あらゆる業務を支えるはずのシステム部門の担当者が、ごく少数にまかされている。「ひとり情シス」は近年の大きな問題だ。働き方改革が社会的に求められる中で、情シス自身はどのように「働き方改革」をしていけばいいのだろうか。
そこで今回、「ひとり情シスチャンネル」を開設することにした。日夜、孤軍奮闘するひとり情シスを応援するメディアとして、その体験談や、ちょっとしたコラムなど、さまざまな角度からひとり情シスを応援するコンテンツを配信していく。
今回は、ひとり情シスチャンネルの特集の一つとして、ひとり情シスとしてさまざまな取り組みをしているソフトクリエイトホールディングスの情報システム部部長、長尾聡行氏へのインタビューをお届けする。日々の業務のヒントにしていただければ幸いだ。
深刻化するIT人材の不足
もしあなたが情報システム部門の担当者なら、「人手不足」を辛く感じているのはあなただけではない。ソフトクリエイトが2018年に実施したアンケートによれば、従業員が100人〜299人規模の企業のうち、情シスがたったひとりの体制が20.2%に上っている。情シス2人〜4人の体制は66.7%だが、ここには総務との兼任などもふくまれており、実質的な「ひとり情シス」の企業は数多い。
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出典:数字で見る「 情シスの働き方改革」と、“ひとり情シス”の虚像と実像 〜100 名〜499 名規模の企業編〜(https://go.softcreate.co.jp/enterprise-it-management-survey-report-2018.html )
最も時間を使っている業務を見れば「システム保守・運用・報告」と「問い合わせ・障害対応」だけで60.6%を越えている。ルーチン業務とトラブル対応のために、毎日走り回っている姿が浮かんでくる。
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出典:数字で見る「 情シスの働き方改革」と、“ひとり情シス”の虚像と実像 〜100 名〜499 名規模の企業編〜(https://go.softcreate.co.jp/enterprise-it-management-survey-report-2018.html )
どんな業種であっても、システム無しに仕事をすることはできない。にもかかわらず、システムの責務を負っているのはひとりぼっちだ。裁量は大きいが、権限は無い。安定稼働が当たり前で、不具合が起きれば怒られる。
さらに、情シスをめぐる状況は険しい。経済産業省は2016年の調査の中で「IT人材の不足は今後ますます深刻化し、2030年には約59万人が不足する」と報告している。
ところが、こんな状況の中、あえて「ひとり情シス」の体制をとったIT大手がある。それがソフトクリエイトホールディングス(以下ソフトクリエイトHD)だ。
ある日、突然「ひとり情シス」に
ソフトクリエイトHDグループは、システムインテグレーション事業やECソリューション事業、物品販売事業などを展開する、2005年に上場した大手IT企業だ。グループの全従業員は800人で、1,200台のクライアント端末を管理する必要がある。
そんな同グループが、なぜ「ひとり情シス化」を選んだのか。情報システム部 部長の長尾聡行氏は、こう振り返る。
「ある日の会議のことでした。突然、社長の林から『来月からひとり情シスをやってくれ』と言われたんです。現行の5人でも足りないと言っていたところだったので、唖然としました」(長尾氏)
IT大手であるソフトクリエイトHDも「IT技術のある人間」がそのまま情シスに選ばれ、PC一台の設定からネットワークの保守、基幹システムの管理までをこなしていた。万年人材不足の事情は、他の企業と変わらない。
違う点があったと言えば、子会社のソフトクリエイトが、情シスのアウトソーシングサービスの提供を始めていたことだ。ひとり情シスといっても、すべての業務をひとりで担当するのではなく、ルーチン業務やヘルプデスク業務などを子会社にアウトソーシングするのである。
「もともとソフトクリエイトHDグループには、『自分たちで使ってみて、良かったものを提供する』という考え方が根付いていました。ソフトウェアだけでなく運用サービスについても、同様のことをやってみようと考えたのです。といっても、実はかなり不安はありました」(長尾氏)
コア業務に集中する時間を確保
半信半疑で「ひとり情シス体制」を始めてみたところ、爽快なほどの変化が訪れたと長尾氏は語る。
「これまでは、出社したらシステムのチェックをして、内製マクロの不具合を見てあげて、PCのキッティングを手伝って、夕方にようやく予算管理に着手できたと思ったら、帰社してきた営業からの問い合わせ対応に負われて……といった状況でした。もちろん、システム障害が起きた日には、直るまで何もできません。それが今では、出社してメールをチェックして、予算やライセンスの管理をして、午後は新プロジェクトの打ち合わせをして、稟議書を作成して……といった、“やりたい仕事”に注力できるようになったのです」(長尾氏)
大きく変わったのは、担当する仕事の種類だ。従来は「緊急の仕事」ばかりに追われていたが、現在は「重要な仕事」に専念できているという。
今の長尾氏が担当するのは、IT戦略の策定やセキュリティ改善などのコア業務である。障害対応やPC対応、セキュリティ監視などのノンコア業務は完全にアウトソーシングしている。こうして業務を切り分けたことによって、ひとり情シスであっても、重要なプロジェクトを進めながら自分で時間を管理することができるようになったのだ。
また、情報システム部門という少人数部署特有の課題も、アウトソーシングの形態をとることによって改善できたという。
「これは体制を切り替えたからこそ気づけたのですが、かつては身内ゆえの甘えがありました。部下は『長尾に怒られなければいい』と考え、私も『彼にはこの設定はちょっと無理かな』と思って手伝ってしまう。責任と業務の範囲が不明確だったのです。しかし、アウトソーシングならば彼らはサービスの提供者であり、こちらはクライアントです。トラブルが起きても私に頼ることなく、自分たちで解決しようとし、そのノウハウを共有するためのマニュアル化も自然とおこなわれるようになりました。つまり、脱・属人化が進んだのです。ソフトクリエイトHDという"客先"にいったん常駐するという経験によって、情シスアウトソーシングサービスの質自体も向上したと思います」(長尾氏)
給与や源泉所得税等の計算、労務管理などのバックオフィス業務を外部委託するのと同様に、情シスのノンコア業務をアウトソーシングすることで、ひとり情シスはいくつもの成果を生み出すことが可能となるのだ。
情シスこそ「働き方改革の立役者」になれる
長尾氏は現在、ひとり情シスでありながら、グループ従業員800人の「働き方改革」に取り組んでいる。
「どこでも仕事が安全にできる環境の構築やコミュニケーション改善、勤務状況の見える化など、情シスが企業の生産性向上のために力を発揮できる分野は多岐にわたります。経営者も認める『働き方改革の立役者』になることができるというわけです」(長尾氏)
通常の業務をこなしながら、働き方改革のための新ツール導入をしようと考えるひとり情シスもいるだろう。しかし、社内に新しい仕組みをもたらすことは容易ではない。下からの提案であればなおさらだ。時間が無ければ改善ができず、結果、時間が無いままになる。
「私がそうだったからこそ分かるのですが、情シスにとって『頼られる』ことは麻薬です。直してあげれば喜んでもらえて、嬉しい。しかしそれこそが、いつまでたっても『緊急の仕事』に追われる原因のひとつなのです。技術さえあれば誰でもできる業務は人に任せましょう。会社をよく知るあなただからこそできる『重要な仕事』が、必ずあります」(長尾氏)
今の情シスの担当者にとって、最も重要な仕事のひとつは、「セキュリティと生産性の両立」だ。矛盾するようなこの課題を、ソフトクリエイトHDはどのようにして克服していったのか、次回は「現場に喜ばれるセキュリティの実現」について、長尾氏のノウハウをお届けする。
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