Go To 見直し、対策小出し コロナ感染の歯止め見通せず 菅政権、抜本策に踏み込まず
2020年12月3日 12時40分
政府は、新型コロナウイルス感染症で疲弊した経済対策として打ち出した需要喚起策「Go To キャンペーン」の規模を徐々に縮小させている。11月以降の感染急拡大を受け、継続一辺倒から軌道修正したが、経済への影響を懸念し、事業の抜本見直しには消極的。対策は小出しになり、専門家からは感染拡大が止まらなければ、結果的に経済の落ち込みにつながるとの指摘も出ている。(上野実輝彦)
◆否定的な考え重ねて表明
「運用の判断は国が行うが、そこに至る過程では地域の実情をご存じな都道府県知事の判断を踏まえる」。加藤勝信官房長官は2日の記者会見で、全国一律での「Go To」事業停止に否定的な考えを重ねて示した。
観光を支援する「トラベル」は7月から、飲食店利用を促す「イート」は10月から開始。感染拡大の傾向が鮮明になり、事業見直しを求める声が上がり始めた後も、菅義偉首相は「そのような状況にはない」と強気の姿勢を崩さなかった。
政府が重い腰を上げたのは、国内の1日あたりの新規感染者が1000人を超え始めた11月半ば以降。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が20日の提言で「トラベル」の見直しへ「英断を心からお願い申し上げる」と訴えると、地元知事の意向に沿い、札幌、大阪両市を目的地とする旅行を適用対象から除外する措置に踏み切った。「イート」でも首相が食事券の発行停止を要請し、10都道府県が新規販売の停止を決めた。
◆経済への危機感、自民は「トラベル」延長提言
だが、分科会が「トラベル」で札幌、大阪両市からの出発分も除外するよう提言したのに対し、政府は自粛要請にとどめた。
東京発着の旅行の扱いを巡っては、1日の首相と小池百合子東京都知事の会談で、65歳以上の高齢者らに利用自粛を呼び掛けることで合意。小池氏は、さらに踏み込んだ停止案も示したとしているが、西村康稔経済再生担当相は2日の記者会見で「いろんな議論はあったが、自粛になった」と強調した。
政府の姿勢からは、事業に急ブレーキを踏むと経済活動が再び大打撃を受けてしまうという危機感がにじむ。首相周辺は「すべて停止することは検討していない。感染で死者が増えることへの対策と、経済低迷で困窮する人への対策のバランスをとらなくてはならない」と説明。自民党も後押しし、来年1月までの事業の期限を5月まで延長するよう提言し、下村博文政調会長は「経済対策として有効な手段だ」と力説する。
◆東京の自粛、効果は「やってみないとわからない」と政府高官
ただ、小出しの対策で感染拡大に歯止めがかかるのかは見通せない。立憲民主党の枝野幸男代表は「方針がコロコロ変わることで、国民や事業者に必要以上の負担と混乱を与えている」と指摘。事業を続ける場合は、国の責任で検査を徹底すべきだと主張する。
東京の自粛方針の効果は、政府内にも「やってみないと分からない」(高官)との見方がある。分科会の尾身茂会長は2日の衆院厚生労働委員会で今回の決定を評価しつつ、こう警鐘を鳴らした。「人の動きが感染拡大の要因になるのは、対策上の常識。増加のスピードを短期間に減少させないと、医療の逼迫が国民の不安を高め、さらなる経済への悪影響が予想される」
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