だからこそ、この実験結果は、私たちは時々、「常識のレール」からわざと外れて、少し違う視点で自分を見つめ直す必要性があることを含意しているように思われる。「いやいや、こんな話ヤバいってことくらい“普通”わかるでしょ」——そんな風に笑っているあなたこそ、すでに陰謀論者の「カモ」になっているのかもしれない。
謝辞
本研究はJSPS科研費若手研究(課題番号:18K12707)「デマの蔓延が政治的帰結に与える影響:テキストマイニングとサーベイ実験による検討」の助成を受けた成果の一部である
【註】
*1 こうした主張は,いわゆる「新しいレイシズム」とも呼ばれ,民族的な劣等性を主張する「古典的レイシズム」と区別されている(e.g. 高,2015)
*2 なお,これら6つの質問の選択肢は,「そう思う(5)」〜「どちらともいえない(3)」〜「そう思わない(1)」の5点尺度である.また6つの質問ごとに,全体の平均値(図中の赤線)=「普通の賛同レベル」と標準偏差も示している.
*3 もっとも,2016年大統領選における「隠れトランプ」の存在が選挙結果の予測に大きな影響を与えたわけではないことは既に明らかにされている(
飯田,2020).
*4 Item Count Technique法とも呼ばれる.方法論的な解説はImai(2011)を参照されたい.
*5 なお,本実験は,北九州市立大学に設置された「人を対象とする研究に関する倫理審査委員会」による倫理審査の承認を受けた上で実施した(受理番号30-11).またここで紹介している実験群は,複数ある実験群の一部である.
*6 実際の実験では,これらのリストの順序もランダムに変わるように設定している.
*7 ここでは,アウトカムは回答数(min=0,max=4),説明変数は各処置群(統制群を参照カテゴリ)のカテゴリ変数として,性別・年齢・教育程度・世帯収入・都市規模,イデオロギーも共変量に投入した重回帰分析の結果を示している.