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コロナ禍で30〜40代のホームレスが増え始めた。支援現場に危機感、都は1000室確保を宣言

冬にさしかかり、支援団体への相談者も増加。東京都はビジネスホテルなどの部屋を1000室、一時的に確保すると発表したものの、危機感が広がっている。

認定NPO法人自立生活サポートセンター・もやい、一般社団法人つくろい東京ファンドら生活困窮者の支援団体は11月30日、東京都に対し、住まいを失った人への年末年始の緊急支援を要望した。

冬にさしかかり、支援団体への相談者も増加している。どのような支援が必要とされているのだろうか。

広がる危機感、都はホテルの部屋を確保すると発表

夏以降、生活困窮に関する相談や炊き出しへの参加者は増加しており、寒さの厳しい冬に向け、支援団体の間では危機感が広がっているという。

例年であれば、野外で生活困窮者の相談や宿泊場所確保を行う団体もある。だが、今年は生活困窮者の増加や新型コロナ感染防止の観点から、実施できるか不透明な状況だ。

そんな中、東京都は12月21日から1ヶ月間、ビジネスホテルなどの部屋を1000室、一時的に確保する費用に5億円の補正予算を計上したことを発表した。

一方、支援団体は都が4月以降に実施してきた住宅支援の反省点を踏まえるよう、要望している。

都の支援策を知らず、自力で食いつないだ人も…

10の支援団体が今回、東京都へ要望したのは以下の2点だ。

(1)年末に向け、広義のホームレス状態にある人へ生活保護など適切な支援制度へつなぐための相談窓口を、年末年始の期間でも対応できるよう緊急に設けること。

(2)住まいを失っている相談者に対して、感染防止対策の取られた個室を確保し、緊急宿泊事業を行うこと。その際、春からの緊急事業で見られた課題を踏まえること。

・わかりやすく、どこから入っても十分な支援が受けられる経路の設計と、支援についての積極的な広報。

・相談需要に応えられる十分な相談体制の整備。
ホテル宿泊後は既存制度を柔軟に使いながら、住居への移行を図ること。

・支援後の実績を調査し、評価検証後に結果を公表すること。


支援団体は雇用が不安定でネットカフェなどの居住環境にある人、各種給付金が期限を迎える人、雇い止めやなどに伴う失業者、既に住まいを失っている路上生活者などに広く支援を届けることを求めている。

そこに記載された要望は、どれも支援現場で目にしてきた課題を解決するためのものだという。

Yuto Chiba / BuzzFeed

NPO法人TENOHASIの代表・清野賢司さん

池袋で生活困窮者支援を行うNPO法人TENOHASIの代表・清野賢司さんは、8月に出会ったある相談者のことが「忘れられない」と語った。

その男性は4月から8月まで、日雇いの仕事をしながら路上で生活していたという。

「なんで東京都が提供しているビジネスホテルを使わなかったんですか?」

清野さんが尋ねると、「それはなんですか?」と問い返された。

男性は携帯電話を持っていたが、利用料金を払うことができず、電波は通じない。辛うじて、Wi-Fiがつながる場所では必死に仕事探しをしていたという。

「困窮した方には情報が届きにくい。熱意を込めて広報をしないと、必要な方へ支援は届きません」

行政の支援を受けているのに、なぜ炊き出しに?

支援団体要望書から

都ホテル退所者の主な行く先

また、春には利用する窓口による支援内容の違いも現場で混乱を生んだ。

生活に困窮し、住まいを失った 、もしくは住まいを失いかけている人が利用できた制度は以下の3つだ。

(1)TOKYOチャレンジネット
3ヶ月以内に自立し、就労できる見通しが立つ人のみを対象にした東京都独自の制度。

(2)生活困窮者自立支援制度
生活保護の一歩手前で、生活が立ち行かなくなった人を支える国の制度。自立相談、家計相談、就労訓練等を行う。

(3)生活保護


TOKYOチャレンジネットを利用した場合、一時宿泊所となるホテルの部屋と食事は提供される。しかし、現金の給付はなく、就職活動をすることが困難な人も出てきた。

他方、生活困窮者自立支援制度を使った場合、ほとんどの区市で提供されたのは一時宿泊所となるホテルの部屋だけだった。生活に困窮していても食事が与えられることはなく、なかには炊き出しに並ぶ人もいた。

清野さんは以下のように語る。

「TOKYOチャレンジネットでは3食出るけど、区や市の生活困窮者自立支援制度から行くとお金もご飯も出ない。ホテルで飢える、という事態が起きました」

「ホームレス=おっちゃん」というイメージに変化

Yuto Chiba / BuzzFeed

夜回りの際には食べ物やマスクを配布して回る

池袋の炊き出しに並ぶ人の数は290人を超え、前年の2倍近くにまで増えている。

これまでは高齢者も多かったが、新型コロナの影響で若年層が増え、30代から40代がボリュームゾーンになってきたという。

「ホームレスと言えば、『おっちゃん』というイメージだった。でも、今ではまったく変わって、若い人がスマホにイヤホンをさしながら、炊き出しに並ぶ風景が普通になっています」

東京都の支援策は、どこまで改善されるのか?

支援団体は都の支援とは別に炊き出しや相談会などを準備しつつ、その動向を注視している。

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