世界で賞賛される「韓国」コロナ対策の凄み
行動制限を課すことなく増加曲線を抑制
東洋経済 2020/3/29 (The New York Times 2020/3/27)
https://toyokeizai.net/articles/-/340150
数字をどう見ても、1つの国が際立っている――韓国だ。 2月下旬と3月上旬、同国における新型コロナウイルスの感染者数は数十から数百人、数千人へと爆発的に増加した。
ピーク時には、医療従事者は2月29日の1日で909人の症例を特定し、人口5000万人の同国は打ちのめされる寸前のように見えた。しかし1週間弱経つと、新たな症例数は半減した。4日以内で、再び半減した――そしてその次の日も再び半減した。(3月28日増加の感染者数は146人、総数の9500人のうち 半数以上はすでに退院した)
封鎖政策も行われていない
韓国は22日、ほぼ1カ月の間で最少となる、わずか64人の新規感染者を発表した。他国では感染者数が1日ごとに数千人単位で増加し、医療システムや経済が壊滅的状況に追い込まれている中で、である。イタリアでは毎日数百人の死亡者を記録している。韓国は1日当たり8人を超えたことはない。
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今では1日に10万の検査キットを生産
それでも、アメリカ食品医薬品局(FDA)元長官のスコット・ゴットリーブはツイッターで「韓国は賢く精力的な公衆衛生によってCOVID-19が克服できることを示している」と書き、何度も韓国をモデルに掲げてきた。
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教訓1:介入は早く、危機的状況になる前に
1月下旬に同国初の感染症例の診断が下ってからわずか1週間後、当局は製薬会社数社の代表者たちと面会した。当局は緊急承認を約束したうえで、大量生産のためのコロナウイルス用検査キットの開発に直ちに着手するよう促した。
韓国で確認された症例数は2桁にとどまっていたが、2週間以内に何千もの検査キットが発送された。同国は今では1日に10万キットを生産しており、当局によるとキットの輸出について17カ国の政府と協議中だという。 当局はまた、地元の教会から感染が素早く拡大した人口250万人の都市テグで迅速に緊急措置を施行した。
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一握り程度に見えた患者数が実は数百人、数百人に見えたものが実は数千人ということもありうる。
「このウイルスのこのような性質により、閉鎖と隔離に重点を置く従来型の対応は非効果的となる」と韓国保健福祉部次官キム・ガンリプは語る。「(感染者数が)いったんある程度に達してしまうと、古いやり方では感染拡大の防止に効果はない」。
1日当たりの検査率はアメリカの40倍
教訓2:検査は早く、頻繁に、安全に
韓国はほかのどの国よりもはるかに多くの人を検査してきた。そのため、多くの人を感染後すぐに隔離・治療することが可能となった。 同国では30万回以上の検査を実施し、1人当たりの検査率はアメリカの40倍となっている。
「検査は早期発見につながり、さらなる拡大を抑制し、またウイルス感染が判明した患者を早く治療することが可能となるため、中心的な位置づけとなるものだ」と、韓国の外務相カン・ギョンファはBBCに語り、検査は「わが国の非常に低い死亡率のカギでもある」と述べた。
韓国は時にエピデミックを回避できたように言われるが、数千人が感染しており、政府は当初、現状に甘んじているとのそしりを受けていた。政府の検査に対するアプローチは、すでに進行中のアウトブレイクを駆逐するように設計されていた。
病院やクリニックがキャパオーバーにならないよう、当局は可能な限り多くの人を、可能な限り早く検査できるよう設計された検査センターを600カ所開設した。医療従事者の安全を確保するために接触を最小限に抑える狙いもあった。
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社会からウイルスを「ほり出す」
教訓3:接触者追跡、隔離および監視
陽性反応を示す患者が出ると、医療従事者は患者の直近の動きを追跡して接触した可能性のある人を特定し、検査し、必要があれば隔離する。このプロセスは接触者追跡として知られている。 これにより医療従事者は伝染の可能性のあるネットワークを早期に特定することができる。まるで外科医がガンを取り除くように、社会からウイルスをほり出すのだ。
韓国はMERSのアウトブレイク中に精力的な接触者追跡のためのツールとプラクティス(実践法)を開発した。保健関係の係員はセキュリティーカメラの映像やクレジットカードの記録、車や携帯電話のナビのデータまでも使用して患者の動きをたどるのである。
「私たちはまるで刑事のように疫学上の捜査を行った」とキは言う。「その後、伝染病危機の際には個人のプライバシーよりも社会の安全を優先するよう法律が改正された」。
コロナウイルスのアウトブレイクが大きくなりすぎて患者を集中的に追跡するのが困難になると、当局はよりマスメッセージングに頼るようになった。
韓国人の携帯電話は居住地区で新規感染者が発見されるたびに緊急警報のバイブレーションが鳴る。ウェブサイトやアプリでは感染患者の1時間ごと、時には1分ごとの移動経路を表示する――どのバスに乗ったか、いつどこで乗り降りしたか、はたまたマスクを着用していたかどうかまで。
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自主隔離命令を受けた人はもう1つアプリをダウンロードしなければならない。患者が隔離から抜け出した場合、当局に連絡が行くというアプリだ。違反した場合の罰金は最大2500ドルにもなる。
感染を早期に特定し治療すること、また軽度の症例は特別センターに分離することで、韓国は病院が最重症患者を受け入れられる状態を確保してきた。同国の症例死亡率は1%をわずかに超える程度で、世界でも最も低い国の1つである。
アウトブレイク抑圧には国民の協力が必要
教訓4:公衆の助けを募る
医療従事者の数も足りず、全員を追跡できるだけの体温スキャナーもないため、市井の人々が協力しなくてはならない。
首脳陣の結論は、アウトブレイクの制圧には国民に対し完全な情報共有を続けること、そして国民の協力をお願いすることが必要ということだった、と保健福祉部次官のキム氏は話す。
テレビ放送、地下鉄の駅の告知、スマートフォンのアラートが、マスク着用の促進や社会的距離戦略、その日の感染データについて無限に注意喚起をしてくる。こうしたメッセージはまるで戦時中のような共通目的の感覚を植え付ける。
世論調査では大多数が政府の取り組みに賛同を示しており、人々は自信があり、パニックは少なく、買いだめもほとんど起こっていない。
「この公衆の信頼により非常に高い市民意識と自主的な協力姿勢が生まれ、私たちの集団的努力をさらに強いものにしている」と、外務省次官のイ・テホは今月初旬に記者団に語った。
当局はまた、同国の健康保険システムの功績を指摘する。ほとんどの治療を保証し、コロナウイルス関連のコストをカバーする特別なルールがあるため、無症状の人も検査を受ける意欲が高められる。
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注目される韓国の成功について、その方法と封じ込めのためのツールは桁外れに複雑でも高価でもない。
同国が用いた技術のいくつかは、専用ゴム手袋や綿棒のようなシンプルなものだ。韓国よりもひどいアウトブレイクを経験している7カ国のうち、5カ国は韓国より豊かな国だ。
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韓国モデル応用の3つのハードル
専門家たちは韓国モデルを応用するうえでの3つのハードルを指摘する。いずれもコストや技術とは関係ない。
1つは政治的意志だ。危機的水準のアウトブレイクなくして、厄介な対策を講じることをためらった政府は多い。
もう1つは公衆の意志である。韓国では多くのほかの国に比べて社会的信頼が高い。とくに分極化とポピュリズムによるしっぺ返しに悩まされる西洋民主主義国に比べれば。
しかし、最大の課題となるのは時間だ。すでにエピデミックが進行した国が韓国と同じように早くまたは効率的にアウトブレイクを制御するにはもう「遅すぎる」かもしれない、とキ氏は言う。
中国は、ほとんどのヨーロッパの国よりも大きい湖北省における初の破壊的なアウトブレイクを駆逐した。ただし、その経済を閉鎖するというコストが伴った。
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移動制限もなく医療崩壊を避けられるなら プライバシーを一時的に制限するこの方法がベストかも
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