「ちょっと、ちょっと紫! いるんでしょ!?」
里の人間は……否、普通の人間は決して足を踏み入れることのないこの場所、マヨヒガの戸を容赦なく叩いているのは誰あろう博麗の巫女こと博麗霊夢だ。
そろそろ戸が嫌な音を立てて軋み始めた時、ようやくマヨヒガの主が姿を表した。
「ん~……うるさいな~。そんなにガンガン叩かなくても聞こえてるってば……」
目をこすりながらすっかり着崩れた寝間着姿で現れたのは、スキマ妖怪こと八雲紫。
「妖怪の賢者」としての威厳はすっかり寝床に置いてきたのか、ぼさぼさ頭を直そうともせずに眠たそうに目をこすっている。
「ちょっとアンタ、知ってるんでしょ?」
「ふわぁ~あ。何を~……ってふがふがふが、ハナ摘まないでよぅ」
「地震よ地震。最近人里の方で地震がやたら起きてるのよ」
「ふがふが、あ~……なんか藍がそんなこと言ってたような言ってないような」
「幸い被害が出るような規模と強さじゃないんだけど、もうここんとこ毎日起こってて苦情が大量に来てるのよ」
「そーなのかー……じゃあちゃっちゃと異変解決してくればいいんじゃないの~? 私寝る~」
「それで済むんだったらわたしがこんなトコまで来るわけないでしょ! これはアンタの仕事なのよ!」
「はぁ? どういうことよそれ?」
なおも寝ぼけ眼の紫に、霊夢は盛大なため息を一つ。
「あのねえ……アンタもう忘れちゃったの? 地震って言ったらあの不良天人しかいないでしょうが!」
「不良天人? ……あー、あのコね」
博麗神社を倒壊させた大地震と異常気象。
それをもたらしたのは、「非想非非想天の娘」こと、天界ののわがままお嬢様、比那名居天子だった。
「退屈しのぎ」というある意味最悪の動機で大事件を引き起こしたこの困ったちゃんには、紫自らキツイお灸を据えることとなった。
それ以来、顕界に彼女が姿を現したという話は聞いていないのだが……。
それが今になって、またなにかやり始めたというのだろうか。
「で? あのコが犯人だってわかってるんなら、さっさと行ってとっちめてあげればいいじゃない?」
「だから言ったでしょ! これはアンタの仕事なの! はいはいさっさと着替えて!」
「えーめんどくさーい……」
「……だんだんと私のカンニンブクロが温まってきたぞ、ユカリ=サン」
「アイエエエエエエ!?」
霊夢の双眸に宿るセンコ花火めいた光を見てとった紫は重篤なハクレイリアリティショックを受けものの数秒で支度を終了、人里に向かって出発した。(※失禁はしていない、いいね?)
とはいえ、件の困ったちゃんがいったいどこにいるのかわからない。
今から霊夢に聞きに戻るのはどう考えても不可能だ。しかしこのまま何もせず帰りでもしたら……。
想像するだに恐ろしい結果に身震いしつつ人里の上空をあてどもなくさまよっていると、目的の人物が自分から現れた。
「あーっはっはっは! ようやくお出ましね八雲紫!」
空中に浮いた要石の上でふんぞり返っているのは、天界が誇る最強の問題児こと比那名居天子だ。
あのときあれだけお灸をすえてやったというのに全く懲りていない態度に、盛大なため息を吐き出しつつ里の様子を見回す。
霊夢の言っていたとおり、今のところは地震による被害は出ていないようだ……というよりも、里の様子はいつもと全く変わりがない。
道を行き交う人々も、まったくいつもどおりの生活を営んでいるようにしか見えない。
「ふふふ、知っての通りわたしには大地を操る程度の能力があるわ! 今はまだ無事で済んでるけど、本気になればこんな村の一つやふたつ……」
「ねえヨネおばーちゃん、最近このへんで地震って起こってるの?」
「無視した!?」
「なんじゃ、騒々しいと思ったら紫ちゃんかい。地震? 雷なら爺さんに毎日落としとるがの! かっかっか!」
「もーおばーちゃんたら相変わらず元気ねー」
「無視すんな!」
「あ、そう言えばお孫さんは元気?」
「おう、もう十三じゃ。里の店で手伝いをやっとるわい。小さい頃は体が弱かったがな、元気に育ってくれたもんじゃ……」
「人間ってすーぐ大きくなるからねー。結婚なんかもうすぐよ?」
「かっかっか! 良い嫁が見つかるといいんじゃがの! どうじゃ紫ちゃん、うちの孫」
「あらぁ♪ それは光栄だけど、私は高いわよぉ? ……っていうか今の時期がいちばん美味しく頂けるんだけどねグッヘッヘ。それはともかく、どうなの? 地震」
「あーそれなんじゃがな。確かに小さい地震がこの所やたら多いんじゃが、なんだか里の外れでばっかり起こっとるようじゃ。じゃから里には被害は出とらんし、皆ももう気にしとらんわい」
「ふーん……? なんかよくわかんない話ねえ。ちょっとあなた、どういうことなのこれ?」
「……っく、ぐしゅ……無視、しないでよぉ……」
「……? なに泣いてるの?」
「ふぎっ!? ななな泣いてなんかないわよ!! こっ、これはその……あの、か、花粉症よ花粉症! 毎日涙と鼻水がどぷどぷ出てるのよ!!」
「死ぬわよそれ」
「うっさい! そ、それよりあんた、早くわたしを止めないとここら一帯大地震で壊滅状態にしてやるんだからね!」
「壊滅状態ねえ……」
また家から無断で持ちだしたのか、手にした緋想の剣をぶんぶん振り回しながら喚き散らす天子。
それを紫はじとーっと見つめる。
正直、何をしたいのかわからない。
以前の地震騒ぎの動機は「退屈しのぎ」というある意味最悪の動機で騒動を起こしたこの娘だが、今回はいったい何をしたいのだろうか?
本当に里を壊滅状態にするつもりなら、こんな里の外れで、しかも里の人間が気にも留めない規模の地震を起こすことには意味はない。
妖怪の賢者と呼ばれる八雲紫の頭脳を持ってしても、天子の行動にはなんら合理的な動機が見いだせない。
見いだせないが、それはそれとしてやっておくべきことはある。
「……ま、うるさいのがいるから、やることはやっとかないとね」
そして、しばらくして。
「ううう~っ、けほ、けほん」
村外れに場所を移しての紫との弾幕ごっこに見事敗れた天子は、けほけほ煙を吐きながらぺたんと座り込んでいる。
「はい終わり。これに懲りたらわざわざ人里まで降りてきておかしな騒ぎ起こすとかやめるのよ?」
「うー……」
一方、手近な岩に腰掛けて天子を見下ろす紫はまったくの無傷だ。
これにも紫は胸中で首を傾げる。
以前戦った時の天子は、緋想の剣の能力があったとはいえ、負ける勝負ではなかったにせよここまでたやすく勝てる相手ではなかったはずだ。
しかし今回の天子は別人のようだった。
動きは鈍い、狙いは適当、隙だらけ。
弾幕ごっこの最中、天子はまるで他の何かに見とれてでもいるかのようにやられ放題だったのだ。
「ねえあなた、ほんとに何がしたいの? 子供の駄々にしてももうちょっと論理的整合性ってものが……」
「ふーんだ! ……こ、これはあんたが悪いんだからね!」
「はあ? なに訳の分からないこと……」
はあ、と紫は大きなため息をつく。
もうとりあえず理由を考えることは止めよう。わけがわからない。
「もう理由はいいわ……。でも、罰は受けてもらうわよ」
「な、何する気よ罰って……きゃあっ!?」
天子は足元に開いたスキマに落下、次の瞬間には紫の膝の上にどさりとうつ伏せで落ちてきた。
釣ったばかりの魚のように膝の上でばたばた暴れる天子を押さえつけ、そのスカートを容赦なくめくり上げた。
白と青のストライプ模様のショーツに包まれた小ぶりなお尻があらわになる。
「ちょちょちょちょっと!? 何するのよぉ!?」
「おだまんなさい。悪い子にはお仕置きです」
そのお尻に、紫は平手を振り下ろした。
木立の間に、ぱぁん!という小気味良い音が響き渡った。
「きゃうううんっ!」
子犬のような悲鳴を上げる天子。
紫はさらに、数発平手を食らわせる。
そのたびに天子は、甲高い悲鳴を上げて体を跳ねさせた。
「や、やだっ、やめ……きゃぁんっ! はなし……っくぅん! ふっ、ふぅぅっ、きゃふうっ! ……っん!」
平手の回数が増えるに従って、天子はおとなしくなってきた。
悲鳴を上げるのもやめ、紫の膝にしがみつくようにして息を漏らしている。
膝を覆うロングスカートを通して、その息の熱さが伝わってきた。
五度、六度と破裂音が響くたびに、天子の悲鳴は小さくなり、あとは紫の膝に押し付けた口から息を漏らすだけになった。
天子がおとなしくなったのを見計らい、紫はお仕置きをやめる。
「さ、これでいい加減懲りたでしょ。これに懲りたら……」
そう言いかけて紫はぎょっとする。
膝のあたりが熱いと思ったら、天子は涙を流していた。
紫の膝に顔を押し付けて、ときおり声にもならないような小さな声を漏らしながら、天子は泣いていた。
「ちょ、な、なに泣いてるのよ!? そんな泣くほど痛くしてないでしょ!?」
慌てて細い肩を掴んで抱き起こすと、天子は顔を伏せた。
長い髪に隠れて、その表情は見えない。
しかし、あごの先からぽたりぽたりと垂れているのは、間違いなく涙だ。
「泣いでな"いも"ん!!」
「いや思いっきり泣いてるでしょ!?」
大声とともにがばっと上げたその顔は、涙まみれ。
天子は大粒の涙を溜めた目で、紫を睨みつけている。
「……なのに」
さっきとは打って変わって蚊の鳴くような声で、天子は何事かをつぶやいた。
すっかり困惑した紫はしかし、次の言葉でさらなる混乱に放り込まれた。
「わたし、紫に会いたかっただけなのにぃ!!」
「は……あ!?」
分からない。何もかもがわからない。
わたしに会いたかった?
つまり、一連のおかしな地震騒ぎはわたしを誘い出すためのものだった?
紫の脳裏に、霊夢の言葉が蘇る。
だから言ったでしょ! これはアンタの仕事なの!
「え……っと、あんたもしかして、私に会うために、こんな騒ぎを……?」
天子は答えない。
真っ赤な顔でスカートをぎゅっと掴んだまま、じーっと涙目で紫を睨んでいる。
――沈黙はすなわち、肯定だ。
「え……え、え、えええええー……っ!?」
わからない。
私に会いたかった? 何故? なんのために?
「あ、な……なんで、私に会いたかった、の?」
考えてもわからない問いが、ぽろりと紫の口からこぼれた。
唯一答えを知っているであろう天子は、「ひぐっ」と息をつまらせたかと思うと、とんでもない大声で泣き始めた。
「びゃああああああああーっ!! 紫のばかーっ! あほーっ! ニブチーン!! 鈍感系主人公ーっ!!」
「ちょちょちょっと!! そんな大声出さないでよ天狗にでも嗅ぎつけられたらえらいことになるでしょ!!」
そんな紫の訴えも、もう天子の耳には届いていないようだ。
涙を噴水のように撒き散らし、天子は耳を聾する大音声で叫喚し続ける。
百万の軍勢を相手にしたとて小揺るぎもしない妖怪の賢者の策謀も、これには何の役にも立たない。
「どどどどうしたらいいのよこれ……ああもうほら、いい子だから泣き止みなさいって……!」
どうしたらいいのかまったくわからず、紫はとりあえず天子の手を引っ張って抱きしめた。
「もがふっ」
天子の顔は、紫の豊かな胸の谷間に埋もれる。
「ほ、ほら、頭なでなでしてあげるから、ね?」
両腕で天子の顔をぐいぐい胸に押し付けながら、紫は不器用にその頭をなでてやる。
そのとっさの行動が功を奏したのか、胸元から漏れ聞こえる天子の泣き声はだんだん小さくなってきた。
ひっぐひっぐとしゃくりあげながら、天子は両手を紫の腰に回し、弱々しく抱きついてくる。
ようやくおとなしくなってきたのに内心ホッとする紫。
「ほら、拭いてあげるから、顔上げなさい」
涙で濡れた天子のあごを指先でくいっと上げてやると、天子は恥ずかしそうに目を逸らした。
またいきなり泣き出さないかと恐々としながら、紫は天子の顔を丁寧に拭ってやる。
「ん、んー……」
赤ん坊がむずがるような声を漏らす天子。
幸い、さっきのような爆発の気配は今のところないようだ。
改めて、腕の中の泣き虫を見下ろす紫。
時々しゃくりあげながらも紫の胸元から顔をあげようとしない様子は、外見よりもずっと幼い子どもに見える。
「ねえ……」
「な、なによぅ」
自分でも意外なほど優しい、それこそ泣いている子供を慰めるような口調で、紫は語りかける。
「……なんで、私に会いたかったの?」
「……っ!」
びくん、と肩が跳ねた。
「うん?」
「……っ」
天子は何も言わない。
紫の胸に顔を押し付けて、もごもご言っている。
「もお、何よ?」
「う、うー……」
熱い吐息で、胸元がくすぐったい。
よく見ると、顔どころか耳元まで真っ赤になっている。
「……って、くれたから」
辛うじて聴き取れる声で、天子はそう言った。が、結局何を言ったのかはよくわからない。
ふう、と溜息をひとつ。どうやら聞き出すのは無理そうだ。
しかたがないので紫は、子どもをあやすように天子の頭をなでてやる。
相変わらず天子は紫の胸に顔を押し付けているのでその表情は分からないが、胸元に感じる吐息はだんだん穏やかなものになってきた。
いきなり大泣きされた時の焦りは引っ込み、代わりになんだか愛おしい気持ちが湧いてきた。
「……お尻、痛かったでしょ? ほら、こっちもなでなで、してあげる……」
片手を伸ばし、めくれたスカートから覗いたままの小さなお尻をなでてやる。
「あ……っ!」
一瞬天子は肩をぴくんと跳ねさせた。
すべすべしたショーツに包まれた天子のお尻は、心地よい弾力で紫の指を押し返す。
「ふふ、かわいい……ほら、なでなで……」
小さな子にするように、優しくなでてやる。
天子は相変わらず紫の胸に顔をうずめたまま、顔を赤くしている。
その顔のあたりから、再び小さな嗚咽が漏れてきた。
「ちょ、ちょっと、なんでまた泣くのよ!? 別に痛いことしてないでしょ!?」
「ゆ……ゆかりがぁ……」
慌てて顔を引き剥がす。
その顔は、真っ赤になっていた。
「ゆかりが……えっちなことしたぁ……」
「ちょ……っ!? ひひひ人聞きの悪いコト言わないでよ! ちょ、ちょっとお尻なでただけじゃないの!」
「だって……だってぇ……えっちなことだもん……お尻、さわったもん……ゆかり、えっちなことしたもん……」
ぐしぐし泣いている天子を見ていると、何故か異様な罪悪感がこみ上げてくる。
なんだかすごく、致命的に悪いことをしている気になってきた。
これは……これはまずい。なんだかすごくまずい。
焦りと罪悪感が、紫の頭のなかからじりじりと正常な思考能力を奪っていく。
喉元にナイフをあてがわれた気分が下腹の辺りからこみ上げてきた。
こんなところを見られるのは、たとえ天狗でなくても絶対に避けなくてはならない。
しゅばばばっと四方を確認、よし、誰もいない!
「ちょ、ちょっとこっち来なさい!」
「え? わ、きゃあっ!?」
足元にぱくりとスキマが開き、二人はそのまま落下。
反射的に身をすくめる天子を受け止めたのは、布団の感触だった。
スキマの先に通じていたのは、紫の部屋だった。
だらしないことに今朝起きた時のまま、布団が出しっぱなしになっているが、そんなことを気にしている余裕はない。
常時結界を張っているこの場所なら、少なくとも人目につくことはない。
「と、とりあえずここなら問題ないわね……で、えーっとなんだったかしら……そうよ、あなたなんで私に……」
「……ここ、どこ」
「わ、私の部屋……だけど」
そう答えるなり、再び天子は爆発するように大声で泣き始めた。
「びゃあああああああーっ!! テゴメにされるうううううーっ!!」
「こらーっ!? あんた言うに事欠いてなんてことーっ!?」
「ひどい、ひどいよお……人目のつかないところに連れ込んだあげくりょーぢょくの限りを尽くすつもりなのね!! そんなの、まだ早いのに……わたし、はじめてなのにーっ!!」
相変わらずわけのわからないことを喚きながらぎゃんぎゃん泣いている天子を前に、途方に暮れる紫。
人目につかないところに移動したと言うのに、事態は一向に好転していないどころか、致命的に危険な方向に転がっている気がする。
「も、もうっ! さっきから泣いてばっかり! だ、だいたいあなた、いったいなにがしたいのよ!?」
紫がそう言うと、天子はまた「ひぐっ」と息をつまらせた。
天子が言うには、この地震騒ぎを起こした動機は「紫に会いたかったから」らしい。
だがその理由が、まったくわからない。
お礼参りというならまだわかるが、どうもそういう雰囲気ではない。
「……泣いてばっかりじゃわからないでしょ? ね、どういうことなの?」
努めて優しく問いかけたつもりだが、口元がひくひくしているのが自分でも分かった。
どのくらいの時間、しゃくりあげている天子を前にじっとしていただろう。
ようやく天子はその口から、小さなつぶやきをこぼした。
「叱って、くれたから……」
ようやく聞き取れるほどの小さな声で語られたその言葉は、やはり不可解なものだった。
しかし紫は、沈黙でその先を促す。
天子はまだしゃくりあげながらも、続ける。
「紫だけ、だったんだもん……あんなふうに、叱ってくれたの……誰も、外面じゃへらへらして、陰口叩くばっかりで……誰も……」
「……」
少しずつ、話が……天子の本心が、見えてきた。
あの地震騒ぎの時に、異変の張本人である比那名居天子のことはある程度調べていた。
比那名居一族は、その上司である名居守が神霊として祀られる事になった際に、合わせて天界へと移住した一族だと聞いている。
本来修行を積んでなるはずの天人に、十分な格を備えることなくなってしまった彼らを、快く思う天人などいなかっただろう。
まして天子は、幼いころをこの不相応に恵まれすぎた環境で育ってしまったのだ。わがまま放題になってしまったのも無理からぬことだろう。
事実、博麗神社を倒壊させるほど異変を起こし、紫の怒りを買ったわけだ。
「だから……えっと、悔しかったし、腹も立ったけど、でも、なんか、うれ、しくて……」
途切れ途切れの天子の言葉を、紫はじっと聞いている。
「だから、その……もっかい、会いたくて、あ、会って、ごめんなさい、言いたくて……でも、どうすればいいか、わかんなくて……」
「……それで、あんな騒ぎ起こしたの?」
「でっ、でも家壊したりとか、してないから! ちゃんと誰も住んでないところでしかしてないから!」
慌ててまくし立てる天子。
その様子に紫はきょとんとして……それから思わず吹き出してしまった。
「な、なんで笑うの……?」
また泣きそうになる天子のほうに素早く紫の両腕が伸び、その体を抱き寄せた。
「ばかな子……」
自分でも驚くほど優しい声。
紫はさっきと同じように、天子の長い髪を優しく撫でる。
「ば、ばかじゃないもん……」
抱きしめられた天子は、弱々しい抗議の声を上げるが、それだけだった。
頭を撫でる紫の手の感触に目を細め、まどろむような顔つきになっている。
「……ごめん、なさい」
「うん……」
そろそろと天子の両手が紫の腰に伸び、控えめな力できゅっと抱きついてきた。
紫の胸に顔をうずめているその顔は、まるで幼児のように幼く見える。
天子はしばらくそのまま、紫に弱々しく抱きついていた。
そのしおらしい様子は、出会った時の、そしてついさっきの傲岸不遜な態度からは想像もできない。
(ふふ……可愛いところも、あるんじゃないの)
我知らず、口元に柔らかな笑みが浮かんでくる。
頭を撫でていた手を下におろし、頬にあてがう。
そうすると天子は、くすぐったそうに目を細めた。
「ゆかり……」
紫の手のひらに頬をすり寄せながら、天子は声を漏らす。
無防備で、幼い声。
その声に紫は、自分の浮かべた笑みが深くなるのを感じた。
指先をあごに沿わせ、上を向かせると、天子は従順に従った。
「かわいい、天子……」
そう囁き、紫は天子の真っ赤になった頬に唇を寄せる。
ちゅ、ちゅ、ちゅ……と音を立て、紫は天子にやさしく口付けた。
「ん、ん……」
天子は両手をきゅっと握って、紫の口付けを受け入れている。
……と、そこまで来て、ようやく紫は我に帰る。
(……はっ!? わ、私ったらいったいなにを!?)
ガクガクしながら、紫は恐る恐る天子の表情を窺う。
「ゆかりが……ちゅーしたぁ……」
ぽーっとした顔でそんな事を言う天子は、紫の知っている彼女の何倍も幼く見えた。
「だ、だってこれはその、あ、あんたがなんかしおらしいこと言うから、ついかわいいなーって、思わず……。そ、それにほっぺにちゅーくらいなんでもないでしょ!?」
「だって、ちゅーだもん……ゆかり、ちゅーしたもん……」
また大声で泣かれるかとビクビクしている紫の手を、天子は遠慮がちに握った。
「な、なに!?」
上ずった声を上げる紫をすっかり潤んだ瞳で上目遣いに見上げながら、天子は消え入りそうな声で言った。
「もっとぉ……」
「あ……」
紫の口から、我知らず吐息が漏れる。
胸の奥が締め付けられるような感覚に襲われた。
両手がほとんど意図せずに上がり、天子の頬をやさしく包む。
天子も察してか、潤んだ瞳をそっと閉じた。
顔を近づけ、繰り返し上気した頬にくちづける。
「んっ、あ、んんっ……」
紫の唇が頬に触れるたび、天子は小さな声を上げた。
「ゆかりぃ……」
小さな子供が母親に甘えるように、天子は再び紫の胸に顔を埋める。
吐息で、胸元が温かい。
その吐息が催促しているような気がして……あるいは自分がそうしてやりたくなっただけか、紫はまた天子の長い髪をなでてやる。
見下ろした天子の顔が、安堵に緩んでいくのがわかった。
「かわいい……」
またそうつぶやく。
そうすると天子は、照れたように紫の胸の谷間に顔を隠してしまった。
小さく笑い、紫は天子の小さな体を抱き寄せる。
「ゆかり……」
胸の谷間から、視線だけを上げる天子。
その様子が小動物めいて愛おしく、紫は甘い声で返事を返した。
「なあに? あまえんぼさん」
「なでなで、して……」
「? さっきからしてるじゃない」
「え、と、そ、そじゃなくて……その……」
天子はしばらくもごもごした後、ぽそりと言った。
「お……おしりも、さっきみたいに、なでなで、して……?」
「だ、だってさっき大泣きしてたじゃない」
「そ、それはびっくりしただけで、あの、い、いやとかじゃなくて……だから、その……」
だんだん語尾が消えていくのに、紫は小さな苦笑を漏らした。
背中に回していた手を下にやり、めくれたままのスカートから覗いている天子のお尻にそっと触れる。
「ふゃ……!」
ストライプのショーツに包まれた小さなお尻が、ぴくんと跳ねた。
頭をなでてやったのと同じように、お尻の曲線をそろそろとなでる。
「はぁうぅ……」
安堵の溜息のような声を漏らしながら、天子は紫の愛撫に身を任せている。
小さなお尻が左右に揺れているのが可愛らしく、紫は口元に自然に笑みが浮かんでくるのを感じた。
目が合うと、天子は恥ずかしそうに視線をそらす。
「ふふふ……」
「な、なによぅ……」
「かわいいなあ、って。ちっちゃなお尻、ふりふりして。もっと触って、って、おねだりしてるみたい」
「うー……」
もぞもぞ身じろぎする天子。
小さな体を不器用に擦り寄せてくるのが、たまらなくいとおしい。
「ゆかり、ゆかりぃ……」
天子の声には、いつしか熱が混じり始めていた。
鼻にかかった甘い声で、紫の名を呼ぶ。
その熱が伝染したように、紫も頭の後ろあたりがじんわりと熱くなって来ているのを感じた。
「かわいい……」
吐息とともにそうつぶやき、天子の長い髪をかき分け、耳元を指先でくすぐってやる。
「んっ、んぅ……」
天子はくすぐったそうに目を細めながら、子猫のように紫の手に自分の頬をすり寄せてきた。
すり寄せながら、天子は潤んだ瞳を紫に向ける。
「ん? なぁに……?」
「ん……えっと……」
ごにょごにょ言っている天子が可愛くて、紫はそっとその頬に手をかけた。
「ふふ……ね、なにか、してほしいコト、あるの?」
「は……ぁう……」
天子の中途半端に開いた唇からは、言葉ではなく熱い吐息がこぼれるばかり。
それでも天子は、吐息混じりになんとか言葉を紡いだ。
「……ちゅー……ちゅーうぅ……」
それは、天子のせいいっぱいのおねだりだったのだろう。
一瞬、天子の潤んだ瞳に見とれる。
ひどく弱々しい力で、天子は紫の服をきゅっと掴む。
胸が締め付けられるのを、紫は感じた。
「も、もう……ほんとに……この子は……」
顔を近づけると、天子は安堵の表情を浮かべた。
長い間迷子になっていた子どもが、ようやく母親に会えたときのような……そんな表情だった。
「可愛いんだから……」
くちづけた頬は、さっきよりもさらに熱くなっていた。
「ん、ちゅ……ちゅっ……」
「ふぁ……」
いったん唇を離した紫は、自然な動作で天子の細い顎に指先をかけ、上を向かせる。
「んぅ……っ」
唇を重ねると、天子の手がぴくんとふるえるのが分かった。
その手に、紫は自分の手を重ねた。
「んっ、んっ、ん……」
ふるえる唇に、胸が締め付けられる。
なんのことはない。
下手をすれば幻想郷全体の危機につながりかねない異変を引き起こしたこの少女は、ただのつよがりで、わがままで、寂しがりの女の子だったのだ。
「は……ぁっ」
離した唇から溢れる吐息は、いっそう熱くなっていた。
その熱は、果たして天子だけのものだろうか。
「ちゅー……しちゃった……ぁ……」
陶然とした表情でつぶやく天子に、紫は胸の内がかあっと熱くなるのを感じた。
「ゆかり……ゆかりぃ……」
はぁ、はぁ、と熱い吐息を漏らしながら、天子は紫の胸元にぎゅっと抱きついてきた。
「ちゅー、きもちよかったの?」
「ん……」
赤くなった顔を紫の胸の谷間に隠しながら、天子は小さな声でなんとか答えた。
そんな様子に釣られるように頬が熱くなるのを、紫は感じた。
妙に気恥ずかしく、いじらしい天子の様子から引き出した嗜虐心で、それをごまかそうとする。
「じゃあ……もっといっぱい、ちゅーしてあげる……」
唇を寄せると、天子はきゅっと瞼を閉じて、少しだけ顔を上げた。
唇へのキスを期待している天子へのいじわるのつもりで、紫は熱くなった頬にくちづけた。
それから、真っ赤になった耳たぶへ。
「ひぅんっ!」
声を上げ、肩をすくめる天子。
首筋に矛先を変えると、天子の声は長い吐息に変わった。
「は、あぁぁ……んっ、あ、はぅぅっ……」
そろそろいいかな? そう思い、紫は天子の顔を窺う……そうしようとするより先に、天子のふるえる手が、赤ん坊よりも非力な力で紫の服を掴んだ。
そして、弱々しく、くい……と引っ張る。
「お……おくちにも、もっかい、ちゅー……して……?」
「……っ! こ、こ、この娘ってば……!」
いじわるしてやるつもりが思わぬ反撃を受け、今度こそ紫の顔は真っ赤になった。
見下ろす天子の瞳は潤んで、幼い唇は物欲しげに吐息をこぼしている。
ほとんでそれに誘われるように、紫は再びくちづける。今度はもっと深く。
「んぅぅーう……」
鼻にかかった甘い声は、どこか嬉しげだ。
体を離そうとすると、半開きになった濡れた唇のあいだで、小さな舌先がひらめくのが見えた。
天子の幼い表情の中で、そこだけが艶めかしい。
離れようとしていた二人の熱を帯びた体が、再び重なりあう。
どちらから抱き寄せたのかは、もうわからなかった。
重ねられた口内で、天子の舌先が紫の唇に触れる。
「んっ、んっ、ん……」
弱々しく両腕を絡めて、天子は縋るように紫を求める。
紫も同じだった。
もっと深く、くちづけたい。もっと深く、重なりたい。
そんな想いを込めて、紫は天子の舌を絡めとる。
「ん、ぷは、ぁ……」
ゆっくりと唇を離すと、その間には唾液の糸が淫らな曲線を描き、ぷつりと切れた。
「はぁ、は、あぁ……は……」
天子はすでに肩で息をしている。
そんな天子がいじらしく、紫はその体をそっと抱きしめた。
胸の谷間に、天子の吐息が熱い。
「ゆかりの……おっぱい、やぁらかぁい……」
「やわらかいの、好き?」
「ん……すき……すきぃ……」
天子はそのまま、しばらく胸の谷間に顔を埋めていたが、潤んだ瞳で紫の方を見上げてきた。
小さな声で、何事かを呟く。
「ゆかり……えっとね、その……あのね……」
顔を赤くしてぽしょぽしょ言っている天子が可愛らしくて、紫はその頬にもう一度唇を寄せる。
「なあに……? うん? 言ってごらんなさい?」
髪を撫でながら優しく聞いてやると、天子は恥ずかしそうに、小さな声で言った。
「あ、あのね……ゆ、ゆかりの、おっぱい……ちゅぱちゅぱしても、いい……?」
そんな天子のおねだりに、紫は一瞬あっけにとられ、そして、ふっと笑みを浮かべた。
天子を抱きしめた胸の奥で、愛おしさが大きくなるのがはっきりと分かった。
「ふふ……」
「わ、笑わないでよぅ……!」
「だって、あんまり可愛らしいこと言うんだもの……」
「うー……」
そんな天子の頬にもう一度くちづけて、紫の細い指が、するすると着衣をはだけていく。
甘い熱を帯びた肌があらわになっていくのを、天子は陶然とした目で見ていた。
はだけられた道服が、するりとなめらかな曲線を描く肩から滑り落ちた。
「あ……」
あらわになった紫の豊かな乳房に、天子は視線を釘付けにする。
「や、やだ、あんまりじっと見ないでよ……」
「だって……きれいなんだもん……。ゆかりのおっぱい、おっきくて、きれい……」
まろやかな曲線を描く豊かな乳房に、天子は吸い寄せられるようにそっと顔を埋める。
「やぁらかぁい……おっぱい、ふわふわで、ぽよんぽよん……」
すべすべした頬を乳房にすり寄せる天子の髪を、紫は優しくなでてやる。
「ほら、天子……あーんして……」
乳房を持ち上げその先端を口元に寄せてやると、天子は赤ん坊のように吸い付いた。
「はむ、んぅ……、ちゅ、ちゅぱ、ちゅ……」
時折ぽろぽろと涙をこぼす天子。
それを見下ろしながら、紫もまた吐息をこぼす。
「ん、あ……ふふ……かわいい子……おいしい? 私のおっぱい、おいしい……?」
「うん……あまぁくて、ぽよぽよで……すき……ゆかりのおっぱい……すき……」
ちゅ、ちゅ、と控えめな音を立てて、天子は紫の乳首を小さな唇で吸う。
意識してか無意識にか、天子の口内でその舌先が、つん、つん、と紫の乳首をつつく度、紫は背中をかすかにふるわせた。
性的な快感だけではない。
腕の中に抱きしめた少女のぬくもりが、たまらなくいとおしい。
「甘えたかったの……?」
「うん……」
「さみしかったの……?」
「うん……」
「もう、さみしくなぁい……?」
「……ん……」
紫の背中に弱々しく両手を回し、天子は白い乳房に甘えつく。
やわらかな唇が乳首を挟み込み、小さな舌が乳輪をなぞる。
「んぅーう……んちゅ、ちゅぱ、ちゅう……ん、んふぅ……ぺろ、ちゅっ……」
幼子がむずがるような声の中に、次第に甘く、快楽をこらえるような色が混ざり始めてきた。
見れば天子は、夢中で紫の乳房を吸いつつ、しきりに太ももをこすりあわせている。
「はぁぁう……ゆかり、ゆかりぃ……ん、ちゅぷ、はぁ、はぁ……ゆかり……」
潤んだ瞳が、紫を見上げる。
体の奥に疼く快楽の熱を持て余しているのであろうことははっきりと分かった。
「天子、すごく、はぁはぁしてる……」
「だって、だってぇ……」
耳どころか首筋まで赤くして、天子は言い訳じみた言葉をもらす。
その口調はもう、幼児めいてとろけていた。
「ゆかりのおっぱい、ちゅぱちゅぱしてたらね……ん、はぁ……おなかの、奥がね、きゅんきゅんって、熱くて……」
知らず知らずのうちにだろう、天子は幼い体を不器用に紫にすり寄せてくる。
熱に浮かされたように火照った体は、服越しにも熱い。
「ゆかりぃ、ヘンだよぉ……わたしの体、ヘンだよぉ……」
「天子、もしかして……」
そういう事を、知らないのだろうか。自分で、慰めたことすら――?
困惑と同時にこみ上げてきた甘い熱に突き動かされるように、紫は天子の熱い裸形を、褥に優しく横たえた。
天子は断続的に吐息を漏らしながら、濡れた瞳で紫を見上げている。
なにするの――?
不安げに揺れる瞳がそう言った。紫は微笑みで返す。
「苦しそう……大丈夫、私が――」
規則的に上下する天子の薄い胸の上で白い十指が踊るたび、蕾がほころぶように、ブラウスが少しずつ花開いていく。
「楽に、してあげる……」
「あっ、あ――や、やぁぁ……」
抵抗と言うにはあまりにも弱々しい声を上げて、天子はふるえる両手で露になりかけた胸元を隠そうとする。
「いや……?」
努めてやさしくそう聞くと、天子はかすかにかぶりを振った。
両手をそっとなでてやると、天子は横に視線をそらして、手をどけた。
汗ばんだささやかなふくらみの上で、桜色の先端が健気にふるえている。
「やぁぁ……は、はずかしぃ、よぉぉ……」
「どうして……?」
「だ、だって……おっぱい、ぺったんこで、小さいもん……ゆかりみたいに、おっきくないもん……」
涙目でそう言う天子を見下ろしながら、紫は自分の吐息が熱くなってきているのをぼんやりと自覚した。
そっと天子の頬に振れる。熱い。
「いいじゃない、可愛くて……」
頬にやった指先を、あごの先、そして首筋へと滑らせていく。
天子の体は、紫の指先が動くたびに敏感に反応を返す。
紫は意識して、鎖骨のあたりに差し掛かった指先を動きを遅らせる。
焦らしているのは、身を横たえた少女なのか、それとも自分自身なのか、もうよくわからない。
「あっ、やっ、やぁぁう……」
鎖骨のくぼみを指先でなぞるだけで、天子は汗ばんだ体をくねらせて甘い声を上げる。
「もぉ、ちょっとくすぐってあげただけなのに……そんな声あげて……」
つう……と指先が鎖骨から滑り降り、かすかなふくらみの先端にたどり着くまでの間、天子が桜色に染まった肌をふるわせるのを、紫は時間を駆けて愉しむ。
指先の向かう先を意地悪く、胸のふくらみの横に逸らしてやると、天子の吐息は面白いように乱れた。
肌から離れた指先が、今度こそその先端に触れようとした瞬間、天子は投げ出していた両手で布団をぎゅっと掴んだ。
「ひぅぅぅん……っ!」
紫の指先が、淡いピンク色の乳首にそっと触れると、引き絞るような声とともに天子の背中が布団から浮いた。
思わず反射的に手をどけてしまった紫だが、再びゆっくりと愛撫を再開した。
「ここ、気持ちいい……?」
「わ……かんな、いぃ……はぅんっ! な、なんだか……じんじん、してっ、あ!」
真っ赤になった耳元に唇を寄せてそう聞くと、天子は乱れきった呼吸の下から辛うじて応える。
その答えも、紫の指先がなめらかな肌の上で踊るたびに、悦楽の吐息にかき消されていく。
「はっ、はぅぅんっ! さきっぽ、さきっぽがぁ……じんじん、するよぉぉ……っ、じんじん、とまんないよぉ……わっ、わたしのからだっ、どんどん、ヘンになってくよぉぉ……」
「だぁいじょうぶ……ゆーっくり、やさーしく……きもちよーく、してあげるから、ね……」
壊れ物を扱う手つきで、紫の指先がそっと幼い乳輪をなぞる。
その度に天子の背中は布団から浮き、膝が踊った。
つんと固くなった乳首を指の腹がきゅっと押しただけで、天子は両足の指をぎゅうっと丸めた。
「ほら、かわいーいさきっぽ……くにゅ、くにゅって……」
「ひぁぁぁ……あっ、あ……あー……あ……」
天子の声はもうすっかりとろけ、甘い喘ぎがその唇から漏れるのみだ。
「ふふ……触って、触ってって、おねだりしてる……もっと、してほしいんだ? えっちなコ……」
「やぁぁん……ちがうもん……わたし、えっちじゃないもん……きゃぁんっ!」
親指と人差し指で、そっと固くなった先端をつまむと、天子は高い悲鳴とともに抗議を中断した。
手のひらにすっぽり収まるささやかなふくらみを、紫は小さな子供の頭を撫でるように、優しく愛撫する。
手のひらの下には、汗ばんだ肌のぬくもり、小さな乳首の感触、そしてその奥で激しく暴れる心臓の鼓動を感じる。
(すごく、どきどき、してる……)
なんとなく、もう片方の手を自分のむき出しの胸にあてがった。
天子と同じように汗ばんで、天子と同じようにその奥に激しい動悸がある。
ふふ……と、どこからともなく笑みが、嬉しい気持ちがこみ上げてきた。
「ほら……なで、なで……くにゅ、くにゅ……」
「んにゃぁ……は、は、はぁぁ……きもち、いいよぉ……さきっぽ、くにゅくにゅ、きもち、いいよぉ……」
シーツを両手で必死に掴んで、天子は甘い嬌声を上げる。
その可憐な唇からは、は、は、と断続的な吐息とともに、桃色の舌先がこぼれ出る。
その様は、天子の幼い肢体と裏腹に、ひどく淫らに見える。
「あっあ……おっぱい、おっぱい、じんじんって……ゆかりに、くにゅくにゅされて、ひぁ……えっちだよぉ……こんなの、えっちだよぉ……」
うわ言のようにこぼれるその言葉が、耳に甘い。
情交の熱に半ば浮かされながらも、紫は愛撫を続ける。
くるり、くるりと踊らせていた指先で、そっと乳首をつまむ。
「きゃはぁっ!」
途端、天子の嬌声と、そしてふるえていた細い肩が跳ね上がった。
じっとりと汗ばんだ背中が布団から浮き、あやういアーチを描き、そして一瞬後、その肢体はどっと倒れこんだ。
「は、ひ……っ、ひぁ、ひくっ、ひっ、はわぁ……っ」
淫らなスタッカートを刻みながら、ひくひくと小刻みにふるえる天子に、紫は思わず愛撫の手を引っ込めてしまった。
(い、今ので……イッちゃった……の?)
「はひ、ひ……んっ、んっ、は、は、はぁぁう……」
四肢を縮こまらせて、天子は胸元で両手を合わせ、指一本触れられていないというのにふるえる唇からしきりに吐息を漏らしている。
絶頂を迎えたのは明らかだった。
「て、天子……?」
紫の呼びかけも、涙を湛えた視線を揺らすのが精一杯のようだった。
あまりの過敏な反応に罪悪感さえ湧いてくる。
「ゆ……ゆかりが……」
その唇が、ようやく意味の取れる単語を発した。
「ゆかり、がね……おっぱい、きゅってしたらね……さきっぽ、あつくなっって……からだ、びくびくって……」
まだ整わない呼吸の下から、ふるえる……否、甘くとろけた声音で紡がれる言葉は、小さな子供のそれのように幼い。
幼い乳房を弄んでいた手で優しく天子の頭をなでてやりながら、紫はもう片方の手を、下へと移動させていく。
断続的にふるえる白いお腹の辺りをなで、その下、今や汗とそれ以外の液体でじっとりと濡れているショーツの辺りに指先を這わせる。
そのまま脱がせようかとも思ったが、紫の手はそこを通り過ぎ、弱々しくふるえる太ももを這う。
「はぁぁうぅ……」
紫の手のひらが太ももの外側から内ももへとゆっくり移動するのに合わせ、天子は長い溜息のような声を漏らす。
行き着いたそこは、触れる前から紫の手に向かって熱気を放っていた。
「そ……そんなトコも、さわる……の?」
「いや……?」
そう聞くと、天子は弱々しく、だがはっきりと首を横に振った。
「やじゃ……ないよ……。ゆ、ゆかりなら……いい、よ……。でも……」
「でも……?」
「ちょっと、こわい……。さっきから、ヘンなの……こ、ここ、きゅううーってなって、じんじん、熱くて……」
はぁ、はぁ、と乱れた吐息をこぼしながら、天子は瞳をうるませている。
少し心配になって、紫は尋ねる。
「ええと、その……ひとりでしたこととか、ないの?」
「……?」
「じ、自分で触ったり、とか……」
「したこと、ない……」
不思議そうな顔で、紫を見上げている天子。
本当に、そういう事を知らないのだ。したこともないのだ。
……そんな少女が、あられもない姿で自分の下に横たわっている。
そのことに紫は、ほとんど怖気に近い官能が背筋に走るのを感じた。
かくかくと頼りなくふるえる膝の間から手を離し、紫は天子の頭を優しくなでてやる。
「だいじょうぶ……とっても、きもちよーく、してあげるから……ね?」
小さな子供をあやすように言ってやると、天子もようやく、少しだけ呼吸を整えることができたようだ。
両手をきゅっと握って、それでもまだ少し不安そうに言った。
「は……はじめて、だから……やさぁしく、してね……?」
「……っ!!」
油断していた。すっかり忘れていた。
天子の心配をしているどころではなかったのだ。
思わず抱きしめて、そのまま……となりそうなのをすんでのところでこらえ、紫はゆっくりと内ももにあてがった手のひらを、じんわりと熱いそこへ持っていく。
指の腹がショーツ越しにほんの少し触れただけで、薄布の向こうの熱さが伝わってきた。
「ひあ……」
弱々しい声を上げる天子。
その声音からは、まだ戸惑いが見て取れた。
ゆっくり、ゆっくりと、指先を動かす。
天子の未成熟なそこは、蜜であふれていた。
視線を向ければ、ショーツのストライプは熱く濡れて、ぷっくりとふくらんだ恥丘の形を浮かび上がらせている。
子猫のような声で喘ぐ天子とはまるで真逆の……否、幼いからこその淫靡さがそこにはあった。
わずかに指を動かしただけでも、ぷちゅ、くちゅ……と淫らな水音が響き、指を離せばとろりと糸をひく。
「きもち、いい……?」
「わ、かんないぃ……すごく、あつくて、きゅんきゅん、するのぉ……」
離した指を、再びそこにあてがう。
それだけで天子は、小さなお尻をぴくんと跳ねさせた。
はぁ、はぁ、と吐息をこぼす天子の表情を見つめながら、紫は慎重に指先を動かす。
自分で言ったとおり、ゆっくり、やさしく、愛撫する。
天子は明らかにこういう経験がないのだ。過ぎた愛撫は苦痛を与えてしまいかねない。
ゆっくり、ゆっくりと、小さく円を描くようにあてがった中指を動かす。
天子は口元に指を持って行き、漏れ出る吐息をこらえようとしているようだが、そのささやかな抵抗は徒労に終わり、口元からはか細い――嗜虐心をそそってやまない喘ぎが漏れ聞こえる。
「ひぅん、ひぅん、ひぅぅぅん……」
しゃくりあげるようなその声に、紫の手は今にも持ち主の意思に反して――あるいは持ち主の意思に忠実に――薄布一枚を隔てるばかりの幼い秘奥に指先をねじ込み、思う様陵辱の限りを尽くしそうになる。
紫の力を使えは、それ以上の手段で、それ以上の快楽を貪ることすら出来るだろう。
だめだ……だめだ、そんなことをしては。
天子が求めているのはそんなことではないし、自分が求めているのもそんなことではない。……はずだ。
しかし――。
技倆の拮抗した剣士の戦いの趨勢がほんの少しの隙で分かれるように、紫の胸中にある欲望が、腕一本とは行かないまでも、その指先、ほんの先端の支配権を一瞬だけ奪った。
その指先が無慈悲なまでの正確さで、天子のそこを――じわりと濡れた秘所の上、つんと尖った雛先を探り当てた。
「ひ――!?」
瞬間、天子の全身が跳ねた。
電気が走ったように全身を痙攣させ、背中が完全に布団から浮く。
「はっ、はひっ、ひっ、ひっ、ひっ、ひぃぃぃ……っ!」
布団に両のつま先をぎゅうっと突き立てて、天子は腰を天井に向けて突き上げ、ふるわせる。
じっとりと濡れそぼった股間を魅せつけるような、あまりにも過敏な反応と淫らな姿態に、紫は我知らず、ごくりと生唾を飲み込む。
ショーツに覆われたそこは濡れそぼって、青と白のストライプがその部分を隠すどころか、余計に強調しているかのようだ。
幼い花弁はくちゃりと花開き、その奥に秘めた蜜壺からは、とろとろと蜜が溢れている。
あふれた蜜は、肌とショーツの隙間からこぼれ落ち、数本の筋を描いてあどけなさの残る太ももを滑り落ち、つま先を伝って布団の上に染みを作っている。
「はひぁ、ひぁっ、はっ、はっ、はぁぁっ、ひきゅっ、ひくっ……」
途切れ途切れの呼吸に合わせて細い腰が揺れるたび、天子の秘所は、ぷちゅっ、ぷぴゅっと音を立てて熱い蜜を吹き上げる。
唐突に、糸が切れたかのように天子の全身が弛緩し、濡れた音を立てて布団の上に投げ出された。
両膝は完全に力を失って頼りなく左右に開き、びっちゃりと濡れたそこを隠そうともしない。
「はひゃ……ぁ……はっ……ひっ……ひぅぅぅ……」
もはや天子は、まともな言葉を発することすらできないでいる。
涙をたたえて潤んだ瞳の焦点はふわふわとして合っておらず、引きつったような声を漏らす唇は半開きのまま閉じることもできないようで、たらたらと垂れる涎が、かたかたとふるえるあごの先から布団にまで、とろりと糸を引いている。
「あ、あ……」
まともな言葉を発することが出来ないのは、紫も同じことだった。
言葉どころか、まともな思考をするだけの余裕もなくなってきている。
「て、天子……イッちゃった、の……?」
「わ、かんなぁぃぃ……からだじゅう、びく、びくん、って……あたま、まっしろ、に……おまた、からぁ、おもらし、ぷちゅぅーって……」
うわ言のように、とぎれとぎれにそう答える天子。
どうしていいかわからず、紫は天子の涙で濡れて熱で火照った頬に手をあてがう。
「ふぁ……ゆ、かりぃ……ゆかり、の、て、だぁ……♪」
天子は、童女のように微笑み、紫の手に熱い頬をすり寄せる。
快楽の熱に浮かされているためか、幼児めいてとろけた口調がこぼれる。
「わたしぃ……わたし、ゆかりの手、すきぃ……やさしぃく、なでなでしてくれる、からぁ……ん……ちゅっ、ちゅ……」
「あ、あ……天子……!」
甘くとろけた言葉を紡ぐ唇が、紫の指先をとらえた。
紫の指に、ちゅ、ちゅ、とくちづけを繰り返し、火照った頬をすり寄せる。
胸の内が燃え上がるような感覚が紫を襲った。
熱い。体中が、熱い。
天子の熱が乗り移ったかのように、紫の体もまた熱く火照っていた。
「て、天子……も、もっとしても、いい……? 天子のこと、もっと、気持よくしてあげたい……!」
余裕などとうに蒸発してしまっていた。
もう紫には、目の前で熱い裸体を晒している少女を愛したい――愛し合いたい、それしか考えられなかった。
口調が乱れ、呼吸すらも乱れている。
はぁ、はぁと息をつく紫を、天子は布団の上に横たわったまま、潤み切った瞳で見上げている。
まだふるえの止まらない両手を頼りなく伸ばし、すがりつく。
「いい、よ……して、ほしい……ゆかりに、きもちよく、してほしい……」
天子は、握った紫の手を自らの下半身に……今しがた絶頂を迎えたばかりのそこに、導いていく。
「して……ゆかりぃ……さっきみたいに……おまた、きもちよく、してぇ……きもちぃの、して……」
「て……天子……!」
甘くとろけた声音と潤んだ瞳。
熱く濡れたままの秘芯を、天子は不器用に腰を動かしながら、握った紫の指先に擦り付ける。
「は、はぁぁぁ……んっ、んっ、ゆかり、して、してよぉ……きもちぃのぉ、んんんっ?」
一瞬だった。
灼熱の愛おしさに紫の思考が揮発するのは、一瞬だった。
完全に物事が考えられなくなった。
獲物の喉笛に牙を突き立てる肉食獣のごとく、天子の唇を奪っていた。
「んんーっ、ちゅぷっ、れるっ、れるぅぅっ、んちゅ、ちゅうぅぅっ……!」
強引に突き込まれた紫の舌を、とろけきった口腔と舌が迎え入れる。
後から後からあふれる唾液の中を紫の舌が動きまわり、抱擁をねだるように拙く動く天子の舌を絡めとる。
体の下で、組み伏せた天子の体が断続的にふるえるのを、紫は全身を密着させて感じ取ろうとする。
「んんんぅーっ……! んぁっ、ひぁぁぁ……」
「っぷぁ、はぁ……あ……」
思う様天子の口腔を蹂躙し、ようやく紫は体を離す。
唇を離し、口から舌を引き抜くと、とろりとした唾液のが名残惜しげにふたつの舌先をつなぐ。
激しく上下する薄い胸に落ちる唾液のしずくにさえ、天子はぴく、ぴくんとその体をふるわせる。
「てん……し……天子……もっと、もっと気持ちよくして、あげるわ……」
声がふるえるのを、紫は抑えられなかった。
じっとりと濡れたショーツに手をかけると、天子はかすかに声を上げた。
物を握るのもおぼつかなさそうな開いたままの両手で、なんとか顔を隠そうとする。
「ぱんつ……ぬがしちゃう、の……?」
「いや……?」
思わずそう聞くと、天子は潤んだ瞳で紫を見上げ、弱々しく首を横に振った。
「は、はずかしい、けど……やじゃ……ない、よ……。ゆかりに、えっちなことされるの、やじゃ、ないよ……」
健気なその言葉に、紫は胸が締め付けられるのを感じた。
何か言葉をかけてあげたかったが、出てくるはずの言葉は喉元に引っかかったまま。
結局紫にできたのは、天子の頬にくちづけることだけだった。
ショーツに手をかけ、ゆっくりと下に下げていく。
「……や、ぁ……」
顔を覆った両手の隙間から、天子のか細い声が聞こえた。
ずり下げられたショーツから、つぅ……と糸を引いている。
「こんな、に……こんなに、濡らして……」
つま先からショーツを抜き取る。
天子は両のふとももをしきりにすりあわせてそこを隠そうとしているが、その仕草はかえって情欲をあおるばかりだ。
「ね……天子……。見せて……」
「見たい、の……? わたしの……わたしの、はずかしいとこ、見るの……?」
「見せて、ほしいな……」
指の間から覗く瞳をぎゅっとつぶり、天子は頼りなく揺れる立てた両膝を、おそるおそる開いた。
桜色に上気したほっそりとした両足のあいだから、確かに聞こえた、くちゅり……という水音に、紫の首筋が粟立つ。
「ゃ……ぁ……」
か細い羞恥の声とともに、少女は、幼くあやういつぼみを、露わにした。
覆い隠すものの何もない、ぴっちりと閉じた花弁から、とぷ……っと、蜜がこぼれる。
我知らず、紫の細い喉が、こくりと唾を飲んだ。
「かわいい……」
思わず、そんな言葉が口をついて出た。
幼い、幼児のようですらあるそこが、ひくひくとふるえ、あふれる蜜がいく筋もふとももを伝い、布団にぽたぽたと染みを作っている――そんな淫靡な光景を目の前にしてなお、紫は自身の胸中に情欲よりも先にいとおしさが湧き上がるのをはっきりと自覚した。
いとおしい。
赤子を抱く母のそれと同じいとおしさに突き動かされ、紫は天子のそこに手を伸ばす。
「こんなに……濡らして……」
すこし迷って、紫は人差し指を選んだ。
壊れ物に触れるように、努めてやさしく、指の腹をぷっくりとした恥丘に這わせる。
「ふやぁっ……あっ、あー……」
戸惑ったような声を上げる天子。
その反応が可愛らしくて、紫が熱いほほに唇を寄せると、天子はくすぐったそうに目を細めた。
「天子のここ……とってもかわいいわ……ほら、ぷにぷにってすると、きもちいーいでしょ……」
「あっ、あっ……な、んか、ふわぁって、なる、よぉ……ひゃ……あ、あぁ……」
「天子ったら……ふふ、首筋まで赤くして……ん、ちゅっ、ちゅ、ちゅ……」
「ひゃうぅん……っ! だ、めぇ……おまたと、ちゅっちゅとぉ、いっしょにするの、だめぇ……」
かぶりを振るたび、ぎゅっとつぶった両の目から、ぽろぽろと涙がこぼれた。
その涙を舌先で拭い取ってやりながら、紫は人差し指に中指を加えて、蜜であふれた天子のそこを、そっとひらいた。
くちゅ……と糸を引きながら、ピンク色の蜜壺が口を開く。
人差し指をあてがうと、天子の両膝がぴくんと跳ねた。
すっかり熱くなった耳たぶを舌先でなぞりながら、天子の表情をうかがう。
「は、わぁぁ……あー……はぅぅ……」
半開きになった口元から、とろりと涎をこぼしながら、天子は甘ったるい吐息をこぼしている。
(だいじょうぶ、かな……)
人差し指を曲げ、慎重に、ゆっくりと、指先をそこに埋没させていく。
「ふゃわぁぁ……」
でたらめなビブラートの伴った嬌声が、指先の動きに敏感に、従順に奏でられる。
きゅ、きゅ、と断続的に指先を締め付けてくるその感触が、紫の脳裏に、ちいさなちいさな手で指先を握る、泣き虫でわがままな、青いロングヘアの子供の幻像を呼び起こす。
「ふふ、かわいい……天子のここ、私の指、ぎゅーってしてるわ……」
「ふにゃ、にゃぁ……ゆ、びぃ……ゆかり、の、ゆびっ、が……ぁ、は、ひ、きゅぅぅぅん……」
「だいじょうぶ? いたくなぁい……?」
「んーん……」
紫のその問に、はぁ、はぁ、と、ひっきりなしに乱れた吐息をこぼす唇が、ひどく幼い笑みを形作った。
それに紫も、安堵の笑みを漏らした。
注意深く、少しずつ、敏感なそこに埋めた指先を出し入れする。
ちゅぽ、ちゅぽ……と音がするたび、天子は紫の指の動きに従順に、白い喉を晒して、あえぐ。
「はぅ、はぅ、はぅぅぅんん……」
「どぉ……? きもちいい……? ちゃんと、きもちい……?」
「……ゆっ、びぃぃ……ゆかりのっ、ゆびがぁ……っ、わたしのおまた、にゅぷ、にゅぷって、してるぅ……ひぅんっ、にゃぅんっ……きもひぃ、よぉぉ……ちゅぽちゅぽ、きもひぃよぉぉ……ゆかりの、ゆび、きもちぃよぉぉ……」
切なげな嬌声を上げながら、とろけた口調で拙い淫語をこぼす天子の痴態に、紫はいつしか見入っていた。魅入られていた。
「そんな、そんなえっちなこと言って……悪い子……いけない子……」
天子に釣られるように、紫もまた、愛撫をしながら吐息を漏らす。
はぁ、はぁ、とひっきりなしにこぼれる吐息まじりの天子の言葉が、だんだんと小刻みになっていく。
幼い秘裂が指を締め付ける感触に、紫は天子の絶頂が近いことをはっきりと感じ取った。
「は、あぁー……あ、あ……あっ、あっ、あっ、あっ、らめっ、らめらめっ、れひゃうっ、えっちな、おもらひっ、れひゃうよぉぉぉ……っ」
「うん、いいわよ、ああっ、天子、天子……かわいい子……っ」
愛撫をしている紫もまた、愛撫されているかのように熱い吐息とともに睦言をこぼす。
ふるふるとふるえる小さく幼い肢体を抱き寄せ、体の中に愛しさを吹きこもうとするかのように、深く、深く、くちづける。
「んんんーっ、んふぅぅっ、ちゅぅぅっ、んっ、れるっ、んちゅっ……んぱぁっ」
「はわぁぁ……あぁむっ、んふ、んふ、んんん……ぇあ、ああー……あ……」
唇を離したかと思えば、淫らにくねるふたつの舌が互いの唾液をすするように絡み合い、抱擁する。
唇の端からあふれた唾液が、天子の細いあごを、首筋を伝い、つんと尖った桃色の乳首を濡らしていく。
紫は指先を目も向けずにそこへ伸ばし、濡れた乳首を指先で転がす。
「きゃぁぁうぅっ……! ひぁ、ひゃわぁぁ……らめぇ……おっぱい、くりゅくりゅすゅの、らめぇぇ……さきっぽ、じんじんして、きゅぅぅんっ……ふゃぁぁ……」
天子がとろけた嬌声を上げて身をくねらせる度、紫が指先を埋めたそこは、断続的に指先を締め付けてくる。
「へんなのぉ……わらひのからだ、へんらよぉぉ……おっぱい、つんつんでぇぇっ、おまた、きゅんきゅんでっ、しゅごく、えっちに、なっちゃうよぉぉ……っ!」
「いっちゃうのね? ぷにぷにのおまた、くちゅくちゅされて、いっちゃうのね……っ?」
「ふぇぁぁぁ……い、く……? えっちになるの、いく、って、ゆーの……?」
「そうよ……だから、気持ちよくなったら、いくって、言うのよ……? 気持よくしてあげるから、いくって、言うのよ……?」
「う、ん……い、くぅぅ……い、くの……わらひ、ゆかりに、いっぱぁぁぁいぃ、えっちなことされて、いく、の……ふぁ、ふゃぁっ!」
幼児のように舌っ足らずの口調での絶頂の予告に、紫の背筋が粟立つ。同時に、情交の熱に浮かされた躰の中央が、じわりと熱く濡れるのがわかった。
愛撫されているのだ。自分も。自分の下で甘くとろけたこの少女に。
赤ん坊よりも弱々しい力でかろうじて絡みあった指先も、だらしなく半開きになって淫語と涎をとろとろとこぼすその唇も、固く凝って自己主張している健気な乳房の先端も、頼りなく左右に開いた両足のあいだで淫らにひくつく蜜壺も……。
「いけない子、いけない子……っ、わたしのこと、こんなに、こんなに……どきどきさせて……っ」
さっきまで、あれほど遠慮がちだった紫の指は、今や幼い秘裂から蜜を掻き出そうとするかのようにその動きを激しくしていた。
ぷちゅ、ぷちゅぅっと蜜を秘所から吹き出しながら、天子は白い喉をさらして顔をのけぞらせ、舌を突き出して甲高い声であえぐ。
組み敷いた小さな躰がびくびくと跳ね、背中が布団から離れる。
しかし――未知の快楽に全身を翻弄されながらも、天子は決して紫の手を離そうとしない。
「きゃいぃぃぃっ! はひぃぃぃひぃぃ! あ、あ、あ、あ、あ、ら、めぇぇっ! しゅごいぃぃっ、しゅごいのらめぇえっ! いく、いく、いきゅうううっ、じゅぽじゅぽされていきゅぅぅぅぅっ!」
「天子、天子、天子ぃっ……! 見せてぇっ、いくとこ見せてぇっ、えっちなことされて、ちっちゃな体びくんびくんさせて、いっちゃうとこ見せてぇぇぇ……っ!」
瞬間、突き込まれた紫の指を、天子のそこが握りしめる。
母にすがりつく幼子のように、抱擁しあう恋人のように、握りしめる。
「にゃああんっ! にゃああああんっ! んにゃあああああああっ!!」
絶叫とともに腰がでたらめに跳ね、熱い飛沫が爆ぜた。
覆いかぶさった紫の体を、爆ぜた雫が濡らしていく。
つま先を布団に突き立てて、あられもなく晒された天子のそこからは止めどもなく潮が吹きこぼれ、細い腰がかくかくとふるえる度に桜色に染まった肢体にいく筋もの愛液の川が流れる。
「………………っあ」
びちゃっ、と濡れた音を立てて、天子の背中が濡れそぼった布団に落ちた。
絶頂を迎えたばかりの秘所を隠すことも出来ずに大きく開いた両膝のあいだでは、濡れたつぼみが花開いたまま、なおも蜜をこぼしている。
「天子……ああ……天子……かわいい、天子……ん、ちゅっ……」
陶然とした紫の声もまた、絶頂を迎えた熱を帯びている。
汗ばんだ頬に唇を寄せ、乱れた髪をなでてやると、激しい絶頂で気を失ってしまったらしい天子の唇が、かすかに笑みの形に動いた。
「はぁ……はっ、ひっ、あ……あー……あぁ、はぁ、ああー……」
ぐったりと体を投げ出したまま、天子は断続的に息をついている。
ゆっくりと上下する薄い胸が無性に愛おしく、紫はそっと手をあてがう。
「んっ……! やぁん、やぁぁんぅ……」
それだけで天子は、鼻にかかった甘ったるい声をあげて身をよじる。
「……我ながら、ちょっとやり過ぎちゃったかしら……ね……。でも……」
指先で目元をくすぐってやると、天子は子猫のように目を細め、頬をすり寄せてきた。
「んにゃ……んにゃぅぅ……」
「かわいいから、いっか……」
そんな無責任なことを言って、紫はもう一度、やわらかな頬にくちづけた。
しかし、数日後。
紫は己の愚を思い知らされることとなる――。
人里。
地震どころか、なんの騒ぎもない平和な、いつもの日常風景。
しかし――。
「……」
いる。
八雲紫の人ならざる鋭敏な感覚は、一見平和そのものといった人里の光景の中に潜むなにかを感じ取っていた。
いる。
後ろだ。つけてきている。
「じー……」
「……」
人里を抜け、森に分け入っても、背後にぴったりと着いてくる気配はなくならない。
ぴたり、と足を止める。
振り向く。
「――っ!」
後ろをついてきていた人影は、慌ててそばの木の影に隠れた。
……が、青いロングヘアが覗いていることには全く気がついていないらしい。
「……ちょっと」
「びくっ!」
「あんた、天子でしょ」
名指しされた天子は、こそ~っと木の影から顔を出した。
が、その顔には以前にあった時の生意気な表情はまったくない。
「……もぢもぢ」
「……あのね、あんたさっきからずーっとわたしの後着いてきてたでしょ。いったいなんの……」
用なのよ、と続けようとして、できなかった。
「ゆかり……っ!」
木の影から飛び出してきた天子が、いきなり抱きついてきたからだ。
紫はあえなくバランスを崩し、後ろに倒れてしまう。
「いったたた……ちょっとあんた、いきなりなに……」
するのよ、と続けようとして、できなかった。
「えへへ、ゆかりだぁ……ゆかりのにおいだぁ……やらかーい……」
やけに幼い口調でそう言いながら、天子は紫の胸に顔をすり寄せる。
「ゆかりぃ……会いたかったよぉ……」
妙に熱っぽい瞳で胸の谷間から見上げてくる天子に、紫はたじろぐ。
まずい。
この状況は非常にまずい。
幼い口調で抱きついてくる天子は異常に可愛いし頭なでなでしてあげたら顔赤くして「えへへぇ……♪」とか言っていてはっきり言って即死するほど可愛いが、非常にまずい。
「あの、天子? ちょっと待っ……」
待って、と続けようとして、できなかった。
塞がれたからだ。
口を。
口で。
「ん……ん、ちゅ、ちゅっ……」
塞がれたというほどのものではない、触れるだけの控えめなキスだったが、紫を黙らせるには充分だった。
「えへ、えへへ……ちゅー、しちゃったぁ……♪」
ぽーっとした顔で、天子は続ける。
「あのね、ゆかり……。わたしね……ゆ、ゆかりの……お嫁さんにしてもらいにきたの……きゃぁぁぁんっ、いっ、言っちゃったぁぁんっ♪」
「ナンデ?」
「だ、だって、ぜんぶ、はぢめてだったんだもん……っ。怒ってくれたのも、ちゅーも、おしおきも……え、えっちなことも……わたし、あんなにえっちぃこと、いっぱいされて、もぉ……らめ、らめぇぇっ……らめなのぉぉ……っ、思い出しただけでぇっ、わた、わたし……きゅんきゅんすゅのぉぉ……っ!」
身悶える天子を前に、紫は塑像と化していた。
いったい、何が起こっているのかわからない。
ただ、わかるのは。
「だからぁ、ゆかり……せきにん、とってよね……っ?」
もうどこにも逃げられないということ、それだけだった。
里の人間は……否、普通の人間は決して足を踏み入れることのないこの場所、マヨヒガの戸を容赦なく叩いているのは誰あろう博麗の巫女こと博麗霊夢だ。
そろそろ戸が嫌な音を立てて軋み始めた時、ようやくマヨヒガの主が姿を表した。
「ん~……うるさいな~。そんなにガンガン叩かなくても聞こえてるってば……」
目をこすりながらすっかり着崩れた寝間着姿で現れたのは、スキマ妖怪こと八雲紫。
「妖怪の賢者」としての威厳はすっかり寝床に置いてきたのか、ぼさぼさ頭を直そうともせずに眠たそうに目をこすっている。
「ちょっとアンタ、知ってるんでしょ?」
「ふわぁ~あ。何を~……ってふがふがふが、ハナ摘まないでよぅ」
「地震よ地震。最近人里の方で地震がやたら起きてるのよ」
「ふがふが、あ~……なんか藍がそんなこと言ってたような言ってないような」
「幸い被害が出るような規模と強さじゃないんだけど、もうここんとこ毎日起こってて苦情が大量に来てるのよ」
「そーなのかー……じゃあちゃっちゃと異変解決してくればいいんじゃないの~? 私寝る~」
「それで済むんだったらわたしがこんなトコまで来るわけないでしょ! これはアンタの仕事なのよ!」
「はぁ? どういうことよそれ?」
なおも寝ぼけ眼の紫に、霊夢は盛大なため息を一つ。
「あのねえ……アンタもう忘れちゃったの? 地震って言ったらあの不良天人しかいないでしょうが!」
「不良天人? ……あー、あのコね」
博麗神社を倒壊させた大地震と異常気象。
それをもたらしたのは、「非想非非想天の娘」こと、天界ののわがままお嬢様、比那名居天子だった。
「退屈しのぎ」というある意味最悪の動機で大事件を引き起こしたこの困ったちゃんには、紫自らキツイお灸を据えることとなった。
それ以来、顕界に彼女が姿を現したという話は聞いていないのだが……。
それが今になって、またなにかやり始めたというのだろうか。
「で? あのコが犯人だってわかってるんなら、さっさと行ってとっちめてあげればいいじゃない?」
「だから言ったでしょ! これはアンタの仕事なの! はいはいさっさと着替えて!」
「えーめんどくさーい……」
「……だんだんと私のカンニンブクロが温まってきたぞ、ユカリ=サン」
「アイエエエエエエ!?」
霊夢の双眸に宿るセンコ花火めいた光を見てとった紫は重篤なハクレイリアリティショックを受けものの数秒で支度を終了、人里に向かって出発した。(※失禁はしていない、いいね?)
とはいえ、件の困ったちゃんがいったいどこにいるのかわからない。
今から霊夢に聞きに戻るのはどう考えても不可能だ。しかしこのまま何もせず帰りでもしたら……。
想像するだに恐ろしい結果に身震いしつつ人里の上空をあてどもなくさまよっていると、目的の人物が自分から現れた。
「あーっはっはっは! ようやくお出ましね八雲紫!」
空中に浮いた要石の上でふんぞり返っているのは、天界が誇る最強の問題児こと比那名居天子だ。
あのときあれだけお灸をすえてやったというのに全く懲りていない態度に、盛大なため息を吐き出しつつ里の様子を見回す。
霊夢の言っていたとおり、今のところは地震による被害は出ていないようだ……というよりも、里の様子はいつもと全く変わりがない。
道を行き交う人々も、まったくいつもどおりの生活を営んでいるようにしか見えない。
「ふふふ、知っての通りわたしには大地を操る程度の能力があるわ! 今はまだ無事で済んでるけど、本気になればこんな村の一つやふたつ……」
「ねえヨネおばーちゃん、最近このへんで地震って起こってるの?」
「無視した!?」
「なんじゃ、騒々しいと思ったら紫ちゃんかい。地震? 雷なら爺さんに毎日落としとるがの! かっかっか!」
「もーおばーちゃんたら相変わらず元気ねー」
「無視すんな!」
「あ、そう言えばお孫さんは元気?」
「おう、もう十三じゃ。里の店で手伝いをやっとるわい。小さい頃は体が弱かったがな、元気に育ってくれたもんじゃ……」
「人間ってすーぐ大きくなるからねー。結婚なんかもうすぐよ?」
「かっかっか! 良い嫁が見つかるといいんじゃがの! どうじゃ紫ちゃん、うちの孫」
「あらぁ♪ それは光栄だけど、私は高いわよぉ? ……っていうか今の時期がいちばん美味しく頂けるんだけどねグッヘッヘ。それはともかく、どうなの? 地震」
「あーそれなんじゃがな。確かに小さい地震がこの所やたら多いんじゃが、なんだか里の外れでばっかり起こっとるようじゃ。じゃから里には被害は出とらんし、皆ももう気にしとらんわい」
「ふーん……? なんかよくわかんない話ねえ。ちょっとあなた、どういうことなのこれ?」
「……っく、ぐしゅ……無視、しないでよぉ……」
「……? なに泣いてるの?」
「ふぎっ!? ななな泣いてなんかないわよ!! こっ、これはその……あの、か、花粉症よ花粉症! 毎日涙と鼻水がどぷどぷ出てるのよ!!」
「死ぬわよそれ」
「うっさい! そ、それよりあんた、早くわたしを止めないとここら一帯大地震で壊滅状態にしてやるんだからね!」
「壊滅状態ねえ……」
また家から無断で持ちだしたのか、手にした緋想の剣をぶんぶん振り回しながら喚き散らす天子。
それを紫はじとーっと見つめる。
正直、何をしたいのかわからない。
以前の地震騒ぎの動機は「退屈しのぎ」というある意味最悪の動機で騒動を起こしたこの娘だが、今回はいったい何をしたいのだろうか?
本当に里を壊滅状態にするつもりなら、こんな里の外れで、しかも里の人間が気にも留めない規模の地震を起こすことには意味はない。
妖怪の賢者と呼ばれる八雲紫の頭脳を持ってしても、天子の行動にはなんら合理的な動機が見いだせない。
見いだせないが、それはそれとしてやっておくべきことはある。
「……ま、うるさいのがいるから、やることはやっとかないとね」
そして、しばらくして。
「ううう~っ、けほ、けほん」
村外れに場所を移しての紫との弾幕ごっこに見事敗れた天子は、けほけほ煙を吐きながらぺたんと座り込んでいる。
「はい終わり。これに懲りたらわざわざ人里まで降りてきておかしな騒ぎ起こすとかやめるのよ?」
「うー……」
一方、手近な岩に腰掛けて天子を見下ろす紫はまったくの無傷だ。
これにも紫は胸中で首を傾げる。
以前戦った時の天子は、緋想の剣の能力があったとはいえ、負ける勝負ではなかったにせよここまでたやすく勝てる相手ではなかったはずだ。
しかし今回の天子は別人のようだった。
動きは鈍い、狙いは適当、隙だらけ。
弾幕ごっこの最中、天子はまるで他の何かに見とれてでもいるかのようにやられ放題だったのだ。
「ねえあなた、ほんとに何がしたいの? 子供の駄々にしてももうちょっと論理的整合性ってものが……」
「ふーんだ! ……こ、これはあんたが悪いんだからね!」
「はあ? なに訳の分からないこと……」
はあ、と紫は大きなため息をつく。
もうとりあえず理由を考えることは止めよう。わけがわからない。
「もう理由はいいわ……。でも、罰は受けてもらうわよ」
「な、何する気よ罰って……きゃあっ!?」
天子は足元に開いたスキマに落下、次の瞬間には紫の膝の上にどさりとうつ伏せで落ちてきた。
釣ったばかりの魚のように膝の上でばたばた暴れる天子を押さえつけ、そのスカートを容赦なくめくり上げた。
白と青のストライプ模様のショーツに包まれた小ぶりなお尻があらわになる。
「ちょちょちょちょっと!? 何するのよぉ!?」
「おだまんなさい。悪い子にはお仕置きです」
そのお尻に、紫は平手を振り下ろした。
木立の間に、ぱぁん!という小気味良い音が響き渡った。
「きゃうううんっ!」
子犬のような悲鳴を上げる天子。
紫はさらに、数発平手を食らわせる。
そのたびに天子は、甲高い悲鳴を上げて体を跳ねさせた。
「や、やだっ、やめ……きゃぁんっ! はなし……っくぅん! ふっ、ふぅぅっ、きゃふうっ! ……っん!」
平手の回数が増えるに従って、天子はおとなしくなってきた。
悲鳴を上げるのもやめ、紫の膝にしがみつくようにして息を漏らしている。
膝を覆うロングスカートを通して、その息の熱さが伝わってきた。
五度、六度と破裂音が響くたびに、天子の悲鳴は小さくなり、あとは紫の膝に押し付けた口から息を漏らすだけになった。
天子がおとなしくなったのを見計らい、紫はお仕置きをやめる。
「さ、これでいい加減懲りたでしょ。これに懲りたら……」
そう言いかけて紫はぎょっとする。
膝のあたりが熱いと思ったら、天子は涙を流していた。
紫の膝に顔を押し付けて、ときおり声にもならないような小さな声を漏らしながら、天子は泣いていた。
「ちょ、な、なに泣いてるのよ!? そんな泣くほど痛くしてないでしょ!?」
慌てて細い肩を掴んで抱き起こすと、天子は顔を伏せた。
長い髪に隠れて、その表情は見えない。
しかし、あごの先からぽたりぽたりと垂れているのは、間違いなく涙だ。
「泣いでな"いも"ん!!」
「いや思いっきり泣いてるでしょ!?」
大声とともにがばっと上げたその顔は、涙まみれ。
天子は大粒の涙を溜めた目で、紫を睨みつけている。
「……なのに」
さっきとは打って変わって蚊の鳴くような声で、天子は何事かをつぶやいた。
すっかり困惑した紫はしかし、次の言葉でさらなる混乱に放り込まれた。
「わたし、紫に会いたかっただけなのにぃ!!」
「は……あ!?」
分からない。何もかもがわからない。
わたしに会いたかった?
つまり、一連のおかしな地震騒ぎはわたしを誘い出すためのものだった?
紫の脳裏に、霊夢の言葉が蘇る。
だから言ったでしょ! これはアンタの仕事なの!
「え……っと、あんたもしかして、私に会うために、こんな騒ぎを……?」
天子は答えない。
真っ赤な顔でスカートをぎゅっと掴んだまま、じーっと涙目で紫を睨んでいる。
――沈黙はすなわち、肯定だ。
「え……え、え、えええええー……っ!?」
わからない。
私に会いたかった? 何故? なんのために?
「あ、な……なんで、私に会いたかった、の?」
考えてもわからない問いが、ぽろりと紫の口からこぼれた。
唯一答えを知っているであろう天子は、「ひぐっ」と息をつまらせたかと思うと、とんでもない大声で泣き始めた。
「びゃああああああああーっ!! 紫のばかーっ! あほーっ! ニブチーン!! 鈍感系主人公ーっ!!」
「ちょちょちょっと!! そんな大声出さないでよ天狗にでも嗅ぎつけられたらえらいことになるでしょ!!」
そんな紫の訴えも、もう天子の耳には届いていないようだ。
涙を噴水のように撒き散らし、天子は耳を聾する大音声で叫喚し続ける。
百万の軍勢を相手にしたとて小揺るぎもしない妖怪の賢者の策謀も、これには何の役にも立たない。
「どどどどうしたらいいのよこれ……ああもうほら、いい子だから泣き止みなさいって……!」
どうしたらいいのかまったくわからず、紫はとりあえず天子の手を引っ張って抱きしめた。
「もがふっ」
天子の顔は、紫の豊かな胸の谷間に埋もれる。
「ほ、ほら、頭なでなでしてあげるから、ね?」
両腕で天子の顔をぐいぐい胸に押し付けながら、紫は不器用にその頭をなでてやる。
そのとっさの行動が功を奏したのか、胸元から漏れ聞こえる天子の泣き声はだんだん小さくなってきた。
ひっぐひっぐとしゃくりあげながら、天子は両手を紫の腰に回し、弱々しく抱きついてくる。
ようやくおとなしくなってきたのに内心ホッとする紫。
「ほら、拭いてあげるから、顔上げなさい」
涙で濡れた天子のあごを指先でくいっと上げてやると、天子は恥ずかしそうに目を逸らした。
またいきなり泣き出さないかと恐々としながら、紫は天子の顔を丁寧に拭ってやる。
「ん、んー……」
赤ん坊がむずがるような声を漏らす天子。
幸い、さっきのような爆発の気配は今のところないようだ。
改めて、腕の中の泣き虫を見下ろす紫。
時々しゃくりあげながらも紫の胸元から顔をあげようとしない様子は、外見よりもずっと幼い子どもに見える。
「ねえ……」
「な、なによぅ」
自分でも意外なほど優しい、それこそ泣いている子供を慰めるような口調で、紫は語りかける。
「……なんで、私に会いたかったの?」
「……っ!」
びくん、と肩が跳ねた。
「うん?」
「……っ」
天子は何も言わない。
紫の胸に顔を押し付けて、もごもご言っている。
「もお、何よ?」
「う、うー……」
熱い吐息で、胸元がくすぐったい。
よく見ると、顔どころか耳元まで真っ赤になっている。
「……って、くれたから」
辛うじて聴き取れる声で、天子はそう言った。が、結局何を言ったのかはよくわからない。
ふう、と溜息をひとつ。どうやら聞き出すのは無理そうだ。
しかたがないので紫は、子どもをあやすように天子の頭をなでてやる。
相変わらず天子は紫の胸に顔を押し付けているのでその表情は分からないが、胸元に感じる吐息はだんだん穏やかなものになってきた。
いきなり大泣きされた時の焦りは引っ込み、代わりになんだか愛おしい気持ちが湧いてきた。
「……お尻、痛かったでしょ? ほら、こっちもなでなで、してあげる……」
片手を伸ばし、めくれたスカートから覗いたままの小さなお尻をなでてやる。
「あ……っ!」
一瞬天子は肩をぴくんと跳ねさせた。
すべすべしたショーツに包まれた天子のお尻は、心地よい弾力で紫の指を押し返す。
「ふふ、かわいい……ほら、なでなで……」
小さな子にするように、優しくなでてやる。
天子は相変わらず紫の胸に顔をうずめたまま、顔を赤くしている。
その顔のあたりから、再び小さな嗚咽が漏れてきた。
「ちょ、ちょっと、なんでまた泣くのよ!? 別に痛いことしてないでしょ!?」
「ゆ……ゆかりがぁ……」
慌てて顔を引き剥がす。
その顔は、真っ赤になっていた。
「ゆかりが……えっちなことしたぁ……」
「ちょ……っ!? ひひひ人聞きの悪いコト言わないでよ! ちょ、ちょっとお尻なでただけじゃないの!」
「だって……だってぇ……えっちなことだもん……お尻、さわったもん……ゆかり、えっちなことしたもん……」
ぐしぐし泣いている天子を見ていると、何故か異様な罪悪感がこみ上げてくる。
なんだかすごく、致命的に悪いことをしている気になってきた。
これは……これはまずい。なんだかすごくまずい。
焦りと罪悪感が、紫の頭のなかからじりじりと正常な思考能力を奪っていく。
喉元にナイフをあてがわれた気分が下腹の辺りからこみ上げてきた。
こんなところを見られるのは、たとえ天狗でなくても絶対に避けなくてはならない。
しゅばばばっと四方を確認、よし、誰もいない!
「ちょ、ちょっとこっち来なさい!」
「え? わ、きゃあっ!?」
足元にぱくりとスキマが開き、二人はそのまま落下。
反射的に身をすくめる天子を受け止めたのは、布団の感触だった。
スキマの先に通じていたのは、紫の部屋だった。
だらしないことに今朝起きた時のまま、布団が出しっぱなしになっているが、そんなことを気にしている余裕はない。
常時結界を張っているこの場所なら、少なくとも人目につくことはない。
「と、とりあえずここなら問題ないわね……で、えーっとなんだったかしら……そうよ、あなたなんで私に……」
「……ここ、どこ」
「わ、私の部屋……だけど」
そう答えるなり、再び天子は爆発するように大声で泣き始めた。
「びゃあああああああーっ!! テゴメにされるうううううーっ!!」
「こらーっ!? あんた言うに事欠いてなんてことーっ!?」
「ひどい、ひどいよお……人目のつかないところに連れ込んだあげくりょーぢょくの限りを尽くすつもりなのね!! そんなの、まだ早いのに……わたし、はじめてなのにーっ!!」
相変わらずわけのわからないことを喚きながらぎゃんぎゃん泣いている天子を前に、途方に暮れる紫。
人目につかないところに移動したと言うのに、事態は一向に好転していないどころか、致命的に危険な方向に転がっている気がする。
「も、もうっ! さっきから泣いてばっかり! だ、だいたいあなた、いったいなにがしたいのよ!?」
紫がそう言うと、天子はまた「ひぐっ」と息をつまらせた。
天子が言うには、この地震騒ぎを起こした動機は「紫に会いたかったから」らしい。
だがその理由が、まったくわからない。
お礼参りというならまだわかるが、どうもそういう雰囲気ではない。
「……泣いてばっかりじゃわからないでしょ? ね、どういうことなの?」
努めて優しく問いかけたつもりだが、口元がひくひくしているのが自分でも分かった。
どのくらいの時間、しゃくりあげている天子を前にじっとしていただろう。
ようやく天子はその口から、小さなつぶやきをこぼした。
「叱って、くれたから……」
ようやく聞き取れるほどの小さな声で語られたその言葉は、やはり不可解なものだった。
しかし紫は、沈黙でその先を促す。
天子はまだしゃくりあげながらも、続ける。
「紫だけ、だったんだもん……あんなふうに、叱ってくれたの……誰も、外面じゃへらへらして、陰口叩くばっかりで……誰も……」
「……」
少しずつ、話が……天子の本心が、見えてきた。
あの地震騒ぎの時に、異変の張本人である比那名居天子のことはある程度調べていた。
比那名居一族は、その上司である名居守が神霊として祀られる事になった際に、合わせて天界へと移住した一族だと聞いている。
本来修行を積んでなるはずの天人に、十分な格を備えることなくなってしまった彼らを、快く思う天人などいなかっただろう。
まして天子は、幼いころをこの不相応に恵まれすぎた環境で育ってしまったのだ。わがまま放題になってしまったのも無理からぬことだろう。
事実、博麗神社を倒壊させるほど異変を起こし、紫の怒りを買ったわけだ。
「だから……えっと、悔しかったし、腹も立ったけど、でも、なんか、うれ、しくて……」
途切れ途切れの天子の言葉を、紫はじっと聞いている。
「だから、その……もっかい、会いたくて、あ、会って、ごめんなさい、言いたくて……でも、どうすればいいか、わかんなくて……」
「……それで、あんな騒ぎ起こしたの?」
「でっ、でも家壊したりとか、してないから! ちゃんと誰も住んでないところでしかしてないから!」
慌ててまくし立てる天子。
その様子に紫はきょとんとして……それから思わず吹き出してしまった。
「な、なんで笑うの……?」
また泣きそうになる天子のほうに素早く紫の両腕が伸び、その体を抱き寄せた。
「ばかな子……」
自分でも驚くほど優しい声。
紫はさっきと同じように、天子の長い髪を優しく撫でる。
「ば、ばかじゃないもん……」
抱きしめられた天子は、弱々しい抗議の声を上げるが、それだけだった。
頭を撫でる紫の手の感触に目を細め、まどろむような顔つきになっている。
「……ごめん、なさい」
「うん……」
そろそろと天子の両手が紫の腰に伸び、控えめな力できゅっと抱きついてきた。
紫の胸に顔をうずめているその顔は、まるで幼児のように幼く見える。
天子はしばらくそのまま、紫に弱々しく抱きついていた。
そのしおらしい様子は、出会った時の、そしてついさっきの傲岸不遜な態度からは想像もできない。
(ふふ……可愛いところも、あるんじゃないの)
我知らず、口元に柔らかな笑みが浮かんでくる。
頭を撫でていた手を下におろし、頬にあてがう。
そうすると天子は、くすぐったそうに目を細めた。
「ゆかり……」
紫の手のひらに頬をすり寄せながら、天子は声を漏らす。
無防備で、幼い声。
その声に紫は、自分の浮かべた笑みが深くなるのを感じた。
指先をあごに沿わせ、上を向かせると、天子は従順に従った。
「かわいい、天子……」
そう囁き、紫は天子の真っ赤になった頬に唇を寄せる。
ちゅ、ちゅ、ちゅ……と音を立て、紫は天子にやさしく口付けた。
「ん、ん……」
天子は両手をきゅっと握って、紫の口付けを受け入れている。
……と、そこまで来て、ようやく紫は我に帰る。
(……はっ!? わ、私ったらいったいなにを!?)
ガクガクしながら、紫は恐る恐る天子の表情を窺う。
「ゆかりが……ちゅーしたぁ……」
ぽーっとした顔でそんな事を言う天子は、紫の知っている彼女の何倍も幼く見えた。
「だ、だってこれはその、あ、あんたがなんかしおらしいこと言うから、ついかわいいなーって、思わず……。そ、それにほっぺにちゅーくらいなんでもないでしょ!?」
「だって、ちゅーだもん……ゆかり、ちゅーしたもん……」
また大声で泣かれるかとビクビクしている紫の手を、天子は遠慮がちに握った。
「な、なに!?」
上ずった声を上げる紫をすっかり潤んだ瞳で上目遣いに見上げながら、天子は消え入りそうな声で言った。
「もっとぉ……」
「あ……」
紫の口から、我知らず吐息が漏れる。
胸の奥が締め付けられるような感覚に襲われた。
両手がほとんど意図せずに上がり、天子の頬をやさしく包む。
天子も察してか、潤んだ瞳をそっと閉じた。
顔を近づけ、繰り返し上気した頬にくちづける。
「んっ、あ、んんっ……」
紫の唇が頬に触れるたび、天子は小さな声を上げた。
「ゆかりぃ……」
小さな子供が母親に甘えるように、天子は再び紫の胸に顔を埋める。
吐息で、胸元が温かい。
その吐息が催促しているような気がして……あるいは自分がそうしてやりたくなっただけか、紫はまた天子の長い髪をなでてやる。
見下ろした天子の顔が、安堵に緩んでいくのがわかった。
「かわいい……」
またそうつぶやく。
そうすると天子は、照れたように紫の胸の谷間に顔を隠してしまった。
小さく笑い、紫は天子の小さな体を抱き寄せる。
「ゆかり……」
胸の谷間から、視線だけを上げる天子。
その様子が小動物めいて愛おしく、紫は甘い声で返事を返した。
「なあに? あまえんぼさん」
「なでなで、して……」
「? さっきからしてるじゃない」
「え、と、そ、そじゃなくて……その……」
天子はしばらくもごもごした後、ぽそりと言った。
「お……おしりも、さっきみたいに、なでなで、して……?」
「だ、だってさっき大泣きしてたじゃない」
「そ、それはびっくりしただけで、あの、い、いやとかじゃなくて……だから、その……」
だんだん語尾が消えていくのに、紫は小さな苦笑を漏らした。
背中に回していた手を下にやり、めくれたままのスカートから覗いている天子のお尻にそっと触れる。
「ふゃ……!」
ストライプのショーツに包まれた小さなお尻が、ぴくんと跳ねた。
頭をなでてやったのと同じように、お尻の曲線をそろそろとなでる。
「はぁうぅ……」
安堵の溜息のような声を漏らしながら、天子は紫の愛撫に身を任せている。
小さなお尻が左右に揺れているのが可愛らしく、紫は口元に自然に笑みが浮かんでくるのを感じた。
目が合うと、天子は恥ずかしそうに視線をそらす。
「ふふふ……」
「な、なによぅ……」
「かわいいなあ、って。ちっちゃなお尻、ふりふりして。もっと触って、って、おねだりしてるみたい」
「うー……」
もぞもぞ身じろぎする天子。
小さな体を不器用に擦り寄せてくるのが、たまらなくいとおしい。
「ゆかり、ゆかりぃ……」
天子の声には、いつしか熱が混じり始めていた。
鼻にかかった甘い声で、紫の名を呼ぶ。
その熱が伝染したように、紫も頭の後ろあたりがじんわりと熱くなって来ているのを感じた。
「かわいい……」
吐息とともにそうつぶやき、天子の長い髪をかき分け、耳元を指先でくすぐってやる。
「んっ、んぅ……」
天子はくすぐったそうに目を細めながら、子猫のように紫の手に自分の頬をすり寄せてきた。
すり寄せながら、天子は潤んだ瞳を紫に向ける。
「ん? なぁに……?」
「ん……えっと……」
ごにょごにょ言っている天子が可愛くて、紫はそっとその頬に手をかけた。
「ふふ……ね、なにか、してほしいコト、あるの?」
「は……ぁう……」
天子の中途半端に開いた唇からは、言葉ではなく熱い吐息がこぼれるばかり。
それでも天子は、吐息混じりになんとか言葉を紡いだ。
「……ちゅー……ちゅーうぅ……」
それは、天子のせいいっぱいのおねだりだったのだろう。
一瞬、天子の潤んだ瞳に見とれる。
ひどく弱々しい力で、天子は紫の服をきゅっと掴む。
胸が締め付けられるのを、紫は感じた。
「も、もう……ほんとに……この子は……」
顔を近づけると、天子は安堵の表情を浮かべた。
長い間迷子になっていた子どもが、ようやく母親に会えたときのような……そんな表情だった。
「可愛いんだから……」
くちづけた頬は、さっきよりもさらに熱くなっていた。
「ん、ちゅ……ちゅっ……」
「ふぁ……」
いったん唇を離した紫は、自然な動作で天子の細い顎に指先をかけ、上を向かせる。
「んぅ……っ」
唇を重ねると、天子の手がぴくんとふるえるのが分かった。
その手に、紫は自分の手を重ねた。
「んっ、んっ、ん……」
ふるえる唇に、胸が締め付けられる。
なんのことはない。
下手をすれば幻想郷全体の危機につながりかねない異変を引き起こしたこの少女は、ただのつよがりで、わがままで、寂しがりの女の子だったのだ。
「は……ぁっ」
離した唇から溢れる吐息は、いっそう熱くなっていた。
その熱は、果たして天子だけのものだろうか。
「ちゅー……しちゃった……ぁ……」
陶然とした表情でつぶやく天子に、紫は胸の内がかあっと熱くなるのを感じた。
「ゆかり……ゆかりぃ……」
はぁ、はぁ、と熱い吐息を漏らしながら、天子は紫の胸元にぎゅっと抱きついてきた。
「ちゅー、きもちよかったの?」
「ん……」
赤くなった顔を紫の胸の谷間に隠しながら、天子は小さな声でなんとか答えた。
そんな様子に釣られるように頬が熱くなるのを、紫は感じた。
妙に気恥ずかしく、いじらしい天子の様子から引き出した嗜虐心で、それをごまかそうとする。
「じゃあ……もっといっぱい、ちゅーしてあげる……」
唇を寄せると、天子はきゅっと瞼を閉じて、少しだけ顔を上げた。
唇へのキスを期待している天子へのいじわるのつもりで、紫は熱くなった頬にくちづけた。
それから、真っ赤になった耳たぶへ。
「ひぅんっ!」
声を上げ、肩をすくめる天子。
首筋に矛先を変えると、天子の声は長い吐息に変わった。
「は、あぁぁ……んっ、あ、はぅぅっ……」
そろそろいいかな? そう思い、紫は天子の顔を窺う……そうしようとするより先に、天子のふるえる手が、赤ん坊よりも非力な力で紫の服を掴んだ。
そして、弱々しく、くい……と引っ張る。
「お……おくちにも、もっかい、ちゅー……して……?」
「……っ! こ、こ、この娘ってば……!」
いじわるしてやるつもりが思わぬ反撃を受け、今度こそ紫の顔は真っ赤になった。
見下ろす天子の瞳は潤んで、幼い唇は物欲しげに吐息をこぼしている。
ほとんでそれに誘われるように、紫は再びくちづける。今度はもっと深く。
「んぅぅーう……」
鼻にかかった甘い声は、どこか嬉しげだ。
体を離そうとすると、半開きになった濡れた唇のあいだで、小さな舌先がひらめくのが見えた。
天子の幼い表情の中で、そこだけが艶めかしい。
離れようとしていた二人の熱を帯びた体が、再び重なりあう。
どちらから抱き寄せたのかは、もうわからなかった。
重ねられた口内で、天子の舌先が紫の唇に触れる。
「んっ、んっ、ん……」
弱々しく両腕を絡めて、天子は縋るように紫を求める。
紫も同じだった。
もっと深く、くちづけたい。もっと深く、重なりたい。
そんな想いを込めて、紫は天子の舌を絡めとる。
「ん、ぷは、ぁ……」
ゆっくりと唇を離すと、その間には唾液の糸が淫らな曲線を描き、ぷつりと切れた。
「はぁ、は、あぁ……は……」
天子はすでに肩で息をしている。
そんな天子がいじらしく、紫はその体をそっと抱きしめた。
胸の谷間に、天子の吐息が熱い。
「ゆかりの……おっぱい、やぁらかぁい……」
「やわらかいの、好き?」
「ん……すき……すきぃ……」
天子はそのまま、しばらく胸の谷間に顔を埋めていたが、潤んだ瞳で紫の方を見上げてきた。
小さな声で、何事かを呟く。
「ゆかり……えっとね、その……あのね……」
顔を赤くしてぽしょぽしょ言っている天子が可愛らしくて、紫はその頬にもう一度唇を寄せる。
「なあに……? うん? 言ってごらんなさい?」
髪を撫でながら優しく聞いてやると、天子は恥ずかしそうに、小さな声で言った。
「あ、あのね……ゆ、ゆかりの、おっぱい……ちゅぱちゅぱしても、いい……?」
そんな天子のおねだりに、紫は一瞬あっけにとられ、そして、ふっと笑みを浮かべた。
天子を抱きしめた胸の奥で、愛おしさが大きくなるのがはっきりと分かった。
「ふふ……」
「わ、笑わないでよぅ……!」
「だって、あんまり可愛らしいこと言うんだもの……」
「うー……」
そんな天子の頬にもう一度くちづけて、紫の細い指が、するすると着衣をはだけていく。
甘い熱を帯びた肌があらわになっていくのを、天子は陶然とした目で見ていた。
はだけられた道服が、するりとなめらかな曲線を描く肩から滑り落ちた。
「あ……」
あらわになった紫の豊かな乳房に、天子は視線を釘付けにする。
「や、やだ、あんまりじっと見ないでよ……」
「だって……きれいなんだもん……。ゆかりのおっぱい、おっきくて、きれい……」
まろやかな曲線を描く豊かな乳房に、天子は吸い寄せられるようにそっと顔を埋める。
「やぁらかぁい……おっぱい、ふわふわで、ぽよんぽよん……」
すべすべした頬を乳房にすり寄せる天子の髪を、紫は優しくなでてやる。
「ほら、天子……あーんして……」
乳房を持ち上げその先端を口元に寄せてやると、天子は赤ん坊のように吸い付いた。
「はむ、んぅ……、ちゅ、ちゅぱ、ちゅ……」
時折ぽろぽろと涙をこぼす天子。
それを見下ろしながら、紫もまた吐息をこぼす。
「ん、あ……ふふ……かわいい子……おいしい? 私のおっぱい、おいしい……?」
「うん……あまぁくて、ぽよぽよで……すき……ゆかりのおっぱい……すき……」
ちゅ、ちゅ、と控えめな音を立てて、天子は紫の乳首を小さな唇で吸う。
意識してか無意識にか、天子の口内でその舌先が、つん、つん、と紫の乳首をつつく度、紫は背中をかすかにふるわせた。
性的な快感だけではない。
腕の中に抱きしめた少女のぬくもりが、たまらなくいとおしい。
「甘えたかったの……?」
「うん……」
「さみしかったの……?」
「うん……」
「もう、さみしくなぁい……?」
「……ん……」
紫の背中に弱々しく両手を回し、天子は白い乳房に甘えつく。
やわらかな唇が乳首を挟み込み、小さな舌が乳輪をなぞる。
「んぅーう……んちゅ、ちゅぱ、ちゅう……ん、んふぅ……ぺろ、ちゅっ……」
幼子がむずがるような声の中に、次第に甘く、快楽をこらえるような色が混ざり始めてきた。
見れば天子は、夢中で紫の乳房を吸いつつ、しきりに太ももをこすりあわせている。
「はぁぁう……ゆかり、ゆかりぃ……ん、ちゅぷ、はぁ、はぁ……ゆかり……」
潤んだ瞳が、紫を見上げる。
体の奥に疼く快楽の熱を持て余しているのであろうことははっきりと分かった。
「天子、すごく、はぁはぁしてる……」
「だって、だってぇ……」
耳どころか首筋まで赤くして、天子は言い訳じみた言葉をもらす。
その口調はもう、幼児めいてとろけていた。
「ゆかりのおっぱい、ちゅぱちゅぱしてたらね……ん、はぁ……おなかの、奥がね、きゅんきゅんって、熱くて……」
知らず知らずのうちにだろう、天子は幼い体を不器用に紫にすり寄せてくる。
熱に浮かされたように火照った体は、服越しにも熱い。
「ゆかりぃ、ヘンだよぉ……わたしの体、ヘンだよぉ……」
「天子、もしかして……」
そういう事を、知らないのだろうか。自分で、慰めたことすら――?
困惑と同時にこみ上げてきた甘い熱に突き動かされるように、紫は天子の熱い裸形を、褥に優しく横たえた。
天子は断続的に吐息を漏らしながら、濡れた瞳で紫を見上げている。
なにするの――?
不安げに揺れる瞳がそう言った。紫は微笑みで返す。
「苦しそう……大丈夫、私が――」
規則的に上下する天子の薄い胸の上で白い十指が踊るたび、蕾がほころぶように、ブラウスが少しずつ花開いていく。
「楽に、してあげる……」
「あっ、あ――や、やぁぁ……」
抵抗と言うにはあまりにも弱々しい声を上げて、天子はふるえる両手で露になりかけた胸元を隠そうとする。
「いや……?」
努めてやさしくそう聞くと、天子はかすかにかぶりを振った。
両手をそっとなでてやると、天子は横に視線をそらして、手をどけた。
汗ばんだささやかなふくらみの上で、桜色の先端が健気にふるえている。
「やぁぁ……は、はずかしぃ、よぉぉ……」
「どうして……?」
「だ、だって……おっぱい、ぺったんこで、小さいもん……ゆかりみたいに、おっきくないもん……」
涙目でそう言う天子を見下ろしながら、紫は自分の吐息が熱くなってきているのをぼんやりと自覚した。
そっと天子の頬に振れる。熱い。
「いいじゃない、可愛くて……」
頬にやった指先を、あごの先、そして首筋へと滑らせていく。
天子の体は、紫の指先が動くたびに敏感に反応を返す。
紫は意識して、鎖骨のあたりに差し掛かった指先を動きを遅らせる。
焦らしているのは、身を横たえた少女なのか、それとも自分自身なのか、もうよくわからない。
「あっ、やっ、やぁぁう……」
鎖骨のくぼみを指先でなぞるだけで、天子は汗ばんだ体をくねらせて甘い声を上げる。
「もぉ、ちょっとくすぐってあげただけなのに……そんな声あげて……」
つう……と指先が鎖骨から滑り降り、かすかなふくらみの先端にたどり着くまでの間、天子が桜色に染まった肌をふるわせるのを、紫は時間を駆けて愉しむ。
指先の向かう先を意地悪く、胸のふくらみの横に逸らしてやると、天子の吐息は面白いように乱れた。
肌から離れた指先が、今度こそその先端に触れようとした瞬間、天子は投げ出していた両手で布団をぎゅっと掴んだ。
「ひぅぅぅん……っ!」
紫の指先が、淡いピンク色の乳首にそっと触れると、引き絞るような声とともに天子の背中が布団から浮いた。
思わず反射的に手をどけてしまった紫だが、再びゆっくりと愛撫を再開した。
「ここ、気持ちいい……?」
「わ……かんな、いぃ……はぅんっ! な、なんだか……じんじん、してっ、あ!」
真っ赤になった耳元に唇を寄せてそう聞くと、天子は乱れきった呼吸の下から辛うじて応える。
その答えも、紫の指先がなめらかな肌の上で踊るたびに、悦楽の吐息にかき消されていく。
「はっ、はぅぅんっ! さきっぽ、さきっぽがぁ……じんじん、するよぉぉ……っ、じんじん、とまんないよぉ……わっ、わたしのからだっ、どんどん、ヘンになってくよぉぉ……」
「だぁいじょうぶ……ゆーっくり、やさーしく……きもちよーく、してあげるから、ね……」
壊れ物を扱う手つきで、紫の指先がそっと幼い乳輪をなぞる。
その度に天子の背中は布団から浮き、膝が踊った。
つんと固くなった乳首を指の腹がきゅっと押しただけで、天子は両足の指をぎゅうっと丸めた。
「ほら、かわいーいさきっぽ……くにゅ、くにゅって……」
「ひぁぁぁ……あっ、あ……あー……あ……」
天子の声はもうすっかりとろけ、甘い喘ぎがその唇から漏れるのみだ。
「ふふ……触って、触ってって、おねだりしてる……もっと、してほしいんだ? えっちなコ……」
「やぁぁん……ちがうもん……わたし、えっちじゃないもん……きゃぁんっ!」
親指と人差し指で、そっと固くなった先端をつまむと、天子は高い悲鳴とともに抗議を中断した。
手のひらにすっぽり収まるささやかなふくらみを、紫は小さな子供の頭を撫でるように、優しく愛撫する。
手のひらの下には、汗ばんだ肌のぬくもり、小さな乳首の感触、そしてその奥で激しく暴れる心臓の鼓動を感じる。
(すごく、どきどき、してる……)
なんとなく、もう片方の手を自分のむき出しの胸にあてがった。
天子と同じように汗ばんで、天子と同じようにその奥に激しい動悸がある。
ふふ……と、どこからともなく笑みが、嬉しい気持ちがこみ上げてきた。
「ほら……なで、なで……くにゅ、くにゅ……」
「んにゃぁ……は、は、はぁぁ……きもち、いいよぉ……さきっぽ、くにゅくにゅ、きもち、いいよぉ……」
シーツを両手で必死に掴んで、天子は甘い嬌声を上げる。
その可憐な唇からは、は、は、と断続的な吐息とともに、桃色の舌先がこぼれ出る。
その様は、天子の幼い肢体と裏腹に、ひどく淫らに見える。
「あっあ……おっぱい、おっぱい、じんじんって……ゆかりに、くにゅくにゅされて、ひぁ……えっちだよぉ……こんなの、えっちだよぉ……」
うわ言のようにこぼれるその言葉が、耳に甘い。
情交の熱に半ば浮かされながらも、紫は愛撫を続ける。
くるり、くるりと踊らせていた指先で、そっと乳首をつまむ。
「きゃはぁっ!」
途端、天子の嬌声と、そしてふるえていた細い肩が跳ね上がった。
じっとりと汗ばんだ背中が布団から浮き、あやういアーチを描き、そして一瞬後、その肢体はどっと倒れこんだ。
「は、ひ……っ、ひぁ、ひくっ、ひっ、はわぁ……っ」
淫らなスタッカートを刻みながら、ひくひくと小刻みにふるえる天子に、紫は思わず愛撫の手を引っ込めてしまった。
(い、今ので……イッちゃった……の?)
「はひ、ひ……んっ、んっ、は、は、はぁぁう……」
四肢を縮こまらせて、天子は胸元で両手を合わせ、指一本触れられていないというのにふるえる唇からしきりに吐息を漏らしている。
絶頂を迎えたのは明らかだった。
「て、天子……?」
紫の呼びかけも、涙を湛えた視線を揺らすのが精一杯のようだった。
あまりの過敏な反応に罪悪感さえ湧いてくる。
「ゆ……ゆかりが……」
その唇が、ようやく意味の取れる単語を発した。
「ゆかり、がね……おっぱい、きゅってしたらね……さきっぽ、あつくなっって……からだ、びくびくって……」
まだ整わない呼吸の下から、ふるえる……否、甘くとろけた声音で紡がれる言葉は、小さな子供のそれのように幼い。
幼い乳房を弄んでいた手で優しく天子の頭をなでてやりながら、紫はもう片方の手を、下へと移動させていく。
断続的にふるえる白いお腹の辺りをなで、その下、今や汗とそれ以外の液体でじっとりと濡れているショーツの辺りに指先を這わせる。
そのまま脱がせようかとも思ったが、紫の手はそこを通り過ぎ、弱々しくふるえる太ももを這う。
「はぁぁうぅ……」
紫の手のひらが太ももの外側から内ももへとゆっくり移動するのに合わせ、天子は長い溜息のような声を漏らす。
行き着いたそこは、触れる前から紫の手に向かって熱気を放っていた。
「そ……そんなトコも、さわる……の?」
「いや……?」
そう聞くと、天子は弱々しく、だがはっきりと首を横に振った。
「やじゃ……ないよ……。ゆ、ゆかりなら……いい、よ……。でも……」
「でも……?」
「ちょっと、こわい……。さっきから、ヘンなの……こ、ここ、きゅううーってなって、じんじん、熱くて……」
はぁ、はぁ、と乱れた吐息をこぼしながら、天子は瞳をうるませている。
少し心配になって、紫は尋ねる。
「ええと、その……ひとりでしたこととか、ないの?」
「……?」
「じ、自分で触ったり、とか……」
「したこと、ない……」
不思議そうな顔で、紫を見上げている天子。
本当に、そういう事を知らないのだ。したこともないのだ。
……そんな少女が、あられもない姿で自分の下に横たわっている。
そのことに紫は、ほとんど怖気に近い官能が背筋に走るのを感じた。
かくかくと頼りなくふるえる膝の間から手を離し、紫は天子の頭を優しくなでてやる。
「だいじょうぶ……とっても、きもちよーく、してあげるから……ね?」
小さな子供をあやすように言ってやると、天子もようやく、少しだけ呼吸を整えることができたようだ。
両手をきゅっと握って、それでもまだ少し不安そうに言った。
「は……はじめて、だから……やさぁしく、してね……?」
「……っ!!」
油断していた。すっかり忘れていた。
天子の心配をしているどころではなかったのだ。
思わず抱きしめて、そのまま……となりそうなのをすんでのところでこらえ、紫はゆっくりと内ももにあてがった手のひらを、じんわりと熱いそこへ持っていく。
指の腹がショーツ越しにほんの少し触れただけで、薄布の向こうの熱さが伝わってきた。
「ひあ……」
弱々しい声を上げる天子。
その声音からは、まだ戸惑いが見て取れた。
ゆっくり、ゆっくりと、指先を動かす。
天子の未成熟なそこは、蜜であふれていた。
視線を向ければ、ショーツのストライプは熱く濡れて、ぷっくりとふくらんだ恥丘の形を浮かび上がらせている。
子猫のような声で喘ぐ天子とはまるで真逆の……否、幼いからこその淫靡さがそこにはあった。
わずかに指を動かしただけでも、ぷちゅ、くちゅ……と淫らな水音が響き、指を離せばとろりと糸をひく。
「きもち、いい……?」
「わ、かんないぃ……すごく、あつくて、きゅんきゅん、するのぉ……」
離した指を、再びそこにあてがう。
それだけで天子は、小さなお尻をぴくんと跳ねさせた。
はぁ、はぁ、と吐息をこぼす天子の表情を見つめながら、紫は慎重に指先を動かす。
自分で言ったとおり、ゆっくり、やさしく、愛撫する。
天子は明らかにこういう経験がないのだ。過ぎた愛撫は苦痛を与えてしまいかねない。
ゆっくり、ゆっくりと、小さく円を描くようにあてがった中指を動かす。
天子は口元に指を持って行き、漏れ出る吐息をこらえようとしているようだが、そのささやかな抵抗は徒労に終わり、口元からはか細い――嗜虐心をそそってやまない喘ぎが漏れ聞こえる。
「ひぅん、ひぅん、ひぅぅぅん……」
しゃくりあげるようなその声に、紫の手は今にも持ち主の意思に反して――あるいは持ち主の意思に忠実に――薄布一枚を隔てるばかりの幼い秘奥に指先をねじ込み、思う様陵辱の限りを尽くしそうになる。
紫の力を使えは、それ以上の手段で、それ以上の快楽を貪ることすら出来るだろう。
だめだ……だめだ、そんなことをしては。
天子が求めているのはそんなことではないし、自分が求めているのもそんなことではない。……はずだ。
しかし――。
技倆の拮抗した剣士の戦いの趨勢がほんの少しの隙で分かれるように、紫の胸中にある欲望が、腕一本とは行かないまでも、その指先、ほんの先端の支配権を一瞬だけ奪った。
その指先が無慈悲なまでの正確さで、天子のそこを――じわりと濡れた秘所の上、つんと尖った雛先を探り当てた。
「ひ――!?」
瞬間、天子の全身が跳ねた。
電気が走ったように全身を痙攣させ、背中が完全に布団から浮く。
「はっ、はひっ、ひっ、ひっ、ひっ、ひぃぃぃ……っ!」
布団に両のつま先をぎゅうっと突き立てて、天子は腰を天井に向けて突き上げ、ふるわせる。
じっとりと濡れそぼった股間を魅せつけるような、あまりにも過敏な反応と淫らな姿態に、紫は我知らず、ごくりと生唾を飲み込む。
ショーツに覆われたそこは濡れそぼって、青と白のストライプがその部分を隠すどころか、余計に強調しているかのようだ。
幼い花弁はくちゃりと花開き、その奥に秘めた蜜壺からは、とろとろと蜜が溢れている。
あふれた蜜は、肌とショーツの隙間からこぼれ落ち、数本の筋を描いてあどけなさの残る太ももを滑り落ち、つま先を伝って布団の上に染みを作っている。
「はひぁ、ひぁっ、はっ、はっ、はぁぁっ、ひきゅっ、ひくっ……」
途切れ途切れの呼吸に合わせて細い腰が揺れるたび、天子の秘所は、ぷちゅっ、ぷぴゅっと音を立てて熱い蜜を吹き上げる。
唐突に、糸が切れたかのように天子の全身が弛緩し、濡れた音を立てて布団の上に投げ出された。
両膝は完全に力を失って頼りなく左右に開き、びっちゃりと濡れたそこを隠そうともしない。
「はひゃ……ぁ……はっ……ひっ……ひぅぅぅ……」
もはや天子は、まともな言葉を発することすらできないでいる。
涙をたたえて潤んだ瞳の焦点はふわふわとして合っておらず、引きつったような声を漏らす唇は半開きのまま閉じることもできないようで、たらたらと垂れる涎が、かたかたとふるえるあごの先から布団にまで、とろりと糸を引いている。
「あ、あ……」
まともな言葉を発することが出来ないのは、紫も同じことだった。
言葉どころか、まともな思考をするだけの余裕もなくなってきている。
「て、天子……イッちゃった、の……?」
「わ、かんなぁぃぃ……からだじゅう、びく、びくん、って……あたま、まっしろ、に……おまた、からぁ、おもらし、ぷちゅぅーって……」
うわ言のように、とぎれとぎれにそう答える天子。
どうしていいかわからず、紫は天子の涙で濡れて熱で火照った頬に手をあてがう。
「ふぁ……ゆ、かりぃ……ゆかり、の、て、だぁ……♪」
天子は、童女のように微笑み、紫の手に熱い頬をすり寄せる。
快楽の熱に浮かされているためか、幼児めいてとろけた口調がこぼれる。
「わたしぃ……わたし、ゆかりの手、すきぃ……やさしぃく、なでなでしてくれる、からぁ……ん……ちゅっ、ちゅ……」
「あ、あ……天子……!」
甘くとろけた言葉を紡ぐ唇が、紫の指先をとらえた。
紫の指に、ちゅ、ちゅ、とくちづけを繰り返し、火照った頬をすり寄せる。
胸の内が燃え上がるような感覚が紫を襲った。
熱い。体中が、熱い。
天子の熱が乗り移ったかのように、紫の体もまた熱く火照っていた。
「て、天子……も、もっとしても、いい……? 天子のこと、もっと、気持よくしてあげたい……!」
余裕などとうに蒸発してしまっていた。
もう紫には、目の前で熱い裸体を晒している少女を愛したい――愛し合いたい、それしか考えられなかった。
口調が乱れ、呼吸すらも乱れている。
はぁ、はぁと息をつく紫を、天子は布団の上に横たわったまま、潤み切った瞳で見上げている。
まだふるえの止まらない両手を頼りなく伸ばし、すがりつく。
「いい、よ……して、ほしい……ゆかりに、きもちよく、してほしい……」
天子は、握った紫の手を自らの下半身に……今しがた絶頂を迎えたばかりのそこに、導いていく。
「して……ゆかりぃ……さっきみたいに……おまた、きもちよく、してぇ……きもちぃの、して……」
「て……天子……!」
甘くとろけた声音と潤んだ瞳。
熱く濡れたままの秘芯を、天子は不器用に腰を動かしながら、握った紫の指先に擦り付ける。
「は、はぁぁぁ……んっ、んっ、ゆかり、して、してよぉ……きもちぃのぉ、んんんっ?」
一瞬だった。
灼熱の愛おしさに紫の思考が揮発するのは、一瞬だった。
完全に物事が考えられなくなった。
獲物の喉笛に牙を突き立てる肉食獣のごとく、天子の唇を奪っていた。
「んんーっ、ちゅぷっ、れるっ、れるぅぅっ、んちゅ、ちゅうぅぅっ……!」
強引に突き込まれた紫の舌を、とろけきった口腔と舌が迎え入れる。
後から後からあふれる唾液の中を紫の舌が動きまわり、抱擁をねだるように拙く動く天子の舌を絡めとる。
体の下で、組み伏せた天子の体が断続的にふるえるのを、紫は全身を密着させて感じ取ろうとする。
「んんんぅーっ……! んぁっ、ひぁぁぁ……」
「っぷぁ、はぁ……あ……」
思う様天子の口腔を蹂躙し、ようやく紫は体を離す。
唇を離し、口から舌を引き抜くと、とろりとした唾液のが名残惜しげにふたつの舌先をつなぐ。
激しく上下する薄い胸に落ちる唾液のしずくにさえ、天子はぴく、ぴくんとその体をふるわせる。
「てん……し……天子……もっと、もっと気持ちよくして、あげるわ……」
声がふるえるのを、紫は抑えられなかった。
じっとりと濡れたショーツに手をかけると、天子はかすかに声を上げた。
物を握るのもおぼつかなさそうな開いたままの両手で、なんとか顔を隠そうとする。
「ぱんつ……ぬがしちゃう、の……?」
「いや……?」
思わずそう聞くと、天子は潤んだ瞳で紫を見上げ、弱々しく首を横に振った。
「は、はずかしい、けど……やじゃ……ない、よ……。ゆかりに、えっちなことされるの、やじゃ、ないよ……」
健気なその言葉に、紫は胸が締め付けられるのを感じた。
何か言葉をかけてあげたかったが、出てくるはずの言葉は喉元に引っかかったまま。
結局紫にできたのは、天子の頬にくちづけることだけだった。
ショーツに手をかけ、ゆっくりと下に下げていく。
「……や、ぁ……」
顔を覆った両手の隙間から、天子のか細い声が聞こえた。
ずり下げられたショーツから、つぅ……と糸を引いている。
「こんな、に……こんなに、濡らして……」
つま先からショーツを抜き取る。
天子は両のふとももをしきりにすりあわせてそこを隠そうとしているが、その仕草はかえって情欲をあおるばかりだ。
「ね……天子……。見せて……」
「見たい、の……? わたしの……わたしの、はずかしいとこ、見るの……?」
「見せて、ほしいな……」
指の間から覗く瞳をぎゅっとつぶり、天子は頼りなく揺れる立てた両膝を、おそるおそる開いた。
桜色に上気したほっそりとした両足のあいだから、確かに聞こえた、くちゅり……という水音に、紫の首筋が粟立つ。
「ゃ……ぁ……」
か細い羞恥の声とともに、少女は、幼くあやういつぼみを、露わにした。
覆い隠すものの何もない、ぴっちりと閉じた花弁から、とぷ……っと、蜜がこぼれる。
我知らず、紫の細い喉が、こくりと唾を飲んだ。
「かわいい……」
思わず、そんな言葉が口をついて出た。
幼い、幼児のようですらあるそこが、ひくひくとふるえ、あふれる蜜がいく筋もふとももを伝い、布団にぽたぽたと染みを作っている――そんな淫靡な光景を目の前にしてなお、紫は自身の胸中に情欲よりも先にいとおしさが湧き上がるのをはっきりと自覚した。
いとおしい。
赤子を抱く母のそれと同じいとおしさに突き動かされ、紫は天子のそこに手を伸ばす。
「こんなに……濡らして……」
すこし迷って、紫は人差し指を選んだ。
壊れ物に触れるように、努めてやさしく、指の腹をぷっくりとした恥丘に這わせる。
「ふやぁっ……あっ、あー……」
戸惑ったような声を上げる天子。
その反応が可愛らしくて、紫が熱いほほに唇を寄せると、天子はくすぐったそうに目を細めた。
「天子のここ……とってもかわいいわ……ほら、ぷにぷにってすると、きもちいーいでしょ……」
「あっ、あっ……な、んか、ふわぁって、なる、よぉ……ひゃ……あ、あぁ……」
「天子ったら……ふふ、首筋まで赤くして……ん、ちゅっ、ちゅ、ちゅ……」
「ひゃうぅん……っ! だ、めぇ……おまたと、ちゅっちゅとぉ、いっしょにするの、だめぇ……」
かぶりを振るたび、ぎゅっとつぶった両の目から、ぽろぽろと涙がこぼれた。
その涙を舌先で拭い取ってやりながら、紫は人差し指に中指を加えて、蜜であふれた天子のそこを、そっとひらいた。
くちゅ……と糸を引きながら、ピンク色の蜜壺が口を開く。
人差し指をあてがうと、天子の両膝がぴくんと跳ねた。
すっかり熱くなった耳たぶを舌先でなぞりながら、天子の表情をうかがう。
「は、わぁぁ……あー……はぅぅ……」
半開きになった口元から、とろりと涎をこぼしながら、天子は甘ったるい吐息をこぼしている。
(だいじょうぶ、かな……)
人差し指を曲げ、慎重に、ゆっくりと、指先をそこに埋没させていく。
「ふゃわぁぁ……」
でたらめなビブラートの伴った嬌声が、指先の動きに敏感に、従順に奏でられる。
きゅ、きゅ、と断続的に指先を締め付けてくるその感触が、紫の脳裏に、ちいさなちいさな手で指先を握る、泣き虫でわがままな、青いロングヘアの子供の幻像を呼び起こす。
「ふふ、かわいい……天子のここ、私の指、ぎゅーってしてるわ……」
「ふにゃ、にゃぁ……ゆ、びぃ……ゆかり、の、ゆびっ、が……ぁ、は、ひ、きゅぅぅぅん……」
「だいじょうぶ? いたくなぁい……?」
「んーん……」
紫のその問に、はぁ、はぁ、と、ひっきりなしに乱れた吐息をこぼす唇が、ひどく幼い笑みを形作った。
それに紫も、安堵の笑みを漏らした。
注意深く、少しずつ、敏感なそこに埋めた指先を出し入れする。
ちゅぽ、ちゅぽ……と音がするたび、天子は紫の指の動きに従順に、白い喉を晒して、あえぐ。
「はぅ、はぅ、はぅぅぅんん……」
「どぉ……? きもちいい……? ちゃんと、きもちい……?」
「……ゆっ、びぃぃ……ゆかりのっ、ゆびがぁ……っ、わたしのおまた、にゅぷ、にゅぷって、してるぅ……ひぅんっ、にゃぅんっ……きもひぃ、よぉぉ……ちゅぽちゅぽ、きもひぃよぉぉ……ゆかりの、ゆび、きもちぃよぉぉ……」
切なげな嬌声を上げながら、とろけた口調で拙い淫語をこぼす天子の痴態に、紫はいつしか見入っていた。魅入られていた。
「そんな、そんなえっちなこと言って……悪い子……いけない子……」
天子に釣られるように、紫もまた、愛撫をしながら吐息を漏らす。
はぁ、はぁ、とひっきりなしにこぼれる吐息まじりの天子の言葉が、だんだんと小刻みになっていく。
幼い秘裂が指を締め付ける感触に、紫は天子の絶頂が近いことをはっきりと感じ取った。
「は、あぁー……あ、あ……あっ、あっ、あっ、あっ、らめっ、らめらめっ、れひゃうっ、えっちな、おもらひっ、れひゃうよぉぉぉ……っ」
「うん、いいわよ、ああっ、天子、天子……かわいい子……っ」
愛撫をしている紫もまた、愛撫されているかのように熱い吐息とともに睦言をこぼす。
ふるふるとふるえる小さく幼い肢体を抱き寄せ、体の中に愛しさを吹きこもうとするかのように、深く、深く、くちづける。
「んんんーっ、んふぅぅっ、ちゅぅぅっ、んっ、れるっ、んちゅっ……んぱぁっ」
「はわぁぁ……あぁむっ、んふ、んふ、んんん……ぇあ、ああー……あ……」
唇を離したかと思えば、淫らにくねるふたつの舌が互いの唾液をすするように絡み合い、抱擁する。
唇の端からあふれた唾液が、天子の細いあごを、首筋を伝い、つんと尖った桃色の乳首を濡らしていく。
紫は指先を目も向けずにそこへ伸ばし、濡れた乳首を指先で転がす。
「きゃぁぁうぅっ……! ひぁ、ひゃわぁぁ……らめぇ……おっぱい、くりゅくりゅすゅの、らめぇぇ……さきっぽ、じんじんして、きゅぅぅんっ……ふゃぁぁ……」
天子がとろけた嬌声を上げて身をくねらせる度、紫が指先を埋めたそこは、断続的に指先を締め付けてくる。
「へんなのぉ……わらひのからだ、へんらよぉぉ……おっぱい、つんつんでぇぇっ、おまた、きゅんきゅんでっ、しゅごく、えっちに、なっちゃうよぉぉ……っ!」
「いっちゃうのね? ぷにぷにのおまた、くちゅくちゅされて、いっちゃうのね……っ?」
「ふぇぁぁぁ……い、く……? えっちになるの、いく、って、ゆーの……?」
「そうよ……だから、気持ちよくなったら、いくって、言うのよ……? 気持よくしてあげるから、いくって、言うのよ……?」
「う、ん……い、くぅぅ……い、くの……わらひ、ゆかりに、いっぱぁぁぁいぃ、えっちなことされて、いく、の……ふぁ、ふゃぁっ!」
幼児のように舌っ足らずの口調での絶頂の予告に、紫の背筋が粟立つ。同時に、情交の熱に浮かされた躰の中央が、じわりと熱く濡れるのがわかった。
愛撫されているのだ。自分も。自分の下で甘くとろけたこの少女に。
赤ん坊よりも弱々しい力でかろうじて絡みあった指先も、だらしなく半開きになって淫語と涎をとろとろとこぼすその唇も、固く凝って自己主張している健気な乳房の先端も、頼りなく左右に開いた両足のあいだで淫らにひくつく蜜壺も……。
「いけない子、いけない子……っ、わたしのこと、こんなに、こんなに……どきどきさせて……っ」
さっきまで、あれほど遠慮がちだった紫の指は、今や幼い秘裂から蜜を掻き出そうとするかのようにその動きを激しくしていた。
ぷちゅ、ぷちゅぅっと蜜を秘所から吹き出しながら、天子は白い喉をさらして顔をのけぞらせ、舌を突き出して甲高い声であえぐ。
組み敷いた小さな躰がびくびくと跳ね、背中が布団から離れる。
しかし――未知の快楽に全身を翻弄されながらも、天子は決して紫の手を離そうとしない。
「きゃいぃぃぃっ! はひぃぃぃひぃぃ! あ、あ、あ、あ、あ、ら、めぇぇっ! しゅごいぃぃっ、しゅごいのらめぇえっ! いく、いく、いきゅうううっ、じゅぽじゅぽされていきゅぅぅぅぅっ!」
「天子、天子、天子ぃっ……! 見せてぇっ、いくとこ見せてぇっ、えっちなことされて、ちっちゃな体びくんびくんさせて、いっちゃうとこ見せてぇぇぇ……っ!」
瞬間、突き込まれた紫の指を、天子のそこが握りしめる。
母にすがりつく幼子のように、抱擁しあう恋人のように、握りしめる。
「にゃああんっ! にゃああああんっ! んにゃあああああああっ!!」
絶叫とともに腰がでたらめに跳ね、熱い飛沫が爆ぜた。
覆いかぶさった紫の体を、爆ぜた雫が濡らしていく。
つま先を布団に突き立てて、あられもなく晒された天子のそこからは止めどもなく潮が吹きこぼれ、細い腰がかくかくとふるえる度に桜色に染まった肢体にいく筋もの愛液の川が流れる。
「………………っあ」
びちゃっ、と濡れた音を立てて、天子の背中が濡れそぼった布団に落ちた。
絶頂を迎えたばかりの秘所を隠すことも出来ずに大きく開いた両膝のあいだでは、濡れたつぼみが花開いたまま、なおも蜜をこぼしている。
「天子……ああ……天子……かわいい、天子……ん、ちゅっ……」
陶然とした紫の声もまた、絶頂を迎えた熱を帯びている。
汗ばんだ頬に唇を寄せ、乱れた髪をなでてやると、激しい絶頂で気を失ってしまったらしい天子の唇が、かすかに笑みの形に動いた。
「はぁ……はっ、ひっ、あ……あー……あぁ、はぁ、ああー……」
ぐったりと体を投げ出したまま、天子は断続的に息をついている。
ゆっくりと上下する薄い胸が無性に愛おしく、紫はそっと手をあてがう。
「んっ……! やぁん、やぁぁんぅ……」
それだけで天子は、鼻にかかった甘ったるい声をあげて身をよじる。
「……我ながら、ちょっとやり過ぎちゃったかしら……ね……。でも……」
指先で目元をくすぐってやると、天子は子猫のように目を細め、頬をすり寄せてきた。
「んにゃ……んにゃぅぅ……」
「かわいいから、いっか……」
そんな無責任なことを言って、紫はもう一度、やわらかな頬にくちづけた。
しかし、数日後。
紫は己の愚を思い知らされることとなる――。
人里。
地震どころか、なんの騒ぎもない平和な、いつもの日常風景。
しかし――。
「……」
いる。
八雲紫の人ならざる鋭敏な感覚は、一見平和そのものといった人里の光景の中に潜むなにかを感じ取っていた。
いる。
後ろだ。つけてきている。
「じー……」
「……」
人里を抜け、森に分け入っても、背後にぴったりと着いてくる気配はなくならない。
ぴたり、と足を止める。
振り向く。
「――っ!」
後ろをついてきていた人影は、慌ててそばの木の影に隠れた。
……が、青いロングヘアが覗いていることには全く気がついていないらしい。
「……ちょっと」
「びくっ!」
「あんた、天子でしょ」
名指しされた天子は、こそ~っと木の影から顔を出した。
が、その顔には以前にあった時の生意気な表情はまったくない。
「……もぢもぢ」
「……あのね、あんたさっきからずーっとわたしの後着いてきてたでしょ。いったいなんの……」
用なのよ、と続けようとして、できなかった。
「ゆかり……っ!」
木の影から飛び出してきた天子が、いきなり抱きついてきたからだ。
紫はあえなくバランスを崩し、後ろに倒れてしまう。
「いったたた……ちょっとあんた、いきなりなに……」
するのよ、と続けようとして、できなかった。
「えへへ、ゆかりだぁ……ゆかりのにおいだぁ……やらかーい……」
やけに幼い口調でそう言いながら、天子は紫の胸に顔をすり寄せる。
「ゆかりぃ……会いたかったよぉ……」
妙に熱っぽい瞳で胸の谷間から見上げてくる天子に、紫はたじろぐ。
まずい。
この状況は非常にまずい。
幼い口調で抱きついてくる天子は異常に可愛いし頭なでなでしてあげたら顔赤くして「えへへぇ……♪」とか言っていてはっきり言って即死するほど可愛いが、非常にまずい。
「あの、天子? ちょっと待っ……」
待って、と続けようとして、できなかった。
塞がれたからだ。
口を。
口で。
「ん……ん、ちゅ、ちゅっ……」
塞がれたというほどのものではない、触れるだけの控えめなキスだったが、紫を黙らせるには充分だった。
「えへ、えへへ……ちゅー、しちゃったぁ……♪」
ぽーっとした顔で、天子は続ける。
「あのね、ゆかり……。わたしね……ゆ、ゆかりの……お嫁さんにしてもらいにきたの……きゃぁぁぁんっ、いっ、言っちゃったぁぁんっ♪」
「ナンデ?」
「だ、だって、ぜんぶ、はぢめてだったんだもん……っ。怒ってくれたのも、ちゅーも、おしおきも……え、えっちなことも……わたし、あんなにえっちぃこと、いっぱいされて、もぉ……らめ、らめぇぇっ……らめなのぉぉ……っ、思い出しただけでぇっ、わた、わたし……きゅんきゅんすゅのぉぉ……っ!」
身悶える天子を前に、紫は塑像と化していた。
いったい、何が起こっているのかわからない。
ただ、わかるのは。
「だからぁ、ゆかり……せきにん、とってよね……っ?」
もうどこにも逃げられないということ、それだけだった。
母性あふれる紫と、幼児退行していく天子の対比が実に素晴らしい……。
ただ、序盤の霊夢の、あまりにも唐突なナラク化(しかし台詞はラオモト=サン)という強烈なアンブッシュに腹筋が爆発四散!
るみゃれいむと咲マリの辺りから読ませて頂いてます、今作も砂糖たっぷりの作品をありがとうございます!
母性溢れるゆかりんと甘えきった天子が堪りません……!
あと、冒頭の霊夢さんとゆかりんのやりとりに腹筋を見事にもっていかれました(笑)