1週間で家族全員感染…それでも自宅で療養するのはなぜ?
2020年8月9日 06時00分
「あっという間に家族全員が感染してしまった。自宅内の感染リスクは非常に高い」。23区内のある保健所の担当者は話した。
7月下旬、この保健所の管内で高齢男性の陽性が判明した。男性は妻と子の夫婦、孫2人の6人暮らし。保健所は隔離先が決まるまで、同居の家族に対して生活空間をなるべく分けることや、こまめなトイレの消毒などを指示した。しかし調整がつかないうちに妻が発熱。妻を含む5人を検査したところすべて陽性となった。男性の発熱からわずか1週間で、一家全員に感染が広がった。
都内の複数保健所によると、自宅療養が減らない背景の1つには、家庭の事情のほか、手続きに時間がかかることもあるという。医療機関でPCR検査を受けると、結果が出るのに1~2日ほど。その後、病院やホテルへの移動を調整するのにさらに数日が必要だ。
国が定める宿泊療養の解除(退所)基準は、症状が改善していれば「発症から10日後」。発熱や味覚障害などを自覚してから病院を受診するまで時間がかかった場合、隔離が可能になる頃には、10日近くがたっていることも。別の保健所の担当者は「ホテルに入っても1~2日で療養解除になる場合、入退所にかかる作業負荷も考え、あえて自宅から移るよう要請はしない」と明かす。
療養先のホテルに入る際は専用の車で感染者を順次迎えに行くなど、一度に多数を受け入れづらい運用面の制約もある。感染者が隔離を拒否するケースも後を絶たない。「小さな子どもがいるので離れられない」「高齢者を介護している」などの家庭の事情が多いという。
感染拡大を防ぐには早期の感染確認と隔離がカギを握るだけに、都の担当者は「家族内ではすぐに感染が広がる傾向が強い。軽い症状であっても、早急に医療機関にかかることを心がけてほしい」と呼びかける。
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