新型コロナ「韓国の”封じ込め策”から学ぼう」となぜメディアは言わないのか?

TBS『ひるおび!』で韓国に言及する恵キャスター(4月6日・筆者が画面撮影)!

 4月6日午後9時15分段階で新型ウイルスの日本国内の累計での感染者は4777人。うち死者は108人に達している。

TBS『ひるおび!』(4月6日放送)

 この日、『ひるおび!』は新型コロナウイルスの世界の感染者数(ジョンズ・ホプキンス大学ホームページ4月6日午前9時現在より)というデータを示した。

 感染者や死者が各国でどんどん増える現状を伝えた。

イタリア 感染者  12万8949人

     死者   1万5887人

スペイン 感染者  13万1646人 

     死者   1万2641人

アメリカ 感染者  33万7274人

     死者    9633人

フランス 感染者 9万3780人

     死者    8093人  

中国   感染者  8万2602人

     死者  3333人

 世界全体でも死者の増加は気になるところだ。

世界全体 感染者127万3794人

     死者  6万9419人  

(致死率 約5.4%)

 ところが死者の数が目立って増えていないように見える国がある。

韓国   感染者 1万237人

      死者   183人  

 韓国だ。

 致死率が5.4%なら550人を超えていておかしくないのに3分の1以下に抑えられている。

(恵俊彰キャスター)

「韓国でも感染者1万人を超えました。

ただ、韓国は死者が183人ということで非常に抑えられている

 恵キャスターはこの点を評価した上でゲストの片山善博・前鳥取県知事・早稻田大学教授に尋ねた。

(恵キャスター)

「片山さん、この韓国ですが、感染者の数は多いでんすが、死者の数が非常に抑えられているように思うんですが」

(片山善博前知事)

「これは感染者が多いので、致死率を調べるときには母数が多ければ率は下がりますよね。

だからこの率は同じ基準で各国比較するというわけにはいかないと思いますね。

もっと日本もPCR検査を増やしていれば致死率は下がったのではないかと思います」

 片山前知事が言うように確かに感染者の母数の正確な数字が分からないと致死率は分からない面はある。

 だが他方で韓国の死者が200人未満というのは飛び抜けて少ない数字だ。

 恵キャスターが評価したようにもっとこの背景をメディアは深掘りすべきではないのか。

テレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』(4月6日放送)

 この番組でもPCR検査については韓国と日本の比較で日本の検査数が圧倒的に少ないことが何度かテーマになっている。

 この日、スタジオではオックスフォード大学の研究グループが発表したデータから100万人あたりの検査した人数がグラフになっていた。

ドイツ  1万1127人

イタリア  9829人

韓国     8382人

アメリカ  3825人

日本     273人  

(タレント・石原良純)

「これ2か月も同じことを言っている気がする。

よくアメリカとか第三国から見たときによく言われるのは日本型と韓国型で日本だけレアケースなことをやっていると

今後どうなるのか分からないと予断を許さないと言われるように今なっていますよね?

日本政府は意図してこの日本型、独自の形をとっているのか。

それとも何だかよく分からないうちに他の国と違うことをやっているように別の道に迷いこんでいるのか、

どっちなんですか?」

(政治ジャーナリスト・田崎史郎)

「僕は検査能力のキャパシティがそもそもなかったのだと思いますよ」

(タレント・石原良純)

「2か月経って、この日本がドイツやアメリカとかかつて言われていたなかで、

真顔で『日本はダメだったんだよね。そういうことに』って帰着してしまっていいのか」

(政治ジャーナリスト・田崎史郎)

「それでも増やしてきているのは事実なんですよ」

(弁護士・山口真由)

「私は田崎さんのおっしゃる通り、韓国ぐらい検査能力があるなから韓国型でやればよかったと思いますよ。

バンバンやって。

韓国は元々メガクラスターがあったから、あの地域の陽性率が高かったから、ああいうやり方がワークしたのだと思います。

日本は検査能力が低いというのは、なんとか増やしてもしょうがないところもあって、

日本型モデルと言われているのは今までクラスター(封じ込め)と行動変容を組み合わせることで

事実として今言えるのはオーバーシュートの岐路に入っているのは確かであるにしてもあれほど中国の方がどんどん来たのに、

中国の人をバンと止めたアメリカよりも日本が今なんとか持ちこたえているというのは事実としてあります」

 韓国の検査能力をきちんと評価して日本での新型コロナ対策に応用すべきだと考える人はテレビのコメンテーターやキャスターには少なくない。

 それなのに韓国の新型コロナ対策をおおっぴらに評価する報道は日本のメディアではあまり見られない。

 サンケイ・ビズの次の記事など数えるほどだ。 

“攻めの検診”も特徴だ。感染が急拡大した南東部の大邱(テグ)地域では、検査を担う公衆保健医らのチームが感染が疑われる人の自宅などに自ら出向く移動検診も積極的に行われた。

 車に乗ったまま、検査が受けられる「ドライブスルー式」が話題となり、他の国でも導入が相次いでいるが、歩いて通過し、5分ほどで検査を済ませられる「ウオークスルー式」も登場。ソウルでは3日、競技場の駐車場にテントやコンテナを並べ、大規模なウォークスルー式診療所が開設された。韓国は大半の国・地域に対して入国禁止を取っていないが、海外からの入国者を対象に1日最大千人の検査が可能だという。

出典:SankeiBiz「韓国、シンガポール、台湾…スピード最優先で新型コロナ押さえ込み」

 

 日経XTechの次の記事も韓国方式をくわしく報じている。

欧米メディアが韓国の防疫に関して注目したのは以下の点である。

民間企業が人工知能(AI)を使ってPCR検査診断試薬を早期に開発し、政府は緊急使用を承認したことで早期に大量検査が可能になった

ドライブスルー検査やウオークスルー検査など医療スタッフの感染を防止しながら大量に検査できる方法で感染者を早期発見・早期治療し完治者を増やした

軽症者は病院ではなく生活治療センター(政府や企業の寮を借りて軽症者を隔離し、医療スタッフがケア)に入所させることで医療崩壊を阻止した

感染者の動線を全て公開し、陰性の接触者も14日間自宅隔離させ地域感染を防止した

政府による透明な情報公開で社会的信頼が形成され買い占めが起きていない

都市封鎖や外出制限といった人々の移動を制限していない

 欧米メディアはこれらの施策によって死亡率が他の国に比べかなり低いと韓国の防疫を称賛していた。何といっても韓国は世界でも他に類に見ないほど累計の検査数が多い。

出典:日経XTech(4月3日)「欧米が称賛する韓国の新型コロナ対策、普及進む在宅勤務に若者は大満足」

 一方、こうした報道は一般の全国紙やテレビのニュースなどではほとんど見られない。

 やはり「嫌韓感情」が背景にあって素直に報道しにくい面があるのだろうか。

 だが、新型コロナへの対策は国を超えて知恵を結集すべき事柄であり、効果的な事例があったのなら率直に参考にすべきだと思う。

 明日7日にも緊急事態宣言が出る見通しの日本も、どこの国が好きとか嫌いだとかで躊躇している余裕などはないはずだ。

 テレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』でもコメンテーターの玉川徹氏が韓国のやり方を念頭に日本にも同様の検査体制をつくることをたびたび提言している。

(玉川徹・『モーニングショー』4月3日放送)

「本当に今からでもドライブスルーとかウォークスルーとか、

感染を調べるためのテントでもいいですし、

専門の場所でもいいですし、そういうのを作らないといけないですね。

とにかく始めから感染者を診るための病院というような病院は別にして、

そうじゃない病院で感染が広がって外来とか、入院患者が転院とかね、

そういうふうなことになると感染症以外の人もいっぱいいるわけですからその人たちの命にまさに直結してしまうので、

各病院すべてでテントを表に張って外で検査をするというふうなことをもう各病院、やってください」

 「緊急事態宣言」が出たら、学校の校庭のような場所にテントを張って「ウォークスルー」などを設置することも緊急な検討対象になることだろう。

 その際にウイルスを封じ込めた「韓国方式」を冷静に評価し、採用すべきものがあれば採用していく姿勢を持つことこそ、国民の命を守る報道機関としてのあり方だろう。