記事盗用問題で回答引き延ばしをつづける大内裕和中京大教授

 中京大教授で「奨学金問題対策全国会議」共同代表の大内裕和氏が、奨学金ローンに関する私の記事を多数ヵ所、多数回にわたって盗用していた問題の現況をお伝えしたい。
 
 これまでの経緯を簡単に振り返る。

 大内氏の著書『奨学金が日本を滅ぼす』(朝日新書、現在出庫停止中)に、私が別の本に書いたものと酷似した記述があることが見つかったのが今年7月のことだった。大内氏の事情説明を求めたところ、代理人弁護士を通じて来た回答は「盗用・剽窃ではない」。その根拠として大内氏が挙げたのが、『Journalism』(朝日新聞出版)などの雑誌や単行本に発表したいくつもの記事だった。すでに同様の内容のものを発表しているというわけだ。ところが、該当する記事を調べてみると、それらもまた私が雑誌『選択』で発表した記事の一部と酷似した代物だった。しかも、科研費の助成研究でもあった――

 以上の経緯を踏まえて、私は10月23日付で、代理人弁護士を通じて大内氏側(代理人弁護士)に通知文を送った。さらなる事情説明の要求に加えて著作権侵害および民法の不法行為にあたるとして損害賠償を求める内容だ。これから1ヵ月以上が過ぎた現在もなお、大内氏側からは返事はない。当方の弁護士が相手側に問い合わせたところ、次の返答があった模様だ。

 「三宅が中京大学に対して行っている手続きをふまえ、関連する出版社との協議を行ってから回答する」

 意味がいまひとつ明確ではないが、もうしばらく待ちぼうけを食わされることになりそうだ。もっと早く非を認め、謝っていればもっと穏やかに解決できたことだろう。だが残念ながら、現在に至るまで謝罪の姿勢は皆無だ。責任逃れに努めれば努めるほど大内氏の置かれた状況は悪くなっていると思うのだが、はたしてそのことを理解しているのか。

  

情報公開と手数料−−神奈川県の場合

 日本の「民主主義」を疑わざるを得ない事実が日に日にあらわになっているが、情報公開制度の停滞、あるいは後退ぶりもそのひとつだろう。たとえば、知る権利を行使するために高額の手数料を求められる。改善を求める声は小さい。日本の情報公開制度の後進性、民主主義の未成熟さをを雄弁にものがたっている。

 この情報公開の手数料について、さきほど(30日午前)、面白い現象を観察することができた。神奈川県の例だ。県選管に届け出がされている政治団体「自由民主党神奈川県第2選挙区支部」の政治資金収支報告書に添付された領収書等の開示請求を行った際の出来事だ。手続きは2本必要だ。1万円を超える領収書(高額領収書)は県条例による情報公開請求、1万円以下の少額領収書は政治資金規正法による開示請求だ。

 少額の請求には1団体300円の初期手数料を貼らねばならないと県手数料条例で定めている。そこで、その払い方を選管に問い合わせたところ、次のような説明が返ってきた。

 「開示請求書を送っていただければ、こちらから納入通知書を送ります。それを使ってもよりの指定金融機関で払ってください」
 
 納入通知書が届いてから300円を払い、それを確認してから作業をはじめるという。時間がかかるので、筆者は300円の定額小為替を同封して開示請求書を郵送した。100円の為替手数料がかかるが、時間を節約するためにはやむを得ないと考えた。そして投函後、その旨電話で選管に伝えた。意外にも職員がいささか驚いた様子で言った。

 「それは困ります。受け取れない」

 驚いたのはこちらのほうだ。というのは、神奈川県は、情報公開条例にもとづく開示請求をした場合の手数料(コピーを郵送してもらう場合)の送金方法について、「現金書留または定額小為替でないと受け取れない。納入通知書は発行できない」という方針にこだわってきたからだ。地方自治法で、歳入は原則納入通知書によるとなっているが、なぜか情報公開の手数料だけは「現金原則」なのだ。なお、強く改善をもとめたところ、現在、改善にむけた作業中だとのこと回答を得ている。

 あれほど現金・為替にこだわっていた神奈川県が、なぜこんどは現金・為替はダメだというのか。筆者はたずねた。

 「情報公開条例による高額領収書の手数料は納入通知は出せない、現金や為替で払えという。一方で、少額の手数料は現金・為替は受け取れない、納入通知じゃないとだめだという。そういうことですか」

 「そうです」

 「おかしくないですか」

 「申し訳ありませんが…」

 職員はとまどい気味に言った。少額領収書の手数料も、為替を受け取り、現金化した後に「事後調定」して納入すればすむ話ではなかろうか。できるはずだ、検討して対処してほしいと伝えた。その程度の柔軟な行政事務がなぜできないのか、原因はどこにあるのだろうか。疑問を禁じ得ない。

   
 
 

記事掲載のお知らせ「オープンハウス振り込め詐欺事件」続報

 みなさん、こんにちは。多忙にかまけてしばらく更新作業を休止していました。
 マイニュースジャパンに記事を書きましたのでご案内します。

 警察と協力して「振り込め詐欺防止キャンペーン」をやっていた大企業の社員が、こともあろに振り込め詐欺をはたらいて警察に逮捕されたという冗談のような恐ろしい話です。しかも、その事実は企業の側からも、警察の側からも、新聞・テレビ報道からも、いっさい明らかにされていません。

 日本の「言論の自由」の実態を観察する格好の題材かもしれません。

【オープンハウス振り込め詐欺事件」社員逮捕・起訴は2人に 保土ヶ谷営業センター元営業マンの林氏、公判で犯行認める】
http://www.mynewsjapan.com/reports/2574

日野市監査委員による情報公開事務の違法をただす国賠訴訟、12月結審

 みなさん、こんにちは。きょうは情報公開制度をめぐる訴訟の報告をしたいと思います。

 2019年8月、筆者は日野市監査委員に対して「日野市立病院相談役に関する住民監査請求(日野29号)について、監査委員が保有するいっさいの文書」という内容の情報公開請求を行いました。これに対して日野市監査委員は、「要件審査表」だけを開示し、残りはすべて非開示とする処分を出しました。そのことにも疑問があるのですが、もっと大きな問題は、具体的にどのような文書を特定し、非開示にしたのかを明らかにしなかった点です。口頭で異議を唱えましたが、具体的な文書名を示す必要はないのだと強弁しました。

 これは情報公開制度の根幹にかかわる重大な問題だと考えた筆者は、昨年12月、非開示にした文書名の開示を求める裁判を起こしました(東京地裁 令和2年行ウ624号 情報公開非決定処分取消請求事件)。

 その第4回口頭弁論がきょう、東京地裁703号法廷(民事2部)でありました。裁判長は結審する予定だったのですが、被告日野市側は、反論したいことがあると述べ、もう一回口頭弁論を開くことになりました。時間稼ぎではないかというのが私の感想です。

 次回口頭弁論(結審予定)は12月8日14時30分703号法廷で開かれます。

 

大内裕和中京大教授は「奨学金」の「繰り上げ一括請求」を理解しているのか?

 「盗用ではないか」と私が厳しく批判している大内裕和中京大教授は、奨学金問題対策全国会議共同代表といういかめしい肩書を使って積極的に「奨学金」問題に関する発言を公にしている。他人の著作物や調査結果からの盗用の類が問題であることはもちろんだが、大内氏の発言内容そのものにも疑問を覚える点がある。一例を紹介したい。

 『法学セミナー』2019年4月号に掲載された「奨学金問題を考える」と題する大内氏の記事に、「機関保証」制度に関連するこんな記述がある。

 

〈保証機関は公益財団法人日本国際教育支援機構である。返済ができない場合は、この協会が利用者に代わって日本学生支援機構に返済してくれる。これを代位弁済という。代位弁済してもらった金額は日本国際教育支援協会に返済する義務が生じる。
 それに加えて、延滞金は年5%から10%で日本学生支援機構の倍となる。また、分割払いから一括弁済へと変えられる。毎月の分割払いでも支払えない人が、一括請求を求められても払えるという可能性はほとんどないだろう。〉

(42頁最終行〜43頁9行目」

 保証機関による代位弁済は、日本学生支援機構が教育支援協会に請求し、認められた場合に行われる。したがって、「代位弁済してもらった」のが利用者であるかのような記述にまずひっかかる。払ってもらったのは債権者の日本学生支援機構であって利用者ではない。そして、次にひっかかるのが「分割払いから一括弁済へと変えられる」という記述だ。まるで代位弁済によって「一括弁済へと変えられる」ように読める。これは不正確と言わざるを得ない。

 筆者の理解はこうだ。

 1 日本学生支援機構が、施行令5条5項を口実にして繰り上げ一括請求をする。期限は1ヵ月後。
 2 債務者は払うことができない。
 3 日本学生支援機構は、一括請求した全額にあらたに発生した延滞金を加えた金額を、保証機関である日本国際教育支援協会に対して弁済請求する。
 4 支援協会が弁済を認めて代位弁済を実行、日本が区政支援機構の債権は完済される。
 5 支援協会は利用者に対し、求償権に基づいて全額+延滞金などの一括返済を求める。その後分割払いの和解をすることもある。

  機関保証が代位弁済することによって一括弁済を求められるわけではない。施行令5条5項をつかった日本学生支援機構の繰り上げ一括請求がすべてのはじまりなのだ。大内氏の記事は、この重要な点を完全に見過ごしている。あるいは見誤っている。

 大内氏率いる奨学金問題対策全国会議は、昨年夏、筆者の再入会申し出を、一括請求について強い意見を主張することが予想され、活動に支障が生じるなどといった、とても理解しがたい理由によって拒絶した。筆者はこの会が設立された当初のメンバーで、絶えず「一括請求問題」の重要性と研究の必要性を訴えてきた。しかし、大内氏をはじめ幹部メンバーの誰一人としてまじめに向き合おうとしなかった。大内氏は私の問題提起から6年を経てもなお、一括請求がどういうものか理解できていないことがわかった。自由な議論や批判を避けることが進歩の妨げにつながるという好例である。
 

大内裕和中京大教授、「盗用ネタ」初披露は大阪弁護士会主催の講演か

 大内裕和中京大学教授の盗用問題であらたな事実が判明した。

 雑誌『選択』2012年4月号に掲載された筆者(三宅)執筆の記事「奨学金『取り立て』ビジネスの残酷」の一部が、2013年10月刊行の単行本『日本の奨学金はこれでいいのか!』(あけび書房、三宅らとの共著)の1章(大内氏執筆)にほぼそのまま無断で流用され、以後多数の雑誌にも同様の流用がくり返されていることは、これまでお伝えしたとおりである。

 今回わかったのは、「あけび書房」本の刊行直前の2013年10月12日、大阪弁護士会主催の講演で、大内氏はすでに『選択』記事を流用した話をしていたという事実である。



 大内氏が作成した講演の要約文書には、「奨学金制度の現状と課題」と題してこんな記載がある。

2010年度の利息収入は232億円、延滞金収入は37億円に達する。これらの金は経常収益に計上され、原資とは無関係のところに行く。この金の行き先は銀行と債権回収専門会社
 2010年度期末で民間銀行からの貸付残高はだいたい1兆円で、年間の利払いは約23億円です。サービサーは同年度、約5万5000件を日立キャピタル債権回収など2社に委託し、16億7000万円を回収していて、そのうち1億400万円が手数料として這われている

(以下略)


 
 私が書いた『選択』の記事はこうだ。

◆元記事 『選択』(2012年4月号)三宅記事

 一〇年度の利息収入は二百三十二億円、延滞金収入は三十七億円に達する。これらの金は経常収益に計上され、原資とは無関係のところへ消えている。この金の行き先のひとつが銀行であり、債権管理回収業者(サービサー)だ。一〇年度期末で民間銀行からの貸付残高はざっと一兆円。年間の利払いは二十三億円。また、サービサーについては、同年度で約五万五千件を日立キャピタル債権回収など二社に委託し、十六億七千万円を回収、そのうち一億四百万円が手数料として払われている。

(101頁3段目13行目〜4段目4行目)

 大内氏は、自身が2017年に出版した図書『奨学金が日本を滅ぼす』(朝日新書)のなかで、私が『日本の奨学金はこれでいいのか!』の2章で書いた記述を流用した。これに今年夏気づいた私は、大内氏に説明を求めた。すると大内氏は、盗用・剽窃ではないと回答した。その根拠として、あけび書房本の自身の記述や大阪弁護士会主催の講演での要約をあげ、内容・表現ともにすでに公表ずみであるなどと釈明した。

 今回の問題は、大内氏の釈明にある「根拠」を精査するなかで判明した。