「既に限界…今が対策のラストチャンス」 新型コロナでひっ迫する医療現場、重症者は最多の462人
2020年11月30日 08時20分
今月に入り、新型コロナウイルスの感染が急拡大し、重症者が過去最多を更新し続けている。厚生労働省によると、29日の全国の重症者は前日から22人増え、462人となった。医療現場は予想を超える速度で逼迫しており、医師からは「既に限界。人の動きを止めないと、救える命が救えなくなる」と痛切な叫びが聞こえる。(原田遼)
◆重症者ベッド空きなし
「救急や他の病気の手術も制限するなど、なけなしの努力をして新型コロナに対応しているが、重症者の受け入れを断るケースも出ている」。東京医科歯科大病院(東京都文京区)の内田信一病院長は徒労感をにじませる。
病院によると、人工呼吸器や人工心肺装置「ECMO(エクモ)」を備えた重症患者用治療室では機器のアラーム音が絶え間なく響き、防護服姿の看護師が24時間体制で、投薬や人工呼吸器の調整のためにせわしなく動く。血流をよくするため、患者の姿勢を変えるのには7、8人の手が必要だ。
8床の重症者用ベッドは緊急用の1床を除いて、11月初めから空きがない。夏場の患者の平均年齢は60歳前後だったが、現在は70歳前後になった。
◆「外出制限など対策を」
内田病院長は「専用の治療薬がないため、高齢になるほど回復が遅く、中等症の病床に戻るまでに時間がかかる。以前よりも、ベッドが空きにくい」と語る。
都は重症者用病床を現在の150床から倍増させる方針だが、内田病院長は「重症者用ベッドを1つ増やすのに5~6人を増員しないといけない。かなり厳しい」と指摘する。ベッドが増えなければ、助かる命も助からなくなる。「今は、外出制限など対策をしないと、感染は止まらない」
◆医師に「強いストレス」
埼玉医科大総合医療センター(埼玉県川越市)で新型コロナの診療を担当する岡秀昭教授は「一部の医師は専門外の不慣れな治療をしており、心身に強いストレスがかかっている」と明かす。中等症向けに23床を備えるが、日常診療にも人を割かなければならず、現在受け入れている14床で「限界」という。それでも人手が足りず、がんの専門医や外科医の手を借りてしのいでいる。
実情を伝えるため、自身のフェイスブックでも、「届け出病床の何%が埋まっているかなどと、書類の数字を眺めているだけでは真の切迫感は分からない」「このまま無策では2~3週間後までに医療崩壊を迎える」と発信する。
軽症者が多かった夏場に比べて、現在は中等症でも比較的症状の重い患者の受け入れ要請が目立っている。「高齢者にも感染が拡大しており、重症者数や死者数がさらに増えかねない」
「Go To トラベル」の見直しなどに慎重な政府の姿勢に焦りを感じる。「医療が崩壊すれば、結果的に経済も共倒れになりかねない。感染を抑えた後に経済を回すためにも、今が対策を打つラストチャンスではないか」
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