コンクリート構造物の止水
白石建設工業株式会社
工事部
幡吉 圭祐○Keisuke Hatayoshi |
工事部
横井 博隆Hirotaka Yokoi |
1.はじめに
工事概要
(1) 工事名:伊方町九町浄化センター建設工事その2
(2) 発注者:日本下水道事業団
(3) 工事場所:愛媛県西宇和郡伊方町九町地内
(4) 工 期:自)平成22年6月22日 至)平成23年2月28日
浄化センター施設のうち、汚泥ポンプ室、塩素接触水路、原水マンホール、返流水ピットの施工と、場内道路、場内配管、水路、門塀、フェンス、植栽、屋外灯などの外構を施工する工事である。
2.現場における問題点
塩素接触水路(縦:5.40m 横:12.7m 高さ:2.4m~3.0m)の施工にあたり、底版コンクリートと側壁コンクリートの打ち継ぎ部の止水性が求められるが、当初設計には止水板等の止水対策の明示が無かったため、元請業者として止水対策の検討をおこなう必要があった。
3.工夫・改善点と適用結果
まず、底版コンクリートと側壁コンクリートの打ち継ぎ部のチッピングを入念におこない、十分に清掃をおこなう(図-1、2)。
図-1 チッピング状況 |
図-2 清掃完了 |
壁厚が300mmあるので、芯となる150mmの位置に、改質ベントナイトの詰まった直径17mmのポリ乳酸繊維の袋を設置し、コンクリート釘とボンドにて固定する(図-3、4)。
図-3 設置状況 |
図-4 設置状況 |
ポリ乳酸繊維の包袋は、とうもろこし等のデンプンから得られる乳酸が原料であるため、環境に優しい。そして、雨水や水道水などには溶解せず、強アルカリ水にのみ反応し溶解するため、設置後から打設までのあいだに降雨や流水があっても、影響を受けない。
改質ベントナイトは、水と反応してゲル化することにより、水みちを塞ぎ止水する。また、無機質で材齢による劣化が無いため、コンクリートと共に性能を持続することができる。
上記のように打ち継ぎ部に止水措置をとったうえで側壁コンクリートの打設をおこなったが、後日、水張り試験を実施した結果、漏水は認められなかった。
今回の施工において、止水対策を施した箇所は3点あり、1点目はこれまでに述べた打ち継ぎ部の止水措置で、2点目は止水セパレーターを使用したことで、3点目はPコン処理を無収縮モルタルにておこなったことである。
4.おわりに
3点の止水対策をおこなってはみたが、実際に水張り試験の結果がでるまでは不安であった。そのようなときに思い出したのが、過去に上司や経験豊富な作業員からいただいた言葉である。
「土木で一番こわいものは水だ。」
当時の私は大雨のことを言っているのだと思っていたが、それだけでは無いように思う。天候の影響を直接受ける業種ではあるが、大雨対策のほかに、排水計画や今回とりあげた止水対策も含まれると思う。
今工事にて大型水槽構造物の施工をおこなったことは、自身の経験としては初めてであり、止水性について少しでも学ぶことができたことは、今後の工事に非常に有効であると考える。
止水対策といっても、材質や種類、方法、適用条件などさまざまで、今回施した対策がベストだとは決して言い切れない。今後の工事で同様に止水性を求められる機会があれば、今回の結果を参考にしつつも、検討を重ねてより良い品質の構造物を造りたいと思う。
やはり、土木で一番こわいものは水だ。
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