村彰太)

◆「短期集中で抑えて」「効果があるか疑問」

開店準備をしながら取材に応じる福田さん。営業時は換気とマスク着用を徹底しているという=川崎市川崎区で

 書き入れ時の忘年会シーズンに営業時間の短縮を要請された横浜、川崎市の飲食店からは、客足が減ることを懸念する声や効果を疑問視する声が上がった。
 JR川崎駅周辺で居酒屋四店舗を営む菊池厚志さん(30)は、営業時間の短縮要請の知らせに「マジ?」と絶句した。「一番売り上げがあり、お客さんにとっても一番楽しい時間帯。それなら店で飲むのをやめよう、と思われてしまうんじゃないか」と心配した。
 横浜駅近くの居酒屋「勢(せい)」の多賀谷彰社長(51)は「午後十時以降に飲み歩かない空気の中で、時短に効果があるか疑問」としつつ、「仕方がない」として要請に応じる考え。
 一方、県の判断を歓迎する意見も。川崎市川崎区の飲食店「手羽先BonBon」の福田貴友代表(42)は「短期集中で感染が抑えられ、また外食しようという空気に変われば」と話した。 (安藤恭子、石川修巳、石原真樹)

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