中京大教授で「奨学金問題対策全国会議」共同代表の大内裕和氏が、奨学金ローンに関する私の記事を多数ヵ所、多数回にわたって盗用していた問題の現況をお伝えしたい。
これまでの経緯を簡単に振り返る。
大内氏の著書『奨学金が日本を滅ぼす』(朝日新書、現在出庫停止中)に、私が別の本に書いたものと酷似した記述があることが見つかったのが今年7月のことだった。大内氏の事情説明を求めたところ、代理人弁護士を通じて来た回答は「盗用・剽窃ではない」。その根拠として大内氏が挙げたのが、『Journalism』(朝日新聞出版)などの雑誌や単行本に発表したいくつもの記事だった。すでに同様の内容のものを発表しているというわけだ。ところが、該当する記事を調べてみると、それらもまた私が雑誌『選択』で発表した記事の一部と酷似した代物だった。しかも、科研費の助成研究でもあった――
以上の経緯を踏まえて、私は10月23日付で、代理人弁護士を通じて大内氏側(代理人弁護士)に通知文を送った。さらなる事情説明の要求に加えて著作権侵害および民法の不法行為にあたるとして損害賠償を求める内容だ。これから1ヵ月以上が過ぎた現在もなお、大内氏側からは返事はない。当方の弁護士が相手側に問い合わせたところ、次の返答があった模様だ。
「三宅が中京大学に対して行っている手続きをふまえ、関連する出版社との協議を行ってから回答する」
意味がいまひとつ明確ではないが、もうしばらく待ちぼうけを食わされることになりそうだ。もっと早く非を認め、謝っていればもっと穏やかに解決できたことだろう。だが残念ながら、現在に至るまで謝罪の姿勢は皆無だ。責任逃れに努めれば努めるほど大内氏の置かれた状況は悪くなっていると思うのだが、はたしてそのことを理解しているのか。