辺野古で県敗訴 あまりに形式的では

2020年11月28日 08時14分
 沖縄県民の願いはまた門前払いされた。名護市辺野古で国が進める新基地建設が、県の処分に反して違法だと県側が訴えた訴訟の那覇地裁判決。事業の合理性を巡る判断を避けたのは残念極まりない。
 新基地建設反対の民意を受けて就任した故翁長雄志前知事が二〇一八年夏、死の直前に決断したのが辺野古埋め立て承認の撤回だ。
 工事を進めたい防衛省沖縄防衛局は、一般国民の権利を救済するための行政不服審査法を用い、同じ内閣の国土交通相に処分取り消しを請求。国交相はこれを認める裁決をした。防衛局は一八年末から土砂投入を続けている。
 県が承認撤回の理由としたのは海域での軟弱地盤の発見や不十分な環境保全策、全体の実施設計協議が行われていないなど、工事の前提の相次ぐ変化や約束違反だ。
 裁判は、県の承認撤回こそが適正であり、その処分を覆した国の裁決が違法だと明らかにして工事を中止させるために起こした。
 しかし、二十七日の那覇地裁判決は、辺野古工事に関する県の主張の中身に全く踏み込まず「自治体が条例や規則に従わせるための訴訟は起こせない」とする〇二年の最高裁判例に沿って、訴えを却下した。判例は、兵庫県宝塚市が条例に基づきパチンコ店の建築中止を求めた裁判で示され、市の訴えは却下された。今回の裁判では、被告の国側もこの判例を盾に却下を主張していた。
 地裁の判断は極めて形式的と言わざるを得ない。パチンコ店の建築阻止は、市民の公益を守るためで自治体個別の権利利益の救済にならないから訴訟の対象でない、というのが〇二年判例の趣旨だ。だが、公益保護のための訴訟が妨げられていいのだろうか。
 パチンコ店の建築主相手と違い、今回の被告は全国民の幸福と利益を追求すべき国だ。その国が、県民による反対の意思が重ねて示される工事を強行している。
 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の早期返還を図る「唯一の解決策」だと言いつつ、いつ完成するのか、安全性は保たれるのかもはっきりしない。国は県による話し合い解決も拒んでいる。
 国が自治体に強権を発動した場合、三権分立の一つを担う司法として、地方の自主性、自立性を取り戻したいとの自治体の主張には真摯(しんし)に向き合ってほしい。行政法学者の多くが、〇二年判例は見直すべきだと主張している。
 県は控訴する方針だ。上級審の大局的な判断を望みたい。

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