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名大とJST、グラフェンナノリボンの完全精密合成に成功-新高分子化反応「リビングAPEX重合」開発

2019/6/27 10:50
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発表日:2019年6月27日

世界初、グラフェンナノリボンを完全精密合成

~新しい高分子化反応「リビングAPEX重合」を開発~

■ポイント

・次世代炭素材料として期待されるグラフェンナノリボンは、その長さや幅、構造が電子物性に大きな変化を与えるが、従来の合成手法では全てを精密制御できなかった。

・効率的な高分子重合法(リビングAPEX重合法)を開発し、長さ、幅、構造を精密制御してグラフェンナノリボンを合成することに、世界で初めて成功した。

・さまざまな構造をもつグラフェンナノリボンを精密に設計・合成できるので、次世代半導体など、広範囲にわたる応用展開への道をひらくと期待される。

JST 戦略的創造研究推進事業において、ERATO 伊丹分子ナノカーボンプロジェクトの伊丹 健一郎 研究総括(名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM) 拠点長/教授)、伊藤 英人 化学合成サブグループリーダー(名古屋大学 大学院理学研究科 准教授)、矢野 裕太(名古屋大学 大学院理学研究科 博士後期課程3年)らの研究グループは、リビングAPEX(エイペックス)重合法と呼ばれる画期的な高分子化反応を開発することによって、グラフェンナノリボンの完全精密合成に世界で初めて成功しました。

グラフェンナノリボンはグラフェンをナノメートルサイズの幅に切り出した帯状物質であり、シリコン半導体を超える半導体特性や透明性、柔軟性などから、次世代のトランジスター、センサー、電子回路などへの応用が期待されています。グラフェンナノリボンの性質はその長さ、幅、エッジ構造(注1)に大きく依存するため、電子デバイスに応用するためには原子レベルで精密に合成することが不可欠です。しかし、これまでの化学的・物理学的合成手法では、欠損が生じる、長さが制御できないなどの問題がありました。

本研究グループは、長さ、幅、エッジ構造の全てを制御可能な新規高分子重合法「リビングAPEX重合法」を開発し、グラフェンナノリボンの精密合成を世界で初めて達成しました。合成したのはフィヨルド型と呼ばれる幅1ナノメートル程度のグラフェンナノリボンで、重合開始剤とモノマーの混合比率を変えるだけで最長170ナノメートル程度まで長さを自由自在に変えられることが分かりました。さらに酸化反応を施すことでアームチェア型グラフェンナノリボンに変換できることも見いだしました。

本研究成果は、世界初の精密グラフェンナノリボン合成として材料科学分野に新たな道をひらく画期的な成果です。今回開発した手法を用いて合成できる均一な構造の各種グラフェンナノリボンは、田岡化学工業株式会社と共同で量産化技術の確立を目的とした研究を行うことになっており、量産化の進展により、世界中の研究者によってさまざまな応用展開研究が一気に加速することが期待されます。

本研究成果は、2019年6月26日(英国時間)に英国科学誌「Nature」のオンライン速報版で公開されます。

本成果は、以下の事業・研究領域・研究課題によって得られました。

■戦略的創造研究推進事業 総括実施型研究(ERATO)

・研究プロジェクト:「伊丹分子ナノカーボンプロジェクト」

・研究総括:伊丹 健一郎(名古屋大学 大学院理学研究科/トランスフォーマティブ生命分子研究所拠点長/教授)

・研究期間:平成25年10月~平成31年3月

※以下は添付リリースを参照

リリース本文中の「関連資料」は、こちらのURLからご覧ください。

添付リリース

https://release.nikkei.co.jp/attach_file/0513019_01.pdf

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