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知恵の経営、元気印、経営革新、チャレンジ・バイの各認定等を受けた府内中小企業を紹介するページです。
(掲載日:令和2年5月26日、ものづくり振興課 足利、橋本、浦出)
トレジェムバイオファーマ株式会社(京都大学COI棟)の喜早代表取締役と、京都大学医学研究科口腔外科の高橋准教授にお話をおうかがいしました。
―今月12日に会社設立をなさったところですね。歯科医師でもいらっしゃるわけですが、起業の背景は?
喜早)健康寿命延伸が国策としても重要であるわけですが、「健康」と「要介護」の間には、筋力や心身の活力が低下する「フレイル」と呼ばれる中間的な段階があるとされており、その手前にある「プレフレイル」期に歯や口腔の機能の虚弱、いわゆる「オーラルフレイル」の症状が現れます。このオーラルフレイルを改善するため、歯の重要性が再認識されてきているのです。
―なるほど。
喜早)一方で、現在の治療法は、義歯や歯科インプラントなど人工補綴物に置換するのみであり、根治的な治療法は存在しません。
―そうですよね。
喜早)しかし、高橋先生は、歯生え薬、とでも言いましょうか、再生治療薬を開発されたのです。
―そうなのですか?!
喜早)骨形成タンパク質BMP等の働きを阻害する拮抗分子USAG-1遺伝子があるのですが、その活性を中和する抗体とsiRNAを開発したのです。それを各種先天性無歯症マウスに投与することにより、欠損歯が回復することを確認しました。
―中和抗体。なるほど、抗体医薬の手法ですね!ところで、siRNAって何ですか?
喜早)2本鎖RNAが遺伝子の発現を抑えてしまう現象をRNA干渉と言いますが、それに関わる短いRNAです。
―そうなのですね。
喜早)こうした原理を用いて、私どもはいくつかの事業を展開していこうと考えています。
―なるほど。
喜早)まずは、USAG-1中和抗体を適応していくということですね。歯は、ヒトでは大臼歯が1生歯性(永久歯)それ以外は2生歯性(乳歯+永久歯)で、歯数は厳密に制御されています。日本における歯の欠損を有する患者(無歯症患者)は、高齢者を中心に3000万人以上と言われ、非常に高い罹患率ですが、先天性の症例が存在し、原因遺伝子としてEDA, MSX1, WNT10A, RUNX2などが同定されています。こうした原因遺伝子変異をバイオマーカーとして対象患者を選択し、USAG-1中和抗体を適用していくということが考えられます。
―なるほど。
喜早)あるいは、USAG-1の中和抗体を局所投与することにより永久歯の次の第3生歯を再生させるという治療法の開発です。ヒトでは乳歯、永久歯のあとに第3歯堤という、通常では退化消失する歯の原器を有しています。マウスにおいて、第3生歯と考えられる完全な形の新しい歯の再生に成功しました。
―永久歯の後にも歯が生えるんですか?!
高橋)この治療方法が定着すれば、生涯を通じて自分自身の歯で食事を取ることが出来るようになり、歯科治療のパラダイムシフト、ゲームチェンジングを起こすことが期待されます。若年期ばかりでなく高齢者に対するオーラルフレイル改善のための先制医療としての貢献も期待できます。
―すごいですね。
喜早)今後、ヒト抗体化、臨床開発を進めてまいります。
今後の展開が大変楽しみです!
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