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この記事について、補足しておこうと思います。 まず、記事中で引用されている性別と数学パフォーマンスについての「ステレオタイプ脅威」の近年の研究知見についての理解は、自分の知り得る限りでもおおむね正しいと思います。(1/16)
引用ツイート
@psychama
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「ステレオタイプ脅威」のメタ分析では確かに効果がほとんどみられていませんし、再現性の危機は大きな問題ですが、「嘘」と言い切ることには違和感があります。一部の人には効果が存在する可能性は否定できませんし。 /「女性が数学を苦手なのは偏見が原因だ」という嘘 buff.ly/39CBrEZ
返信先: さん
大規模な調査研究を行なっている、Ganley et al. (2013) や Flore et al. (2018) では、確かに有意な効果がみられませんでしたし、Flore & Wicherts (2015) のメタ分析では一定の効果がみられたものの、出版バイアスなどの問題もあって、今後の研究の必要性が指摘されています。(2/16)
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また、Shewach et al. (2019) のメタ分析でも「効果は非常に小さいか無視できるほど」と結論づけられており、更にこれまでの研究手法の課題についても述べられています。 その課題の中には「現場での研究の少なさ」もあり、そこで現場での研究における効果の弱さについても言及されています。(3/16)
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ただ、これらの研究のいずれも「ステレオタイプ脅威の効果は存在しない(嘘である)」とは一言も言っていません。あえて言うとしても「本当に存在するかは分からない」「大きな効果があるとは言えない」くらいでしょう。実際、まだよく分からない部分が大きいからです。(4/16)
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このあたりの細かい考察は Lewis & Michalak (2019) でも行われているんですが、もともと効果が大きくてそれが年々弱まってきたのか、もともと効果は小さかったのかは(この論文を読む限りでは)はっきりしないようです。(5/16)
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しかし、そもそも「ステレオタイプ脅威」に関する研究は大規模な研究をやったら良いとか、メタ分析をやったら良いというだけではなくて、文化要因をはじめとした他の文脈要因についても検討しないと、はっきりとした結論は出せないとも思います。(6/16)
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たとえば、薬の効果というのは基本的にアメリカ人でも日本人でも同じ人間であればそこまで大きく変わるものではありません。個人差はあっても「文化差」はふつう存在しないと考えて差し支えないと思います。(7/16)
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しかし、心理学が扱うような現象は、多かれ少なかれ「文化差」のような外的要因が絡んできます。 特に、今回のテーマとなっている「性ステレオタイプ」は文化の影響が露骨に生じている可能性があります。簡単な話、ジェンダーギャップの大きい国と小さい国では影響が異なる可能性があります。(8/16)
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すなわち「ステレオタイプ脅威の近年の研究では十分な効果がみられない」という話をもって「嘘でした」と言えるほど単純な話ではないんです。これは、記事の中で取り上げられている「再現性の危機」の議論にも通じる部分です。(9/16)
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「再現性の危機」問題についても、もちろん研究手法の精緻化や、問題のある研究実践(p-hackingなど)を減らすことは重要ですが、それらをもって完全に「再現性」なるものを保証できるかと言われたら、心理学という学問の特性上、実は難しいと言わざるを得ません。(10/16)
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一番わかりやすい理由としては、われわれの生きる社会やそこで生きる人は変わり続けているということが挙げられると思います。人や社会が変化すれば研究が再現されなくなることは当然あるわけです。それは別に「嘘」ではありませんし、そんなものまで全部なくすことはできません。(11/16)
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また、この記事のもっと根本的な問題として、心理学が多くの場合で "平均値" を扱った学問である以上、全体としての効果が有意でなくても、ある人たちにはネガティヴな影響を与えているという可能性は否定されないという点も指摘しておく必要があります。(12/16)
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特に、高校・大学の入試とか就職とかの個々の事例を考えれば、極端な話、「ステレオタイプ脅威の効果は否定されていたとしても、配慮する価値はある」とすら言えるかもしれません。全体として影響がなくても、ある個人に影響があれば、結果的に「不当な差別」になるからです。(13/16)
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長くなってしまいましたが、一言で結論をまとめておくと「ステレオタイプ脅威」の最新の研究知見を取り上げて「嘘」と言い切ることについては、もう少し慎重になった方がいいと思うということです。特に、個々の事例を考える際には研究とは別の観点が必要になります。(14/16)
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ちなみに、あえて苦言を呈しておくと、そもそも心理学では「ステレオタイプ」と「偏見」と「差別」を区別して議論するのが普通であり、まずタイトルからしてあまり良くないという点も念のため指摘しておきます。厳密には「偏見」のせいとは言えないと思います。(15/16)
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また、「ステレオタイプ脅威」というのはどちらかといえば暗黙のうち(潜在的)に作用するものであり、記事の感想にあったような「個人の実感に合わない」という見解は、正直に言って「当たり前だ」という感想しか出てこないというのも念のため。(16/16)
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