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「右でも左でもない普通の日本人」を自認する人ほど、陰謀論を信じやすかった…!

研究が示す驚きの事実
秦 正樹 プロフィール

「普通意識」と陰謀論の受容の関係

『「日本人の1/4が、北朝鮮と日本政府は裏で実はつながっている」と信じている』という信じがたい結果を踏まえつつ、本題の「普通の日本人意識」との関係についても、先ほどの実験結果をもとに「普通自認層」「非普通自認層」にわけて深く分析した。図3にその結果を示している*7

図3 陰謀論的言説への「ホンネ」度と普通意識の関係

図3では、○に当たるのは統制群と比べたときの平均値の差(係数)、横棒に「95%信頼区間」(簡単に言えば統計的な誤差のレベル)も示している。大雑把に言えば、もしこの横棒が0の点線のラインをまたいでいなければ、その変数は(ここでは5%水準で)統計学的に有意な結果とみなすことができる。

つまり「普通自認層」に限定すると、処置群1(北朝鮮グル説)は約37%、さらに処置群2(反安倍勢力と外国政府グル説)についても約41%の人々が信じているのである。その一方、他の日本人と同じような考えを持っているわけではないと考える「非普通自認層」では、陰謀論的な言説を受容する傾向は確認されなかった。

 

普通じゃない意見を信じる「普通の日本人」

以上の分析結果を整理すると、大きくわけて以下3つの特徴を指摘できる。

第一は、日本全体のおよそ1/4の人は「北朝鮮政府と日本政府はグルだ」と考えている。第二は、自身の政治的意見を「他の日本人と同じ」と考える層ほど、ネトウヨ的な言説に賛同しやすい傾向にある。さらに第三は、普通自認層ほど、いわゆる陰謀論を真に受ける傾向にある。裏返すと、「自身の政治的意見は多くの日本人と同じとは限らない」と考える非普通自認層は、陰謀論やデマへの抵抗力があるとも解釈できる。

さて、今さらながら「普通」の意味を辞書で調べてみると「特に変わっていないこと。ごくありふれたものであること。それがあたりまえであること。また、そのさま。」とある。

「KYなやつ(空気読めないやつ)」という表現があるように、「普通」であることは、まさに空気のようなものであって、口に出して確認されることがない。とくに日本人は政治の話をしたがらない傾向があるため、余計に、他者との相対的な政治的意見の違いを認識しにくい。あるいは、社会における価値観が多様化すればするほど、日本人全体で共有可能な「普通」の領域も縮小していく。