学校のシステム運営会社の社内向けヘルプデスクとして6年半、たった1人で100名もの社員からの多種多様な問い合わせに対応してきたU氏の生の声から、理想的なヘルプデスク業務に必要な要素を読み解く本コラム。第2回は「ヘルプデスクへの問い合わせを減らす」ための取り組みについて確認していきます。いかにスキルや根性があっても「ひとり情シス」担当者の体はひとつ。複数の問い合わせへの同時対応はできません。やはり対応し切れない数の問い合わせがこないように工夫を施しておくことが重要です。

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問い合わせ件数を減らすには、PC選定時から関与することが重要

ヘルプデスク業務の効率化に取り組む際、最初に思い浮かぶのは「担当者を増やす」ことではないでしょうか。効果的な方法なのは確かですが、第1回でも述べたように、IT人材の不足があらゆる業種で叫ばれている状況では、簡単にヘルプデスクを増やすことはできません。できるだけ人件費を抑えたいという企業も多く、現実的な解決策が求められます。そこでU氏が勧めるのが「PCの導入段階から関わること」です。

ヘルプデスク業務では、社員が試用しているPCに関する問い合わせがかなりの割合を占めるといいます。U氏の場合は、100名の社員から1日平均10件ほどの問い合わせがあり、その多くがPC関連のトラブルだったそうです。このため、業務PCに信頼性の高いメーカーの製品を選択しておくだけで、問い合わせ件数をある程度減らすことが可能となります。

「信頼性の高いPCはコストがかさみますが、ヘルプデスクを1人増やした場合のコストと比較すれば、効率的な投資といえます。保守期間を長くしたり、ストレージにSSDを採用したモデルを選んで信頼性を高めたりといったPC選定時の工夫で、問い合わせの件数を削減できるはずです」

さらに、業務で使うPCの機種を揃えることも重要、とU氏は語ります。OSが同じであっても、ハードウェア的なリセットやネットワークの切断などの操作方法は機種によって異なります。さまざまなメーカーの製品が混在している状況ではヘルプデスクが各機種の操作を把握しておく必要があり、それだけでも時間と手間がかかってしまいます。業務PCの選定にヘルプデスク担当者が関われば、こうした問題も事前に解消することができるのです。

問い合わせ対応の自動化を進め、電話での対応を減らす

ヘルプデスクが身につけるべきPC関連の知識は多岐にわたります。最近はWindows 7の延長サポート終了もあり、Windows 7からWindows 10への移行を進めている会社も多い状況ですが、OSを切り替えた直後は当然ながら膨大な数の問い合わせがヘルプデスクを悩ませます。また、業務に利用するMicrosoft Office アプリケーションも頻繁なアップデートが図られており、知らぬ間に操作方法が変わっていることもしばしばです。こうした問い合わせにひとつひとつ対応するには多種多様な情報を収集する必要があり、1人体制のヘルプデスクでは困難です。そこで重要となるのが「電話による問い合わせを減らす」ための工夫、すなわち対応の自動化です。

マンツーマンのやり取りが行える電話はヘルプデスク業務に欠かせないツールですが、ひとつの問い合わせにかかり切りとなるため効率的とはいえません。このため、多くの企業では電話での業務を減らしていく傾向にあります。ヘルプデスク業務で電話の代わりとなるものとして効果的なものとしては、メール、チャットボット、FAQサイトなどが挙げられます。

ただし、チャットボットのシステムを用意するならサーバーの構築などが必要となり、FAQサイトを製作するのならばWeb言語やデザインの知識が必要になるなど、別分野のスキルを身につけなければなりません。さらに、FAQやチャットボットに載せるコンテンツを洗い出して用意する必要もあり、ヘルプデスク担当者にかかる負担はかなりのものです。

とはいえ多くのリソースを割いても、FAQやチャットボットの仕組みを構築する価値はあると話すU氏。対応の自動化で電話の問い合わせが減ることに加え、休日に対応するケースも少なくなるなど、苦労に見合うだけの効果が得られると語ります。

FAQやチャットボットにリソースを割く余裕がまったくないという場合は、問い合わせ方法をメール中心に移行し、電話での問い合わせを減らすのも効果的です。とはいえ、電話はコミュニケーションを密接に行える有効なツールであり、ヘルプデスク業務から完全に削除する必要はありません。問い合わせの内容に応じて使い分けるのが、ヘルプデスク業務を効率化する有効な一手となるでしょう。

第3回では、ここまで解説してきたヘルプデスク業務を効率化する手段をふまえ、理想のヘルプデスク業務に必要な要素を掘り下げていきます。

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