働き方改革やデジタルトランスフォーメーションが叫ばれるなか、企業のIT運用を担う“情シス”(情報システム部門)の重要性はますます高まっています。とはいえ、働き手不足でIT人材の確保も困難な昨今、潤沢な情シス要員を確保できている企業は多くありません。基幹システムの運用から業務アプリケーションの展開、顧客や社員からの問い合わせ対応などの多岐にわたる業務をたった1人が担当する“ひとり情シス”もめずらしくないのが現状です。本コラムでは、情シスの業務の1つであるヘルプデスク業務の現状と課題について、6年半の間“ひとりヘルプデスク”として勤めてきた情シス担当者の生の声から確認していきます。
6年半の間、たった1人でヘルプデスク業務を勤めた情シス担当者の実感
今回お話を伺ったU氏(仮名)は、2005年に情報系の大学を卒業し、新入社員としてシステム関連の派遣会社に入社しました。さまざまな企業に派遣されサーバーの構築など情シスの業務に携わったあと、2007年に学校のシステム運営を行う会社に在籍。運営会社の社内向けヘルプデスクを2013年までの6年半、ほぼ1人で勤めました。九州や関西などの主要都市に拠点を構え、社員数は約100名。つまりは、全国各地で働く100名の社員からの問い合わせに、たった1人で対応していたことになります。現在はグループ全体で約9,800名の社員を抱える大企業の情シス部門で活躍しているU氏ですが、「よく6年半も問題なく勤められたものだ」と当時を振り返ります。
多忙で休めない状況を改善するため、リモート接続を使って効率化を図る
ヘルプデスクの業務は多岐にわたりますが、U氏が担当していたのは主に以下の業務です。
- 新規PCのセットアップ(初期設定やアプリの配布など)
- PCを利用する社員からの問い合わせ対応(サポート業務)
- ネットワークやアカウント関連のトラブル対応
業務時間のほとんどは社員からの問い合わせ対応に費やされ、PCのセットアップはサポートの合間か定時後の業務時間外に行うケースが多かったとU氏。PCの入れ替え時期などは連日終電まで帰れない状況になったと語ります。土日に出勤した社員から問い合わせがくることもあり、休日に緊急対応を余儀なくされるケースも多かったといいます。休日の作業は契約的にグレーゾーンにもなりますが、IT関連のトラブルは企業に深刻な損害を与える可能性があるため緊急の対応は不可欠。休みがなくなることもめずらしくありません。こうした重い責任を担うヘルプデスク業務を1人で対応するのは大きなストレスとなります。
「100名の社員をサポートするヘルプデスクならば、最低でも2人で担当してお互いをバックアップできる環境を構築しておかないと、何かあった際の対応が遅れる可能性があります」
6年半の間、1人でヘルプデスク業務をこなしたU氏の経験から出たコメントです。U氏のケースでは、複数の拠点からの問い合わせに対応する必要があったため、業務の負担はより高くなっています。たった1人では、すべての問い合わせに対して各拠点に出向いて解決するのは難しく、遠隔対応が必要となりました。「パスワードを忘れた」「インターネットに繋がらない」といった、よくある問い合わせに対しては電話で対応し、PCの操作に関するトラブルにはリモート接続を活用したとU氏は語ります。
「Windowsのリモートデスクトップ機能を利用すると、電話を組み合わせてリアルタイムに現場の状況を見ることができます。これが使えるか否かで、対応速度に大きな違いが出ると思います」
基本的な流れとしては、ヘルプデスク側でマニュアルを用意しておき、電話での会話でフォローして相手に安心感を与えながらリモート接続を実行。問題を確認して解決を図っていきます。近年ではPCメーカーでもリモート接続を利用したサポートが一般化してきており、ヘルプデスク業務に欠かせないツールとなりつつあります。ただし、Windows PCのリモートデスクトップ機能はProエディションでしか使えないため、家電量販店でHomeエディションのPCを買うのは避けた方がよいとU氏。効率的なヘルプデスク業務を実現するためには、PCの選定時から関わることが重要と語ります。また、近年では個人情報の保護も重要となっており、リモート接続を実行する際には電話での声かけが必須となります。相手に安心感を与えるのもヘルプデスク業務の重要な要素。その意味でも、電話でのコミュニケーションと組み合わせてリモート接続を利用するのが効果的といえます。
リモート接続を効果的に活用すれば、多拠点からの問い合わせに対しスムーズに対応でき、“ひとりヘルプデスク”でも比較的休みやすい環境が構築できます。とはいえ、抜本的な改善を望むのならば「ヘルプデスクへの問い合わせそのものを減らす」ための工夫が必要となります。第2回では、こうした観点からヘルプデスク業務の取り組みについて見ていきましょう。
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