INTERVIEW 役員・所属長インタビュー 主婦と生活社がしていること

「読者の暮らしを、本当に幸せにする記事か?」

生活実用情報を扱う私たちが、最も大事にしていることです。

「ライフ・プラス」編集長

新井 晋

Arai Shin

「NHKのガッテン? ばあちゃんがよく見てる番組だ」 というアナタに、お伝えしたいこと

「ガッテン?あ~、ウチのばあちゃんがよく見てるNHKのテレビ番組だ。へぇ、それをもとにした雑誌なんてあったんだ。知らなかったな……」そんな感想を持つ人が多いかもしれませんね。そう、20年以上も続いている人気長寿テレビ番組「NHKガッテン!」の関連雑誌は、ぼくらの編集部(ライフ・プラス編集部)でつくっています。
この雑誌はテレビ番組とのコラボということもあり、編集制作の現場が、普通の雑誌とはちょっと違っているかもしれません。番組の司会者で人気落語家の立川志の輔さんから「多くの人に喜んでもらうためのエンターテインメントの在り方」について身をもって教えてもらったり、NHKの優秀なテレビ制作者たちの知識や人脈、取材ノウハウに刺激をもらったり、番組に登場する第一線の専門家たちの優れた見識に気軽に触れることができたり……。また、具体的な編集業務としては、テレビ局での収録立ち合いから、番組に登場した専門家への取材、放送の裏側まで理解したうえでの原稿執筆、放送内容をさらに深掘りする企画の構成検討などまで、さまざまです。
編集部員たちはどの局面でも、「読んでくれた人の暮らしを本当に幸せにする記事にするために、何をすべきか?」と自分に問いかけながら、真摯に雑誌づくりをしています。多くの関係者がかかわり、さまざまな意見が飛び交うなかで「交通整理」(=編集)する必要があるので一筋縄ではいかないことが多いのですが、まさにその大変さがあるがゆえに、「学ぶ機会」「成長できる機会」が非常に多い編集現場でもあります。

異業種とのコラボで、 私たち出版人の「強み」も見えてくる

「出版社に入ったのに、なんでテレビ番組の関連雑誌なんてやってるの?」と言われることがあります。でも、出版不況のいまだからこそ、テレビに限らずさまざまな業種の人たちと積極的なコラボを通じて、自分たち出版人の「強み」と「弱み」を意識すること、「弱み」の部分は真摯に学んで、助けてもらいながら「編集者」をしていかなければならない時代だと思うのです。
じつは異業種の人たちと付き合っていると、出版界はまだまだスゴイぞ!と思うことが多々あります。改めて、自分たちの「強み」はなんなのかに気づかされるわけです。ただそこにあぐらをかいて、出版という狭い世界だけでモノづくりを続けていくと(それはそれでとても奥が深く、面白く、必要とされていることだと思うのですが)、どうしても視野の狭い世界に陥りがちです。
これからの出版界を背負って立つ皆さんには、ぜひさまざまな業種の人たちと積極的に手を組み、学び、成長し、新たなスタイルで出版界を進化させていってほしいと願っています。またそうすることで、改めてぼくたち編集者にとって「そもそも編集業とはなにか?」という問題を深く考えざるを得なくなり、編集者としてのスキルが深まっていくのだと思います。

お手軽な実用書から、硬派な本まで。 雑誌以外のこともやっている編集部です

ひとしきり、「ガッテン!」雑誌のことばかり語ってしまいましたが、この編集部ではそれ以外にもさまざまな本を出しています。
たとえば、30万部を超えるヒットを記録した科学ダイエット本や、10万部超のお掃除本や片づけ本、まくら付録つきの快眠ムック本、健康的な筋トレ法を紹介するDVDブックなどなど、ミドル世代・シニア世代の皆さんの暮らしに役立ててもらうための“手軽に使える実用書”も出しています。また、NHKスペシャルで放送され話題を呼んだ「老人漂流社会」「腸内フローラ」の書籍化など、“硬派な読みもの”も出しています。
改めてこうやって列挙してみると、多くの人の関心を呼ぶテーマで読者の方に「役に立った」と思ってもらえそうな出版物なら、節操なくなんでもやっていますね。編集部に明確な軸はないように感じられるかもしれませんが、「読者の暮らしを、本当に幸せにする記事になっているか?」という点だけは、ブレることなく、忘れないようにしています。

"編集者"に 徹底的にこだわってほしい

ぼくは10年ほど前に当社に移ってきた“転入組”です。何社も転々としてきた者なので、このような場で皆さんに教えられるようなことは、残念ながら何もありません。ただし、ひとつだけ言えることがあります。それは、素晴らしい活躍をし続ける編集者の方々は皆、「強烈な想いで、そして驚くほどの粘り腰で、編集仕事をしている」ということ。この職業(仕事)に対しての“強い想い”がなければ、やはりよいものは生み出せない! 二十数年、いろいろな編集者の方々と知り合って感じる、ぼくの確信です。
もちろん、会社組織なので人事異動はつきものですし、当社に入社したとしても最初の配属が編集部ではないかもしれません。でも、「編集者ができないくらいだったら辞めてやる!」という決意を心に忍ばせているくらいの人と、ぜひ一緒に仕事がしたいと思います。
う~む、会社の人事担当のエラい人に「何を書いているんだ、オマエは!」と、怒られそうな内容の文章になってしまいました(苦笑)。怒られるのはイヤなので、ひとこと付け足しておきますと、耐えることができることも、編集者にとって非常に大事な資質です……。熱い思いを持った本の作り手・雑誌の作り手志望者たちが、数多くこの会社に集い、面白いことを一緒にできるといいなと思っています。