「#竹中平蔵つまみ出せ」がTwitterでトレンド入り
パソナグループ会長の竹中平蔵氏への批判と非難がTwitterで連日続いている。
「#竹中平蔵つまみ出せ」というTwitterにおけるタグはトレンド入りし、11月29日16時時点でも拡散の勢いは止まるところを知らない。
Twitter上には感情的な意見から冷静に竹中氏の過去の発言を批判するものまであり、今後の政策を検討する上でも参考になるものだ。
政府関係者、大手メディアが竹中氏を論客、専門家として招聘して意見を求めている一方、インターネットの世論は竹中平蔵氏に極めて厳しい視線を寄せている。
政策の中枢や影響力があるポジションに登用していては危険だという認識がこれまでにないほど高まっている。
このような世論の動向は当然であり、竹中氏の過去の言動、その政策への影響力、市民生活への打撃を考慮すれば、批判や非難は仕方がないことだ。
竹中平蔵氏は「レントシーカー」だから警戒すべき
私も派遣労働、非正規労働が増えた、いわゆる「就職氷河期世代」の一員として、竹中氏を長年批判してきたひとりである。
竹中氏への批判は様々な視点からおこなってきたが、私が最も注意している点は彼が典型的な「レントシーカー」だからだ。
レントシーカーのレントとは、いわゆる「超過利潤」という意味である。
超過利潤とは、一般的に通常では起きない出来事、イベント、政策介入などを原因として、想定よりも多く発生する利潤を指す。
近年、超過利潤の発生原因は、意図した目的での政策介入によるものが増えてきている。
そして、その超過利潤を政策に介入して得るため、様々な工作活動をする人をレントシーカー、あるいはロビイストという。
日本だけでなく、以前ほどの経済成長が見込めなくなった国や地域では、レントシーカーたちが蠢(うごめ)き始めている。
レントシーカーは、世界各国で活動しており、本来であれば、利潤が上がらないし、公共性を考えれば利潤を上げるべきでない領域に需要があるように見せかける工作活動をおこない、超過利潤を自分たちで取得していく。
海外であれば、水道民営化がレントシーカーの被害領域として有名だ。
レントシーカーたちは、水道を民営化して自分たちが運営した方が社会や市民に有益だと主張し、政策介入する。
その市民サービスの運営権を業務委託などで取得するが、当然、超過利潤を上げることが目的化するので、安上がりのサービスになり、事業自体を劣化させていく。
現在、海外で水道民営化は見直しがされ、その際にレントシーカーたちがおこなった詐欺的な手法に批判や非難が集中している。
竹中氏は民間出身の大臣として、郵政民営化などの政策介入で有名だが、レントシーカーとしての役割を一貫して果たしてきた人物だといえる。
例えば、日本のレントシーカーは人材派遣会社を経営している。
日本の労働市場に介入し、本来は正社員でよいはずの労働者に対し、派遣労働のメリットを中心に語りながら、正社員から派遣労働、非正規へ急激に置き換えてきた。
この流れから日本でも次々に人材派遣会社が立ち上がり、企業や自治体などに労働者を派遣しつつ、その超過利潤を取得するビジネスが発達する。
竹中氏は「正社員は解雇しにくいため企業経営、経済成長の足かせになっている」と主張し、雇用の安定性を崩壊させつつ、人材派遣事業の広範な導入を求めてきた人物である。
これは事実であり、客観的に批判の余地がない部分だ。
ご存知の通り、このレントシーカーの介入によって、派遣労働、非正規労働は急速に増加し、いわゆるワーキングプアも増大した。
働いても貧しく、貯蓄も十分に形成できないばかりか、派遣労働者であれば、その少ない労働対価から人材派遣会社に利益が奪い取られる。
新型コロナ禍でも主に生活困窮に至ったり、死にたいほど辛い思いをしている労働者は、派遣労働、非正規労働に従事している人たちだ。
懸命に働いても社会情勢に応じて、簡単にリストラや雇い止めの対象になっている。
当然、人材派遣会社は雇用を守る方向には動かない。適度に困窮させて、別の人材派遣先を紹介するだけだ。
また、最近はこれら雇用の安定性の崩壊によって生じたワーキングプア、生活困窮者の増大にもレントシーカーは目を光らせている。
自分たちが政策介入、世論形成をして作り上げた被害者を利用しながら、それも再度、超過利潤を上げる対象に仕立て上げる。
例えば、人材派遣会社はいま福祉行政、自治体からの業務委託を受けて、生活困窮者支援事業や就労支援事業にも参入している。
竹中氏が牽引するパソナグループも行政への介入が著しく、そこから超過利潤を上げる経営モデルを採用している。
パソナグループが派遣労働者を使いながら、生活困窮者の支援業務をおこない、派遣労働や非正規雇用などへの職業紹介もおこなう。
実はワーキングプアや生活困窮者がいてくれた方が行政から支援業務を受託できて超過利潤を取得できるのである。
彼らはレントシーカーという批判だけでなく、貧困ビジネスという批判も受けるべき事業形態であろう。
行政ではレントシーカーたちの政策提言を受けて、公務員や専門職員は減らされてきて、非正規公務員、派遣公務員、官製ワーキングプアに置き換えられてきた。
その中で、増大する生活困窮者に対応しようとしても、外部委託をしなければ自分たちで支援できるほどの余力がないし、外注の方が安上がりで自治体運営も助かる仕組みになっている。非常に巧みな手法である。
そういう社会情勢のなかで「#竹中平蔵つまみ出せ」という世論の高まりは、希望のひとつであり、ポストコロナ社会を見据える上では重要なテーマであるだろう。
レントシーカーの典型的で象徴的な人物と市民社会がどう対峙、対抗していくのか、は今後の日本の行方を左右すると言っても過言ではない。
引き続き、竹中氏に限らず、レントシーカーたちの言動、動向に注目いただきたい。