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 子どもが鼻水を垂らしている光景はよく見かけます。耳鼻科や小児科に行くと「鼻水を吸ってあげた方がいい」と言われることもあります。どんなときに「鼻吸い」は必要なのでしょう。

 

 小児科外来で診療をしていると、保護者の方から「何歳から鼻をかめるものですか?」と聞かれることがあります。私も患者さんであるお子さんに「鼻、かめる?」と尋ねることがあります。私の経験上、5歳くらいになると多くの子が、自分でティッシュペーパーに鼻水を勢いよく出せるようです。早い子は2歳でもう、お兄ちゃんやお姉ちゃんの真似をしてなのか、上手に鼻をかめる子もいますし、遅い子は小学校に上がる頃にやっと、という感じのようです。

 そもそも鼻水はなんで出るのでしょうか。鼻水はウイルスや細菌が体の中に入ろうとした時に、体外に追い出す働きがあります。水のようにサラサラした透明の「水様性鼻汁」と黄色や緑色でドロドロの「膿性鼻汁」に分類できます。膿性鼻汁には、血液中から出て来た白血球がウイルスや細菌と戦い、壊れたものやウイルスや細菌の死骸が混ざっていますから、すすったりして鼻や喉に残ったままになっているのはいいことではありません。水様性・膿性鼻汁とも鼻水の中の炎症性物質が、喉を痛めることもあるかもしれません。

 子どもに鼻をかむことを教えるのは案外難しいもので、「フンッってやってごらん」とティッシュペーパーを鼻に当ててかまようとしても、口で「フンッ!」と言うだけで鼻からは鼻水も息も出せないことがあります。拭いてあげるのでもいいのですが、だいたいの子は鼻を触られることさえ嫌がります。上から押さえられるのが嫌なんでしょうか。もしもできるなら、眉間の方から鼻の穴に向かって両側から鼻を押さえて鼻水を押し出したいものです。それが無理なら、せめて出ているものを拭き取りましょう。

拡大する写真・図版鼻水スルスル

 ティッシュペーパーを4つに細長く折り、鼻の下に当てます。イラストのように下からティッシュを引っ張るとネバネバの鼻水は線のようになって取り去ることができます。私も外来で患者さんにやってみましたが、鼻を押さえないので嫌がられませんでした。ネットで「鼻水するする」と検索すると詳しいやり方が出てきます。

 

 ティッシュペーパーをちぎって、鼻血が出た時のように片方の鼻に詰める方法もあります。詰めていない方の鼻の穴に二つ折りにしたティッシュペーパーを当て、「それが外に飛び出るようにフンッってしてごらん」と言うと、鼻水ごと詰めたティッシュが出てきて成功することもあります。

 そんな説明がまだわからないくらい小さい子だったり、鼻水が水のように流れたりする場合は親が吸ってあげるしかないですね。つまり、「鼻吸い」は子どもが自分で鼻をかめないときにはいつでもやってあげたほうがいいのです。

 昔は子どもの鼻を親が口に入れて直接吸うことがあったようですね。我が家も夫がやっていたので、私も親としてそのくらいできないといけないのかも、と思いましたが、よく考えたら風邪のウイルスが親にうつりかねず衛生的ではありません。

 今はドラッグストアに行くといろいろな種類の鼻水吸い器が売っています。スポイト型だったり、ストローのようなもので吸い出したりするもの、電動型もあります。お子さんが小さいとなかなかゆっくり選ぶことができないかもしれませんが、ネットで買うこともできます。

 以前、耳鼻科医の友達にどれがいいのかと聞いたことがありますが、彼は自分でストロー式を自作していました。小さな試験管のようなものに2本のチューブがついていて、片方のチューブを子どもの鼻の穴に入れ、もう片方を親が吸うとその試験管に鼻水がたまるという構造です。しかし、すべての人にとってそういうタイプが使いやすいとは限りません。外来で質問すると皆さんいろいろなタイプを持っていたり、複数のタイプを使い分けたりしています。ご自分とお子さんが使いやすいものにしましょう。値段が高いからいいものとも限らないようです。

 

 鼻水を吸った後に、鼻から血が出ていることもあります。鼻や喉で炎症が起こっている時、粘膜が腫れて鼻水や痰が出るので少し触れたりくしゃみなどで擦れた時に出血したりしやすいのです。すぐに止まれば問題ありませんから、やはり鼻水は溜めずに取り去ってあげましょう。

 

 鼻水が出る病気には、風邪以外にも副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、これからの季節は花粉症などがあります。色のついたドロドロの鼻水が出る場合には、抗菌薬を飲んだ方がいい副鼻腔炎かもしれません。花粉症は、何度も花粉の時期を経験するとなってしまうことがあるので、乳幼児には少ないものの近年低年齢化しています。どちらも耳鼻科、小児科で診察、処方してもらえますから、まずはかかりつけのお医者さんに行ってみましょう。

 

森戸やすみ

森戸やすみ(もりと・やすみ) 小児科医

小児科専門医。1971年東京生まれ。1996年私立大学医学部卒。NICU勤務などを経て、現在はどうかん山こどもクリニックに勤務。2人の女の子の母。著書に『小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』(内外出版)、共著に『赤ちゃんのしぐさ』(洋泉社)などがある。医療と育児をつなぐ活動をしている。