災害列島、日本。地震や噴火、風水害や土砂災害といった様々な自然災害のリスクは、日本中どこにいようと避けることができないと考えていい。2019年にも大型台風などによる水害や土砂災害が各地で発生し、改めて自然災害の猛威を実感した方も多いことだろう。
もし被災したとしても損失を可能な限り小さく抑えるための策の一つが、システム基盤のDRサイト。その有効性や重要性は広く認知されているが、実施には実現できていない企業も多い。特に、「ひとり情シス」や、大企業の中の専任担当である「はぐれ情シス」にとっては、やるべきことが多すぎてなかなか手が出せないのが実情だろう。BCP/DRをシンプルにするための方策を考える。
災害列島・日本の企業にはBCP/DRが重要
しばしば広い範囲に被害をもたらす自然災害は、企業活動も様々な形で阻害する。従業員、事業拠点や設備などが被災することもあれば、自社で利用している社会インフラ、例えば電力網や通信網、交通網などが長期に渡り阻害されることによる間接的な被害もある。特に近年では、あらゆる業務にITが深く関わっているため、たとえ直接の被災がなくとも、停電や通信障害によるシステム停止やデータ喪失で大きな損失を受ける可能性が高い。
日本ヒューレット・パッカード
ハイブリッドIT事業統括
テクノロジーエバンジェリスト
井上陽治氏
「あるレポートでは、システムダウンによる企業の損失は1分間で平均80万円としています。ダウンタイムが長引いて、仮に1時間に及んだなら数千万円という額になる計算です。日本企業のマネージメント層では、他国に比べダウンタイムについての意識が希薄な印象がありますが、こうした具体的な損失額などを認識した上で、論理的な考えに沿って適切な備えを講じることが望ましいといえるでしょう」と、日本ヒューレット・パッカード ハイブリッドIT事業統括 テクノロジーエバンジェリストの井上陽治氏は語る。
広域災害により電力等のインフラが被害を受けると、復旧までに長期間を要する場合もある。そんなときでもダウンタイムを長期化させないために有効な対策となるのが、BCP/DRだ。事業継続計画(BCP)の一環として、本番サイトから物理的に遠く離れた、同一の災害で同時に被災しないよう配慮した場所に災害対策(DR)サイトを設けて日常的にシステムやデータを転送しておき、本番サイト被災時に迅速な復旧を実現したり、場合によっては代替サイトとしても利用できるようにする、といった対策である。
かつて、広域災害への備えとしては、データやシステムのバックアップテープを定期的に遠隔地へ運び出し保管するような運用が広く行われてきた。しかしテープの輸送・保管には多大なコストと運用負担が伴う上に、災害時の復旧にも時間を要し、バックアップ頻度も一般的には日次なので最大1日分のデータを諦めることになるなど、いくつもの課題がある。DRサイトに比べると、事業継続性は見劣りすると言わざるを得ない。