ジャパンライフ 急がれる悪質商法の根絶
磁気ネックレスなどの販売預託商法を展開し、多額の負債を抱えて破綻した「ジャパンライフ」(東京)の創業者で元会長の山口隆祥容疑者らが詐欺容疑で警視庁などに逮捕され、捜査が進んでいる。
ほぼ全国の高齢者ら延べ約1万人から計約2100億円を違法に集めたとみられる。預託商法の被害額では2011年に破綻した安愚楽牧場の約4300億円に次ぐ規模だ。岡山県内でも17人が違法な勧誘や契約により損害を被ったとして、山口容疑者らを相手に損害賠償請求訴訟を岡山地裁に起こしている。
貴重な老後資金を失った被害者も少なくないとされる。同様の被害の根絶へ向け、経緯や手口など事件の全容解明と、規制の強化が急がれる。
同社は03年から訪問販売などで、磁石を埋め込んだ数百万円のベルトやベストの購入を言葉巧みに勧誘。購入した顧客が商品を会社に預け、第三者に貸し出す「レンタルオーナー」になれば、年約6%の配当を得られるという預託商法を展開していた。
だが、実際には磁気商品はほとんど存在していなかった。当初から、新規契約した代金をそれまでの顧客への配当に回す「自転車操業」を続けていたようだ。
契約の獲得に一役買っていたのが政官界やマスコミとのパイプだった。消費者庁の元職員らを会社に迎え入れていたのをはじめ、山口容疑者は15年の「桜を見る会」に安倍晋三前首相から招待されたと吹聴し、招待状を印刷したちらしを作って勧誘セミナーで利用していた。
この件に関し政府側は、招待者名簿を既に破棄しており、山口容疑者の招待が首相枠だったかどうかは不明との説明を繰り返している。加藤勝信官房長官も「名簿は保存されておらず、招待者、推薦元は個人情報で回答を控えている」とし、招待した経緯などの再調査には否定的な考えを示している。
だが、ジャパンライフ問題は巨額の詐欺事件に発展しており、政治家らとの距離の近さが会社の信用を高め、被害の拡大につながった可能性も高い。どのような経緯で招待されたのかなどについて政府は改めて調べた上で、説明を尽くすべきだ。
今回の事件では、預託商法を規制するため作られた預託法が十分に機能しなかったことも露呈した。消費者庁は16~17年、一部業務停止命令を繰り返し出したが、大半の顧客には破綻するまで危険性が伝わらなかった。配当金が遅滞なく支払われ、表面的には被害がない状態が続いていたからだ。破綻前に重い行政処分を下せば「行政や警察のせいで事業が停止し破綻した」と主張され、訴訟や混乱を招くリスクもあったとされる。
消費者庁は預託商法を原則禁止とする法改正を来年にも行い、規制を強化する方針だ。重い罰則など実効性ある制度としなければならない。
ほぼ全国の高齢者ら延べ約1万人から計約2100億円を違法に集めたとみられる。預託商法の被害額では2011年に破綻した安愚楽牧場の約4300億円に次ぐ規模だ。岡山県内でも17人が違法な勧誘や契約により損害を被ったとして、山口容疑者らを相手に損害賠償請求訴訟を岡山地裁に起こしている。
貴重な老後資金を失った被害者も少なくないとされる。同様の被害の根絶へ向け、経緯や手口など事件の全容解明と、規制の強化が急がれる。
同社は03年から訪問販売などで、磁石を埋め込んだ数百万円のベルトやベストの購入を言葉巧みに勧誘。購入した顧客が商品を会社に預け、第三者に貸し出す「レンタルオーナー」になれば、年約6%の配当を得られるという預託商法を展開していた。
だが、実際には磁気商品はほとんど存在していなかった。当初から、新規契約した代金をそれまでの顧客への配当に回す「自転車操業」を続けていたようだ。
契約の獲得に一役買っていたのが政官界やマスコミとのパイプだった。消費者庁の元職員らを会社に迎え入れていたのをはじめ、山口容疑者は15年の「桜を見る会」に安倍晋三前首相から招待されたと吹聴し、招待状を印刷したちらしを作って勧誘セミナーで利用していた。
この件に関し政府側は、招待者名簿を既に破棄しており、山口容疑者の招待が首相枠だったかどうかは不明との説明を繰り返している。加藤勝信官房長官も「名簿は保存されておらず、招待者、推薦元は個人情報で回答を控えている」とし、招待した経緯などの再調査には否定的な考えを示している。
だが、ジャパンライフ問題は巨額の詐欺事件に発展しており、政治家らとの距離の近さが会社の信用を高め、被害の拡大につながった可能性も高い。どのような経緯で招待されたのかなどについて政府は改めて調べた上で、説明を尽くすべきだ。
今回の事件では、預託商法を規制するため作られた預託法が十分に機能しなかったことも露呈した。消費者庁は16~17年、一部業務停止命令を繰り返し出したが、大半の顧客には破綻するまで危険性が伝わらなかった。配当金が遅滞なく支払われ、表面的には被害がない状態が続いていたからだ。破綻前に重い行政処分を下せば「行政や警察のせいで事業が停止し破綻した」と主張され、訴訟や混乱を招くリスクもあったとされる。
消費者庁は預託商法を原則禁止とする法改正を来年にも行い、規制を強化する方針だ。重い罰則など実効性ある制度としなければならない。
(2020年09月25日 08時00分 更新)