5月25日に緊急事態宣言が全て解除となった。これからは社会経済活動のレベルを本格的に上げていくことになる。とはいえ、世界ではいまだ数万人の感染者が毎日出続けており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が収まる気配はまだない。当初中国で始まった感染は、その後、ヨーロッパそしてアメリカへとその中心点を移動させ、今は南米を飲み込もうとしている。今後は恐らくアフリカでの感染がより大きな問題となるだろう。グローバル化した社会の中で世界中にウイルスがばらまかれてしまった状況を考えれば、たとえ日本で一時感染が終息したように見えても、火の粉は絶えず飛んでくる。我々の社会は、常に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の脅威にさらされ続けることになる。
誰もが分かっていることだが、緊急事態宣言が解除されたからと言って、SARS-CoV-2が消えてなくなった訳ではない。しかし一方で、4月・5月のような疑似ロックダウンをし続ける訳にはいかない。感染者がある程度減った状況で、社会経済活動を再開させていくことになる。そして、また患者が増えそうな兆候を見た際には、再度強力な手段で経済的・社会的ダメージを負ってでも対策を講じなければならない。前回のコラムでも書いたように、これからは平時と有事が目まぐるしく入れ替わる日常を覚悟するしか、社会を存続させる方法はないのだ。
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著者プロフィール
森井大一(もりい・だいいち)●大阪大学大学院医学系研究科博士課程。2005年3月大阪大学医学部卒業、同年4月国立病院機構呉医療センター、2010年大阪大学医学部附属病院感染制御部、2011年米Emory大学Rollins School of Public Health、2013年7月厚生労働省大臣官房国際課課長補佐、2014年4月厚生労働省医政局指導課・地域医療計画課課長補佐、2015年4月公立昭和病院感染症科を経て今に至る。2018年から阪大病院の感染制御部医員も兼務。
連載の紹介
森井大一の「医療と経済と行政の交差点」
救急医として医師のキャリアをスタートさせた後、感染制御に越境し、公衆衛生を学んだ上で、厚生官僚を経験。現在はノーベル賞受賞で話題の行動経済学を医療に応用すべく研究を進める筆者に、 医療と経済と行政が交わる地点に立って思いの丈を語っていただきます。
この記事へのコメント(11件)
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2020/08/12
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2020/07/02
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2020/06/22
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2020/06/02
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2020/05/26
筆者(2020/06/08 20:26)
東大の先生方の出された陽性率は0.65%ではないです。失礼しました。1000人検査して7人陽性なので0.7%です。いくつかシュミレーションした手元のメモを見誤ってしまいました。結論は変わりませんが。
筆者(2020/06/08 09:43)
東大先端科学技術研究センターの児玉龍彦先生のグループが5月初旬と下旬の2回に分けて、東京都内の一般医療機関で計1000人の抗体検査を実施した調査の結果を公表されました。 https://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/news/release/20200515.html これによると、5月前半の500人の調査では3例、後半の500人の調査では4例の抗体陽性があったとのことです。 5月中旬(例えば15日)の東京での累積の確認患者数は5082人でした。仮にこの時点で東京の0.65%が感染しているとすれば、真の感染者は9万人(1398万人×0.65%)ですので、確認されている患者の18倍の患者が潜在的にいるという計算です。 ただし、この調査は医療機関を訪れた患者を対象(LSIメディエンスの残余検体を使ったとのことです)にしているようですので、一般的な人口よりも感染リスクは高いと考えられます。ざっくり見積もって、発表されているよりも10~15倍程度を想定すれば潜在的患者数の見積もりとしては大きくは間違えないというところだろうと思います。 大阪(人口880万)は、昨日1人(過去2週間では4人目)が確認されましたから10~15人ぐらいが府下にいるだろうという話になります。この内無症状なのは半分ですから8人程度でしょうか。術前スクリーニングをがんばるということは、この8人が何らかの手術や処置をたまたま受けることになるという可能性を重くとらえて、それを感度(よくて)7割の検査法で捕まえようとするものです。これを公費でやるというんですから、ずいぶんと財政に余裕があるんでしょう。 このような無駄は、一つを認めてしまうと、あっちもこっちもと言う話になって、結局全部を認めることになります。実際に、夜の街で働く方々やスポーツ選手への定期検査という壮大な無駄が(ギャグではなく)大真面目に語られ始めました。「無駄は無駄だけど、みんながやる訳じゃないからいいじゃないか」という無責任なことをいう人がいるのでこのようなことが起こります。医療を公共的に支えるという事の本質を無視して、将来世代へのつけ回しになんの倫理的問題意識も持たないような似非専門家(特に年長者)の責任は重いと思っています。