@chablis777
シャブリ

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(柝の音とチンドン太鼓の音)
(黒衣)東西東西!
(千代)全国のお茶の間の皆々様方本日は かくも賑々しくお集まりいただき恐悦至極に存じ

まする。
今回の物語は僅か9つで親に捨てられ何もかもなくした 私 千代が大阪は道頓堀を舞台に

 やがて大阪のお母さんとまで呼ばれるほどの大女優になるまでの一代記に…。
(テルヲ)あかん あかん!全部言うたら あかんて!
ほな ここで ほかの面々からもひと言ご挨拶を。
まずは 小さい頃の千代ちゃん。
千代でございます。
最初の2週間だけやけど一所懸命やらしてもらいます。
天海天海と申します。
あっ 本名ちゃいます。親から継いだ芸名ですわ。
いや 別に誰もツッコんでへんて。
岡田シズでございます。
私は 芝居茶屋の女将という役どころでございます。
この芝居茶屋と申しますのは…。長い長い! 番組終わってまうわ お前!
まあ まあ まあ。お父ちゃん!
(テルヲ)大体 お前 誰やねん。
見てのとおり 黒衣です。
はっ?ご存じない?
お芝居で 役者さんらのお手伝いさしてもろてんの。
つまり わては この物語の黒衣ですわ。
そこにおってもおらんいうことになってましてな。
(テルヲ)いや おるやないけ。おらん。
おらん。(テルヲ)どね見ても おるて。いてません。
どね見ても おるて。いてません。 見えません。
いやいや 待て!お父ちゃん!
(騒ぐ声)
…というわけで 私ども一同皆様方に 涙あり 笑いありの楽しいひとときをお届けできるよう

誠心誠意 努めてまいります。
今後とも ごひいき お引き立てのほど…隅から隅まで ずずずい~っと…。
こっちや!
座れ!
願い上げ 奉りまする~!
あっ 申し遅れました。
タイトルは 「おちょやん」だす。
♪「オレンジのクレヨンで描いた太陽だけじゃ」
♪「まだ何か足りない気がした」
♪「涙色したブルー こぼれて ひろがって」
♪「ほら いつも通りの空」
♪「これは夢じゃない(夢みたい)」
♪「傷つけば痛い(嘘じゃない)」
♪「どんな今日も愛したいのにな」
♪「笑顔をあきらめたくないよ」
♪「転んでも ただでは起きない」
♪「そう 強くなれる」
♪「かさぶたが消えたなら」
♪「聞いてくれるといいな」
♪「泣き笑いのエピソードを」
♪~
時は大正5年。
大阪・南河内の ちいちゃい村で千代ちゃんは生まれ育ちました。
河内っちゅうのは この辺りの…。
あっ あら…あっ すんません 黒衣です。
そういうわけでこれから この物語の司会進行を務めさしていただきます。
(鶏の鳴き声)
・ヨシヲ そっち行っこったで!
恨みなや。うちらも生きてかなあかんさけな。
ありひんやん。
今まで ようけ 餌やったやろ。
今度は われが うちらを食べさす番や!
・(鶏の鳴き声)
(悲鳴)
酒あれへんのか 酒…。
おお 千代 酒や酒。
はあ? あるか そねなもん。
(テルヲ)何で あれぃんね。
それより こいつ 卵もう産みよれぃんさけ町で売ってきて。
われ そいつ捕まえる時 わいの流星丸に何もしやぃんかったやろな!
この流星丸は観賞用の鶏でびっくりするくらいの金額で取り引きされることもあるっちゅう話で

すわ。
ほんまかいな。
はあ? お父ちゃん…流星丸と うちらと どっちが大事やねん!
そねなもん決まっとるやないけ 流星丸や。
この どあほ! あねなもんに有り金 全部 使いさらしてうちら 今日 食べるもんもあれぃん

ちゅうのに 何が流星丸じゃ!
じゃかあしい!親に偉そな口たたきさらすな!
うちは… うちは…うちは お母ちゃんと約束したんや。
ヨシヲを守るて。 この家を守るて!
親やったら 親らしいことさらせ!
たっ…!
くそ~!邪魔くさいのう もう!
売ってきたらええねやろ売ってきたら!
売ってきたら! フッ…。
どえらい土産 買うてきたらあ。待っとけ!
ヘッ!
はあ… ほんま 生きるて しんどいなあ。
お母ちゃん…。
千代ちゃんは5つの時にお母ちゃんを亡くしてそれからは お父ちゃんのテルヲ弟のヨシヲと3

人でちっちゃな養鶏場を生業に 細々とほんまに細々と暮らしておりました。
(子供たち)シラミ~! シラミ~!
何や うるさいねん ボケ!
♪~
(ヨシヲ)おなか減ったなあ…。
(おなかが鳴る音)あかん!
鶏の餌食うたら鶏になってまうてお父ちゃん いつも言うとるやろ。
テルヲは10日たっても帰ってきませんでした。
(ヨシヲ)おなか減った…。ええさけ 行こ。
(ヨシヲのおなかが鳴る音)
(ヨシヲ)おなか減った…。分かったさけ。
はよ行こ。おなか減っ…。
(辰夫)しゃあないやっちゃな テルヲは。
どうせ 稼いだ金全部 酒と博打に使てしもて帰るにも帰られぃんねやろ。
ここは お隣の小林さんとこの家です。
お隣いうても歩いて30分はかかりまんねんけど遠っ!
(きみ)おおけに。そうや 晩飯食うてけや。
ええんけ!?うん。
おお そねせえ そねせえ。ヨシヲも腹減ってんねやろ。うん!
(きみ)なあ 気ぃ遣わんと 好きなだけ食いや。
おおけに。 頂きます。
ん~…。
どねしたんや?
(勝次)一緒に食いたない。何ぬかす!
(勝次)そいつら シラミわかしとんねんで。うつってまうやんけ。
(辰夫)隣同士やないけ仲ようしやなあかん!
(勝太)みんな言うとる。貧乏やからシラミやて。そやさけ 学校にも来られぃんのやて。
嘘や! 確かにシラミは わいたけどもう おれぃんわ!
そねやったら 何で学校 来やぃんねん。
(ウメ)今日は賑じゃかで何よりのこっちゃ。
千代ちゃんの家はなお母ちゃんがおれぃんやろ。
千代ちゃんが家のことしたりヨシヲの面倒見んとあかん。そやさけな 学校にも行かれぃんね

ん。
かわいそうやと思わへんけ?
(きみ)勝太 勝次。 千代ちゃんに謝り。
しゃあけど お母ちゃん…。コラッ!
うるさいな もう。しゃあけど お母ちゃん…。
堪忍な 千代ちゃん。 なっ。
しやぃん… うちは かわいそやない!
去ぬで!(辰夫)千代ちゃん…。
帰んのけ? まだ食うてんのに。
(きみ)ちょっと ちょっと待って 千代ちゃん!
(戸の開閉音)
今日は賑じゃかで 何よりのこっちゃ。
ええなあ 勝っちゃんら。
お母ちゃんがおって。
あんたには うちがおるやん。姉やんは お母ちゃんやない。
♪~
(風の音)
 回想 (サエ)ほら 見てみい 千代。
(サエ)あんたが生まれた時もなあねなお月さんが出てたんやで。
あんたはなぁよう夜泣きする子やったけどここ来たら何でか泣きやんですぐ寝てくれてな。
お母ちゃん あんた ほんまにかぐや姫かと思たわ。
明日も きっと晴れやなあ。
千代…。
♪~
ご褒美や。 お月さんみたいやろ。
♪~
うちは かわいそやない。
明日も きっと 晴れやな。
(鶏の鳴き声)
みんな おはようさん。今日も ようけ産んでくれたなあ。
おおけに おおけに。
姉やん おなか減った。
おかいさん出来たさけ お椀持ってって。
・(テルヲ)戻ったで~!
あほんだらあ! われ どこまで鶏売りに行っとったんじゃ ボケ!
言うたやんけどえらい土産 買うてきたるて。
(栗子)こんにちは。
この人が 今日から お前のお母ちゃんや。
はあ~っ!?
はあ~っ!?


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