クラスターは病院職員から広がった… 感染者60人超の青梅市立総合病院、院長が教訓語る

2020年12月2日 15時57分

「初動が遅れたことなどが反省点」とクラスター発生を振り返る大友院長=青梅市立総合病院で

 新型コロナウイルスの感染者集団(クラスター)が八月〜九月に二つ発生した青梅市立総合病院の大友建一郎院長(59)が、本紙のインタビューに応じた。院内感染が収束する十一月までに六十人以上の感染者が出た原因に関し、最初の患者に対する初動が遅れ、病院職員を介して感染が広がったと分析。職員や患者への教育の徹底で収束にこぎつけた経緯を語った。 (聞き手・林朋実)
 −八月下旬に入院患者一人が陽性となった病棟で、最終的に患者九人、職員十四人が感染した。
 「最初に陽性となった入院患者は当時ベッドから動けない状態だったので、職員の手を介して広がったとしか思えない。職員は感染防御していたが、できていると思っていたことができていなかった。初動も遅れた。まず職員をPCR検査し、患者は後になった」
 −職員の感染防御が十分でなかったのか。
 「推論だが、例えば食事前に看護師がベッドを起こすため患者を動かす時、手袋をしていない部分で患者に触れ、消毒をきちんとしないまま次の患者に触れることがあったのだろう。最初の病棟を閉鎖した後、他の病棟から看護師に応援に来てもらったが、感染防御教育が徹底できていなかった。看護師の感染者はほとんどが応援組だった」
 −九月中旬には別の病棟でクラスターが発生した。
 「おそらく最初の病棟から医療従事者がウイルスを持って行った。そのころに病院全体に不安感が芽生えた。不要な場面でフェースシールドやN95マスクをするなど明らかに過剰な装備をする職員もいた。感染が広がったのは、装備をしていなかったからではなく、患者の体調の変化にコロナを疑って対応することができなかったからだ。すべての患者に過剰装備をするのは間違っていると伝えた」
 −十月にはさらに二つの病棟で感染者が出たが、広がらなかった。
 「患者が発熱したら、すぐに隔離して対応するようにした。入院患者はさまざまな理由で発熱する。主治医だけでなく、各病棟に感染担当医を置き、発熱者への対応をダブルチェックした。いくら入院時にPCR検査をしても、潜伏期間があるので、入院後に発症する患者が出ることは防げない。ベッド周りのカーテンを開けたらマスクを着けるなど患者教育も強化した」
 −都内で感染が拡大している。現在の医療体制は。
 「うちの病院でコロナ患者に使えるのは、集中治療室(ICU)二床を含めて二十床。十一月末現在で十数人が入院し、一人が中等症、あとは軽症だ。今は都心ほど逼迫(ひっぱく)していないが、重症者が出ると一気に厳しくなる。重症者受け入れは数人が限度。人工心肺装置ECMO(エクモ)は一台しか回せないだろう」
<青梅市立総合病院> 1957年開院。許可病床数は529床。西多摩地域で唯一、重篤疾病や多発外傷を扱う三次救急に対応した救命救急センターがあり、小児救急も行う。都の西多摩保健医療圏の地域災害拠点中核病院、国の地域がん診療連携拠点病院に指定されている。

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