新型コロナウイルスの感染が、ますます勢いを増している。24日は全国で1日1229人の感染が判明した。感染者が増えればそれだけ重症者や死亡者が増える可能性も高くなるが、重症者は前日比14人増、死亡者は19人増と踏みとどまっている。厚労省によると、感染者が重症化する割合は約1・6%、死亡は約1・0%と、以前よりも低下しているという。リスクの低い20〜30代の感染が多くなっているためとの見方もあるが、新型コロナに対応している医療現場で効果的な治療法が確立されてきた側面も見逃せない。新型コロナ患者を受け入れている江戸川病院の加藤正二郎院長に聞いた。

 江戸川区では保健所が新型コロナ患者を受け入れている施設の病床の空き具合を考慮しながら、重症者は東京臨海病院、中等症〜軽症者を江戸川病院などに振り分けている。

「新型コロナウイルス感染症は、患者さん自身の免疫力がしっかり機能すれば、多くは自然と回復していきます。しかし、その過程で肺炎を起こし、炎症を防ぐためのサイトカインがたくさん放出されて暴走すると、重度の呼吸不全をきたすARDS(急性呼吸窮迫症候群)を発症して重症化したり死亡を招きます。江戸川病院では、軽症・中等症の患者を重症化させないために、サイトカインの暴走をコントロールしながら炎症を抑える薬物治療を実施していて、ある程度の手順も整理されてきました」

■軽症・中等症でれば救命率は98%

 軽症〜中等症の患者にはまず免疫調整剤の「プラケニル」を使って炎症を抑えながら免疫を調節し、抗生剤の「アジスロマイシン」を併用して細菌性の肺炎が合併するケースを防ぐ。

「プラケニルはヒドロキシクロロキンとも呼ばれ、SLE(全身性エリテマトーデス)や膠原病の治療薬として使われています。米国では抗マラリア薬として使用され、トランプ大統領が一時服用しているとして注目されました。副作用のリスクがはっきり確認できないという意見も報じられましたが、すでに自己免疫疾患の治療で広く使われていて安全性は確認されていますし、新型コロナ患者の場合、高濃度かつ長期間にわたって服用するわけではないため、重篤な副作用のリスクは低いといえます」

 数日間、2剤を服用してウイルス抗原の量を測定し、ウイルス=抗原が多く残っている状況が続けば抗ウイルス薬の「アビガン」や「レムデシビル」を使うかどうかを検討する。

 ウイルスが減っていれば、肺炎の程度を見ながら炎症を抑えるステロイド薬を使用するかどうかを決めるという。

「ステロイド薬を使うと免疫が落ちるので、ウイルスが多く残っている状態では使用しません。また、新型コロナ患者は気道や肺胞の粘膜が荒れるため、細菌に感染して細菌性の肺炎を合併するリスクが高くなります。仮に細菌性肺炎が強く表れている場合は、さらに抗生剤を使います。いずれにしても、基本的には抗ウイルス薬を投与してウイルスを退治するのはレアケースです」

 薬で炎症を抑えながら免疫をコントロールして軽快した後は、後遺症を防ぐためにすべての患者に対して抗血栓療法を行う。

「新型コロナの患者さんは、あちこちで血管炎が起こり血栓ができてしまいます。それが倦怠感、めまい、耳鳴り、息切れといった後遺症につながっていると考えられています。そのため、血液をサラサラにする抗凝固剤『ワーファリン』を使って血栓の形成を防ぎます」

 江戸川病院では、軽症〜重症に近い状態を含む中等症の患者にこうした手順で薬物治療を行い、人工呼吸器はほぼ使わずに救命率は98%に達している。新型コロナ患者を受け入れている施設同士で症例を共有しながら、より効果的な治療法が確立されてきているのだ。